ある女性が僕を裏切り者だと言う。
その女性は冒険教育を愛し、
嬉野台を愛していたのだと思う。
僕が何年か前に突然、嬉野台の講師業を辞め
美方郡へ仕事を決めたこと、そしてその施設も辞めて兵庫県から遠くへ行ってしまったこと
その一連の動きとその事を自分に言ってくれなかったと怒っているのだ。
それから彼女は酔っ払っていたとはいえ3時間は同じ怒りをぶちかましていた。
周りの大人たちは「好きなんじゃないん?」と冷やかしていた。普通の女性ならここで心が折れて、僕に絡む事をやめるだろう。
でも辞めはしない。
「なんで黙って美方へ行ったのだ?」
としつこく聞いてくる。「裏切ったと自覚しろ!」という趣旨である。
そして本意は「ホクトマンと仕事がしたい。でも裏切った人とは仕事ができない」というジレンマがあったらしい。
実際、「私と仕事をする気ある?」と峰不二子みたいな台詞を言ってくる。
僕の耳元で次元大介がクールにアドバイスをする。
「ルパン、辞めとこう。不二子は危ない。」
僕が本当に久しぶりに嬉野台に帰ってきて、昔のように振る舞うことも許せないらしい。そして僕がレジェンドだと言い張るのだ。
当時の伝説のメンバーの1人なんだと。
そして影響力の強さを恐れているらしい。
僕は正直、自覚がない。
影響力?
あるか?
どんな影響力やねん!
そして彼女はまた言う。
「裏切った人とは仕事は出来ない」
だったら誘うなよ、と言いたいのだが……
僕は「まだ今のあなたの事を知らないし、裏切り者だと言われて一緒に仕事ができるわけがない」と当たり前の返事をする。
どうやら彼女が仕事の話を僕に振るのは、信頼する彼女のビジネスパートナー達が僕を推薦しているかららしい。
僕は少なからず喜びと驚きに戸惑った。
そして言われた彼女も同時に動揺したらしい。
信頼する人が、裏切った人の事を推薦するというパラドックスに。
そしてパニックになったのか、なっていないのか、ただの酔っ払いなのか。
また最初に戻る。
「あなたは私を裏切った」
またその話か?
僕は堂々巡りをする言葉の渦の中でグルグル回っていた。
目が回ってきたところに、時折「あなたの事が好きだった」というセンセーショナルなワードが入るからまたややこしくなる。
当然それは1ファシリテーターとして、という意味である。
愛の告白をみんなの前でするほど酔っていなかったはずだし、彼女は最近結婚したらしいからだ。
僕のファシリテーションに惚れていた彼女にとって、その「裏切り」が更に落差を生み、衝撃的な不信感を焼き付けてしまったようだ。
僕は途中からこの絡みが面白くなってしまい、茶化したりスカしたりしてみた。
それでもまだまだ同じ話をする。
酔っ払ってしか彼女は僕に話しかけられなかったんだと思う。
その思いは十分僕に届いていた。
確かに自覚はないのだが、彼女が僕の裏切りと感じたことは事実だし、その寂しさや悔しさは何となく分かってきた。
その頃には僕も彼女も声が大きいから、飲みの席は全員が僕たちのやり取りに集中していた。
ほぼ全員が注目するほど面白いやり取りが繰り広げられていたのだろう。
僕は責められ、彼女が責めているSMプレイ。
だんだん怒りくるう彼女は、愛らしくなってくる(ちなみに僕はMではない)。
もう僕は、まるで小さな女の子を見るように感じていた。
その小さな女の子は、僕を指差し「裏切った事はわかるでしょ?」と尋ねてくる。
僕と彼女は、嬉野台に来なくなった以来の再会。プライベートで連絡しあって話をするほど仲がいいわけではない。
でも彼女は酒を飲んで、僕に絡んできてくれた。
「裏切り者」と罵っても、僕とのコミュニケーションを取ろうとしてくれたのだと考えている。
僕はたまに見せる彼女のシラフの眼差しを覗き込む。
僕と話ができた事を喜んでいる様に見えた。
それが僕に文句を言うという行為の中でも。
彼女なりの「おかえり」だったのではないかと。
僕の勝手な想像をして全員が僕たちを見ているこの状況で後に引けなくなった暴走機関車を眺めた。
彼女もまた冒険教育を武器に共に戦ってきた戦友である。
これからどうなるのかわからないが、
面白くなりそうなワクワクが僕の中で芽生えていく。
ありがとう、そしてただいま。
深夜2:00。帰宅するため駐車場にむかった。
頭上の北斗七星を、僕はずっと見ていた。
