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検察官の定年延長問題が再燃している>黒川弘務・東京高検検事長の定年延長が強引に進められたから?

2020年05月11日 12時34分12秒 | 政治のこと
ねじれの発端は「えこひいき」 検察官の定年延長、いま急いで決める必要はある?

検察官の定年延長問題が再燃している。国民が不要不急の用件を控えるように求められる中、国会では検察官を含めた国家公務員の定年を65歳に引き上げる法案が審議され、可決されようとしているからだ。 

もともとは「生涯現役社会」実現のため
 そもそも、国家公務員の定年を延長するのは、意欲さえあれば高齢者でも働けるという「生涯現役社会」の実現に向けた国の政策の一環だ。 

 年金の支給年齢が段階的に引き上げられることから、定年から年金支給までの空白期間を埋めるため、2013年施行の改正高年齢者雇用安定法でも、民間企業に再雇用や定年の引き上げが求められている。 

 年金支給が65歳からとなる2025年までには、定年も65歳になることが望ましい。 
 そこで、国が先陣を切り、国家公務員の定年を段階的に引き上げることで、民間企業にもその輪を広げていこうとしているわけだ。 

 その方針自体は理解できる。地裁や高裁の裁判官の定年が65歳であるのに、検察庁法が検事総長の定年を65歳とするのみで、ほかの検察官を63歳としていることにも、かねてから異論があった。 

 定年が65歳に延長されたからといって、そのこと自体で個々の検察官が政権の言いなりになるというわけでもない。 
単純な定年延長の話ではない

 ただ、公務員は年次が上がれば基本給が増える。とりわけ検察官は、国家公務員の中でも高給取りだ。意に反する減給が禁じられるなど、裁判官並みの身分保障もある。 

 検察組織の中で最も高給取りが集まっているのは最高検だが、現実には仕事らしい仕事などしていない。検察を引っ張っているのは現場の第一線で働く若手や中堅の検察官、検察事務官であり、むしろそこにこそ手厚さが求められる。 

 60歳以上の給与を3割減らして従前の7割分としたり、退職金を見直すなどの方法で総人件費を抑制するにせよ、個々の検察官の能力の高低を問わない定年延長など、ムダに高給取りを増やすだけだ。 

 併せて能力給やリストラの制度も採用すべきだし、人手が必要なら、まずは就職難が予想される若手の採用を最優先にすべきではないか。 
 一般の国家公務員と異なる検事の強みは、たとえ辞めても弁護士になり、それこそ定年なしで働いていけるという点だ。 

 しかも、改正法案は単に定年を63歳から65歳に引き上げるだけではない。次長検事や高検検事長、地検検事正といった幹部ポストに63歳の「役職定年制」を設ける一方で、法務大臣が公務の運営に著しい支障が生ずると認めれば、その職を続けられるという特例まで設けている。 
 もし幹部が大臣やその背後の政権の顔色をうかがうようになれば、関係者らに対する捜査や裁判に手心が加えられるのではないかと懸念されているわけだ。 
いま、急いで決める必要がある?

 ここまで大きな制度改革を行う以上は、国会でも相当長時間にわたって腰を据えた議論を重ねる必要がある。 

 しかし、今はコロナショックで経営難に陥り、明日にも倒産するかもしれない危機的状況の事業者がおり、失業者や自殺者の増加も見込まれるという緊急時だ。 
 コロナショックの影響で例年4月の検察官の定期人事異動が凍結されるなど、検察ですらも異例の事態に至っている。 

 少なくともこうした時期に、あえて国会で議論のための時間と人を割かなければならないほど、優先順位の高い話でないことだけは確かだ。 

 まずはコロナショックのための立法措置を急ぎ、落ち着いてから議論を進めても決して遅くはない。 
ねじれの発端は「えこひいき」

 ただ、ここまで事態にねじれが生じたのは、やはりこの法案の提出に先立つ2020年1月に、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長が強引に進められたからだ。 
 政権による究極の「えこひいき」にほかならず、検察人事さえも法規範をねじ曲げて意のままにできるという姿勢のあらわれにほかならない。 

