書物の夢、印刷の旅
ルネサンス期出版文化の富と虚栄
ラウラ・レプリ 著
柱本元彦 訳
青土社 発行
2014年12月10日 第1刷発行
16世紀、印刷術が発明されてから数十年しかたたない時代のヴェネティアを舞台にした歴史ノンフィクションです。
ラファエロの肖像画でも有名なバルダッサール・カスティリオーネ、彼による出版史上最初のベストセラーの一冊『宮廷人』、その校正者(編集者)であるジョヴァンニ・フランチェスコ・ヴァリエールが主人公です。
序 快楽と罪悪
第一章
一五二七年秋、ヴェネツィア、書籍ブームの到来。
カスティリオーネの『宮廷人』が印刷にかけられようとしているが、出版者はまだ決まっていない。
第二章
碇とイルカの印刷所、アルド・マヌーツィオとその後継者たち。世代交代。校正者は誰か
碇とイルカを配した「Festina lente(ゆっくり急げ)」あらゆる判断をひとつひとつ熟慮したら速やかに実行せよという格言、の商標で知られる印刷所p62
グーテンベルクは葡萄を絞る臼から印刷機の設計を思いついた。確かにプレスの作業にはまさに葡萄絞りに匹敵する労力が必要だった。p71-72
印刷最初期の「校正者」
その仕事は校正の他に、手を加えて文章を磨くこと、誤りを取り除き、より良い言葉に改変し、印刷用の紙頁を「あらゆる細部にわたって彫琢する」ことだった。p76-77
第三章
『宮廷人』の仲間たち。
ローマに遊ぶヴェネツィアの文人たち。
誰もが蒐集熱に取り憑かれていた。
第四章
ついに校正者は仕事にとりかかる。
略奪されるローマからヴェネツィアへ
第五章
「熾烈な競争」。盗難、横領、暴力、虚偽、詐欺。
争う出版者たち。激怒する著者たち
出版業の黎明期、ヴェネツィアは、悪意に満ちた苛酷な競争にどっぷりと浸り、詐欺行為、盗難や偽造など日常茶飯事だった。p160
第六章
死者は横たわり生者はみなボローニャに赴く。
教皇と皇帝の到着。遺産争奪戦。
第七章
ペンは剣より強し。ヴェネツィアの文士たち。
第八章
奢侈、祝祭、放縦。『ヴェネツィア婦人』。
良家の子女と巷の噂。
1520年代に上演されたマキャヴェッリの『マンドラゴラ』
『マンドラゴラ』は満員御礼で、「あまりに多くの人が入場したので、第五幕を演じることができないほどだった」p220-221
第九章
一五四二年九月末。砕かれた野望。仮借ない共和国の審判。われらの編集者に悲劇が。
そして忘却、すべてが無に沈む。おそらく。