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知られざる「人が亡くなる直前のプロセス」を、3000人以上を看取ったホスピス医が教える

2025年01月31日 23時03分47秒 | 医療のこと

知られざる「人が亡くなる直前のプロセス」を、3000人以上を看取ったホスピス医が教える


12/23(金) 20:14配信2022
132コメント132件

実は「ほとんどの方の死に苦しみはない」と、奈良県立医科大学附属病院の緩和ケアセンター長、四宮敏章氏は言う。穏やかな最期を迎えるためには何が必要か。緩和ケア医療の最前線から分かっていることとは


写真はイメージです KatarzynaBialasiewicz-iStock

誰もが苦しまずに最期を迎えたいと思うだろう。しかし、どうしたら安らかな「死」を迎えられるのかは、あまり知られていない。 動画で知る「亡くなる直前の5兆候」 痛みや苦しみをやわらげ、最期まで穏やかに過ごすための医療である「緩和ケア」が果たす役割とは何か。その知識は、あなたらしい生き方を貫徹するために、今からでも頭の中に入れておきたいものだ。 奈良県立医科大学附属病院で緩和ケアセンター長を務め、現役YouTuberでもある四宮敏章氏が、これまでベールに包まれていた死の現実を分かりやすく解説


このたび、『また、あちらで会いましょう――人生最期の1週間を受け入れる方法』(かんき出版)を上梓した。

 ここでは本書から一部を抜粋・再編集して掲載する(この記事は抜粋第1回)。 ※抜粋第2回はこちら:「がんになって初めて、こんなに幸せ」 50代看護師は病を得て人生を切り開いた 

◇ ◇ ◇

人が亡くなるまでの1週間

Newsweek Japan

どんな人でも、自分が死んでいくことを想像することは容易ではないと思います。どんな苦しみが待っているのか、それに自分は耐えられるのだろうか、と思うからではないでしょうか。私も以前はそうでした。 しかし、ホスピス医となり、3000人以上の方を見送ってきた経験から、「ほとんどの方の死に苦しみはない」と言うことができます。 私が見送った方々の最期の表情はとても穏やかで、どこか笑顔さえ浮かべている人も少なくありませんでした。 私が見送った方々の最期の表情はとても穏やかで、どこか笑顔さえ浮かべている人も少なくありませんでした。

 何度も繰り返しますが、適切な症状緩和ができると、ほとんどの患者さんの最期はとても穏やかなのです。このことは本当にそうなのです。 ここまで、がん患者さんが亡くなるまでの1週間、どのようなプロセスをたどるのかについてお話しました。この節では、さらに進んで、人は最期にどのように亡くなっていくのか、亡くなる直前はどのようなプロセスをたどるのかについて書いていきたいと思います。 多くの進行がん患者さんは、抗がん剤治療を行います。しかし、抗がん剤の効果がなくなり、治療医から積極的抗がん治療終了の話をされると思います。 その時点では、まだ患者さんは元気です。もし弱っている場合でも、それは抗がん剤の副作用や痛みなどの、がんの症状があるためで、それらの症状をしっかり緩和できれば、また元気になる人が多いのです。

 下の図を見てください。これは、がん患者さんの体調や日常的動作の自然経過を示しています。抗がん治療が終わってしばらく経っても、がん患者さんは、比較的元気に過ごします。 ところが、亡くなる1~2カ月くらい前から、病状は急速に悪化し、体調も目に見えて悪くなっていきます。このことを、私たち緩和ケアを行う医療者の間では、「週単位での変化」という言い方をします。病状や体調が、1週間前と比べて大きく変わっている、という意味です。 そして亡くなる1週間前になると、「日単位での変化」になってきます。毎日、状態が変わっていくのです。変化のスピードが速くなります。そして、亡くなる1~2日前になると「時間単位での変化」になってきて、特徴的な症状が現れます。


亡くなる直前の患者に現れる5兆候とは?