 労組を支持母体とする野党も、単に検察官を含めた国家公務員の定年延長だけの話であれば、賛成に回ったはずだ。 
 もちろん、今回の改正法案が成立したからといって、黒川氏が検事総長にならない限り、その定年が自動的に65歳まで延びるわけではない。施行予定日は2022年4月1日であり、黒川氏はその年の2月8日に65歳になるからだ。 

 しかも、2020年2月8日に63歳になった黒川氏の6か月間の定年延長は、国家公務員法の特別な規定によるものだ。最大で3年まで可能だが、延長を繰り返す必要があり、そのたびに理由や必要性が吟味される。 

 だからこそ、いっそのこと黒川氏を次の検事総長に据えるほうが手っ取り早く、それこそが政権の意図ではないかと見られているわけだ。 

 本来であれば黒川氏の件と検察庁法の改正とは直接の関係などなかったはずだが、黒川氏の定年延長をめぐる違法状態を、あとから作る法律で正当化しようとしているのではないかといった色に染まり、「いわくつき」の法案になってしまっている。 

黒川氏が身を退くべきでは
 そもそも、検察庁法が規定している定年を、しかも個別の検察官の定年を、閣議決定で延長するなどといった馬鹿げた話はない。 

 しかも、検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されないという過去の政府答弁との矛盾を指摘されるや、解釈を変えた、口頭決裁を経たなどと、ご都合主義も甚だしい。巻き込まれた人事院が気の毒だ。 

 そればかりか、是が非でも黒川氏の定年を延長するとか、次の検事総長に据えなければならない理由も必要性もない。2月に定年が延長されて3か月経ったが、黒川氏が彼でなければできないことを何かやっただろうか。 

 重要なのは、黒川氏の定年延長問題が、今後、さらに法的な紛争の火種になりかねないということだ。 

 例えば、高検が最高裁に上告する際の書面は検事長名になっている。上告審で弁護側から「黒川氏は2020年2月に定年退職した『元検事長』であり、『検事長』ではないから、上告を行う法的権限などない。上告は不適法で無効だ」などと主張されるかもしれない。 

 また、同様の理屈により、黒川氏に対する給与支払いの差し止めや、既払い分の返還請求訴訟が提起されるかもしれない。 
 黒川氏が定年延長を打診された際に固辞しておけば、こんな騒動にはならなかった。前例のない異常な人事であり、検察内外で紛糾することなど目に見えていたからだ。 

 最高検が明らかにしている『検察の理念』には、「自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である」という一文がある。地位や権力に連綿とする醜さはもたないという検察官なりの矜持だ。 
 次の検事総長に目されているにせよ、ケチが付いた人事になることは明らかだから、黒川氏が一刻も早く職を辞し、事態の正常化を図るべきではないか。もし「退くも地獄」ということであれば、悲劇というほかない。(了)


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一向に給付されない「一律10万円」、今後「数ヶ月」配られない可能性も

2020年05月11日 11時30分37秒 | 政治のこと
一向に給付されない「一律10万円」、今後「数ヶ月」配られない可能性も

定額給付金」には半年以上かかった 
 低所得者への「30万円」の給付が撤回され、国民全員に、一律10万円が、給付されることになりました。


安倍首相が、前例にとらわれず、大胆な政策を練り上げる」と言ったのが、3月17日。なんと、1ヶ月も紆余曲折した結果、やっと「全員に10万円」が決まりましたが、気になるのは、皆さんの手元にこのお金がいつ届くのかということでしょう。

 実は、ここに恐ろしい資料があります。

 「リーマンショック」の時に、国民1人当たり1万2000円の「定額給付金」が配られたのを覚えているでしょうか。これが、給付されることが決まってから、実際にどれくらい後に配り始めたのかを、総務省が調査した資料です。定額給付金は、自治体を経由して配られましたが、どの時期にどれくらいの自治体が実際におカネを市民に給付したのかを示しています。

 「定額給付」は、2008年度の第2次補正予算によって、総額2兆円規模で行われました。給付が決まったのが2008年10月30日。緊急経済対策の一環として施行されたのが翌年3月4日でした。

