ブルームバーグ): トランプ米大統領は今月20日の任期満了が迫る中で、自身が恩赦を希望する広範なリストを準備している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。恩赦リストにはホワイトハウス高官や家族などが含まれ、トランプ氏自身もこれに入る可能性があるという。
トランプ氏は大統領職を丸1日務める最終日の19日に一連の恩赦を発表することを望んでおり、上級顧問や大統領法律顧問のオフィスが同氏の考えを検証していると関係者が話した。
トランプ氏がこの数週間にわたり最側近と協議を進める中で、法務チームが直面し得る最大の問題は、大統領が自身に恩赦を与える権限を持っているかどうかだと関係者は指摘。トランプ大統領は権限があると主張したことはあるが、法的に異論もある問題であり、これを試みた大統領はこれまでない。
自身に恩赦を与えた場合、政治的には大きくマイナスに働き、再び大統領を目指す上で足かせになりかねない。自らへの恩赦は違法行為で訴追される恐れがあると考えていたことを認めたのも同然だと、対立候補が指摘してくるのは必至だ。
予防的恩赦が協議されている訴追されていないホワイトハウス高官は、メドウズ大統領首席補佐官やスティーブン・ミラー上級顧問、人事担当責任者のジョン・マッケンティー氏、ソーシャルメディア担当ディレクターを務めるダン・スカビノ氏ら。関係者によると、ホワイトハウスに職務を持つ大統領の長女イバンカ・トランプ氏と夫のジャレッド・クシュナー氏も検討の対象になっている。
予防的恩赦はウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン氏が大統領を辞任した1カ月後に後任のフォード大統領が与えた例はあるが、まれな措置だ。
ホワイトハウスの報道官にコメントを求めたが、今のところ返答はない。恩赦案の一部はホワイトハウス内で必要な法的手順を進んでいるが、大統領本人への恩赦案はそれほど進展しておらず、今のところ議論の段階にとどまっていると関係者は話した。
トランプ氏と政治的に対立する勢力は訴追に値し得る問題として、連邦所得税の申告からポルノ女優への口止め料の支払い、トランプ一族が所有する施設利用を巡る就任式実行委員会の支出に至るまで数多く挙げている。自身に恩赦を与えれば、こうした問題での訴追の可能性から自らを守れる。
トランプ氏の恩赦権限は連邦犯罪までにとどまっており、州レベルの法的問題があった場合に自身や家族を守れるわけではない。
原題:Trump Prepares Pardon List for Aides and Kin, and Maybe Himself(抜粋)
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