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特例承認の>コロナ薬・レムデシビル、じつは「過剰な期待」をしないほうがいいワケ

2020年05月10日 18時15分03秒 | 医療のこと

レムデシビルで「死者が大きく減る」は誤解…!?


 
 5月5日現在、世界保健機関(WHO)が発表した全世界での感染者約352万人、死者約24万人まで達した新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下新型コロナ)。

【写真】コロナ感染、日本人が見落としがちな「手洗い」の意外な落とし穴

 これまでこの感染症に対し正式に製造承認を受けた治療薬もワクチンもなく、医療現場はほぼ徒手空拳状態だ。

 ところが米食品医薬品局(FDA)が5月1日、抗ウイルス薬の開発で名高い米製薬企業ギリアド・サイエンシズが開発中のレムデシビルを新型コロナの治療薬として緊急時使用を許可。

 これを受け、日本でも緊急対応が必要な際に他国で販売されている薬を日本国内で臨床試験なしで承認する「特例承認制度」をレムデシビルに適用できるようにする政令改正を持ち回り閣議で決定。5月7日には特例承認に踏み切った。

 特例承認制度の適応は2010年の新型インフルエンザワクチン以来、史上2度目。米FDAの緊急時使用許可は新薬としての正式な承認ではなく、今後の正式な臨床試験の結果提出までの暫定措置であるため、特例承認とは言え、レムデシビルの正式な製造販売承認は日本が世界初となる。

 こうした動きにこれまでの打つ手なし状態から脱却可能との期待も一部では高まっている。しかし、これまで判明しているレムデシビルの試験データを見る限り、治療に一定のメリットをもたらすとは言えるものの、過剰な期待は禁物だと言える。

  「緊急に認可する新薬なのだから新型コロナの死者が大きく減るほど効くのだろう」と思うのは大きな誤解である。
     
photo by GettyImages        
 


「執行猶予期間」を与える薬
 
 そもそもレムデシビルはアフリカで時折流行し、最大で致死率70%を超えるエボラ出血熱の原因となっているエボラウイルスに効果を示す治療薬としてギリアド社と米陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)が共同開発した化合物。

 このため2016年からエボラ出血熱の治療薬として臨床試験が進行していた。

 しかし、エボラウイルスに対する治療薬として開発中だったものが、なぜ新型コロナ向けとなったのか? それはこの2つのウイルスに性質上の類似性があるからだ。

 ウイルスはヒトに感染すると、ヒトの細胞内に自分の遺伝情報を送り込み、これを複製して増殖、つまりウイルスの数を増やしていく。ウイルスはこの遺伝情報をデオキシリボ核酸(DNA)あるいはリボ核酸(RNA)の形で保有し、前者はDNAウイルス、後者はRNAウイルスと呼ぶ。

 エボラウイルスはRNAウイルスで、遺伝情報のRNAを複製して増殖し、レムデシビルはこの複製にストップをかける。そして今回の新型コロナウイルスもエボラウイルスと同じRNAウイルスで、試験管レベルの実験では新型コロナウイルスに有効性が示されたため、ヒトに投与しても効くのではないかと考えられたのが開発経緯である。

 ちなみにレムデシビルはエボラウイルス、新型コロナウイルスのいずれも直接殺すわけではなく、ウイルスの数が増えないようにする薬だ。そのようにしている間にヒトの免疫機能が復活して残るウイルスを排除する、いわば個々人の免疫回復までの執行猶予期間を与える薬である。

  レムデシビル以外でも日本の富士フイルム富山化学が有している新型インフルエンザ治療薬・アビガンを新型コロナにも応用する試みが進行中だが、これもインフルエンザウイルスが新型コロナと同じRNAウイルスに分類され、アビガンがレムデシビルと同じようにRNAの複製にストップをかける仕組みだからだ。

感染症研究所の「分析結果」を見ると…
 
 さてこのレムデシビルについては、アメリカ国立衛生学研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導し、世界68施設の重症新型コロナウイルス感染症患者1063人を登録した臨床試験の予備的解析結果が4月29日に発表されている。

 この臨床試験は登録患者を無作為に2群にわけ、一方にレムデシビル、もう一方の群には偽薬(プラセボ、おそらく生理食塩水)を最大10日間静脈注射し、主に患者の回復(退院あるいは通常の日常生活に戻れる)までの期間を評価したもの。

 ちなみにこの臨床試験は二重盲検という形式で行われ、試験終了までは患者はおろか投与している医師も誰にレムデシビル、誰に偽薬が投与されているかは分からない。

 知っているのはこの臨床試験のコントローラーと呼ばれる立場の人のみで、医師は臨床試験期間中に患者の症状の変化を淡々と記録する。予め誰にどちらが投与されているかが分かると、医師や患者のバイアスが評価に入り込む可能性があるため、これを防ぐ厳格な臨床試験のやり方である。

 4月29日に発表された結果では、回復までの期間はレムデシビル群が11日、偽薬群が15日、患者の死亡率はレムデシビル群が8.0%、偽薬群が11.6%となった。

 いずれも数字だけをパッと見ればレムデシビルの方が良好な結果に見える。

  しかし問題はこの解釈だ。結論から言うと、レムデシビルは回復までの期間を31%短縮させ、この点では意義があるが、死亡率は低下させないとなる。どういうことか? 
     
photo by iStock        
 


医学専門誌で報告された「中身」
 
 こうした臨床試験の結果を評価する時は、統計学で2つの群の差が偶然で起きた可能性があるのか、偶然ではない差、つまりこの場合で言えば患者に投与されているのがレムデシビルなのかプラセボなのかの違いによって生じたのかを判定する。

