石破首相の持論「米国からの自立」を進めるチャンス トランプ氏の“横暴”をかばわず「米国の本性」を知らしめろ 古賀茂明 (AERA dot.) - Yahoo!ニュース
石破首相の持論「米国からの自立」を進めるチャンス トランプ氏の“横暴”をかばわず「米国の本性」を知らしめろ 古賀茂明
1/21(火) 6:32配信

AERA dot.
古賀茂明氏
1/21(火) 6:32配信

AERA dot.
古賀茂明氏
米国は民主主義の教科書だ、日本は米国と価値観を共有している、米国のようになれば幸せになれる、と教え込まれた国民は、その理念とあまりにもかけ離れた今日の米国とそのリーダーの姿を見て、これまでの「常識」は日本人が勝手に作り上げた「幻想」だったことに気づくきっかけを得たのだ。
トランプ氏の言動は、日米が共有しているはずの価値観とは正反対の内容ばかりだ。
トランプ氏の横暴をかばうことなく、日本の国民によく見せることだ。それによって、米国が絶対善だという世論の常識を変えることができ、対米自立への支持を広げられる。
このコラムが配信される日本時間1月21日午前6時は、米国東部時間20日午後4時。トランプ氏は、正式に大統領に就任しているはずだ。日本時間21日以降はトランプ氏によるメディアジャック状態が続くだろう。
【写真】大統領に就任したドナルド・トランプ氏
「タリフマン(関税男)」を自任するトランプ氏は、大統領選挙中に中国への60%関税、全ての輸入品への10~20%の一律関税などをぶち上げ、選挙後にはメキシコとカナダに25%関税、中国には10%の追加関税を課すと表明した。
さらに、グリーンランドの領有を目指すとか、カナダを米合衆国51番目の州にするとか、パナマ運河を取り戻すというような常軌を逸した発言を続けている。
トランプ氏の言動はヤクザの組長を想起させる。
街中で出くわしたヤクザには、とにかく目を合わせず、相手の関心を惹かないことが大事だ。弱い者の唯一の防御方法である。
第1次トランプ政権の時には、安倍晋三元首相は、こうした手法ではなく、相手の懐に飛び込んでひたすら媚を売り、さらには、集団的自衛権、米製武器大量購入などの貢物を次々と繰り出して、あわよくば一の子分に取り立てられようとした。日本の平和主義を投げ捨て、国民の税金を無駄な武器購入に浪費することで自己承認欲求を満たそうとしたのだ。
今、日本を率いる石破茂首相は、安倍氏とは全く正反対で、誠実、不器用で、媚びない、ぶれない性格だ。トランプ氏ともまた好対照である。
石破首相は、表向きトランプ氏との早期面会を望む姿勢を見せた。しかし、側近の話を聞くと、決して、慌てふためいて訪米するつもりはないようだ。角を立てないように、とりあえず「早く会いたい」と言っているのだろう。賢明な対応だ。
一方、先週の本コラムでも書いたとおり、日中関係は、驚くほどのスピードで改善している。先週の日中与党交流協議会では、森山裕自民党幹事長率いる日本側代表団と中国の李強首相の会談が実現した。破格のもてなしである。
また、同コラムで予言した日本産水産物の輸入再開についても、王毅外相は、海水サンプルの検査の結果が「安全であれば輸入を再開する」意向を示したと報じられたが、これも驚くほどのスピードだ。
中国軍で東シナ海などを管轄する東部戦区の代表団も13日から17日まで、6年ぶりの訪日を果たしている。
日中関係改善が急ピッチで進んでいるのは、中国の苦しい立場を示すものだという解説ばかりが流れているが、それだけでは物事の本質を見失う。その背景にあるのは、先週のコラムでも触れた、石破首相の人間力である。
このコラムが配信される日本時間1月21日午前6時は、米国東部時間20日午後4時。トランプ氏は、正式に大統領に就任しているはずだ。日本時間21日以降はトランプ氏によるメディアジャック状態が続くだろう。
【写真】大統領に就任したドナルド・トランプ氏
