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卓越性の探究者、波田野が皆さんに販売戦略・営業手法についてや、コミュニケーションについて思う事をお届けします。

マーケティング研究 他社事例 691 「ヤクルトとダノンの主導権抗争」 ~あのダノンが・・・と評価された格好のヤクルト~

2020-12-02 09:02:46 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 691 「ヤクルトとダノンの主導権抗争」 ~あのダノンが・・・と評価された格好のヤクルト~


「当社とダノンは、今後も友好的な関係を維持し、プロバイオティクスの普及にともに取り組んでまいります」

10月7日にヤクルトがダノンによる株式の完全売却を発表したリリースは建前にすぎないと思います。

この関係が友好的だとヤクルトは思ったことなど一度もないからです。

ダノンによるヤクルト株取得が明らかになったのは2000年春の事です。

株式市場で5%をひそかに買い集めたダノンは、ヤクルトに提携協議を申し入れました。

原材料調達や研究開発に共同で取り組むための協議は、わずか3か月余りで決裂しました。

沈黙を保っていたダノンは2003年春に突然動き出しました。

いきなりヤクルト株を19%まで買い増し筆頭株主になったと発表し、海外売上を伸ばしつつあったアジアのヤクルトを取り込み、ライバル視していたスイスのネスレに対抗する共同戦線を張ろうとしたのでした。

また、ヤクルトが持つ乳酸菌飲料の技術も魅力的でした。

改めて交渉した両社は2004年、海外事業で提携し、同時にダノンはそこから5年間、出資比率を20%強から引き上げない協定も結び、ヤクルトはダノンから取締役も受け入れたのでした。

仕方なく結んだ提携でした。

その後は押したり引いたりの繰り返しです。

出資比率を上げない期間を2012年まで3年延長し、期限切れが迫るとダノンは拒否権がある35%程度の株の買い増しをヤクルトに要求しました。

独立経営を望むヤクルトが猛反発するとダノンは3割弱へと要求をトーンダウンさせました。

それでもヤクルトは「経営への介入は望まない」と抵抗し、ダノンは敵対的TOB(株式公開買い付け)もちらつかせながらの交渉でした。

この後、ホクレン農業協同組合連合会がヤクルト株を買い増すなど買収防衛のアシストと受け取れる動きもあり、提携を2013年に解消しましたが、ダノンは株を手放さず、不気味な存在であり続けました。

その後、ヤクルトに追い風が吹きました。

ダノンが2017年、アメリカ有機食品大手を1兆円以上で買収し、巨額の借金を抱えたのでした。

アメリカのアクティビスト(モノ言う株主)、コーベックス・マネジメントがダノンの株主となり、借金返済のためヤクルト株を売るように圧力をかけたのです。

ところが、買い手がいませんでした。

15%程度のヤクルト株を売ろうと複数の事業会社や投資ファンドに持ちかけたものの、「あのダノンが言う事を聞かせられなかったのだから買いたくないという声ばかりだった」(投資関係者)

国内ではキリンフォールディングスなども話に応じていません。

結局ダノンは2018年、証券会社を通じて市場に株を放出することを決めました。

仮に第三者に15%程度の株が渡っていたら、ダノンに代わる新たな筆頭株主としてヤクルト買収を狙ったかもしれません。

ひるまず徹底抗戦し続けたことが、最終局面で吉と出た格好です。

残る株式も全て手放したとダノンがヤクルトに連絡したのは10月7日で、ダノンが20年かけてもヤクルトを呑み込めなかった事実は、長期にわたって一度も甘い所を見せなかったヤクルトの粘り勝ちとしか言いようがありませんね。


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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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