「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
土方家の女中・しずは、互いに再会と無事を喜び合う歳三達を見ながら、ある部屋へと向かった。
そこは、土方家の母屋から少し離れた所にあった。
「朔様、しずです。」
「入って。」
「失礼致します。」
しずが部屋に入ると、部屋の主は箏を弾いていた。
「例の件は、上手くいったの?」
「いえ、それが・・」
「ふぅん・・」
しずの言葉を聞いた“少女”は、箏を弾くのを止めて、ゆっくりとしずの方を振り向いた。
その顔は、歳三と同じ顔をしていた。
「本当に、お前は使えないね。」
「も、申し訳ございません・・」
「お前の顔はもう見たくない。」
「はい・・」
しずが慌てて部屋から出て行った後、彼女と入れ違いに一人の青年が部屋に入って来た。
「随分とご機嫌斜めですね?」
「お前か、桜馬(おうま)。いつも僕が不機嫌な時、お前はこうして来てくれるね。」
「あなた様にお仕えして何年経っていると思っていらっしゃるのです?」
土方家の使用人・桜馬は、そう言うと主の黒髪を優しく梳いた。
彼は、双子の弟・朔である。
頑健な歳三とは対照的に、朔は生まれつき病弱で、実母による恵津の元から離れ、乳母であるたまの手によって育てられた。
同じ顔をしていながらも、歳三と朔の性格は全く正反対だった。
勝ち気で負けず嫌いな性格の歳三とは違い、朔は争い事を嫌う物静かな性格である。
朔はいつしか、自分と違って多くの友人に恵まれている歳三を羨み、憎むようになった。
(あいつなんて、居なくなってしまえばいいのに。)
朔はしずに金子を渡し、歳三を女郎屋へと売り飛ばすよう命じたが、彼女は失敗した。
「朔様、これを買って参りましたよ、一緒に食べましょう。」
「柏餅だね、そんな季節か。」
朔はそう言うと、桜馬の手から柏餅をひとつ手に取ると、それを頬張った。
「あぁ、美味しい。」
「朔様は、本当に甘い物がお好きなのですね。」
「甘味はどれも好きだけど、僕は柏餅が一等好きな菓子なんだ。」
「トシ、誕生日おめでとう。」
「どうしたんだ、勝っちゃん?」
歳三がいつものように神社の境内で遊んでいると、勇はそう言って、彼に赤い櫛を手渡した。
「これは?」
「近くの小間物屋で売っていたから、つい・・それに、お前が赤が好きだと思い出してな・・」
「そうか、ありがとう・・」
歳三は、そう言うと頬を赤く染めながら、勇から櫛を受け取った。
「どれ、俺が髪に挿してやろう。」
「いいよ、そんな・・」
「恥ずかしがるなよ・・」
勇はそう言うと、歳三の髪に櫛を挿した。
「やっぱり、この櫛はトシの黒髪に映えるな。」
「そ、そうか?」
そんな二人の姿を、朔は遠巻きに見ていた。
(兄さん、あなたは狡い・・どうして、あなたばかり欲しい物を手に入れて・・)
「朔様、こんな所にいらっしゃったのですか?」
「桜馬、お前はいつも僕を見つけてくれるね。」
「さぁ、もう帰りましょうか。」
「うん。」
時は経ち、歳三と朔はそれぞれ元服の年を迎えた。
「二人共、もうそんな年になったのね・・」
「あぁ、そうだな・・」
隼人はそう言うと、中庭に植えられた遅咲きの梅を見つめた。
その梅は、歳三と朔が生まれた年に植えられたものだった。
「二人共、仲良くなってくれればいいですね・・」
「あぁ。」
「旦那様、失礼致します。風間様がお見えになられました。」
「・・そうか、今行く。」
歳三はその日の夜、朔と共に母屋へと向かった。
「父上、母上、参りました。」
「歳三、朔、元服おめでとう。今日ここにお前達を呼んだのは、大切な話があるからだ。」
「大切な話、ですか?」
「あぁ・・実は、風間家から縁談が来た。」
「風間家から、ですか?」
「先方は、歳三と朔のどちらかを嫁がせろと言って来たが・・風間家の千景様は、歳三を我妻にと望んでいる。」
「それは本当ですか、父上?」
「あぁ。」
「そうですか・・」
父の言葉を聞いた朔は、そのまま離れへと戻った。
「朔様!」
桜馬が慌てて主の後を追うと、彼は静かに涙を流していた。