 ちなみに統計学で2つの群で生じた差が単なる偶然のものではないと認定された場合は「統計学的に有意差が認められた」と表現される。

 そしてこの臨床試験の統計学上の検討では、「回復までの期間」については統計学的な有意差が認められ、レムデシビル群の方が短いことが確定したものの、「死亡率」は統計学的に有意差がなかった、つまり死亡率はレムデシビルと偽薬では変わらないと結論付けられたのである。

 実はこのアメリカからの報告が発表された同じ日に中国の国立呼吸器疾患臨床研究センターのグループが237人の重症新型コロナ患者を対象に同じ手法でレムデシビルと偽薬の効果を比較した研究結果を著名な医学専門誌「ランセット」に報告している。これでは偽薬とレムデシビルの症状改善効果に差はないという結果になった。

 NIAIDの「回復までの期間は短くなるのに、死亡率は低下させない」との結論に頭が混乱する人もいるかもしれない。

  敢えて平たく表現するなら、「重症の中でもより治りそうな人が治るまでの期間は短くするが、死の危険に瀕した患者を死から救うほどの効果はないだろう」ということだ。

医療崩壊」を防ぐ効果アリ! 
 それならばこの薬に意味はないのではないか、と考える人もいるだろうが、もちろん無意味とは言えない。

 新型コロナは1月28日付で感染症法に基づく「指定感染症」となり、法令上、感染者は原則全員が入院・隔離を求められる。

 ところが想定以上に感染者が急増した結果、国が定める各都道府県の感染症指定医療機関のベッド(病床)だけでは対応不能となり、現在は自治体ごとに新たな対応ベッドの整備が進められている。しかし、それでもなお不足に陥る危険性をはらんでいる。

 NHKの調査によると、4月28日時点で各都道府県が用意した新型コロナ対応ベッドの占有率が50%以上となったのは14都道府県に上る。

 それも厚生労働省が4月上旬に重症者に対する治療に支障が出る恐れがある場合、無症状・軽症の患者に関し、自治体が用意する宿泊施設や自宅での療養を認めると方針転換した結果、かろうじてこの程度に収まっているのが現状だ。

 現在、前述のNHK調査によると、日本国内の新型コロナ対応ベッドの合計は約1万2500床。

 新型コロナでは感染者の約2割が入院が必要な重症に至ると言われる。日本より人口の少ない英仏独伊の4か国が感染者数10万人以上に達しているなか、日本が同様の状況になれば重症者は単純計算で約2万人になり、現在の新型コロナ対応病床のキャパシティーをオーバーしてしまう。

 そうなってしまえば他の病気の患者のための入院ベッドまでが不足し、医療機能全体に大きな影響が及ぶ。

  その意味で入院期間短縮につながり、結果として病院のベッド不足に歯止めとなる可能性を持つレムデシビルの存在意義はあるということだ。
     
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レムデシビルの「副作用」「供給量」
 
 現在レムデシビルの使用が想定されているのは、人工呼吸器の装着が必要になるような重症患者のみだ。一部では軽症者でも使えるようにすべきとの意見もあるようだが非現実的だ。

 その理由は主に3つある。

 第一にそもそも新型コロナ感染者の8割は特別な治療をしなくとも回復する無症状者・軽症者であり、そこに新薬を投与するのは経済的に無駄が多い。

 第二にどのような薬でも副作用は避けられず、もちろんレムデシビルにも副作用がある。現在報告されているのは吐き気や便秘、急性呼吸不全などがある。特に治療が必要ではない無症状者・軽症者に投与してこのような副作用に見舞われれば、医学的に問題である。

 第三に供給量に限界があるということだ。製造元のギリアド社の説明では、製造能力向上に努めたうえで2020年10月までに50万人分の生産量が目標。

 ただ、冒頭のように全世界の感染者が350万人超では、レムデシビル投与の対象となる約2割の重症者は約70万人いることになる。

  現状は重症者ですら供給が完全には追い付かない可能性があるにもかかわらず、軽症者も対象にすることは物理的にも不可能である。日本では当面、国が供給を管理し、各医療機関に配分を行う予定と言われている。

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「今まで通り」の感染防止対策が必要
 
 繰り返しになるが、このようなことからレムデシビルが登場しても劇的に新型コロナをめぐる現状は変わることはないと肝に銘じておこう。

 特に感染した人の死亡率低下という点では望み薄と言っても過言ではない。

 結局はレムデシビルが登場しても現状の感染を避ける対策を継続することが何よりの得策である。

  つまり▽不要不急の外出は控える▽外出時はソーシャル・ディスタンスの確保を心掛ける▽頻繁な手洗いに努める、を徹底して継続することだ。



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間もなく日没ですね!

2020年05月10日 18時04分27秒 | いろいろな出来事
日が長くなりますね🍀
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「どこまで国民をばかにする」検察官定年延長法案に抗議ツイート250万超

2020年05月10日 16時47分57秒 | いろいろな出来事
「どこまで国民をばかにする」検察官定年延長法案に抗議ツイート250万超(毎日新聞) 「#検察庁法改正案に抗議します」。検察…|dメニューニュース(NTTドコモ)

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20200510k0000m040067000c?fm=topics
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初夏の陽気です🍀

2020年05月10日 13時50分06秒 | いろいろな出来事
日光と高温多湿に弱い新型コロナウイルスに打ち勝つ転機になるかも☀
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シロツメクサです

2020年05月10日 13時25分34秒 | いろいろな出来事
暑くなりますね🍀
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