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脳へ転移」した「がん」を治療する方法とは、金沢大の研究

2024年02月27日 23時03分11秒 | 医学と生物学の研究のこと

「脳へ転移」した「がん」を治療する方法とは、金沢大の研究(石田雅彦) - エキスパート - Yahoo!ニュース 




「脳へ転移」した「がん」を治療する方法とは、金沢大の研究


石田雅彦サイエンスライター、編集者
2/27(火) 13:04
(提供:イメージマート)
 がんは転移することがあるが、特に肺がんは脳へ転移することが多い。金沢大学の研究グループが、肺がんが脳へ転移するメカニズムを解明し、治療法などの開発につながる成果を発表した。


脳へ転移することが多い肺がん
 肺がんは診断時に脳への転移が見つかることが多く、脳へ転移したケースの約半数が肺がんと考えられている(※1)。また、肺がん以外では、前立腺がん、乳がん、腎臓がん、黒色腫(メラノーマ)などが脳へ転移することが多く、がんの治療法が進化発達し、生存率が長くなるにつれて脳転移の発生率が増加している。


 がんが脳へ転移すると、認知、生活の質(QOL)などに悪影響をおよぼし、生存率の急激な低下を引き起こす。化学療法に使われる抗がん剤は血液脳関門を通過しずらいため、脳へ転移したがんに対しては外科的な手術や放射線治療が行われることが多いが、これらの治療には手術の難しさや副作用などの危険性があり、患者に大きな負担を強いる(※2)。


 だが、なぜ肺がんが脳へ転移しやすいのか、そのメカニズムについてはまだよくわかっていなかった。そうした状況で、金沢大学がん進展制御研究所の石橋公二朗助教、平田英周准教授、金沢大学医薬保健研究域医学系/金沢大学附属病院脳神経外科の中田光俊教授、金沢大学医薬保健研究域医学系/金沢大学附属病院呼吸器内科の矢野聖二教授らを中心とする共同研究グループは、肺がんが脳に転移するために必要なタンパク質を同定し、脳転移のメカニズムを解明することに成功し、その成果を学術誌で発表した(※3)。


 なぜ、脳転移のメカニズムを知ることが難しかったのかというと、研究に使用するグリア細胞(脳を構成する細胞、※4)の特に免疫細胞であるミクログリアを安定的に培養する技術に限界があり、がん細胞とグリア細胞の間でどのようなやり取りが行われ、どのような物質が転移に関与するのかを調べにくかったからだという。


肺がん細胞はどうやって増殖するのか
 脳には白血球が入らないため、グリア細胞の一種であるミクログリアが脳内での免疫機能の役割を担っている(※5)。同研究グループは、MGS(Mixed-glial culture on/in soft-substrate)法というグリア細胞の培養法を開発、がん細胞とグリア細胞との相互作用を長期間(数ヶ月以上)、安定して解析することができるようにした。MGS法とは、極めて柔らかい培地でグリア細胞を培養する方法だという。


 この手法を用いることで、がん細胞を死滅させ、腫瘍細胞に対する強い食作用(貪食能)を持つミクログリアが脳内にあること、脳転移したがんに対し、このミクログリアの制御が重要だということがわかった。


 また、脳転移したがん細胞は、このミクログリアによるがん細胞の細胞死(ネクローシス)誘導を回避するシステム(チェックポイント)を持ち、この攻撃回避はグリア細胞の一種であるアストロサイト(突起を伸ばして網目状に脳を支えている細胞)を利用していることもわかったという。


 そして同研究グループは、肺がんのがん細胞が脳へ転移する際に重要な役割をになうタンパク質(mGluR1)を同定した。このタンパク質(mGluR1)は、シナプス伝達に関係していることがわかっていたが、本来、肺がん細胞がこのタンパク質を作り出すことはない。


 だが、脳へ転移した肺がん細胞は、アストロサイトと相互作用することでこのタンパク質(mGluR1)を作り出せるようになる。アストロサイトから分泌される物質(Wnt-5a)によって、肺がん細胞がこのタンパク質(mGluR1)を作り出すのだという。


