いっそ9月入学に」 休校長期化で高3焦り 受験対策集中期間短く
新型コロナウイルスの感染拡大で、来春の大学受験を控える高校3年生に焦りが広がっている。例年は多くの高校がカリキュラムを早めに終えて残り期間を受験対策に充てるが、今年は臨時休校によるブランクのため受験対策に集中できる期間が最大数カ月短くなる恐れがあるからだ。高3生からは「浪人生より不利。いっそ9月入学制にしてほしい」と悲鳴も上がる。
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◇オンライン授業の取り組みに差
「今のままでは目標すら立てられない」。熊本市の県立高3年の男子生徒(17)はため息をついた。関西の大学を目指しているが5月末まで休校。例年は3年の2学期中にカリキュラムが終わって秋ごろから受験対策に移るが、今年はずれ込む可能性が高い。「3年で習う倫理や政治・経済は始まってもいない。カリキュラムの心配なく受験対策できる浪人生と比べて今年はいつも以上に不公平だ」と漏らす。
休校が長引く中、一部の高校ではオンライン学習を始めた学校もあるが、生徒全員がスマートフォンやタブレットを持っているのはまれで、取り組みには差が出ている。
長崎市の高校3年、中村真子(まこ)さん(17)が通う県立校では、オンライン学習をやっていない。自宅で参考書を頼りに勉強してきたが「疑問点を解決できず、受験勉強とはいえない」と休校中の足踏みに焦りをにじませる。学校は11日に再開するが、授業がどう進むのか分からず「休校していた2カ月の遅れを今から取り戻せるのか」と不安を隠せない。
現場の教員からも切実な声が上がる。熊本の県立高に勤める男性教諭の学校は例年、早ければ11月に3年生のカリキュラムを終えるが、2カ月以上の休校を挟む今年は来年1月の大学入学共通テスト(旧大学入試センター試験)に間に合わせるため、かなりピッチを上げなければならない。教諭は「夏休み返上も覚悟している」と話すが、授業が詰め込み式になって生徒に負担がかかるのではとの懸念も抱いている。
◇課外活動や推薦での進学、就職活動…見通したたず
感染拡大に伴う高3生の悩みは、受験だけではない。
長崎市の中村さんは、被爆75年の今年、有志の生徒と被爆者インタビューをはじめとする平和活動を計画していたが、感染が終息するまで高齢の被爆者に会うのは難しく、実現のめどは立っていない。「大切な1年になるはずだったのに、何もかも中止になったら悔しさしか残らない」と唇をかむ。
北九州市の私立豊国学園高サッカー部に所属する池野魁人さん(17)は、サッカー推薦での進学を希望していた。だが、例年この時期にある各大学の選考会が実施されず、アピールの場になるはずだった高校総体も中止に。一般入試に切り替えることも考えているが「学校が始まらないのでどう対策を立てればいいか分からない」と頭を抱える。
不安なのは就職志望の3年生も同様だ。北九州市の私立高の男子生徒(17)は「この状況が続けば就職先も減るのでは」と心配そうに話す。感染拡大を防ぐため多くの企業がインターネットを使った「ウェブ採用試験」を導入しているが、学校で対策の指導を受けられずにいる。「この先どうなるのか何も分からない」。就職を諦めて進学することも考えている。【城島勇人、宮城裕也、田中韻】
◇九州・山口各県の県立校休校
福岡 31日まで
佐賀 13日まで
長崎 10日まで
熊本 31日まで
大分 10日まで
宮崎 24日まで
鹿児島 10日まで
沖縄 20日まで
山口 24日まで