 その間4ヶ月もかかったのは自治体の準備期間が必要だったからです。しかも、驚くのはこの準備期間を経て3月上旬に実施できた自治体は、わずか7団体しかありませんでした。

 つまり、ほとんどの自治体は、準備期間が4ヶ月あったにもかかわらず、3月4日の施行には間に合わなかったということです。

 「リーマンショック」の時の手順は、自治体が申込書類を住民に発送し、この書類に、住民が必要事項を記入して送り返すというもの。この申請書類が最も多くの自治体で送られたのが3月下旬。

 この書類をもとに給付するのですが、給付をスタートする自治体が最も多かったのは4月下旬。つまり、役所から送られていた申請書に記入して、返してから1ヶ月後に給付というケースが最も多かったと推測されます。

 ただ、ここにあるのは給付を開始した時期ですが、開始してからすぐにみなさんの手に渡ったとは考えにくい。実際には、銀行の口座番号が間違っていり、名義や住所が違っているなどのトラブルが予想されるので、全員が受け取るまでには1ヶ月くらいはかかっていることでしょう。

 「リーマンショック」の起きた2008年には、すでに「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)」はできていました。「住基ネット」は、総務省が約1兆円かけてつくり、2003年には、住民は本台帳カードの交付も行われました。ところが、ほとんど使う人がおらず、「1兆円をドブに捨てた」と言われているシステムです。

 その後、「住基ネット」はマイナンバー制度に吸収され、主管が総務省から内閣府に移りました。

  「リーマンショック」の時には、総務省の号令のもと、全国の自治体が手足となり、「住基ネット」も使って必死で取り組んだのですが、結果は半年以上かかっています。
自治体も「寝耳に水」
 
 実は今回も、リーマンショックの時と同様に、実務は市区町村が担います。

 早いところだと、5月中旬には現金が振り込まれると言われていてますが、これは、ごく少人数の限られた自治体か、マイナンバーカードを持っている人。マイナンバーカードの普及率は16%ほどですから、大部分の方は、早くて6月、遅ければ7月ということになるでしょう。

 特別給付金の申請書(見本)

 しかも、当の自治体にとって今回の給付はまさに、寝耳に水。まったく準備が出来ていないようなのです。ある自治体の組長に聞くと「5月中なんて無理。他の新型コロナ対策で、職員も寝ずに仕事をしている状況で、窓口も大混在してるんですから……」とのことでした。

 安倍晋三首相は、国会で「5月のできるだけ早い時期に開始するよう準備を進めている」と言いました。ただ、東京23区など、ただでさえ様々な申請でごった返しているところは大変でしょう。前述のように、マイナンバーカードがあればスムーズに処理されますが、すでに役所の窓口には、マイナンバーカードを取得しようという人が殺到してして、こちらも2ヶ月待ちの状態になっています。

 大部分の人は書類申請なので、最終的にはマンパワーを動員してのチェックが必要になります。

 こうしたことを考えると、本当に麻生太郎副総理が言うように、5月末に間に合うのか、はなはだ疑問です。そもそも安倍首相は「5月末までに振り込む」とは一言も言っておらず、あくまで「5月末を目指す」ということですから、7月や8月になったとしても「嘘は言っていない」ということなのでしょう。「リーマンショック」の時のように、半年以上遅れるようなことだけは避け、迅速に進めてほしいものです。

 だとすればここで問題になるのが、新型コロナの影響ですでに「待った無し」になっている家計に対して、どんな救済を打てばいいのか。新型コロナウイルス対策としては様々なものが出てきていますが、どれも「遅くて少ない」というのが現状です。

  たとえば、休業させる社員の給料を事業者が建て替え、後から国にもらうという「雇用調整助成金制度」などは、申請初日の4月1日に、ハローワークに3時間待ちの長蛇の行列ができました。こんなことでは、並んでいるだけで感染が広まりそうです。


政府が今すぐできる対策
 
 私は、即効性のある「生活の下支え」が必要だと思います。

 1人10万円もらえるというのは、嬉しいですが、それがいつもらえるのかわからないなら、生活の底支えとして、最低限、生きていくのに必要な公共料金を、政府が負担するというのはどうでしょうか。公共料金の補助なら、列に並ばなくても、申請書を出さなくても、政府にその気があればできます。