 そして、肺がん細胞は、このタンパク質(mGluR1)を利用し、このタンパク質(mGluR1)が細胞の増殖に重要な役割を果たす受容体(EGFR、上皮成長因子受容体)と脳内の神経伝達物質(グルタミン酸)を介して結合、活性化させることで肺がん細胞は脳の中で増えていくことができるようになることがわかった。


肺がん細胞が増殖するメカニズム。肺がん細胞はアストロサイトを利用し、細胞増殖できるようなメカニズム(mGluR1の発現、EGFRとの結合、細胞増殖の機能)を獲得する。金沢大学のリリースより。

 さらに、オシメルチニブという分子標的薬は、この受容体(EGFR)を阻害し、肺がん細胞の増殖を抑制できる有効な治療薬だが、治療中に耐性ができてしまい、治療ができなくなることがある。同研究グループは、このタンパク質(mGluR1)を阻害することで、肺がん細胞が脳へ転移して増殖することを抑制することも明らかにしたという。


 また、このタンパク質(mGluR1)を阻害すると脳の神経伝達などに悪影響をおよぼす危険性が考えられるが、同研究グループは肺がん細胞の生存や増殖にはこのタンパク質(mGluR1)と受容体EGFRの関係だけが影響し、脳への悪影響はなかったとしている。


 肺がん以外の乳がん、黒色腫(メラノーマ)、腎臓がんなどにも脳への転移に同じようなメカニズムがあり、同研究グループは今後、脳へ転移したがん全般の治療に役立つことのできる治療法の開発につなげていきたいとしている。


※1:Daniel N. Cagney, et al., "Incidence and prognosis of patients with brain metastases at diagnosis of systemic malignancy: a population-based study" Neuro-Oncology, Vol.19, Issue11, 1511-1521, 30, May, 2017
※2-1:Peter E. Fecci, et al., "The Evolving Modern Management of Brain Metastasis" CLINICAL CANCER RESEARCH, Vol.25, Issue22, 15, November, 2019
※2-2:John H. Suh, et al., "Current approaches to the management of brain metastases" nature reviews clinical oncology, 17, 279-299, 20, February, 2020
※3:Kojiro Ishibashi, et al., "Astrocyte-induced mGluR1 activates human lung cancer brain metastasis via glutamate-dependent stabilization of EGFR" Development Cell, doi.org/10.1016/j.devcel.2024.01.010, 2, February, 2024
※4:グリア細胞:神経細胞(ニューロン)の活動を支える細胞。脳への栄養供給や廃棄物の処理、神経細胞の保護や修復などを行っている。
※5:Wolfgang J. Streit, Carol A. Kincaid-Colton, "The Brain's Immune System" Scientific American, Vol.273, No.5, November, 1995





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ルフィ強盗団」のルーツ「ススキノ闇社会」 カタギがヤクザの領域に飛び込んでくる善と悪のグレー・ゾーン

2024年02月27日 22時03分34秒 | 事件と事故


ルフィ強盗団」のルーツ「ススキノ闇社会」 カタギがヤクザの領域に飛び込んでくる善と悪のグレー・ゾーン


2/20(月) 7:15配信

ススキノ界隈の「闇」の全容にせまる(時事通信フォト)
 フィリピンから容疑者4人が強制送還され、捜査が進む「ルフィ強盗団」事件。その核心に迫るためには、彼らを生んだルーツとなる場所を深掘りしなければならない。フリーライター・鈴木智彦がレポートする。 


【写真5枚】Tシャツの両袖から和彫りが出る藤田聖也容疑者。他、今村磨人容疑者ら、4人の容疑者


 * * * 

「盗品のロレックスを買わないか、という話が回ってきたんだ。あの強盗でぶんどった品だ。買わないでよかった」 

 北海道の暴力団関係者に売買を持ちかけたのはナマコの密漁団だったという。話の出元を辿ると密漁事犯で逮捕歴のある暴力団員だったそうだ。

  暴力団は悪の恒星である。その周囲を覚醒剤密売団、車両窃盗団、オレオレ詐欺グループ、密漁団、ぼったくりバー業者、悪質キャッチ集団等々、暴力団の引力に引き寄せられた悪人たちが周回している。ワルどもは暴力団を媒介にネットワークを形成している。