その女性は冒険教育を愛し、
嬉野台を愛していたのだと思う。
僕が何年か前に突然、嬉野台の講師業を辞め
美方郡へ仕事を決めたこと、そしてその施設も辞めて兵庫県から遠くへ行ってしまったこと
その一連の動きとその事を自分に言ってくれなかったと怒っているのだ。
それから彼女は酔っ払っていたとはいえ3時間は同じ怒りをぶちかましていた。
周りの大人たちは「好きなんじゃないん?」と冷やかしていた。普通の女性ならここで心が折れて、僕に絡む事をやめるだろう。
でも辞めはしない。
「なんで黙って美方へ行ったのだ?」
としつこく聞いてくる。「裏切ったと自覚しろ!」という趣旨である。
そして本意は「ホクトマンと仕事がしたい。でも裏切った人とは仕事ができない」というジレンマがあったらしい。
実際、「私と仕事をする気ある?」と峰不二子みたいな台詞を言ってくる。
僕の耳元で次元大介がクールにアドバイスをする。
「ルパン、辞めとこう。不二子は危ない。」
僕が本当に久しぶりに嬉野台に帰ってきて、昔のように振る舞うことも許せないらしい。そして僕がレジェンドだと言い張るのだ。
当時の伝説のメンバーの1人なんだと。
そして影響力の強さを恐れているらしい。
僕は正直、自覚がない。
影響力?
あるか?
どんな影響力やねん!
そして彼女はまた言う。
「裏切った人とは仕事は出来ない」
だったら誘うなよ、と言いたいのだが……
僕は「まだ今のあなたの事を知らないし、裏切り者だと言われて一緒に仕事ができるわけがない」と当たり前の返事をする。
どうやら彼女が仕事の話を僕に振るのは、信頼する彼女のビジネスパートナー達が僕を推薦しているかららしい。
僕は少なからず喜びと驚きに戸惑った。
そして言われた彼女も同時に動揺したらしい。
信頼する人が、裏切った人の事を推薦するというパラドックスに。
そしてパニックになったのか、なっていないのか、ただの酔っ払いなのか。
また最初に戻る。
「あなたは私を裏切った」
またその話か?
僕は堂々巡りをする言葉の渦の中でグルグル回っていた。
目が回ってきたところに、時折「あなたの事が好きだった」というセンセーショナルなワードが入るからまたややこしくなる。
当然それは1ファシリテーターとして、という意味である。
愛の告白をみんなの前でするほど酔っていなかったはずだし、彼女は最近結婚したらしいからだ。
僕のファシリテーションに惚れていた彼女にとって、その「裏切り」が更に落差を生み、衝撃的な不信感を焼き付けてしまったようだ。
僕は途中からこの絡みが面白くなってしまい、茶化したりスカしたりしてみた。
それでもまだまだ同じ話をする。
酔っ払ってしか彼女は僕に話しかけられなかったんだと思う。
その思いは十分僕に届いていた。
確かに自覚はないのだが、彼女が僕の裏切りと感じたことは事実だし、その寂しさや悔しさは何となく分かってきた。
その頃には僕も彼女も声が大きいから、飲みの席は全員が僕たちのやり取りに集中していた。
ほぼ全員が注目するほど面白いやり取りが繰り広げられていたのだろう。
僕は責められ、彼女が責めているSMプレイ。
だんだん怒りくるう彼女は、愛らしくなってくる(ちなみに僕はMではない)。
もう僕は、まるで小さな女の子を見るように感じていた。
その小さな女の子は、僕を指差し「裏切った事はわかるでしょ?」と尋ねてくる。
僕と彼女は、嬉野台に来なくなった以来の再会。プライベートで連絡しあって話をするほど仲がいいわけではない。
でも彼女は酒を飲んで、僕に絡んできてくれた。
「裏切り者」と罵っても、僕とのコミュニケーションを取ろうとしてくれたのだと考えている。
僕はたまに見せる彼女のシラフの眼差しを覗き込む。
僕と話ができた事を喜んでいる様に見えた。
それが僕に文句を言うという行為の中でも。
彼女なりの「おかえり」だったのではないかと。
僕の勝手な想像をして全員が僕たちを見ているこの状況で後に引けなくなった暴走機関車を眺めた。
彼女もまた冒険教育を武器に共に戦ってきた戦友である。
これからどうなるのかわからないが、
面白くなりそうなワクワクが僕の中で芽生えていく。
ありがとう、そしてただいま。
深夜2:00。帰宅するため駐車場にむかった。
頭上の北斗七星を、僕はずっと見ていた。