 現状、政府からの要請で、大手の電力・ガス会社は、生活に不安のある人に対しては支払いを猶予することを決めています。しかし、政府が支払いを肩代わりするまでには至っていません。

 「電気」「ガス」「水道」は、ご承知のようにどんな家庭でも使います。日本中で、この3つの公共料金を払っていないご家庭というのは、ほとんどないでしょう。

 これが、最低限タダで使えるようにすれば、生活面での安心感は大きくなります。収入が激減してしまっても、公共料金が払えなくても、「電気」「ガス」「水道」が止められるという不安がなくなるからです。

  しかも、こうした料金は、それぞれの民間会社が徴収しているので、政府がそれぞれの会社に電話して、「政府が一定額まで負担するので、そのぶんは、まとめて政府に請求してください」と言えばいいだけ。各社は、安くした分をまとめて政府に請求すればいいだけだからです。ご家庭も、面倒ない続きなど一切なく、請求書を見て「あら、安くなっている!」と喜ぶのではないでしょうか。
 電気料金3000円を負担してくれれば…
 
 そもそも、「公共料金」は、公共の使命を負っているので、お金がなく、電気やガスの使用量が少なくせざるを得ないご家庭ほど安く設定されています。

 例えば、電気料金は「基本料金」と「使用量」で決まりますが、この「使用量」は3段階になっていて、第1段階は最初の120kWhまで、1kWhあたり19円88銭。これは国が保障すべき最低生活水準を考えて設定している料金です。

 第2段階は、121kWhから300kWhで、1kWhあたり26円48銭。これは、標準的な一般家庭の電力使用量に基づいた平均的な電力単価設定です。

 第3段階は、それ以上たくさん電力を使った場合で1kWhあたり30円57銭とかなり割高です(すべて東京電力の場合です)。

 ですから、電気の場合、基本料金と第一段階の料金合わせて3000円までを政府が肩代わりしてあげたら、多くのご家庭が助かるはずです。

 水道料金も地域によって価格差が大きいですが、東京都の場合、従量料金は1㎥から5㎥までは無料、6㎥から10㎥までは1㎥につき22円、11㎥から20㎥までは1㎥につき128円、21㎥から30㎥までは1㎥につき163円となっています(これに基本料金が加わります。基本料金は水道の「呼び径」のサイズによって変わりますが、大抵の家庭では2000円以内には収まっているはずです)。

 ですから、基本料金と使用料金合わせて2000円まで政府が補助すれば、生活に困っている人の負担は軽減されるのです。

 ガス料金は、上記の2つとは違ってもっと複雑な料金になっていますが、これも基本料金+使用料金で2000円まで補助する。これで、合計7000円を補助すれば、多くの方が料金の負担が減ったと感じられるでしょう。

  2018年の総務省家計調査では、4人家族の「電気代」「ガス代」「上下水道代」は、合計2万2000円ですが、7000円ならこのうちの約3分の1。これを政府に補助してもらえれば、助かる家庭はかなり多いのではないでしょうか。しかも、このやり方がいいのは、すべてのご家庭に恩恵があり、特に収入が少ないご家庭に大きな恩恵を与えることができることです。

2兆円あればできる
 
 ちなみに、全5000万世帯の「電気」「ガス」「水道」の料金を1世帯あたり月に7000円補助しても、政府の1ヶ月の負担額は約3500億円。新型コロナが下火になるまで6ヶ月間補助しても、2兆1000億円です。

 安倍総理は、「わが国の支援は世界で最も手厚い」」と言い、ハリボテの108兆円を自画自賛していますが、それならば、2兆1000億円くらいは、国民生活に安心感を与えるために出せるでしょう。

  なにより今、多くの国民が、我が国の新型コロナ対策は、「先進国で最も手薄い」と感じています。それを払拭して、「新型コロナが収まるまで、政府が皆さんの生活を守ります」と言って株を上げるのに、これほど良い政策はないと思うのですが、いかがでしょうか。