私たちはこれらのことを、亡くなる直前の患者さんに現れる5兆候と呼んでいます。 

具体的には、「意識混濁」「死前喘鳴」「下顎呼吸」
「四肢のチアノーゼ」「橈骨動脈の蝕知不可」の5つです。

 これらの兆候が現れてくると、私は「もうそろそろだな」と考え、ご家族に「いのちが今日、明日の可能性があります。できるだけそばにいてあげてください」とお話ししています。

最期まで患者さんの耳は聞こえているので、患者さんが好きな音楽をかけたり、家族がわいわい話したり、患者さんに声をかけたりすることはとてもいいことだと思います。 

多くの患者さんから、亡くなるまで普段どおりに過ごしていたいとよく聞きます。 家族にしてほしいことは、患者さんのそばにいて普通に過ごすことで。普通でいるということは本当に幸せなことなのです。 大切な方の死はとてもつらいことですが、この5兆候について事前に知っておくことで、看取りにきっと役立つと思います。 それでは、最期の5兆候について具体的にお話ししていきます。

 ■1. 意識混濁 

亡くなる1~2週間前から、眠っている時間が徐々に増えてきます。亡くなる数日前になると、ほとんど眠った状態になることが増え、呼びかけにも反応しないことも多くなります。これを意識混濁といいます。 

しかしそばに親しい人、大事な人がいることは感じられます。また、耳の機能は最期まで残ります。最近、人の声に亡くなる直前の人の脳波が反応した、という報告がありました。最期まで大事な人の声は聞こえます。私はご家族に「そばにいて、手を握って話しかけてあげてください。最期まで、あなた方の声は聞こえていますから」とお伝えします。 

■2. 死前喘鳴 

うとうとと眠ることが多くなってくると、唾液や痰がうまく飲み込めなくなるので、呼吸とともにゴロゴロという音が出て、あえいでいるように見えます。これを死前喘鳴といいます。 深く眠っているときに起こるので、ご家族が思うほど患者さんは苦痛を感じていません。表情などからも、つらさがあるかどうかは判断できます。もしご心配なら、主治医・看護師に尋ねて確認してもらうとよいと思います。 死前喘鳴が患者さんを苦しめているのではないかと思い、吸引を希望するご家族もいらっしゃいますが、無理に吸引することで、逆に患者さんを苦しめてしまいます。 死前喘鳴は患者さんの35%程度に起こり、亡くなる2日前くらいから出現するといわれています。私は看病にあたる方に、「無理に吸引はせず、口のなかに溜まったものをガーゼなどで拭ってあげてください」とお伝えしています。 

■3. 下顎呼吸 

さらに時間が経過すると、呼吸が荒くなり、顎を上下に大きく揺らすような呼吸になってきます。下顎呼吸という状態です。呼吸しているように見えても、胸は動いておらず有効な呼吸ではありません。

 この状態になると、意識はほとんどありません。しかし、患者さんは苦痛は感じていませんので、慌てずに見守ることが肝要です。下顎呼吸は95%の患者さんにみられ、亡くなる7~8時間前からみられることが多いです。

 ■4. 四肢のチアノーゼ 

亡くなる5~6時間くらい前には手足が紫色になったり、冷たくなったりします。これは心機能をはじめ全身の循環動態が低下するために起こります。これを四肢のチアノーゼといいます。この時期になると、尿もほとんど出ない状態となります。四肢のチアノーゼは80%の患者さんに起こります。 

■5. 橈骨動脈の蝕知不可 

橈骨動脈は手首にあり、触ると脈動が感じられます。橈骨動脈を触診し、拍動がまったくなくなったら、亡くなる2~3時間前だと思ってください。これはほぼすべての人に起こります。そして、呼吸停止、心拍停止、瞳孔散大・対光反射の消失という、死の3兆候を示したとき、その方に死が訪れます。 

それでも、本当に苦しまずに死ねるのか 看取り間近のご家族から、私がよく受ける質問のひとつに「最期は苦しくないのでしょうか」というものがあります。 遺族に行った最近の調査では、66%の遺族が死前喘鳴を見るのが苦しかったと答えています。64%が溺れているようだった、59%が窒息するのではないかと心配だったと言っています。ずっと見ていると息が詰まりそうだったと答えた遺族も57%いました。看取り間近のご家族は、患者さんのそばにいて、つらく感じていることが見て取れます。