 「保証書なんかがないんで、10分の1の値段だったな。警視庁の刑事もこの件について事情を聞きに来た。帰り際、やんわりと『道警さんには言わないでください』と言うので、『話が抜けるもんな』と鎌かけたら顔をしかめていた。蚊帳の外に置かれた道警は、必死になって関係者を逮捕しているが、ピリつくのはこれからだ。

(特定危険指定暴力団の)工藤會壊滅作戦を実行した時のように、3月の人事異動で全国のうるさ型が配置されるらしい。警察の北海道シフトというわけだ」 

 ならば札幌の歓楽街であるススキノの猥雑も、ようやく浄化に向かうのかもしれない。 


 ススキノはいまだゾーニング(区分け)のないネオン街だ。ひとつのビルで欲望のすべてを消化できるという特色がある。たらふくうまい飯を食って、しこたま酔っ払い、ソープランドでめいっぱい放出する。 

 ゾーニングされていないので、ススキノは街全体が善と悪との汽水域、グレー・ゾーンになっている。令和の現在でも、通常の都市ならありえない手軽さで、カタギがヤクザの領域に飛び込んでくる。実際、ススキノなら堕ちる意識を持たずに裏街道に入り込めるはずだ。この汽水域は、フィリピンの刑務所から連続強盗事件を指揮した極悪犯罪者を生み出すバックボーンになったろう。


  裏街道は、案外、居心地がいい。暴力団も困窮者に寄り添い、時に救いの手を差し伸べたりする。口が裂けても暴力団を義侠などとは言いたくないが、土壇場に追い詰められた際は助けてくれる人がいい人だ。救いの手が暴力団や犯罪者のものか思い悩む余裕などない。


2/20(月) 7:15配信

 私もその手を掴んだことがある。 

 大学の入学金と授業料を貯めるため、私は高校3年間、新聞配達などのアルバイトをしていた。しかし、どうしても20万円弱足りない。求人雑誌を買うと巻末にススキノの求人が特集されており、南米を想起させる店名のキャバレーを見つけた。すべてをあけすけに話すと即日採用された。 

 手渡された分厚いドカジャンを着て、その夜からススキノの路上で客引きをした。酔っ払いが暴れると、ヤクザっぽい男たちがなだれ込んできて、トラブルは一瞬で片付けられた。一度、ヤクザたちのあとに続いて、キャバレーに飛び込んだことがあった。真っ赤なドレスを着たホステスの二の腕が、返り血で真っ赤に染まっていた。 

 私は無事20万円を稼ぎ、最後の夜、兄貴分らしいヤクザに挨拶をした。 「東京でそのジャンパーじゃ暑いだろ」 

 兄貴分は私に3万円をくれた。私はカタギの一線を越境していた。幸いセピア色のほろ苦い思い出となったが、ひょんな拍子に犯罪者の一味となっていた可能性はある。


ヤメ暴力団の「破門会」


 グレー・ゾーンであるススキノには「半グレ」という言葉が生まれる前からヤクザでもカタギでもない集団が存在した。かつて暴力団を破門・絶縁になった人間たちがグループを作り、アウトロー系雑誌に登場したり、ビデオ化された映像がレンタルビデオ店に並んでいたこともあった。この破門者集団は、当時、山口組内で大問題となり、結局は札幌の暴力団によって解散させられ、詫び状を書かされた。

「『破門会』といったかな。あいつらはヤクザの建前にも縛られないので、金になればシノギはなんでもありだった。ちょうどルフィたちと同年代」(札幌の広域暴力団幹部) 

 連続強盗事件でフィリピンから強制送還され逮捕された今村磨人容疑者、渡辺優樹容疑者、小島智信容疑者らが暴力団関係者だったというが、藤田聖也容疑者もまた函館の六代目山口組三次団体幹部の舎弟だったとされる。ただし彼はその後、半グレグループのメンバーになったらしい。 

