中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,192話 人間の多面性とは

2023年11月22日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「Bさんは言いたいことがあっても抑えてしまうところがあるから・・・」

言うまでもないことですが、私たち人間は、様々な顔を持っています。一所懸命に仕事をしているときと家族と接しているときなどリラックスしているときの顔では、大きく異なる人もいるでしょう。また、オンとオフに関わらず、気の許せる人とそうでない人に見せる顔も各々違うはずです。さらには、同じ人間でも普段は穏やかにふるまっているような人でも、自分の思い通りにならないことがあると突然豹変し怒鳴ったりするような人もいて、周囲が呆気にとられてしまうようなこともあります。

さて、冒頭の言葉はある企業の研修担当者2人のうち、Aさんがもう一人のBさんを評して言った言葉です。Aさんから見たBさんは、自分の言いたいことを表に出すよりも、ぐっと抑えてしまう人という印象のようですが、普段私がBさんと接している中で持っている印象はAさんとは全く異なり、自分の考えを正々堂々と話すことができる人というものです。このようなことはよくあることなのかもしれませんが、私のBさんの印象とAさんからBさんへの印象は、まるで異なっているということです。

先日、奈良県明日香村にある橘寺を訪れる機会がありました。橘寺は、聖徳太子が生まれたとされているお寺で、今回は太子の事績を描いた聖徳太子絵伝も観ることができました。ところで、この橘寺には「二面石」という高さ1mくらいの飛鳥時代の石造物があります。二面石の名のとおり、右に善面、左に愚面が彫られていて、私たちの心の二面性を表現しているのだそうです。これが示しているように人間には様々な「顔」があり、意識するしないに関わらず、接する人によってそれを使い分けているのではないでしょうか。もちろん、人間ですから気が合う人や合わない人がいて、当然のことながら気が合う人と接しているときの方が二面石でいうところの善の面が多く表れ、その逆もまた然りということなのではないでしょうか。

私は、定期的に仕事で昇格候補者の面談を担当したり、就職試験の集団討議の面接官を担当したりすることがあります。面談では、限られた時間に候補者の経験を質問したり、管理職としてどのように活躍したいのかなどについて確認したりしています。また、集団討議の中ではメンバー同士のやりとりの様子を観察しながら、個々のコミュニケーション力やリーダーシップ等の有無を確認しています。

しかし、先述のとおり人間には様々な面があるわけです。面談や集団討議において、いわば善の面ばかりを出している候補者に、それ以外のどのような面がありそうなのかを探ることも面接官としての大切な任務だと考えています。人には様々な面があることを踏まえ、できる限り多くの面を引き出して、それを的確に評価することがその後のその人の成長にも影響する可能性があるわけですから、気を引き締めて臨まなければならないと改めて思っています。

人は、一つの面だけで理解や評価をすることはできないこと、本人ですら気づいていない別の顔をも持ち合わせているかもしれないこと、同時に他人からの働きかけや本人の意識の持ちようで、良い方向にもそうでない方向にもいかようにも変えることができる可能性も持っているということを考えると、人間とは実に奥が深い存在なのだなと改めて感じています。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,187話 藤井八冠の肯定的な生き方からの刺激

2023年10月18日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

藤井聡太さんの史上初の八冠全冠制覇の達成以来、日本中が大いに沸いています。プロ入りしてから数々の偉業を成し遂げてきている藤井八冠ですので、将棋に日頃は特段関心のない人(私自身もですが)であっても、その活躍にはただただ「すごい」「すばらしい」と感嘆する以外ないように感じます。

このように多くの人を魅了している藤井八冠ですが、その魅力は将棋が強いことだけではないように私は思っています。これまでの藤井八冠についての様々な報道等を確認してみると、意外にも勝敗そのものに対するこだわりはあまりなく、それゆえに勝敗には一喜一憂しない。重視しているのは、勝敗よりもその内容とのことです。したがって、勝負で負けたときには内容を振り返ることはしても、負けたことに対する気持ちの切り替えは早いのだそうです。さらには1つの対局が2日にわたることもあるわけで、過密日程を難なくこなせる精神力、集中力、そしてそれらを支える体力も強靭であるそうです。