 患者さんの最期は、ほとんどの場合、意識が混濁し会話ができなくなるので、自分からは苦しいか苦しくないかの意思表示ができなくなります。そのため、苦痛があるかないかは、表情などで客観的に判断するしかありません。 私はホスピス医になる前、ホスピスの実習に行ったとき、「死前喘鳴が起こっているときには患者さんはほとんど昏睡状態ですから、見た目ほどは苦しくありません。ですから、ご家族には苦しくないと説明したらいいですよ」と教わりました。 その後、ホスピスで多くの患者さんを看取らせていただいた際、ご家族には、死前喘鳴は苦しくありませんと説明してきました。実際に、死前喘鳴を起こしている患者さんを、私はたくさん看取ってきましたが、たしかに、見た目より苦しくはないと感じました。 

しかし、ただ苦しくはありませんよ、と説明するだけではご家族の不安は取れません。私は、死前喘鳴を起こしている患者さんを前にしているご家族の不安を受け取り、その不安に対処することが重要だと考えています。

 私が行っているケアの一例を示します。 病棟で終末期後期の患者さんの病室を訪問したときのことです。ご本人はほとんど意識もなく、死前喘鳴の症状を呈していました。ちょうどご家族もおられました。すると、ご家族が急に私に訴えてきました。 

父が苦しそうです。喉がゴロゴロと鳴っています。主治医の先生に伝えたんですけど、苦しくはないですよ、と言うだけでした。何とかしてください。父が苦しそうなのが不安です」と言いました。

 私は「そうですか、患者さんが苦しそうに見えますよね。不安に感じるのも無理はないですよね。具体的にどのあたりが苦しそうに見えるのか教えてくれませんか?」と聞きました。 

ご家族は「このままゴロゴロがひどくなって、喉に詰まってしまって窒息してしまうのではないかと心配です」と答えました。 私は、「それは心配ですね。それでは、一緒に見てみましょう」と言い、患者さんをご家族の前で診察しました。 

その後、私はご家族に伝えました。「意識はほとんどない状態です。しかし、肺や心臓はしっかり動いています。表情も穏やかですね。たしかに喉がゴロゴロといっていますが、これは意識がなくて、唾液や痰を飲み込めないので、口のなかで溜まってゴロゴロといっているのです。表情や全身状態をみても、患者さんは落ち着いていると思います。おそらく苦痛は感じていないでしょう。もし苦痛があるのなら、手足を動かしたり、血圧が上がったり、何らかの変化があるはずです。表情を見てください。苦しそうですか?」とご家族に聞くと、「苦しくはなさそうです」と答えました。

 そして私は「今の表情に注目してくだくさい。では口のなかの唾液を取ってあげましょう」と言って、私はガーゼで唾液を取りました。すると、ゴロゴロという音はなくなりました。 私は「どうですか、表情は変わりましたか?」と聞くと、ご家族は「いいえ、変わっていません。どちらも苦しそうには見えません。これは私たちもしていいんですか」 私は「ぜひしてあげてください。やり方はあとで看護師がお伝えします。いずれにしても患者さんの表情に注目してあげてくださいね」そして、「不安があったら何でも言ってくださいね。一緒にケアをしていきましょう」とお伝えしました。

 患者さんが苦しみながら亡くなっていったとご家族が思ってしまうと、患者さんが亡くなった後、遺族となったご家族の悲嘆は大きくなります。患者さんの最期が安らかだった、安らかに旅立ったと確信していただくことが終末期の緩和ケアには必須なのです。 ここでは、がん患者さんが亡くなるまでにたどるプロセスについて詳しくお話ししてきました。多くの方が、このプロセスをたどり、穏やかに旅立ちます。「苦しんで死ぬのはいやだ」と思っていた方の、死に対するイメージが変わればうれしく思います。 


『また、あちらで会いましょう』  ――人生最期の1週間を受け入れる方法  四宮敏章 著  かんき出版







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物質と「反物質」の違い測れる技術を開発 国際チーム

2025年01月31日 22時03分53秒 | 科学のはなし


 宇宙の成り立ちの謎に迫る、物質と「反物質」の違いを実測する技術の開発に日本人研究者らの国際研究チームが成功し、3月31日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