「函館の暴力団幹部が組織したギャング団に所属してた。この幹部は第三者に指摘されるまで、配下に藤田がいたと気づかなかったらしい。暴走族を含め100人以上いたので分からなかったようだ。まさか函館からこんなヤバいヤツが出るなんて……と驚いていたと聞く」(札幌の暴力団幹部) 

 警察は暴力団寄りのアウトロー系半グレ集団のみならず、カタギ寄りの半グレグループとして、ソープランド経営者やキャバクラなどを経営する企業グループ周辺を洗っているという。 

 ススキノのみかじめ料はソープランド1軒当たり1か月10万円が相場だが、1年分を一括納入するシステムだ。1軒で120万円の収入は無税ですべてが暴力団の収入になる。10店経営していると1200万円を暴力団に納めなければならないわけで、暴力団を肥え太らす彼らは、もはや純粋な一般人とは言いにくい。 

「ヤクザは女を使った商売を見逃さないからな。札幌では有名な兄弟がやってるグループがあんだよ。警察が調べると上層部が頻繁にフィリピンに渡航していると分かった。それだけでルフィたちと関係があるとはいえないが、他にも叩けば埃が出るかもしれない」(同前)


暴力団によると、この企業グループは政治家とも関係が深く、選挙協力などもしているようだ。  

また飲食店グループと暴力団は、キャッチと呼ばれる悪質な呼び込みを通じて繋がっている。彼らは同時に風俗嬢のスカウトも行なっており、渡辺容疑者はこれを表面上のシノギにしていた。 

 暴力団の真骨頂は、警察に逮捕されても自白しないという一点にある。そこがアマとプロの決定的な違いだ。ルフィたち4人は死刑になるのを恐れて、供述拒否らしいが、逮捕された共犯者たちはぺらぺらうたって(自白して)いるという。海賊気取りのアマチュア犯罪集団はもはや沈没寸前である。一刻も早い全貌解明を期待する。

 【プロフィール】 鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。フリーライター。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など ※週刊ポスト2023年3月3日号



「ルフィ強盗団」のルーツ「ススキノ闇社会」 カタギがヤクザの領域に飛び込んでくる善と悪のグレー・ゾーン(NEWSポストセブン) - Yahoo!ニュース 


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「暴れん坊将軍」が悪人を成敗することは不可能だった…ドラマでは描かれない歴代将軍の不自由すぎる生活

2024年02月27日 20時03分44秒 | 歴史的なできごと





「暴れん坊将軍」が悪人を成敗することは不可能だった…ドラマでは描かれない歴代将軍の不自由すぎる生活
2/25(日) 9:17配信




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プレジデントオンライン
名古屋グランパス対アルビレックス新潟。試合前に「マツケンサンバII」を歌う俳優の松平健さん=2023年8月5日、東京・国立競技場 - 写真=時事通信フォト


徳川将軍家の居城であり江戸幕府の政治的拠点だった江戸城は、どんな城だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「常に厳重な警戒態勢下にあり、出入りするには幾重にも設置された門を通る必要があった。ドラマのように、将軍が市中で悪人を成敗することは不可能だった」という――。


【画像】外郭だけでもこれだけあった江戸城の門


■痛快を絵に描いたような番組「暴れん坊将軍」


 昭和53年(1978)から平成14年(2002)までレギュラー放送されていたテレビドラマ『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)は、国民的時代劇と呼ぶに相応しい人気シリーズだ。現在もテレビ朝日やBS朝日、CSの時代劇チャンネルなどで再放送され、多くの視聴者に支持されている。


 『暴れん坊将軍』の主役は、八代将軍・徳川吉宗。将軍は貧乏旗本の三男坊、徳田新之助を名乗って町に繰り出し、悪人たちの前で身分を明かして平伏させる。だが、彼らはたいてい開き直って歯向かうので、吉宗はみずから刀をとって大立ち回りを演じ、悪人たちを成敗する。