「タリフマン(関税男)」を自任するトランプ氏は、大統領選挙中に中国への60%関税、全ての輸入品への10~20%の一律関税などをぶち上げ、選挙後にはメキシコとカナダに25%関税、中国には10%の追加関税を課すと表明した。
さらに、グリーンランドの領有を目指すとか、カナダを米合衆国51番目の州にするとか、パナマ運河を取り戻すというような常軌を逸した発言を続けている。
トランプ氏の言動はヤクザの組長を想起させる。
街中で出くわしたヤクザには、とにかく目を合わせず、相手の関心を惹かないことが大事だ。弱い者の唯一の防御方法である。
第1次トランプ政権の時には、安倍晋三元首相は、こうした手法ではなく、相手の懐に飛び込んでひたすら媚を売り、さらには、集団的自衛権、米製武器大量購入などの貢物を次々と繰り出して、あわよくば一の子分に取り立てられようとした。日本の平和主義を投げ捨て、国民の税金を無駄な武器購入に浪費することで自己承認欲求を満たそうとしたのだ。
今、日本を率いる石破茂首相は、安倍氏とは全く正反対で、誠実、不器用で、媚びない、ぶれない性格だ。トランプ氏ともまた好対照である。
石破首相は、表向きトランプ氏との早期面会を望む姿勢を見せた。しかし、側近の話を聞くと、決して、慌てふためいて訪米するつもりはないようだ。角を立てないように、とりあえず「早く会いたい」と言っているのだろう。賢明な対応だ。
一方、先週の本コラムでも書いたとおり、日中関係は、驚くほどのスピードで改善している。先週の日中与党交流協議会では、森山裕自民党幹事長率いる日本側代表団と中国の李強首相の会談が実現した。破格のもてなしである。
また、同コラムで予言した日本産水産物の輸入再開についても、王毅外相は、海水サンプルの検査の結果が「安全であれば輸入を再開する」意向を示したと報じられたが、これも驚くほどのスピードだ。
中国軍で東シナ海などを管轄する東部戦区の代表団も13日から17日まで、6年ぶりの訪日を果たしている。
日中関係改善が急ピッチで進んでいるのは、中国の苦しい立場を示すものだという解説ばかりが流れているが、それだけでは物事の本質を見失う。その背景にあるのは、先週のコラムでも触れた、石破首相の人間力である。
■直近の3首相が高めてしまった「嫌中感情」
さらに明確になってきたのは、石破首相が、持論の「米国からの自立」を求める外交を本気で進めているということだ。
トランプ大統領が就任する時に、中国との関係改善を怒涛の如く進めれば、トランプ氏の逆鱗に触れ、無用な難題をふっかけられるかもしれない。
だが、それを石破首相は承知の上で、中国、そしてASEAN加盟国との関係強化を最優先で進めている。今年のASEAN議長国のマレーシアとASEANの大国で日本の大事なお得意様であるインドネシアへの訪問が、新年最初の外遊となった。報道では、南シナ海で中国と領有権問題を抱える両国との間で安全保障協力を強化するのが目的だとされるが、それは日本側の解釈に過ぎない。なぜなら、いくら日本が働きかけたところで、両国は決して米国寄りの立場をとることはないからだ。
パレスチナでの戦闘をめぐり、イスラム組織ハマスとイスラエルの停戦合意が成立したが、残虐なジェノサイドを続けてきたイスラエルを支援する米国に対しては、グローバルサウス諸国の批判が高まった。特に、国内にイスラム教徒を多数抱える国ほどそうである。マレーシアとインドネシアはその代表格だ。両国政府は、中国と領有権問題を抱えるが、決して米国追従にはならず、米中いずれにも与せずという立場を明確にしてきた。
最近では、両国民の米国に対する反感は高まっており、米国と中国のどちらを取るかと聞かれて中国と答える国民が増えている。
1月6日には、インドネシアのBRICSへの加盟承認が発表された。マレーシアも加盟申請中で、承認は時間の問題だ。ロシアや中国との関係強化を図る両国の狙いは、米国敵視ということではないが、少なくとも中国包囲網を狙う日米韓同盟とは距離を置く意思表示だと見ても良い。米国も、そのように捉えるだろう。
