カフェのステンドグラスの枠が傷んで来ていた。目隠しの壁にはツタがまいて、流れた時間が感じられる。
」玄関の扉もかなりの年代物と見れる。どちらも多くの時間の流れは感じられるが、私には悪い印象は無い。何故だろう。木は腐って土に帰るのが、自然な事だと知っているからだろう。扉もステンドの枠も、まだ当分は用を成す事は間違いない。滅びの美学が日本人にはあった。新しい物が一番良いとされる今日。しかし自然素材に関しては、時の流を通してしか得られない、風合いを楽しむ土壌が、昔から日本人にはあるのだ。『新しい物を疑え。』新しい物は、性能が以前の物より良いのが普通だ。だから新しい素材で作られた、家電や車は売れる。家もそうだろうか?確かに新しい素材の断熱材や、合板は性能が良いし、メンテナンスフリーで手間いらずだ。しかしその性能は、10~20年前後の事しか考えられていない事が多い。家は100年以上建っている可能性が高い買い物。後で、石綿や、原発のように安全では無かったと言われても、建て直す事は難しい。わたしが家を建てる時の素材選びで重要視しているのは、性能も大切だが、自然に帰る時に安全かと言う事。そう言う素材は得てして、紫外線や、風雨で痛みやすい。しかし風土に合った設計をし、手入れすると、驚異的な寿命を持つ。古くなっても違った美しさを感じさせてくれるので、飽きないし大切に出来る。そういう素材は身近にある土地の素材だ。地元の素材を使い、家を建てると、その土地の風景が作られる。そう、自然に帰る地元の素材を使い家を建てると、その土地の風景が出来るのだ。私は、そんな建築をこれからも建てて行きます。