 同じ国民的時代劇の『水戸黄門』では、悪人たちは印籠を観た時点でぐうの音も出なくなるのがパターンだが、『暴れん坊将軍』の場合、悪人たちは相手が将軍だと知っても抵抗する。しかし、吉宗には彼らを打ちのめす剣の腕がある。


 一点の曇りもない勧善懲悪なのである。しかも、吉宗は絶対に負けないので、安心して見ていられる。痛快を絵に描いたような番組だといえよう。


■将軍が街に出るルートを検証する


 では、将軍吉宗はドラマに描かれたように、忍びの姿で市井に繰り出したことがあったのだろうか。これについては大方の視聴者も、そんな史実はなかったと感じているのではないだろうか。


 なにしろ、将軍が刀を振り回したりして万が一のことがあったら、幕府はたちまち危機を迎えかねない。番組では絶対にケガをせず、だから観ていて痛快なのだが、現実には大立ち回りを演じれば、ケガをするリスクは非常に高い。


 さすがに刀は振り回さなくても、将軍が忍びの格好で市井に繰り出すことぐらい、たまにはあったのではないか――。そのように想像する向きもあると思うが、現実には、それは絶対に不可能だった。では、どう不可能であったのか、将軍が暮らしていた江戸城内の道のりをたどって確認してみよう。


 まず、いま残っている江戸城を歩くことで、将軍が市井に出ることがどれだけ困難だったか、実感したい。



■「大手門→本丸御殿」の厳重すぎる警備


 将軍は江戸城の本丸に建てられた本丸御殿に住んでいた。本丸御殿は、いまでいえば総理官邸と公邸、国会議事堂と中央官庁の一部、それに迎賓館なども兼ねた、徳川幕府のまさに中枢というべき建物だった。


 それは約130棟から構成され、床面積は約1万坪。手前から幕府の中央政庁である「表」、将軍が起居して日常の政務に当たった「中奥」、将軍の正室や側室、子女のほか、奥女中らが暮らす「大奥」に分かれていた。


 現在、江戸城の本丸、二の丸、三の丸の跡地は、皇居東御苑として一般に公開されているので、そこを本丸御殿をめざして進んでいこう。


 東御苑に入る一番オーソドックスな入り口が、江戸城の正門だった大手門だ。将軍や勅使のほか、大藩の諸大名はここから城に出入りした。いまも警官が警備しているが、江戸時代には10万石以上の譜代大名が守衛に当たり、厳重に警備されていた。


 また、江戸城の多くの門は、ひとつの門が一の門と二の門の二つで構成され、大手門も同様であった。枡形といって、酒や米を軽量する枡のように四角い空間が設けられ、四角の2辺に門が設けられ、たいていは敵がまっすぐ侵入できないように、進路は鍵手に曲げられていた。


 大手門の前は堀で、現在は土橋を渡るが、江戸時代には木橋が架かっていた。そして橋の手前両側には「下馬」と書かれた札が立っており、大名一行も門の手前の下馬所で馬からおりて橋を渡らなければならなかった。大名の供連れも、ここからは11~13人しか許されなかった。余談だが、下馬所で供の者が主人を待ちながら噂話をしたことから、「下馬評」という言葉が生まれている。


■「かごの中の鳥」だった将軍


 大手門を通り抜けて本丸方面に進むと、大手三の門の跡がある。この門の前にも、いまは埋め立てられているが堀があった。そして堀を渡る橋は、ここから先は徳川御三家と勅使を除き、諸大名も籠から降りなければならなかったので、下乗橋と呼ばれた。大名はここからは、従者をさらに少なくして、徒歩で登城しなければならなかった。


 この門もやはり二つの門で構成され、そのあいだには、大名を監視するための検問所である同心番所があった(現在も建物が残っている)。


 さて、大手三の門を抜けると二の丸だ。そこから東に進めば二の丸御殿があり、それを経由しても本丸に行けたが、すると行程も複雑なうえに、いくつもの門をくぐり抜けなければならない。それよりは最短距離をたどってみたい。


 とはいえ、最短距離であるほど防御に抜かりはない。大手三の門を通り抜けたところには百人番所(現存する)があり、昼夜を問わず与力20人と同心100人が配置され、警備に当たっていた。