石破首相がこの両国を選んだ意義は極めて大きい。日本が米国からの自立を図るには、中国との関係を安定させることが大前提だということは先週のコラムにも書いたが、それと同時に、米中の狭間で中立的外交を堅持するASEAN諸国との信頼関係を強化することが非常に効果的だ。
中国に加え成長を続けるASEANとの関係強化を着々と進める石破首相は、トランプ氏との面会を焦る必要はない。今後は、他のASEAN諸国やインド、豪州、カナダ、メキシコ、英独仏など欧州主要国との絆を深める時間に費やすべきだ。
ただし、対中関係では、そう簡単にはいかない事情もある。日本の世論と自民党右翼議員の存在だ。
安倍政権以降、菅義偉、岸田文雄までの3代の首相が、嫌中世論を高めてきた結果、今や国民の大多数が、中国は怖い、狡い、信頼できないという固定観念にとらわれている。米軍関係者が唱え始めた台湾有事という、根拠も定かでない絵空事も、自民党右翼政治家が米議会議員と共にこれを煽ることで、日米主導の台湾独立運動が起きるという中国側の懸念を呼び、過剰反応を引き起こした。こうした無意味な相互作用により、台湾も日本も軍備増強を余儀なくされ、米国は、両者に武器を大量に売りつけて利益を上げ続けるという構図が定着している。
さらに明確になってきたのは、石破首相が、持論の「米国からの自立」を求める外交を本気で進めているということだ。
トランプ大統領が就任する時に、中国との関係改善を怒涛の如く進めれば、トランプ氏の逆鱗に触れ、無用な難題をふっかけられるかもしれない。
だが、それを石破首相は承知の上で、中国、そしてASEAN加盟国との関係強化を最優先で進めている。今年のASEAN議長国のマレーシアとASEANの大国で日本の大事なお得意様であるインドネシアへの訪問が、新年最初の外遊となった。報道では、南シナ海で中国と領有権問題を抱える両国との間で安全保障協力を強化するのが目的だとされるが、それは日本側の解釈に過ぎない。なぜなら、いくら日本が働きかけたところで、両国は決して米国寄りの立場をとることはないからだ。
パレスチナでの戦闘をめぐり、イスラム組織ハマスとイスラエルの停戦合意が成立したが、残虐なジェノサイドを続けてきたイスラエルを支援する米国に対しては、グローバルサウス諸国の批判が高まった。特に、国内にイスラム教徒を多数抱える国ほどそうである。マレーシアとインドネシアはその代表格だ。両国政府は、中国と領有権問題を抱えるが、決して米国追従にはならず、米中いずれにも与せずという立場を明確にしてきた。
最近では、両国民の米国に対する反感は高まっており、米国と中国のどちらを取るかと聞かれて中国と答える国民が増えている。
1月6日には、インドネシアのBRICSへの加盟承認が発表された。マレーシアも加盟申請中で、承認は時間の問題だ。ロシアや中国との関係強化を図る両国の狙いは、米国敵視ということではないが、少なくとも中国包囲網を狙う日米韓同盟とは距離を置く意思表示だと見ても良い。米国も、そのように捉えるだろう。
石破首相がこの両国を選んだ意義は極めて大きい。日本が米国からの自立を図るには、中国との関係を安定させることが大前提だということは先週のコラムにも書いたが、それと同時に、米中の狭間で中立的外交を堅持するASEAN諸国との信頼関係を強化することが非常に効果的だ。
中国に加え成長を続けるASEANとの関係強化を着々と進める石破首相は、トランプ氏との面会を焦る必要はない。今後は、他のASEAN諸国やインド、豪州、カナダ、メキシコ、英独仏など欧州主要国との絆を深める時間に費やすべきだ。
ただし、対中関係では、そう簡単にはいかない事情もある。日本の世論と自民党右翼議員の存在だ。