このように、もはや超人的と言ってもいいような強ささえ感じられる藤井八冠ですが、これまで見聞きした報道の中で私が最も印象に残っているのは、その人間性や生きる姿勢のようなものについてなのです。少し前になりますが、2023年4月3日(月)の朝日新聞夕刊の取材考記の記事に、藤井八冠の言動には徹底して負の要素がなく、他者や世界に対して根源的な肯定を貫いていること、人を否定したりマイナス感情を示したりすることがないことなどについて書かれていました。21歳の若者が棋士として頂点を極めただけでなく、これほどの地位や名声を得ても決して傲慢にならずに、今もこうした人間性を持ち続けていることに驚いてしまいます。

藤井八冠のこうした人間性はいかにして形成されたものなのか、それは他者には知ることのできないものなのかもしれませんが、この人間性こそが棋士だけでない全ての強さの根源のように私には思えるのです。

では、こうした藤井八冠から私たちが日々の生活や仕事の中で何かしらのヒントにできるようなことはありそうでしょうか。私自身が意識的に取り組みたいと考えているのは、他者と自分を比べないということです。人は人、自分は自分。調子のよい時もそうでないときも、思うようにいかないことがあったとしても、それに惑わされたり翻弄されたりせずに、淡々と生活したり、仕事に向き合うということを大切にする。こうしたことが大切なのではないかと、改めて思っています。藤井八冠から受けた刺激により、簡単なことではないのかもしれませんが、まずここから始めてみようと考えています。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,185話 自己肯定感とはどういうことなのか

2023年10月04日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「あなたが仕事において、やる気が出るのはどういうときですか。」

これは、弊社が担当させていただく若手から中堅を対象にした研修の中で、度々取り組んでいただく演習のテーマです。それに対する受講者の回答で圧倒的に多いのが、「周囲からほめられたとき」、「上司から認められたとき」です。

確かに、周囲からほめられたり認められたりすることはとても嬉しいことですので、それ自体を否定するものではありません。他者の期待に応えて、他者に褒められたり認められたりすることによってやる気になる、その結果として自分を肯定する気持ちになるということは理解できますが。しかし、一方でもし他者からの承認が得られなければやる気を出すことができないということならば、それは他者依存の状態であるということです。

諸外国と比べ、日本は自己を肯定的に捉えている者の割合が低いと言われるようになって久しいです。実際に、内閣府が平成25年度に行った日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査においても、自己肯定感(自分自身に満足している)は45.8%であり、他の6か国の70~86%に対してかなり低い数字となっています。

それでは、近年注目されることが増えてきているこの自己肯定感とは、具体的にはどのようなことを言うのでしょうか。自己肯定感の提唱者の立命館大学の教授の高垣忠一郎氏によると、自己肯定感とは「自分が自分であって大丈夫」ということであり、「ダメなところをたくさん抱えると自分であっても、そういう自分をゆるし、あえて認めてやる」ことなのだそうです。(「高垣忠一郎(2015)「生きづらい時代と自己肯定感」新日本出版社」)

そのように考えると、他者から承認を得ることを優先するのではなく、ダメなところも含めて今のありのままの自分を受け入れられるようになると、自分に対してOKが出せるようになり、その結果として自らのやる気をも創出できるようになるということです。

最近では自ら積極的に発言することを躊躇したり、一歩前に出ることを遠慮したりしてしまうなど周囲の目や評価を気にするあまり、生きづらくなってしまっている人が少なからずいるようです。しかし、それは周囲を気にするあまり他者を優先せることになってしまい、結果的に自らを大切にしていないことになってしまうように思います。

時には他者の意見や他者からの承認に対して耳を傾けることももちろん重要なことですが、それによって自分が二の次三の次になってしまうようなことは、自分を生きていることにはなりません。まずは、日常の様々な場面の中で周りの声を気にしすぎるようにしない、自分自身のことを大切だと思って過ごしてみる、そしてダメなところを含めて自分に対して積極的にOKを出すようにしてみることから始めると、今よりも前に進みやすくなるのではないかと思うのですが、皆さんはどのように思われますか。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,183話 精神のリソースを使用しすぎると、自我消耗する