 百人番所の前には、本丸の正門と位置づけられる中の門があった。この巨大な門を抜けると、本丸御殿に着く前の最後の検問所である大番所(これも現存する)がある。そして、その先には本丸御殿の正門にあたる中雀門(書院門)が、また二つの門で構成され、厳重に警備されていた。それを通り抜けて、ようやく本丸御殿に着くことができる。


 だが、そこからは私邸のように自由が利くと思ったら大間違いだ。御殿の玄関を入った遠侍の間では、大番の番士が警戒にあたり、その先の虎の間でも、書院番の番士が見張っていた。そして老中や奉行らの詰所の脇には、将軍を直接警護する小姓番が控えていた。このように将軍は、文字通りに雁字搦めだったのである。

■現在の皇居の4倍の広さ


 そもそも江戸城の広さを知れば、それを抜けるのが簡単でないと実感できるだろう。江戸城イコール皇居だと思っている人は多い。そして、皇居だけでも十分に広いが、宮内庁が管理する皇居の敷地面積は約115万平方メートルなのに対し、江戸城内郭全体は424万平方メートルにおよぶ。皇居の4倍近い広さだったのである。


 ちなみに、『暴れん坊将軍』には姫路城の映像が江戸城として使われていた。姫路城もかなり規模が大きな城で、門もたくさんあるため、仮にそこを抜け出すとしてもかなりの困難がともなったはずだが、それでも内郭は23ヘクタールと、江戸城の十数分の1にすぎなかった。


 このように江戸城は桁外れの規模だったので、門がなく警備が手薄だったとしても、広大な内郭を抜け出すのは容易ではなかった。しかも、その周囲には外堀で囲まれた外郭があり、外郭をふくめた江戸城の面積は、なんと2000ヘクタールを超えた。そして、外郭の外堀には少なくとも26の門が設けられ、それぞれが一の門と二の門からなる枡形門で、厳重に警備されていた。


■自由がない縛られた生活


 『暴れん坊将軍』で徳田新之助が居候していた町火消し「め組」の在所は日本橋界隈と思われる。「新さん」こと吉宗は、そこを拠点にして江戸の町民と交流するが、江戸城本丸御殿から町人の居住区までは、絶対的な距離も離れているうえに、ここまで述べてきたように無数の関門がある。


 本丸から外に出る道は、いま述べた以外にもあるが、数々の関門を超えなければ城外に出られない点では同じである。将軍が忍びの姿でそれらを突破できるようであれば、江戸城の安全性が保たれず、ひいては幕府の警護体制に不備があることになってしまう。


 徳川光圀も諸国を漫遊したどころか、遠距離を移動した経験がほとんどなかった。水戸徳川家の当主は江戸に在留するのが基本で、光圀の場合、水戸のほかには日光、房総、金沢八景、鎌倉を除くと、若いころに熱海に行ったことがあるくらいだった。


 江戸幕府の将軍は、あまり自由がない縛られた生活をしており、そこから逃れる余地もなかったのである。






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香原 斗志(かはら・とし)
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。



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「ヤバい病院・ヤバい医者」とどう戦う…?「医者で弁護士」が明かす「医療ミス裁判」の知られざる全貌

2024年02月27日 13時03分00秒 | 医療のこと
「ヤバい病院・ヤバい医者」とどう戦う…?「医者で弁護士」が明かす「医療ミス裁判」の知られざる全貌(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース 



「ヤバい病院・ヤバい医者」とどう戦う…?「医者で弁護士」が明かす「医療ミス裁判」の知られざる全貌
2/27(火) 8:03配信


現代ビジネス
写真提供: 現代ビジネス


 病院で起きるミスや事故は毎日のように報じられている。だが、いざそれに遭遇したとき、どう動くべきか知る人は少ない。医療関係者が口を閉ざす実態に切り込む。


【写真】肺がんステージ4から奇跡の生還…「余命1年」の父を救った「娘の一言」


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前編はこちら:【医療ミス訴訟は「圧倒的に患者が不利」だって…? 「医者で弁護士」が語る「ヤバい医者」から身を守る7つの方法】
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感情的になるのはNG
Photo by gettyimages