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そこは、土方家の母屋から少し離れた所にあった。
「朔様、しずです。」
「入って。」
「失礼致します。」
しずが部屋に入ると、部屋の主は箏を弾いていた。
「例の件は、上手くいったの?」
「いえ、それが・・」
「ふぅん・・」
しずの言葉を聞いた“少女”は、箏を弾くのを止めて、ゆっくりとしずの方を振り向いた。
その顔は、歳三と同じ顔をしていた。
「本当に、お前は使えないね。」
「も、申し訳ございません・・」
「お前の顔はもう見たくない。」
「はい・・」
しずが慌てて部屋から出て行った後、彼女と入れ違いに一人の青年が部屋に入って来た。
「随分とご機嫌斜めですね?」
「お前か、桜馬(おうま)。いつも僕が不機嫌な時、お前はこうして来てくれるね。」
「あなた様にお仕えして何年経っていると思っていらっしゃるのです?」
土方家の使用人・桜馬は、そう言うと主の黒髪を優しく梳いた。
彼は、双子の弟・朔である。
頑健な歳三とは対照的に、朔は生まれつき病弱で、実母による恵津の元から離れ、乳母であるたまの手によって育てられた。
同じ顔をしていながらも、歳三と朔の性格は全く正反対だった。
勝ち気で負けず嫌いな性格の歳三とは違い、朔は争い事を嫌う物静かな性格である。
朔はいつしか、自分と違って多くの友人に恵まれている歳三を羨み、憎むようになった。
(あいつなんて、居なくなってしまえばいいのに。)
朔はしずに金子を渡し、歳三を女郎屋へと売り飛ばすよう命じたが、彼女は失敗した。
「朔様、これを買って参りましたよ、一緒に食べましょう。」
「柏餅だね、そんな季節か。」
朔はそう言うと、桜馬の手から柏餅をひとつ手に取ると、それを頬張った。
「あぁ、美味しい。」
「朔様は、本当に甘い物がお好きなのですね。」
「甘味はどれも好きだけど、僕は柏餅が一等好きな菓子なんだ。」
「トシ、誕生日おめでとう。」
「どうしたんだ、勝っちゃん?」
歳三がいつものように神社の境内で遊んでいると、勇はそう言って、彼に赤い櫛を手渡した。
「これは?」
「近くの小間物屋で売っていたから、つい・・それに、お前が赤が好きだと思い出してな・・」
「そうか、ありがとう・・」
歳三は、そう言うと頬を赤く染めながら、勇から櫛を受け取った。
「どれ、俺が髪に挿してやろう。」
「いいよ、そんな・・」
「恥ずかしがるなよ・・」
勇はそう言うと、歳三の髪に櫛を挿した。
「やっぱり、この櫛はトシの黒髪に映えるな。」
「そ、そうか?」
そんな二人の姿を、朔は遠巻きに見ていた。
(兄さん、あなたは狡い・・どうして、あなたばかり欲しい物を手に入れて・・)
「朔様、こんな所にいらっしゃったのですか?」
「桜馬、お前はいつも僕を見つけてくれるね。」
「さぁ、もう帰りましょうか。」
「うん。」
時は経ち、歳三と朔はそれぞれ元服の年を迎えた。
「二人共、もうそんな年になったのね・・」
「あぁ、そうだな・・」
隼人はそう言うと、中庭に植えられた遅咲きの梅を見つめた。
その梅は、歳三と朔が生まれた年に植えられたものだった。
「二人共、仲良くなってくれればいいですね・・」
「あぁ。」
「旦那様、失礼致します。風間様がお見えになられました。」
「・・そうか、今行く。」
歳三はその日の夜、朔と共に母屋へと向かった。
「父上、母上、参りました。」
「歳三、朔、元服おめでとう。今日ここにお前達を呼んだのは、大切な話があるからだ。」
「大切な話、ですか?」
「あぁ・・実は、風間家から縁談が来た。」
「風間家から、ですか?」
「先方は、歳三と朔のどちらかを嫁がせろと言って来たが・・風間家の千景様は、歳三を我妻にと望んでいる。」
「それは本当ですか、父上?」
「あぁ。」
「そうですか・・」
父の言葉を聞いた朔は、そのまま離れへと戻った。
「朔様!」
桜馬が慌てて主の後を追うと、彼は静かに涙を流していた。
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