クレジットカードで納税」は損? ポイントは貯まるけど…
どうせ税金を払うのなら、少しでも負担を減らしたいのが人情というもの。そこで注目したいのが「クレジットカード納付」だ。税金をクレジットカードで納めると、ポイント還元を受けられるかもしれない。ただし、元東京国税局職員であり、『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』の著者である小林義崇氏は、「決済手数料を加味して考えないと、かえって損をする可能性もある」と指摘する。納税の注意点について小林氏が解説する。(以下、寄稿)
税金の納め方は「6種類」もある
確定申告に関してよくある勘違いに、「納税の案内が税務署から送られてくる」というものがあります。私が東京国税局の職員として確定申告の案内をしていた頃、このような勘違いをしている方が少なからずいました。
しかしながら、税務署から納税の案内が来るということはありません。毎年3月15日(休日の場合は翌日)が確定申告と納税の期限のため、この日までに、“自ら”申告をして、納税もするというのが基本的なルールです。税務署から納税の案内が来るとしたら、それは期限を過ぎた後に督促状が送られるケースなので、自分で期限内に納税を済ませるようにしましょう。
このとき、納税の方法としていくつかの選択肢が用意されていることについて触れたいと思います。以前は、納税をするためには税務署か金融機関に出向き、紙の納付書に必要事項を記載して現金で納税する必要がありました。しかし、近年は納税方法が以下のとおり複数用意され、便利になっています。
1 現金納付 ⇒税務署や金融機関で現金納付
2 振替納税 ⇒指定口座から引き落とし
3 コンビニ払い ⇒コンビニで現金納付
4 インターネットバンキング払い ⇒WebサイトやATMから送金
5 ダイレクト納付 ⇒e-Tax(国税電子申告・納税システム)により電子納付
6 クレジットカード納付 ⇒クレジットカードを通じて口座から引き落とし
このうち、1~5に関しては、実質的な納税額に影響はありません。たとえば令和元年分の所得税が100万円なら、負担額は100万円です。
唯一異なるのが、
6のクレジットカード納付。なぜなら、クレジットカード納付をすると、クレジットカードのポイント還元を受けられる可能性があるからです。
クレジットカード納付は「決済手数料」に注意
クレジットカード納付が始まったのは2017年のことです。当時、私はフリーライターとして独立したばかりで確定申告をする必要があったため、クレジットカード納付をしてポイント還元を受けようと考えました。しかしながら、検討した結果、クレジットカード納付は使いませんでした。あるデメリットに気づいたからです。
まず、クレジットカード納付のメリットから整理しましょう。これは先ほど述べたようにポイントがつく点です。24時間いつでも税金を納税できる点や、分割払いにできる点もメリットと言えるでしょう。
次にデメリットについて。
最大のデメリットはクレジットカード納付をすると、「決済手数料」がかかるということです。決済手数料の金額は、納付税額1万円あたり76円(税抜)です。消費税10%を加味すると、納税額に対する決済手数料の割合は約0.83%となります。
前述した、現金納付や振替納税などを行った場合、決済手数料はかかりませんから、これはクレジットカード納付だけのデメリットと言えます。ですから、たとえポイント還元を受けられたとしても、かえって負担額が大きくなるケースが考えられるのです。
一般的なクレジットカードのポイント還元は0.5%程度。なかには還元率が1%を超えるケースもありますが、基本的にはクレジットカード納付から得られるポイントよりも、決済手数料のほうが高くなる計算です。
このように考えると、クレジットカード納付は確実に得する納税方法ではないことがわかります。もしクレジットカード納付を利用するのであれば、事前にクレジットカードのポイント還元率を確認して、確実に決済手数料よりもポイント還元が上回ることを確認してからにしておきたいところです。
また、国税庁のホームページでは、「ポイントについてはカード会社の会員規約に基づきますので、カード裏面に記載されているカード会社へお問い合わせください」との注意書きが記載されています。クレジットカード納付を行って、決済手数料を取られた上にポイント還元も受けられないのであれば、確実に損ですから注意してください。いずれにせよ、3月15日の期限までに、余裕をもって納税方法を検討し、準備しておきましょう。