2023年09月20日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

私たちは仕事や作業を丁寧に行ったつもりであっても、ある一定の割合でミスをしてしまうことがあります。その理由は、集中力の低下であったり疲労であるなどいろいろありますが、一番の理由として「自我消耗」を起こしてしまっていることが考えられます。

自我消耗(Ego depletion)とは、認知バイアスの一つであり「精神のリソースは有限であり、使用しすぎるとスタミナ切れを起こしてしまう」というものです。要するに、「何かについ夢中になっていたりすると、他のことに気がまわらなくなる」という脳の癖のようなものと言えそうです。

先日、東大薬学部の池谷裕二教授がTBSの番組「情報7days」の中で、この自我消耗のことを話題にしていました。旅行サイトの詐欺が増加しているとの紹介があったのですが、旅行の予約サイトに実際に予約するという行為は非日常のことであるため、それに頭が一杯になっていて、ちょっとしたことを見落としてしまうことが原因で、詐欺に引っかかってしまうようなことがあるのだそうです。

教授によれば、セルフコントロールをしたり意志を働かせたりするような力は使用すると徐々に減っていってしまい、その力は段々と弱くなっていってしまうとのことです。そのため、自我消耗に陥りやすいのは午前よりも午後が多く、さらには午後の方が疲労がたまってきているため、冷静に対応しにくいのだそうです。

そのように考えると、仕事のみならず娯楽であったとしても、休憩も取らずに無我夢中でやり続けてしまうとスタミナ切れを起こしてしまい、判断を誤ってしまったりミスを連発してしまったりするなど、マイナスな状態を引き起こしてしまう可能性が高いということが分かります。特に初めての経験をする場合などでは、非日常の行為に臨むことから普段以上の注意を心がける結果、自我消耗もより激しくなると考えられます。

それでは自我消耗に陥らないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。それには様々な考え方があるかと思いますが、まずは精神のリソースを温存するためにしっかりと睡眠時間を確保すること、そして1日の中で定期的に休憩を取って積極的にリフレッシュすることです。また、特に初めての経験をする際には事前に十分な余裕をもって準備をし、取り組むことが必要だと考えます。

しかしながら私は最も大切なことは、私たちの精神的リソースには限界があり、使用しすぎるとスタミナ切れを起こしてしまうということをきちんと認識して、それを踏まえて物事に臨むという心構えを常に持っておくということではないかと思っているのです。

最近、ミスをしたり判断を誤ってしまうことが増えたと感じている人は、まずは自身の精神的なリソースの量を想像し、もしかして自分は自我消耗を起こしてしまっていないだろうかと気にしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,181話 若くして管理職になった人の年上部下への言葉遣い

2023年09月06日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

近年、年功序列からの脱却や若手社員の意欲の向上、そして組織の活性化などを目的に、20代を管理職に登用する企業の報道を目にすることが増えています。

諸外国と比べ、管理職を希望する人の割合が相対的に低い日本の組織にとって、若手を早い段階で管理職にすることによって、若手自身のモチベーションを上げることができたり、組織の活性化につながったりするのであれば、さまざまなプラスの効果が期待できるという意味で、良い制度なのではないかと思います。

私自身、過去に20代後半と思われる若手の上司と、40代半ばくらいの部下の組み合わせの方々と打ち合わせをした経験がありますし、20代で管理職になった人が、はるかに年上と見受けられる部下と打ち合わせをしているところをテレビで見たこともあります。いずれのケースでも、若くして管理職になった人がその責務を担うために、一生懸命に取り組もうとしている様子が伝わってきました。

年下の上司と年上の部下という組み合わせ自体は今に始まったことではありませんので、珍しいものではないのですが、最近の大きく年齢ギャップのある年下管理職と年上部下の組み合わせを見ていると、気なることがあります。それは、若手管理職による年上の部下に対しての言葉遣いなのです。具体的には、年下管理職が、「○○はその後どうなっているの?」、「△さんは、そういうことはとても得意だよね~」など、まるで友達と話しているときのように、とても「フレンドリー」な言葉遣いをしているのです。

年下管理職からそのような言葉遣いをされている当の年上の部下自身に違和感がないのであれば、特段の問題はないとも言えます。しかし、私は年下管理職のこうした馴れ馴れしい言葉遣いには、上から目線の物言いのようなものも感じられて、どうしても違和感を覚えてしまうのです。

