教養としてのゲーテ入門
「ウェルテルの悩み」から「ファウスト」まで
仲正昌樹 著
新潮社
2017年1月15日 発行
第一章 ウェルテルの「悩み」とは?
『若きウェルテルの悩み』は書簡体小説という形式をとる
第二章 人間関係における「親和力」とは?
「親和力」というタイトルは、最先端の知である科学の法則のような厳密さで、一般的には情念によって突き動かされる非合理の領域とみなされてきた恋愛を分析し、その法則を解明することを試みる、というスタンスを表明している。この科学的スタンスは、作品の随所で暗示されている。
第三章 「教養小説」における「教養」とは
『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』
教養小説というジャンルの模範とみなされている小説
教養というよりも、人格形成の意味合いが強くなる。主人公が(市民)社会の中で様々な体験を積みながら、人格を形成する過程を長期にわたって描くことが特徴
村上春樹の作品も、主人公の内面や世界観の変化に焦点を当てているという面で教養小説的であると見ることができる。
ヨーロッパの中世では、演劇は、カトリックなどの儀礼に付随する宗教演劇、あるいは民衆中心の祝祭の一部、旅芸人や吟遊詩人による大衆演芸などとして、分散した形で発展した。
専門的に職業化された俳優が登場し、一座を結成し、常設劇場で芝居が演じられるようになるのは、16世紀に入ってからである。p97
ドイツ語圏では18世紀後半以降「秘密結社小説」と呼ばれるジャンルが発展した。
「秘密結社」が文学の素材としてたびたび取り上げられるようになった背景として、現実にフリーメイソン、イルミナティ、薔薇十字団などの秘密結社がドイツ語圏での活動を拡大したことがある。p129
第四章 諦念の文学
『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』
この小説が中心がどこにあるか見えにくい、様々な小物語の集合体の様相を呈しているのは、ヴィルヘルム親子に課せられた、遍歴修業のルールに起因している。三日以上同じ屋根の下に留まってはいけないというルール。しかも宿を移るときは、前の宿から1マイル以上距離を取らねばならない。
第五章 近代の悪魔
戯曲『ファウスト』
悪魔を名乗る存在と契約し、「契約」を結ぶところから物語が展開していく。
三つの暗示
・悪魔というのは、学者ファウストの心の闇が実体化したものかもしれない
・伝説のファウストが代表する錬金術と、戯曲の主人公ファウストが代表する、近代的自然科学の「連続性」の問題
・近代的貨幣と錬金術との間の「連続性」という問題
第六章 ファウストが見出したもの
終章 ゲーテに何を期待すべきが
ゲーテの受容で中心的な役割を果たしたのは森鷗外である。
日本近代文学の形成において、鷗外がドイツのゲーテに相当する役割を果たした。
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