人工的につくれる反物質「反水素」の原子を絶対零度近くまで冷やし、その性質を水素原子と超精密比較できる技術だ。将来、水素と反水素の違いを測定できれば、ノーベル賞級の発見となる。


4・3・2021



 【写真】容器の中を通るレーザー(紫色)で冷却されている反水素原子1個の軌跡=カナダTRIUMF研究所のChukman So氏によるシミュレーション映像から  

宇宙誕生を説明する現在の理論では、宇宙の始まりでは物質と反物質が同量あったとされる。だが現在、反物質はほとんど見つからず、宇宙は事実上、物質だけでできている。 

 物質と反物質では性質に何らかの違いがあるためと考えられ、それぞれが吸収する光の色の違いでわかるはずとされるが、温度が高いと違いが隠れてしまう。そのため絶対零度に極めて近い温度まで冷やして観測する必要がある。最も簡単な物質である水素では「レーザー冷却」と呼ばれる方法で実現しているものの、その反物質である反水素ではできていなかった。





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立憲が“紙の保険証”復活法案を提出 「廃止は時期尚早」

2025年01月31日 21時03分44秒 | 政治のこと





立憲が“紙の保険証”復活法案を提出 「廃止は時期尚早」
1/28(火) 10:53配信




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TBS NEWS DIG Powered by JNN
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立憲民主党は28日、去年12月に新規の発行が停止された健康保険証を復活させるための法案を提出しました。


立憲民主党 中島克仁 衆院議員
「マイナ保険証に対する信頼、やっぱりこの不安をしっかり払拭しなきゃいけないと。そういう状況になるまでは、やはり紙の保険証、現行保険証を併用していくこと、これが大前提」


立憲民主党は、マイナ保険証について「利用率は25%と低迷し、国民に浸透しているとは評価できない」「紙の保険証の廃止は時期尚早」だとして、去年12月に新規発行が停止された保険証の発行を復活させるための法案を提出しました。


これに対し、平デジタル大臣は会見で、マイナ保険証について「政府としては比較的順調に進捗をしている」との認識を示し、「大きな方針の転換は必要ない」と反論しました。


TBSテレビ




立民、健康保険証「復活」法案を提出 「廃止は時期尚早」 マイナとの併用継続を訴え
1/28(火) 20:00配信


立民、健康保険証「復活」法案を提出 「廃止は時期尚早」 マイナとの併用継続を訴え
1/28(火) 20:00配信


カナロコ by 神奈川新聞
法案提出後に記者団の取材に応じる中谷氏(中央)ら=28日、国会内


 立憲民主党は28日、昨年12月2日に新規発行が停止された健康保険証を復活させる法案を衆院に提出した。提出した議員らは「現時点での保険証廃止は時期尚早」とし、当面の間はマイナ保険証との併用継続を訴えた。


 法案は、マイナ保険証の利用が低迷する現状では現場の混乱や国民の不安が生じる懸念があると指摘。従来の保険証発行を復活し、改めて保険証の廃止時期を検討すべきとした。マイナ保険証によるオンライン資格確認が安全、確実に行われる環境整備が整うことなどを検討し、廃止時期を定めるとした。


 提出後に記者団の取材に応じた中谷一馬氏(衆院7区)は、マイナ保険証導入後も政府の医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れている現状を念頭に「デジタル政策を推進する立場から、アナログとデジタルのバランスを取りデジタル社会を形成することが重要だ」と訴えた。


 県関係の提出者には早稲田夕季氏(4区)、阿部知子氏(12区)も加わった。


神奈川新聞社





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【最新研究】執刀医が男性だと女性患者の「術後死亡率」が32%高まることが判明

2025年01月31日 20時03分48秒 | 医療のこと
【最新研究】執刀医が男性だと女性患者の「術後死亡率」が32%高まることが判明


2022/01/26(水) 17:40:

【最新研究】執刀医が男性だと女性患者の「術後死亡率」が32%高まることが判明

 男性優位と言える医療の世界。
 やはり男性の医者のほうがより良い結果を残すものかと思いきや、外科医に焦点をあてた最新の研究によると、患者が「女性の場合」はむしろ逆なのだという。
 いったいなぜなのか?