 勘違いしがちなのが、「こんなことは許せない。一緒に戦いましょう」と二つ返事で依頼を引き受けるのが、いい弁護士とは限らないということ。無理な依頼でもとにかく引き受けて、着手金をせしめようとする弁護士は少なくない。カネ持ちの被害者ばかり相手にし、勝ち目のない訴訟をそそのかす者もいるというから、たちが悪い。


 「もちろん、本当に患者さんのためを思って引き受ける弁護士もいます。しかし、そもそも医療過誤訴訟は労力が大きく、普通の事件の10件分に相当するといわれるほど。一人の弁護士が扱える件数は限られているため、経験不足、知識不足の弁護士に当たりがちなのが実情です」(富永氏)


 熱意と専門知識を兼ね備えた弁護士に出会いたいものだが、ダブルライセンスを持っていても、勝率の低い患者側に立つことに積極的な弁護士は少ない。「私は医者でもあるから、同じ医者の敵にはなれない」と、むしろ医者の側についてしまう弁護士さえいる。こうした事情から、富永氏は「医療ミスを専門とする弁護士で、私が安心して推薦できる方は全国でも数人しかいません」と嘆く。


 それでも、なんとか信頼できる弁護士を見つける術はあるのだろうか。


 「まずは、ネットで検索したり、めぼしい弁護士がいれば電話で聞くなどして、その弁護士が自分の受けた被害と同じようなケースを取り扱った経験があるかどうかを調べてみてください。


 その際は、遠方に事務所を構える弁護士でもかまいません。近年では打ち合わせや裁判の期日もリモートでこなすことがほとんどなので、距離が遠いことは問題ない。それよりも経験と知識があること、さらに人として信頼できるかどうかを優先して決めるほうがいいでしょう」(富永氏)

「弁護士同席」がダメなワケ
 では、弁護士に相談したあと、医療ミスの訴訟・示談交渉はどのようなプロセスで進むのか(39ページの図も参照)。


 まず押さえなければならないのは、最大の証拠となるカルテだ。じつは、カルテの開示手続きは患者本人やその家族でもできるが、気をつけるべき点がある。


 「カルテのコピーは、病気によっては段ボール数箱分にもなることがあります。料金は1枚あたり10~50円がふつうですが、規定がなく病院側の言い値なので、中には1枚数百円程度を請求してくる病院もあります」(前出・平井氏)


 また、病院側がトラブルを察知して「できれば会ってご説明したい」と申し出てくることもあるが、そのとき不安だからといって弁護士を同席させてはいけない。


 「弁護士がいると病院側が警戒し、不利な情報を出さないようにしたり、話す内容を変えたりすることがあるので、患者さんやご家族だけで話し合ったほうがいいでしょう。


 そのとき重要なのは、『なぜ』『どうして』とミスの理由を問うのではなく、淡々と事実関係を確認し、録音することです。感情的になってしまうのは仕方ありませんが、ここでなるべく多くの情報を病院側から引き出すことができれば、あとあと役に立ちます」(平井氏)


 ミスや事故の経緯が徐々に明らかになってきても、まだ安心はできない。次なるハードルが「協力医」を探すことだ。医学的な観点からミスを立証し、病院や医者の落ち度を指摘してくれる別の医者を探す必要があるのだが、彼らはいわば「医者の敵」になるわけだから、そう簡単には引き受けてもらえない。


 「カルテを読んでもらうだけならまだしも、裁判で証言までしてくれる協力医となると、見つけるのに苦労するというのが正直なところです。費用についても、カルテに目を通して意見をもらうまでで最低5万円程度、裁判に協力してもらうとなると数十万円の謝礼を用意する必要があります」(平井氏)


 しかも、大学病院などでの医療ミスになると、学閥のつながりや関係維持を理由に協力を渋られることもある。平井氏は、「関東の病院なら関西、関西なら九州など、まったく違う地域で働く医者に頼んだほうがいい」とアドバイスする。