では、こうした点を踏まえて、今後年下管理職はどのように年上部下に接していけばよいのでしょうか?私は最低限のビジネスマナーとして、まずは日常の会話の中で「です」、「ます」の丁寧語を使うことをお勧めしたいと思います。もちろん注意や指示をする必要があるときには、たとえ相手が年上であっても上司として言うべきことをきちんと言わなければなりません。しかしその場合であっても、言葉遣いは丁寧語を用いることが重要だと考えています。年長者として人生の先輩、組織においては自分よりも経験が長い先輩として貴ぶべき存在として年上の部下に一定の敬意を持って接するということが、年下の人間として地位にかかわらず心がけるべきものであり、チームのまとめ役である管理職の役割としても重要なことなのではないでしょうか。

若くして管理職になるということは、その能力が認められて評価されたことの裏付けであり、素晴らしいことです。だからこそ、決しておごることなく、あせらず地道に管理職としての職務を担っていただき、さらなる成長を遂げてやがては組織を担うような存在になっていただきたいと思っています。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,179話 悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである

2023年08月23日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「孤独や孤立感を持ってしまいます」

これは、ここ最近カウンセリングを担当した際にクライアントから聞くことの多い言葉です。

若手を中心に孤独だと感じている人が少なくないようです。実際、政府が2万人を対象にした2022年の孤独・孤立の実態調査の結果によると、孤独感が「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と答えた人は計約40%に上り、初めて調査を実施した21年の約36%から増えたとのことです。(日本経済新聞 2023年3月31日)

孤独や孤立感を感じる背景にはいろいろな理由があるのでしょうが、増加している一番の原因はやはりコロナ禍により行動制限を強いられたこと、それにともないテレワークの導入が進んだことなどにより他者との接触の機会が減り、コミュニケーションがとりにくくなったという経緯があるように思います。それまでの生活と比べ他者との接点が大きく減った結果、たとえば職場内ですぐに他者に相談をしたり、 仕事の前後に気軽に話をしたり、あるいは協力し合ったりということが難しくなってしまいました。その結果として孤独感や孤立感を感じる人が増えたというのは致し方がないといえるのではないでしょうか。そのように考えると、人間とは人とのつながり、他者との接触によって生かされているものなのだと改めて思います。

新型コロナの流行は未だ終息してはいないものの、一時のような行動制限が解除された今、気持ちを切り替えて自ら積極的に動き始めた人も多いとは思います。一方で一旦縮小した行動を再び元のように戻していくことはそれほど簡単なものではないようにも思います。やらない・縮小した状態に慣れてしまったものに対して具体的なアクションを起こすには、やはりきっかけと相応のエネルギーが必要になるように感じます。

それでは、なかなかプラスの気持ちになれないときに、私たちはどのように気持ちを切り替えていけばよいのでしょうか。

そのようなときに私が思い出すのが、フランスの哲学者のアランの言葉です。アランには様々な名言がありますが、その一つに「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」というものがあります。

私はこの言葉を「悩んだり落ち込んだりすることは誰にでもあり、もちろんそれ自体は悪いことではないけれど、そのままずっと何もしないでいると気分に支配されてしまう。逆に、そうした状態から抜け出すためには、自らの意思でものごとを楽観的に考え行動することで可能である」という意味に捉えているのです。ではそのきっかけになり、エネルギーとなるのは何なのかと考えたときに、私はやはりそれも「他者とのつながりであり、コミュニケーションである」と改めて考えているのです。

今、孤独や孤立を感じているという方、決して簡単なことではないかもしれませんが、まずは意識して気分を変えるように何かをしてみる。(たとえば、毎日少しずつ体を動かしてみることなど)そして、自分から身近な誰かに、ちょっとずつでもいいので話しかけてコミュニケーションを取ってみる。これらを通じて新たな一歩を踏み出すことから始めてみませんか。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,176話 退職理由は「自己実現」?