ジェンダーは医療に関係するか


手術をしなければならなくなり、自分の執刀医を選ぼうというとき、いくつかの要因について考えるはずだ。費用はどのぐらいかかるか。予約はいつ頃取れるか。信頼できる筋からの紹介はあるか。世間の評判はどうか。 


うしたなか、医療格差について調べている医療研究者は近年、患者のケアの質に大きな影響を与えるかもしれない別の要因に注目している。担当医の「ジェンダー」である。そしてもしジェンダーが影響するなら、それはどの程度のものなのか。 医学雑誌「JAMA Surgery」に発表された論文によれば、執刀医が女性であるほうが、男性患者も女性患者も共に術後の結果が良好であることがわかった。



女性患者の場合は執刀医が男性か女性かによる違いがより顕著で、女性の執刀医による手術後の合併症率や再入院率、死亡率は、男性執刀医の場合に比べてはるかに低かった。 既存の研究でも、患者が受ける診療に医師の性別が与える影響が指摘されており、特に医師と患者の性別が同じである場合にその影響が大きいことがわかっている(研究者らはこれを「ジェンダー・コンコーダンス」と呼んでいる)。 

そもそも女性外科医の数が少ないという事実はある。全米大学協会の2019年度のデータによれば、一般外科医に占める女性の割合はわずか22%で、整形外科や神経外科になるとその数はさらに少なくなる。 

が、今回の調査結果で注目すべき点はそこではないと研究者らは指摘する。

 男性医師と女性医師で、診療内容に何らかの違いがあるから結果にも差が出ていると考えると、その違いを検証することは、あらゆる患者の術後の状態を改善することにつながるというのだ。 

「女性外科医の何が違うのか、彼女たちがどういう診療をしているのかを知る必要がある」と言うのは、今回の論文の共同著者であり、臨床疫学者のトロント大学准教授アンジェラ・ジェラスだ。

「そこで知り得たことから学べることがあるはずです」 すでに2017年に発表された論文でも、男性外科医よりも女性外科医の患者のほうが、死亡率や合併症率、再入院率が低いというデータが示されている。

だが今回、ジェラス、そして筆頭著者の泌尿器癌専門医でトロント大学助教のクリストファー・ウォリスが着目したのは「患者の性別」による違いだった。 2017年の論文の共同著者でもあるウォリスは、たとえば心臓発作など過去に行われた比較研究で明らかになったジェンダー間の差が、外科手術にも当てはまるのかを調べたかったのだという。 はたして、男性外科医と女性外科医による術後の状態の違いに、患者のジェンダーとの関連性はあるのだろうか?


男性執刀医による女性患者の死亡率が高い


この疑問への答えを見つけるため、研究チームは2007年から2019年の間に、カナダ・オンタリオ州で21種類の外科手術を受けた130万人以上の患者の記録を調べた。2937名の外科医によって行われたこれらの手術には、減量手術や人工股関節置換手術から、より複雑な心臓バイパス手術や脳外科手術まで含まれる。 

この調査で研究者らは、術後1ヵ月以内の合併症、再入院、死亡という、ウォリスいわく「患者にとって重要な意味のある」データに注目した。その結果、男性患者も女性患者も、執刀医が女性だった場合のほうが手術の予後が良好だった。

 しかし、男性患者の場合、男性執刀医による手術の結果が女性執刀医によるそれよりも良くなかったケースは15%と、さほど多くない。 一方、男性執刀医による手術を受けた女性患者は、術後の死亡率が女性執刀医の場合と比べて32%も高いことがわかった。 加えて、男性執刀医の手術を受けた女性患者は入院期間がより長くなる傾向があり、合併症率は16%、再入院率も11%高くなっている。

 この数字は決して見過ごせるものではないが、ウォリスは「すぐにパニックになるべきではない」と警告する。そもそもの術後の死亡率が高くないためで、たとえば女性患者が脳外科手術または血管手術を受けた後に死亡する確率は、女性執刀医の場合で0.9%、男性執刀医の場合でも1.2%ときわめて低い。 これまでも医師の性別による違いを研究してきたウォリスは、ある程度は男女外科医の間の差異を予想していたが、今回その差の大きさにびっくりしたという。