かかるカネ、もらえるカネ
Photo by gettyimages


 気になる賠償金・慰謝料の金額は、交通事故でケガを負ったり死亡した場合と同じ基準で、患者や遺族の事情をふまえて算出される。働いている成人男性が死亡した場合で約3000万円が目安となるが、「ミスが大きいとか、亡くなったから高額になるわけではありません。障害を負って介護が必要になった場合や、患者が若いと、介護費用や逸失利益が加算されるため、1億円を超えるケースもある」(富永氏)という。


 医療訴訟には、最低でも100万~200万円の弁護士費用がかかる。そこに前述したカルテ開示の費用、協力医への謝礼などが上乗せされるから、経済的負担は大きい。加えて病院側との交渉には時間がかかるため、精神的な負担も長く続く。


 「もし病院側が即座に非を認めるのであれば、数ヵ月で交渉が終わることもありますが、きわめて稀です。証拠などの準備・検討をして病院側と交渉の席につくまでに少なくとも半年、訴訟に至るまで1年、そこから和解や判決に至るまでには、最低2~3年かかると考えてください」(平井氏)


 それでも、前出の宮脇氏は、医療ミスに遭ってしまった患者が声を上げることは大切だと語る。


 「医療ミスで失われるのは、患者本人の健康や命だけではありません。大黒柱や精神的な支えを失い、家族がバラバラになってしまうこともある。そんな中で裁判をするのは、並大抵のことではありません。


 ですが、私たち遺族は賠償金を得るよりも、心からの謝罪を聞きたいからこそ戦っている。医療ミスを一件でも減らすためにも、交渉や裁判を通じて、病院や医療界に再発防止を促すことが必要だと思います」


 いつ自分や家族が直面するかもしれない医療ミス。まずは知ることから、対策を始めよう。


 「週刊現代」2024年2月24日・3月2日合併号より


週刊現代(講談社)







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札幌セコマ3人死傷、容疑者「3人に恨みはなかった」と供述

2024年02月27日 10時41分08秒 | 事件と事故
札幌セコマ3人死傷、容疑者「3人に恨みはなかった」と供述…死亡した大橋さんは「非常に優秀な社員でした」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース 


札幌地検に送検される宮西容疑者(26日午後、札幌北署で)





札幌セコマ3人死傷、容疑者「3人に恨みはなかった」と供述…死亡した大橋さんは「非常に優秀な社員でした」
2/27(火) 9:16配信

読売新聞オンライン



 札幌市北区のコンビニ店「セイコーマート北31条店」で25日、店員3人が殺傷された事件で、同区、無職宮西浩隆容疑者(43)(殺人未遂容疑で逮捕)が、3人を執拗(しつよう)に追い回していた状況が明らかになった。北海道警は26日、宮西容疑者を札幌地検に送検。取り調べに「3人に恨みはなかった」などと供述しており、道警は動機を慎重に調べている。


 道警や店舗関係者によると、店内の防犯カメラに当時の状況が記録されており、宮西容疑者は、しばらく売り場を歩き回った後、レジカウンター内に入り男性店員(60)を襲っていた。


 さらに陳列棚の近くで女性店員(58)を狙い、異変に気づき奥から出てきた大橋恵介さん(40)をバックヤードで刺すなどした。再び売り場の女性店員を追い回し、店外で男性店員と一緒にいたところを現行犯逮捕された。


(写真:読売新聞)


 現場では複数の刃物も見つかり、強い殺意と計画性がうかがえる。一方で「当初は取り調べ中に会話がかみ合わなくなる場面もあった」と道警幹部。今後、宮西容疑者の刑事責任能力も捜査の焦点になりそうだ。


 セコマ関係者によると、死亡した大橋さんは同社の社員で、店舗の運営などを担うグループ会社に出向中。25日は大量の弁当の注文処理のサポートで、別の社員2人と早朝から作業にあたっていたという。


 この関係者は顔をゆがめながら語った。「私もずっと前から知っています。非常に優秀な社員でした……」



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