安倍政権以降、菅義偉、岸田文雄までの3代の首相が、嫌中世論を高めてきた結果、今や国民の大多数が、中国は怖い、狡い、信頼できないという固定観念にとらわれている。米軍関係者が唱え始めた台湾有事という、根拠も定かでない絵空事も、自民党右翼政治家が米議会議員と共にこれを煽ることで、日米主導の台湾独立運動が起きるという中国側の懸念を呼び、過剰反応を引き起こした。こうした無意味な相互作用により、台湾も日本も軍備増強を余儀なくされ、米国は、両者に武器を大量に売りつけて利益を上げ続けるという構図が定着している。
■戦後から日本人が信じてきた「アメリカ教」
日本の国民は、台湾周辺で軍事演習を行う中国軍を見ては恐怖感を募らせ、反中感情を強める。そして、中国に対する経済制裁などで厳しく対応する米国は、中国という悪から日本を守ってくれる守護神としての地位を高めているわけだ。
こうした国民世論を背景に、中国と仲良くすれば媚中派というレッテルを貼られ、悪をのさばらせるのかとネットで炎上する。
右翼議員やネット上での右翼的な石破批判が盛り上がれば、一般の国民も、「やはり、中国に近づくのはやめてほしい。あんな国と仲良くしないで米国との関係を重視してほしい」という考えに傾いていく。
少数与党で綱渡りの国会運営を強いられる石破首相としては、夏の参議院議員選挙の前にこれ以上支持率を落とすのは避けたいところだ。トランプ氏のご機嫌もとって軋轢を回避しなければならないと考えたくなるだろう。
そうなれば、結局は、武器の爆買い、防衛費のさらなる拡大、南シナ海などでの米軍の負担の肩代わりなどを自ら行い、米国の対中制裁強化にも追随させられる。その結果、日中関係改善も足踏み状態に陥り、対米自立も後退ということになる。元の木阿弥だ。
そこで、カギとなるのは、前述した嫌中親米の国民世論をどうするかである。
中国が絶対悪で米国が絶対善という観念は長期間かけて形成されてきた。特に、米国が正義という観念は、敗戦以来一貫して日本国民の多くが信じてきた「アメリカ教」の根本理念である。80年かけてできたものは変えられないのではないかとも思える。
しかし、今回のトランプ大統領の登場は、米国がこの根本理念を覆す絶好の機会なのではないか。
米国は民主主義の教科書だ、日本は米国と価値観を共有している、米国のようになれば幸せになれる、と教え込まれた国民は、その理念とあまりにもかけ離れた今日の米国とそのリーダーの姿を見て、これまでの「常識」は日本人が勝手に作り上げた「幻想」だったことに気づくきっかけを得たのだ。
トランプ氏の言動は、日米が共有しているはずの価値観とは正反対の内容ばかりだ。
性的暴行が認定された人権無視と女性蔑視、選挙結果を暴力で覆そうとした反民主主義と専制主義、犯罪行為のデパートと言われる倫理観欠如、イエスマンを重用し反対者を脅す恐怖主義、世界中に関税引き上げを宣告する自由貿易の否定、他国の領土を武力で奪うことを否定しない拡張主義・戦争主義などなど。
同氏の悪質なところは、正常な倫理観・常識を否定することが、相手に「トランプは何をするかわからない」という恐怖感を与えることを計算して、自己に有利なディールに持ち込む手段として使っていることだ。
米国という世界最強国だからできることで、米国相手に同じような作戦を取れる国は、核を使うぞと脅しをかけるプーチン大統領のロシアのしかいない。
カナダのトルドー首相が、25%関税を予告されて、慌ててトランプ氏のご機嫌伺いに出向いたのは、国内政治状況もあるが、何よりも恐怖心に駆られてのことだったのではないか。
日本は最近までトランプ氏の関心の対象に入っていないように見えた。
日本の国民は、台湾周辺で軍事演習を行う中国軍を見ては恐怖感を募らせ、反中感情を強める。そして、中国に対する経済制裁などで厳しく対応する米国は、中国という悪から日本を守ってくれる守護神としての地位を高めているわけだ。
こうした国民世論を背景に、中国と仲良くすれば媚中派というレッテルを貼られ、悪をのさばらせるのかとネットで炎上する。