そして、そんなウォリス以上に驚いたのがジェラスだった。 ジェラスは「論文を書く前には2人でずいぶん話をしました」と言う。方法論やモデルについて何度も議論し、調査結果が妥当であることを確認した。そして患者の年齢、慢性的な健康障害、執刀医の経験年数と専門分野、手術が行われた病院の種類を含む他の要因を制御してもなお、男女間の格差は残った。 

この結果を受けて、「当然のことながら、今後はどのようにしてこの問題に関する研究を進め、医療の現場で格差をなくすためにどう進化すべきか、我々も考えることになるでしょう」とウォリスは話す。 



医療界の「男女格差」も一因か


ウォリスもジェラスも、今回の調査結果に見られる男性外科医と女性外科医の間の格差が「技術的」な問題ではないという点で一致している。すべての外科医はそのジェンダーに関係なく、同様の訓練と専門知識を得ている。それでも女性外科医のほうが良い結果を出していることに関する2人の見解はこうだ。

 ジェラスは、女性外科医の患者への接し方に違いがあるのではと推測する。さらに、術後により頻繁に他の専門領域の医師に相談したり、患者とコミュニケーションを取っていると考える。


こうしたプロセスは医師の診療内容を決定づけるものではあるが、必ずしも医学部で教えられることではないとジェラスは言う。 ウォリスは、女性の外科医のほうが、術後の合併症を含むさまざまな症状に気を配っているのではないかと考えている。特にそれが女性患者なら、なおさらそうではないだろうか。

他方で、ウォリスは外科分野への女性医師の進出があまり進んでいないことも一因ではないかと指摘する。

 「男性と比べて、女性が外科医になるのは容易なことではありません。障壁が高いからこそ、特に優れた女性だけが外科医になっていると考えることもできるでしょう」 研究者たちの間で言われる、いわゆる「外科医の性格」というものがある。外向性の高さや神経症的傾向など、他の領域の医師よりも外科医に多いとされる特性のことだが、この認識自体が男性に偏ったものだと研究者らは指摘する。

 2006年に実施された調査では、外科は「オールド・ボーイズ・クラブ(多数派の男性中心の排他的な世界)」的であるとして、22%の女性が進路にすることをためらったと回答していた。そしてそれを乗り越えて外科医になった女性も、差別やセクシュアルハラスメント、自分の能力に関する誤った思い込みに少なからず悩まされたことが、米国医科大学協会の調査から判明している。

 ウォリスは、今回の研究や既存の研究をふまえて、女性がもっと外科に進出しやすくなる環境を整えることが重要だと話す。

 「医療全体、そして外科における人材の多様化が、より良い結果をもたらすことは間違いありません。患者の多様性に対応できるのはもちろん、多様なアイデアを医療に持ち込むことができるからです」 一方でジェラスは、今回の研究が特定の医師に関する決定を下す材料となるべきではないと指摘する。

 「集団レベルのデータは、個々の外科医の診療を反映するものではありません。このデータが示しているのは、あくまでも、膨大なデータの中に無視することのできないある種のシグナルが存在するということです」 将来的にはさらなる研究を続けて、すべての患者の術後の結果を改善できるような、教育的介入につながればいいとウォリスは考えている。

 そんなウォリスは、個人的にも自身の診療を見直すことになったという。

 「男性患者と女性患者に対してそれぞれ自分がどのように接しているのか、違う接し方をしているのか、じっくり考えるきっかけになりました。どちらにも同じように接しているとしたら、それも問題だということになりますね」


この論文について、イングランド王立外科医師会は英紙「ガーディアン」に次のようにコメントしている。「興味深い結果。医師と患者の関係やコミュニケーション、信頼度に関してより詳細な調査が必要だろう」


 (以下略、続きはソースでご確認ください)
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雨の夕方です

2025年01月31日 17時03分12秒 | 日々の出来事
雨だと寒さは緩みますね❗



1・15・2023
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