2023年07月26日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「自己実現のためです」

これは、最近ある企業において退職を表明した人(若手社員)の理由です。この例に限らず、弊社が新入社員研修や若手の社員研修を担当させていただいている企業でも、研修の受講者として私がお会いしたことがある人が退職する際に、この言葉が理由として挙げられることが多いとのことです。

「自己実現」とは具体的にどういうことを指すのか、あらためて辞書で確認してみたところ、「自分の中に潜む可能性を自分で見つけ、十分に発揮していくこと、それへの欲求」とあります。

この自己実現ですが、提唱者として有名なのがアメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)です。マズローは、「欲求5段階説」では、「人間は自身の自己を実現するために行動する」という前提にもとづいて、人間の欲求はピラミッドのような構造を持ち、低階層の欲求が満たされれば、さらに高次の階層の欲求を満たすように行動すると述べています。具体的には、第一段階の生理的欲求に始まり、第二段階の安全性の欲求、第三段階の社会的欲求、第四段階の承認欲求、そして最高峰の第五段階として自己実現の欲求としています。自己実現の欲求は「自分の人生観に即したあるべき自身」を実現したいという欲求なのです。

そのように考えると、退職の理由が自己実現というのは目標に向けた一歩を踏み出すということになることから、気持ちよく送り出してあげたいと思うのですが、一方で気になることもあります。それは、退職する際に「本当の理由を伝えてもメリットがない」という理由で、敢えて本心を言わずに組織を去る人が43%もいるというデータがあるからです。2022年に株式会社エン・ジャパンが行った調査によると、退職の本当の理由は「人間関係が悪い」35%、「給与が低い」34%、「会社の将来性に不安」28%・・・などだそうですが、実際に組織に理由として伝えたのは、「新しい職種にチャレンジしたい」30%、「別の業界にチャレンジしたい」18%などです。本当の理由を伝えなかった理由としては、「円満退社したかった」43%、「話しても理解してもらえないと思った」36%が続くそうです。

冒頭で紹介した例の、「自己実現のため」という理由の真偽のほどはわかりませんが、本当に自身の可能性にかけて新たな世界に進んでいくということであるならば、今後の飛躍を心から応援したいと思います。

一方で、入社からまだ数年ほどしか経っていないのに、自己実現を求めて新たな世界を目指すというのは、少々決断が早すぎるのではないかと思わなくもありません。もし退職の本当の理由が職場や仕事への何らかの不満や不安であるのならば、組織としても彼らがその決断をするまでに打てる手は少なからずあると思いますし、今の仕事を通じて自己実現できることも必ずあると思うからです。

上司や先輩社員が積極的にコミュニケーションを取り、若手社員が悩んでいることや困っていることを聞き相談に乗りながらしっかりフォローをし、同時に自分の仕事の面白さにも気づいてもらう。あわせて、組織としても改善すべきところは改善をして、また将来の展望を明確に示すなどを通じて、若手の不満や不安にきちんと向き合っていく。企業の将来を背負っていく大切な存在である若手社員の早期退職という事態を極力少なくしていく、そのための努力がこれまで以上に求められているのだと考えています。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,166話 他の人がどう思うかではなく、自分が好きで選んだ仕事を楽しんでやる

2023年05月17日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たとえば映画に出たとして、10人が映画を見てくれたら10人が好きっていうことはない。何人かは木村佳乃の顔が嫌い、声が嫌い、まず演技を見てもらう前に。という人もいるし、もちろん作品を見て木村佳乃の演技が嫌いだという人もいる。また、好きだと言ってくださる人もいるけど、評価って本当にバラバラ。何が大事かって、自分が好きでやってることが大事で、評価ばっかり気にしていたら、それこそ心が持たないような気がする。何が大事って、自分が好きでやっているという、その気持ちが一番大事だと思う。」

これは、5月15日に放送されたNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」にゲストとして出演した、女優の木村佳乃さんの言葉です。高校生から「メンタルの持ち方はどうしているのですか?」と質問されて答えたものです。

「何が大事かって、自分が好きでやってることが大事」と語ったときの木村さんは特に気負ったところもなく、とても清々しい表情でした。この言葉を聞いて私が感じたことは、「自身の仕事を好きな気持ちで行っていることは幸せなことだな。そして、そうした仕事を自らつかんだのは木村さん自身なんだな」と思いました。というのは、以前他の番組で木村さんは学生時代に女優になりたいと考え、伝手を頼って現在所属している事務所の社長に「女優になりたい」と訴え、その結果社長は木村さんの一途な思いに応えるべく事務所を開設したということを聞いたことがあったからです。木村さんは女優になりたいという夢をかなえるべく主体的に動き、その結果、夢を実現し、現在その仕事を心から楽しんでやっているわけです。