右翼議員やネット上での右翼的な石破批判が盛り上がれば、一般の国民も、「やはり、中国に近づくのはやめてほしい。あんな国と仲良くしないで米国との関係を重視してほしい」という考えに傾いていく。
少数与党で綱渡りの国会運営を強いられる石破首相としては、夏の参議院議員選挙の前にこれ以上支持率を落とすのは避けたいところだ。トランプ氏のご機嫌もとって軋轢を回避しなければならないと考えたくなるだろう。
そうなれば、結局は、武器の爆買い、防衛費のさらなる拡大、南シナ海などでの米軍の負担の肩代わりなどを自ら行い、米国の対中制裁強化にも追随させられる。その結果、日中関係改善も足踏み状態に陥り、対米自立も後退ということになる。元の木阿弥だ。
そこで、カギとなるのは、前述した嫌中親米の国民世論をどうするかである。
中国が絶対悪で米国が絶対善という観念は長期間かけて形成されてきた。特に、米国が正義という観念は、敗戦以来一貫して日本国民の多くが信じてきた「アメリカ教」の根本理念である。80年かけてできたものは変えられないのではないかとも思える。
しかし、今回のトランプ大統領の登場は、米国がこの根本理念を覆す絶好の機会なのではないか。
米国は民主主義の教科書だ、日本は米国と価値観を共有している、米国のようになれば幸せになれる、と教え込まれた国民は、その理念とあまりにもかけ離れた今日の米国とそのリーダーの姿を見て、これまでの「常識」は日本人が勝手に作り上げた「幻想」だったことに気づくきっかけを得たのだ。
トランプ氏の言動は、日米が共有しているはずの価値観とは正反対の内容ばかりだ。
性的暴行が認定された人権無視と女性蔑視、選挙結果を暴力で覆そうとした反民主主義と専制主義、犯罪行為のデパートと言われる倫理観欠如、イエスマンを重用し反対者を脅す恐怖主義、世界中に関税引き上げを宣告する自由貿易の否定、他国の領土を武力で奪うことを否定しない拡張主義・戦争主義などなど。
同氏の悪質なところは、正常な倫理観・常識を否定することが、相手に「トランプは何をするかわからない」という恐怖感を与えることを計算して、自己に有利なディールに持ち込む手段として使っていることだ。
米国という世界最強国だからできることで、米国相手に同じような作戦を取れる国は、核を使うぞと脅しをかけるプーチン大統領のロシアのしかいない。
カナダのトルドー首相が、25%関税を予告されて、慌ててトランプ氏のご機嫌伺いに出向いたのは、国内政治状況もあるが、何よりも恐怖心に駆られてのことだったのではないか。
日本は最近までトランプ氏の関心の対象に入っていないように見えた。
■トランプ氏と自民党右翼議員に媚びなくていい
しかし、バイデン前大統領が日本製鉄のUSスチール買収に待ったをかけたのに対して、日鉄は訴訟に打って出た。特に、買収審査の無効を求める訴訟の他に、米クリーブランド・クリフスと同社のローレンソ・ゴンカルベスCEOらを、買収を違法に妨害したという理由で訴えたのがどう出るか。
トランプ氏に近いゴンカルベス氏は、「日本は1945年以来何も学んでいない」「中国は悪いが、日本はそれよりはるかに悪い」などと日本を罵倒したが、さらに注目すべきは、石破首相がバイデン前大統領に説明を要求したことについて、「トランプにも同じ要求をしてみるといい」「とても面白い日になるだろう」と発言していることだ。
日鉄の訴訟は、大きな賭けだ。この訴訟によって、「トランプ組長」の目に留まってしまったのは確実だろう。
自民党右翼議員たちは、トランプ氏が怒りの鉄拳を石破首相に下ろすことを願っているようだ。仮に、トランプ氏が日本に難題を突きつけてきたら、待ってましたとばかりに、「中国に媚びるばかりで、トランプとの関係を軽視したツケだ。石破首相に日本を任せてはいけない」と責任追及に動くだろう。
だが、トランプ登場により、世界での米国への信頼は地に堕ちた。前述のとおり、グローバルサウスは、米国寄りからむしろ中国に軸足をずらしつつある。