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「#検察庁法改正案に抗議します」で大炎上! 黒川検事長“定年延長”の深すぎる闇――またも暗躍する官邸官僚

2020年05月11日 10時45分19秒 | 社会のことなど

検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる「検察庁法改正案」に対し、抗議の声が高まっている。ツイッターでは9日から「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿が相次ぎ、5月10日午前には250万件を突破。俳優の井浦新氏や浅野忠信氏、音楽家の大友良英氏など、各界の著名人も同ハッシュタグで投稿し、事態は“大炎上”している。

【写真】この記事の写真を見る(3枚)

 この問題の本質は一体どこにあるのか――。「文藝春秋」5月号では、ノンフィクション作家・森功氏による緊迫のレポートを掲載。その一部を紹介した記事を再公開する。(初公開:2020年4月28日)

◆◆◆

 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる国家公務員法改正案が衆院本会議で審議入りした。これとあわせて、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案も審議される。

 安倍内閣はこれに先立つ1月31日、まだ二つの法改正が行われていないにもかかわらず、2月7日に63歳で退官予定だった東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を閣議決定した。安倍晋三首相の肝いりとみられる異例の人事には、どんな背景があるのだろうか。 官邸が描いたシナリオ
 
 東京高検の黒川弘務検事長は2月8日の誕生日をもって、63歳の定年を迎える予定だった。東京高検の検事長といえば、次期検事総長をほぼ手中に収めたといえる待機ポスト。このポストの人事は検察内の幹部人事にも大きな影響を与えるため、通常、ひと月前の年初にはその内示がある。ところが、松の内が明ける1月7日の初閣議前になっても、その動きが見られなかった。

 検察内部でさまざまな憶測が行き交うなか、黒川検事長の誕生日が日一日と迫り、このまま定年を迎えるとみる向きが増えていった。ところが1月31日、検察関係者はこの日の閣議決定に仰天することになる。

  黒川氏の半年間の勤務延長だった。退官するはずだった黒川氏は、この決定により8月7日まで東京高検検事長として勤務を続けることになった。この間の7月には、稲田伸夫検事総長が任期の2年を迎えるため、慣例通りなら黒川検事総長が誕生する。この異例中の異例ともいえる人事に安倍首相の強い意向があることは誰の目にも明らかだった。


安倍政権と検察の熾烈な攻防
 
 すぐさま野党が、検察庁法で守られてきた司法の独立をないがしろにした政治介入だ、と追及の火の手を上げた。対する安倍首相は、従来の法解釈を変更したと言い逃れる。この首相答弁に森雅子法相や、法務省・人事院の役人は焦り、答弁は二転三転していった。まるでモリカケ国会の再来だった。

 総理の意向で「政権の守護神」(黒川氏の異名)が検事総長に就任すれば、国民の目には、もはや検察は政権の軍門に降ったと映る。なぜ安倍首相は、検察組織の独立性に触れる禁じ手に手を出したのか。それには、首相官邸と法務検察との深くて長い因縁がある。

 実はこの異例の人事の裏で、例によって「官邸官僚」たちが暗躍していた。「文藝春秋」5月号及び「文藝春秋digital」に掲載した「 安倍首相vs検事総長の信念 」では、ノンフィクション作家の森功氏がこの人事の緊迫した裏側を徹底取材。官邸と検察の水面下での攻防に加え、安倍首相の意を受けた官邸官僚の実名を挙げ、検察側にかけ続けた「圧力」についても詳述している。

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。 @gekkan_bunshun  のフォローをお願いします。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200510-00037734-bunshun-pol

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トランプ氏が「新型コロナ発生源は武漢研究所」に執着する理由

2020年05月11日 10時01分41秒 | 国際情勢のことなど
トランプ氏が「新型コロナ発生源は武漢研究所」に執着する理由

新型コロナの発生源が武漢ウイルス研究所であるという決定的証拠を公表する!」

【画像】青地のマスク姿の習近平主席 
 米トランプ大統領の発言が物議を呼んでいる。新型コロナが中国・武漢にあるウイルス研究所から流出した疑惑については、かねて取り沙汰されてきたが、WHO(世界保健機関)が否定したこともあり、真偽は不明だった。
 