私たちは「他者から認められたい、評価されたい」などと、とかく他者からの評価を優先し自分がどうしたいのか、どうなりたいのかということを軽視してしまうことがあります。

他者の考えを大切にしたり、その評価を気にしたりすること自体はもちろん悪いことではありません。しかし、そこに重きを置きすぎると自分の気持ちや考えは二の次となってしまい、そもそも誰のために、何のために頑張っているのかという大事な本質を見失ってしまうことがあるのではないでしょうか。

では、私たちが自身より他者の評価を優先してしまうことがあるのはなぜなのでしょうか?

理由は様々とは思いますが、日本には古今、個よりも集団を大切にしたり出る杭は打たれたりするという風土が多かれ少なかれあるように思います。つまり、周囲に受け入れてもらいうまくやっていくためには、自分の考えよりもまず他者がどのように感じるのかを考える他者優先の習慣が身についてしまっている傾向が少なからずあるように思えます。もちろん、集団を大切にすることは悪いことではないのですが、最近は周囲の評価を気にしすぎるあまり、窮屈な生き方になってしまっている人が少なくないように思えるのです。

言うまでもないことですが、私達の人生の主役は自分自身です。他者がどのように思うかという他者評価は一旦脇において、まず「自分がどうしたいのか、どこへ向かいたいのか、最終的にどのようになりたいのか」を考えることの大切さは、言うまでもないことです。

木村佳乃さんの「他の人がどう思うかではなく、自分が好きで選んだ仕事を楽しんでやる」という言葉を聞いた高校生が「あのとき木村佳乃さんから言われた言葉が自分の人生にプラスの影響があった」と思う日が来るのではないかと思うとともに、自分自身もいろいろ考えさせられた番組でした。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,163話 配属先にかかわらず活躍するためには

2023年04月19日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「どういう部署に配属されたとしても、そこで工夫して仕事をして、活躍するんです」

これは以前、私がある企業の管理職昇格の選抜試験の面接官をした際に、ご担当の方からお聞きした言葉です。面接では、昇格候補者に対して課題をどのように克服をしてきたか、今後どのような管理職になりたいかなど、過去、現在、未来の視点から様々な質問をしましたが、受け答えを通して一人一人の仕事の進め方や対人折衝の仕方など、短時間であっても仕事への向き合い方をイメージすることができました。

面接後には昇格者を決定することになるのですが、あらためて候補者のキャリアを確認すると、実に様々です。いわゆる花形と言われる部署を歩んできた人がいる一方、大半の人は自身の置かれた場所で一所懸命に仕事を取り組んで、ここまでキャリアを築いた方々でした。

話は変わりますが、4月も中旬が過ぎて企業によっては新入社員研修が終わり、それぞれの部署に配属され仕事を始めているタイミングだと思います。私も先週まで新入社員研修を担当させていただいていましたが、新入社員の中には希望部署への配属が決まり喜んでいる人がいる一方、希望とは全く異なる部署への配属となり、少々がっかりしている人も見かけました。

それでは、多くの人が希望する部署とはどういう部署なのでしょうか?業種業態にかかわらず、今も昔も人気があるのは、支社や支店よりも本社にある部署、さらに本社では企画部門や商品開発、広報、人事のようです。これらの部署は、学生時代でも比較的仕事がイメージしやすいため、人気があるのではないかとも想像します。

では、そうした人気の部署に配属される人は、どういう人なのでしょうか?これは、必ずしも資質が高い人が配属されるとも限らず、欠員補充の要素も含めてあくまで組織全体のバランスの中で決まるものですので、一言では言えないと思います。また、当然のことながらキャリパスに基づき今後の異動もあるわけですから、新入社員には初めての配属にあまり一喜一憂しないでほしいと思います。