こうしたことは、米国の外交・軍事関係者も認識しているはずだ。トランプ氏のやりたい放題にしていては、米国は、経済だけでなく、外交でも安全保障でも世界での地位を大きく落とし、それがまた米国経済に跳ね返るという悪循環に陥ることを最も懸念するはずだ。
もちろん、石破首相は、わざわざトランプ氏を怒らせる必要はない。表向きはこれまでどおり、仲良くしたいと言いつつ、少しずつ中国、ASEAN、さらには中東、中南米などでアメリカ離れを強める諸国との連携を強化することだ。
そして、軍事よりも日本経済の立て直しに全ての資源を投入する。中国やグローバルサウスとの経済関係を強化することで日本経済に好影響が出てくれば、国民世論も石破外交を支持するようになるはずだ。
再び経済強国となれば、それが日本の外交安全保障の基盤となり、平和主義のブランド回復と相まって、さらに世界の国々との協力関係が強化される。
そのためには、トランプ氏の横暴をかばうことなく、日本の国民によく見せることだ。それによって、米国が絶対善だという世論の常識を変えることができ、対米自立への支持を広げられる。ゴンカルベス氏の発言も米国の本性を知らせる良い材料として使うべきだろう。
石破首相には、自民党右翼議員に媚びることなく、また嫌中世論を恐れることなく、初心貫徹で、対米自立外交を目指してもらいたい。
しかし、バイデン前大統領が日本製鉄のUSスチール買収に待ったをかけたのに対して、日鉄は訴訟に打って出た。特に、買収審査の無効を求める訴訟の他に、米クリーブランド・クリフスと同社のローレンソ・ゴンカルベスCEOらを、買収を違法に妨害したという理由で訴えたのがどう出るか。
トランプ氏に近いゴンカルベス氏は、「日本は1945年以来何も学んでいない」「中国は悪いが、日本はそれよりはるかに悪い」などと日本を罵倒したが、さらに注目すべきは、石破首相がバイデン前大統領に説明を要求したことについて、「トランプにも同じ要求をしてみるといい」「とても面白い日になるだろう」と発言していることだ。
日鉄の訴訟は、大きな賭けだ。この訴訟によって、「トランプ組長」の目に留まってしまったのは確実だろう。
自民党右翼議員たちは、トランプ氏が怒りの鉄拳を石破首相に下ろすことを願っているようだ。仮に、トランプ氏が日本に難題を突きつけてきたら、待ってましたとばかりに、「中国に媚びるばかりで、トランプとの関係を軽視したツケだ。石破首相に日本を任せてはいけない」と責任追及に動くだろう。
だが、トランプ登場により、世界での米国への信頼は地に堕ちた。前述のとおり、グローバルサウスは、米国寄りからむしろ中国に軸足をずらしつつある。
こうしたことは、米国の外交・軍事関係者も認識しているはずだ。トランプ氏のやりたい放題にしていては、米国は、経済だけでなく、外交でも安全保障でも世界での地位を大きく落とし、それがまた米国経済に跳ね返るという悪循環に陥ることを最も懸念するはずだ。
もちろん、石破首相は、わざわざトランプ氏を怒らせる必要はない。表向きはこれまでどおり、仲良くしたいと言いつつ、少しずつ中国、ASEAN、さらには中東、中南米などでアメリカ離れを強める諸国との連携を強化することだ。
そして、軍事よりも日本経済の立て直しに全ての資源を投入する。中国やグローバルサウスとの経済関係を強化することで日本経済に好影響が出てくれば、国民世論も石破外交を支持するようになるはずだ。
再び経済強国となれば、それが日本の外交安全保障の基盤となり、平和主義のブランド回復と相まって、さらに世界の国々との協力関係が強化される。
そのためには、トランプ氏の横暴をかばうことなく、日本の国民によく見せることだ。それによって、米国が絶対善だという世論の常識を変えることができ、対米自立への支持を広げられる。ゴンカルベス氏の発言も米国の本性を知らせる良い材料として使うべきだろう。
石破首相には、自民党右翼議員に媚びることなく、また嫌中世論を恐れることなく、初心貫徹で、対米自立外交を目指してもらいたい。