 果たして証拠とはどんな内容なのか。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
 
「参考になるのが、オーストラリアのサタデー・テレグラフ紙が5月2日にスッパ抜いた、米、英、豪など5か国の諜報機関が機密情報を共有する『ファイブ・アイズ』の文書です。同紙が入手した文書には、武漢ウイルス研究所での『第1号感染者』と噂された研究者が行方不明になっている、中国の国家衛生健康委員会(NHC)から関連の研究所にウイルスのサンプルなどを廃棄するよう指示が出された、など中国による数々の隠蔽工作が書かれています。しかし、すべて状況証拠でしかなく、これを見る限り米国が現時点で決定的な証拠を出すのは難しいのではないか。
 
 欧米の諜報機関の関係者に聞くと、『中国はかなり早い段階から隠蔽工作を行なっており、現場はかなり苦戦している』と言っていました。現在は関係者の買収や亡命の働きかけなどを必死に行なっているそうです」
 
 対する中国はどう応戦するのか。中国を取材し続ける経済ジャーナリストの浦上早苗氏は言う。
 
「WHO以外にも数々の専門家が否定していますし、中国人に言わせると、『証拠を出せるものなら出してみろ』ということでしょう。中国では、感染の発生当初はみな申し訳なさそうにしていましたが、世界各地に広がった今、『米国などの対策が甘かったのを棚に上げ、なぜ中国だけが悪者にされるんだ』という不満がたまっています。自分たちは徹底した封じ込めに成功した、という自負もあるのでしょう」
 
 トランプ大統領がこれにこだわる背景には、中国の報道官が「米軍が武漢に持ち込んだ」と主張したことに激怒している、米国での感染拡大の責任を中国に押しつけようとしているなどさまざまな憶測があるが、もう一つ事情があるという。
 
「トランプ大統領は1年前、中国IT大手ファーウェイの通信機器を『不正スパイウェア』だと告発しましたが、結局証拠は出ず、ヨーロッパでは再びファーウェイを採用する国が現われてきた。それが不満で、リベンジ戦の意識があるのではないか。
 
 一方の中国は、ファーウェイ幹部が私の取材に『ないものをないと証明するのは難しい』と語っていましたが、いまや中国全体が『あのときと同じ言いがかりじゃないか』と、対米感情が悪化しています」(同前)
 
 もはや引くに引けない両国。世界の安定のためには、外交自粛で両国トップが顔を合わせられない状況が続いたほうがいいのかもしれない。
 
※週刊ポスト2020年5月22・29日号

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新型コロナ騒動の裏で与党が暴走、矛盾だらけの「検察官の定年延長」に専門家もア然

2020年05月11日 08時45分42秒 | 社会のことなど
ニュースもワイドショーも新型コロナウイルス騒動で一色。この間に国会でほかに何が起きているのか、なかなか伝わってこないところだ。そんな状況のなか、衆議院では4月16日、検察官の定年を引き上げる『検察庁法改正案』の国会審議が始まった。これに対し、検察の独立性が危ぶまれる事態ではないかと懸念の声があがっている。問題点をあぶり出すべく、元検察官の郷原信郎氏と弁護士の倉持麟太郎氏に事情を聞いた。

【写真】たかまつなな、オンラインでの郷原氏と倉持氏への取材風景 検察の人事権を手中に収めたい官邸
 
 言わずもがな、検察は強大な権力を持っている。必要があれば総理大臣を逮捕することもできるし、死刑を求刑することもできる。1976年の『ロッキード事件』では、商社などから多額の賄賂(わいろ)を受け取っていた田中角栄元首相を逮捕し、最近ではカジノなどの総合型リゾート(IR)を巡る収賄罪で、衆議院議員の秋元司被告を追起訴した。起訴権限をほぼ独占しているため、政治の腐敗に切り込むことができるのだ。それゆえ、検察には高い「独立性」が常に求められている。

 だが、このたび、その独立性が脅かされる事態が発生した。事の発端は今年1月31日。事実上“検察庁ナンバー2”のポジションにある黒川弘務東京高検検事長について、政府が「国家公務員法の規定に基づき、勤務を6か月延長する」と閣議決定したことにある。