そこで、希望部署ではなかったためにいきなりモチベーションが下がってしまったという人に私がお送りしたいのが、冒頭の言葉です。どういう部署に配属された人であっても、まずは与えられた場所で精一杯頑張ってみるということです。そして、これは新入社員だけに言えることではなく、入社後のジョブローテーションにおいても言えることです。

まずはしっかりと仕事を覚える。そして、一つ一つの仕事が部署の中でどういう役割を果たしているのか、この仕事が滞ったらどういうマイナスの影響を与えてしまうのかなどについて把握し、その上で部署の中で自分に何が求められ何ができるのかをきちんと理解する。また、周囲にお手本にしたい人はいるか、反対にこういう風にはなりたくないと感じる人はどういう人なのか等々、どのような部署であっても本人のやる気次第でいくらでも学ぶことができるのです。

新しい職場でモチベーションが下がってしまったという新入社員の皆さん。これは長いキャリアの中の一つの場面なのです。まずは気持ちを切り替え、前述のように仕事に取組み、自分なりのやりがいを見つけるように頑張ってみてください。そしてぜひ、今後の新入社員のお手本とされるような人を目指していただきたいと思います。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ


第1,159話 部下よりも経験が少ない業務を担う際には

2023年03月22日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「経験のない仕事の部署の管理職になるので、少々不安です。」

まもなく4月、新年度を迎えますが、弊社が研修を担当させていただいている組織のご担当者数名から、異動の連絡を既にいただいています。多くの人が異動を前向きに捉えているとのことですが、中には冒頭のように新天地での仕事に不安を抱えている人もいらっしゃるようです。

さて、ご存知のとおり、本日ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝で、日本代表「侍ジャパン」が米国を撃破し、2009年大会以来3大会ぶりに世界一になりました。熱き戦いで日本中を沸かせた侍ジャパンでしたが、私はこの勝利をもたらした栗山監督の采配に注目をしていました。

栗山監督のキャリアや活躍は多くの人がご存知だと思いますが、私自身はこれまで様々な活躍をされてきている中、プロの選手としての活躍自体は6年間と極めて短いにもかかわらず、監督としてたくさんの実績を残していることに関心がありました。栗山監督は現役引退後にまず解説者やキャスターになり、次に大学で教鞭を振るっていました。プロ野球の指導者としては日本ハムの監督がスタートですが、監督就任1年目にリーグ優勝を果たすなど、指導者として当初から目覚ましい活躍をされています。

それではなぜ、栗山監督は選手としての活躍の期間が短かかったにもかかわらず、指導者として結果を出し続けられているのでしょうか?これまでに様々なメディアで語っている栗山監督の言葉から私なりに想像すると、チームの勝利と選手の育成を同一線上でとらえていて、育成に時間を惜しんでいないように見えます。さらには、野球の技術だけでなく選手が人としても成長できるような働きかけを積極的にしているそうです。具体的には、選手とのコミュニケーションはコーチに任せずに自ら直接話をしたり、各選手に直接期待を伝えたりしているとのことです。また、自分自身の「学び」もおろそかにはしていないそうで、「人としてどのように生きるか」ということに対してはハウツー本ではなく論語等を読み、同時に選手にも「論語と算盤」を読むことを進めたりもしているのだそうです。

加えてチームとしての課題も徹底的に追及し、優勝したらそれでよしとするのではなく、さらなる高みを目指して絶えず課題の解決を図っているということです。2016年に日本シリーズで優勝した際には、「優勝したからこその課題が見えてくる」と語るなど、優勝したときでさえ、新たな課題も認識していらっしゃったのです。

こうした栗山監督の取り組みを見ていると、ビジネスパーソンが異動により新天地で管理職として新たな職務を担う際、部下よりも経験が少ない業務を担うことになったとしても、過度に不安にならなくても大丈夫と言えるのではないかと思うのです。仮に部下の方が専門業務の経験値が高く知識が豊富であったとしても、組織における管理職としての使命(目標)を達成するために積極的に部下をやる気にさせるための働きかけをする、部下を育てる、そして自らの言動に説得力を持たせるための努力を続ければ、必ずや成果はついてくると思います。

侍ジャパンの優勝をお祝いするとともに、4月から新天地で活躍される方々に対し、陰ながら心よりのエールを送りたいと思います。

お問い合わせ【株式会社人材育成社】 

人材育成のホームページ