 検察官は検察庁法で定年が63歳と定められており、一般の国家公務員のような定年制度にはとらわれないことになっている。そして、これまで検察官の定年が延長された例は一度もなかった。それにも関わらず、本来であれば63歳の誕生日前日にあたる2月7日に定年退官する予定だった黒川氏の勤務が、半年後の8月7日まで延長されたのだ。

 弁護士の倉持麟太郎氏は、閣議決定までの流れをこう説明する。

「内閣には検察庁側から“次の(東京高検の)検事長は(現名古屋高検検事長の)林真琴さんでいきます”と報告があった。官邸側はこの検察庁サイドからの人事提案に従うのが慣例ですが、“お気に入り”である黒川氏をその後の人事で検事総長に据えたいため、提案を蹴った。そして、立ちはだかる定年の壁を壊すべく、黒川氏が誕生日を迎える前の1月31日に急きょ、従前の政府解釈に反する異例の閣議決定がなされたのです。

 安全保障法制のときの内閣法制局長官人事など、今までのルールを無視し、属人的な理由で人事権を行使することは安倍政権の“得意技”ですが、これでは“法の支配”ではなく“人の支配”になってしまいます。ただ、日本はそもそも“人の支配”に親和的な法体系で『慣例』や『不文律(明文化されていない法)』が多すぎるのも問題です。安倍政権は、これを見事に顕在化してくれました」

 なぜ、政府はそこまで黒川氏にこだわるのだろうか。かつて黒川氏と同期であった、元検察官で弁護士の郷原信郎氏は、

「黒川氏は法務省の官房長、次官を計7年以上も務めており、法務官僚としての経験がほとんど。今まで官邸ととても近い位置にいたことは間違いありません。ですから、政府の目的のひとつは“彼を検察のトップである検事総長にして、自分たちの思うがままにコントロールしたい”ということだと思われます。そうなれば、検察は安倍政権に強い影響力を及ぼされる存在になってしまい、与党の政治家を摘発しにくくなることなどが考えられる。非常に由々しき問題です」

 と話す。

 政府は『国家公務員法』を根拠に勤務延長を決めた。この法律では《職務の特殊性や特別の事情から、退職により公務に支障がある場合、1年未満なら引き続き勤務させることができる》といった旨を定めているため、この規定を適用しようとしたのだ。

 しかし、これは従来の政府の見解とは違う。'81年、国家公務員法の改定案に検察官の定年延長が盛り込まれた国会審議で、衆議院内閣委員会・人事院の斧誠之助事務総局任用局長が「検察官と大学教官については、現在すでに定年が定められている。今回の(改定)法案では、別に法律で定められている者を除き、ということになっているので、今回の定年制は適用されない」と答弁し、検察官には国家公務員法が適用されなかった。したがって、政府は自ら検察官の定年延長を否定しているのである。

  与党はこの答弁との矛盾を野党に指摘されると「解釈を変えた」と開き直った。しかも、解釈変更を「口頭で決済した」とし、検討の経緯をたどる記録は残されていない。本来、最低でも立法府による法改正でなければできない変更を、またもや行政の“解釈”で行ってしまった。

検察が暴走したら大惨事に
 
 倉持氏は「今回の件において、人事院には調整が事前に入っていなかったのではないか」と推測する。なぜなら、法務省を中心とした政府内でもこの問題に対し、認識が統一されていなかったからだ。

 2月10日の衆議院予算委員会で、森まさこ法務大臣が過去の政府見解を「承知していない」という驚きの答弁をし、「解釈の変更をしなくても検察官に国家公務員法は適用され、検事長の勤務延長は可能」との認識を示した。これは、上述した'81年の政府答弁に真っ向から反する。

 しかし、2月12日の衆議院予算委員会で、人事院の松尾恵美子給与局長は検察の定年制について「現在までも、特にそれについて議論はなかったので('81年のころと)同じ解釈を引き継いでいる」と明言。従来の政府と同じ見解を述べたのだ。ここで、法務省と人事院の見解が衝突・矛盾する。

 辻褄(つじつま)を無理やり合わせるため、安倍首相は2月13日の衆院本会議で、当時の政府見解を認めたうえで「今般、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と唐突に解釈変更を表明した。そして2月19日、松尾給与局長は衆院予算委員会で、2月12日の答弁内容を「つい言い間違えた」と撤回。彼女は答弁後、天を仰いだ。自らの良心にそむいてしまったことを悔いているようにも見えた。

 官僚にこのようなことをさせていいのか。“森友問題”において、本省からの指示で不本意な文書改ざんを迫られた近畿財務局職員の赤木俊夫さんが、心身を病んで自殺した。この問題に乗じて『忖度(他人の心を推し測ること)』という言葉が有名になった。時の政権に忖度して、公文書を改ざんしたり、政府答弁に合うように解釈をかえて、自分の発言を撤回することが官僚の仕事なのか。本来であれば、国民の生活を守ったり、国を成長させたりと、大変でもやりがいの大きな仕事であろうはずなのに。

 このまま法案が通り、実際に検察官の定年が延びるとともに、黒川氏がいずれ検事総長の座についてしまったらどうなるのか。郷原氏は、

「安倍首相は“森友問題”や“桜を見る会問題”について糾弾され窮地に追い込まれるたびに、検察当局の捜査や処分がないことを持ち出して、自身の政策に問題がないことを示す言い訳にしてきた。そして今回、検察を“強引な閣議決定による検事長定年延長”という違法なやり方で支配下に収めようとし、それが強い批判を浴びるや否や、検察庁法改正によって合法化しようとしています」

 と指摘し、こう続ける。

「桜を見る会に対する多くの“疑惑”はもちろん、河井案里参院議員の選挙中に、安倍首相の指示で自民党から1億5000万円もの多額な選挙資金が案里議員側に提供されていたとされる件や、有権者に香典を渡し公職選挙法違反の疑いを持たれた菅原元経産大臣についてなどを捜査する際、融通がきく黒川氏を据えたことで検察側にプレッシャーをかけ、捜査をうやむやにする恐れがあります」

 内閣と検察との“距離”が近くなることで、このように政権への厳しい監視の目が弱まる危険性があっては大問題だ。さらに、私たちの生活にも何か影響が出ることがあるのかと問うと、郷原氏は衝撃的な言葉を放った。

「戦前の治安維持法、学校で習いましたよね。当時、同法に基づいて、国や大勢(たいせい)に逆らう者は不当に投獄されました。さすがに現代の日本でそんなことは起こらないだろう、と思っている人が多いでしょうけれど、検察の権力がすべて政権のもとに集中すると、例えば法律をねじ曲げて、身柄を拘束するだなんて簡単にできでしまうんですよ」

 今はまだ実感がわかない。でも、政治に無関心でいるといつの間にか、自由が奪われるかもしれない。

「検察は独立しすぎても、強すぎてもいけません。検察の暴走は常にあり得ることだと考え、今後は例えば、第三者の選考委員会を設けて外部からの弁護士を検察のトップにおくなど、中立を守るためのさまざまな可能性を探っていかねばなりません」(郷原氏)

 倉持氏も、制度の“抜け穴”の問題性を指摘する。

「今回の“人事”のような、直ちに誰かの権利侵害が認められないケースにおける違法性を直接、争う制度がないことも問題です。ただ“安倍批判”に終始するのではなく、憲法裁判所の創設など、法の支配を貫徹する抜本的な制度改革についても論じていかなければなりません。与野党どちらからもこのような制度論への声が上がらないことが、政治のもうひとつの問題でしょう」

  検察庁法では「検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行う」と定められている。しかし、これまでは検察の独立性を担保するという観点から、前任の検事総長が後任を決めることが慣例とされ、官邸が検察の人事に介入することはなかった。それがいま、崩れようとしている。新型コロナ騒動の裏で、危険な法案が出され、議論にもならないことに、恐怖とやるせなさを覚えた。強い権力に対しては、どのように歯止めをかける制度が必要なのか。司法の人事が政治に利用されるようなことなど、あってはいけないはずだ。具体策を論じるべきだろう。



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