中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,042話 「レジリエントな人」になるには

2021年07月28日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

紆余曲折を経て始まった東京オリンピックですが、このところ日本人選手が目覚ましい活躍を見せており、私の周囲でも盛り上がってきています。中でも、私が今後も自分の中で印象に残り続けると感じているのが、卓球の混合ダブルスです。

ご覧になった方も多かったと思いますが、水谷隼・伊藤美誠ペアのドイツ戦、中国戦は、試合開始直後は対戦相手に圧倒的にリードされたのにも関わらず、最終的に逆転して勝利を勝ち取ったのです。

特に伊藤選手はまだ20歳という年齢に関わらず、両試合におけるあの強靭な精神力に圧倒されました。毎試合伊藤選手の戦う姿を見ていて、実に「レジリエントな人」だと感じました。

この「レジリエンス(resilience)」、まだ一般的ではないかもしれませんが、困難な問題、危機的な状況、ストレスといった状況に遭遇してもうまく適応できる心理的な特性のことです。近年は人事部門において比較的使用されることが多くなってきています。

もともとは物体の弾性を表す言葉ですが、それが心の回復力を説明するものとして使われるようになったものです。それゆえに逆境や困難に押しつぶされることなく外的環境に順応して適応する力、精神的回復力と訳されることもあります。

具体的には、未来に対して肯定的な期待をイメージしたり、物事に対する興味や関心を幅広く持てたり、感情のコントロールが適切に行えたりする特性です。レジリエンスが高い人は、たとえ困難なことや脅威に直面しても、一時的には精神的なストレスを感じることがあってもそれを抑えて、乗り越えたり適応できたりすることができると言われています。

伊藤選手が当初は不利な状態であっても果敢に攻め続け、最終的に勝利につなげられる精神的な強さは天性のものなのか、親の影響なのか、もしくは幼少時代からの努力の積み重ねが生んだものなか、ぜひ聞いてみたいところです。でも、もしかすると本人にもわからないのかもしれませんね。

では、今後私たちが仕事や日常生活の中で自身のレジリエンスを少しでも高めるためには、一体どうすればよいのでしょうか。

当然、人によってポイントは違うでしょうし、その道筋も決して簡単なものではないだろうと思います。しかし、日常の生活の中で何らかの逆境に出くわしたときに、自分がどのように感じてどう対応しているのか、まずはそこをしっかり意識してみるところから始めてみるのが良さそうです。

これから佳境を迎える競技も多いオリンピックです。純粋にスポーツを楽しむ視点のみならず、試合に臨んでいる選手のメンタルの強さなどに注目して見るのも、また興味深いと思います。

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第1,041話 組織のトップの責任の取り方

2021年07月25日 | 研修

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「すべての責任は私にあります」最近よく(?)聞く言葉です。今回のオリンピックでのごたごたに関して、組織のトップにある人たちはどのように責任を取るのでしょうか。不謹慎かもしれませんが、興味津々です。とはいえ、今まで同様な事態で「ああ、あの人はこうやって責任を取ったんだ」と納得できるような行動を見たり聞いたりした記憶がありません。

「謝罪して、辞任する」これがよくあるパターンです。では、謝って辞めれば責任を全うしたと言えるのでしょうか。また、「しばらくは自分が指揮をして再発防止策を徹底すること」が責任を取ることだという人もいますが、結果的にその地位にずるずると留まっているだけのケースもあります。

一方で、辞めたり制裁を受けたりすることではなく、失敗が生じた経緯をきちんと調査し、対応策を話し合い、しかるべき人材にバトンタッチをすることだ、という考え方もあります。ビジネスにおいてはこうした考え方の方が合理的でしょう。

この場合、最も大事なのは失敗の原因をしっかり探ることです。できる限り広範囲に、そして詳細に事実を集めます。それを文書にしておくことも必要です。かなり時間と手間のかかる作業ですが、その成果は非常に大きく後々まで役に立ちます。

ただし、原因の追究は「犯人捜し」であってはいけません。

誰かをスケープゴートにしてしまうことほど危険なことはありません。気に食わない奴のせいにしたい、新人のせいにしてしまおうなどと考えるのは絶対にやめるべきです。「人」のせいにするのは簡単ですが「人」が変わればまた同じように失敗します。失敗の9割以上は「誰がやっても同じように失敗する」ものだからです。

失敗の原因は「仕組み」にある場合がほとんどです。仕組みとは明文化された手順だけではなく、暗黙の了解、しきたり、約束事といったものも含まれます。そうしたことをすべて理解している人ならいざ知らず、ほとんどの人は何か1つのことを知らずに、あるいは忘れたりしたりして「失敗」のネタを仕込むことになります。

仕組みを精査するためには「時間と手間のかかる作業」ができるチームが必要です。そのメンバーは特別優れていなくても、地道に仕事をこなす人たちであれば良いのです。ただし、細かく記録を取っておくことができる人はチームに必須です。

しっかりとした記録ができれば、再発防止策の策定は難しくありません。

上位の役職にある人はそうしたチームを任命し、余計な干渉をせずに結果を待つことです。

組織のトップが責任を取るということはそういうことです。

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第1,040話 「北風と太陽」と部下育成

2021年07月21日 | 研修

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「部下が私と話すときだけ表情が硬いですし、反抗的な態度になるんです。どうしたらよいのでしょうか?」

これは先日弊社がオンラインで担当させていただいたある企業の研修後に、一人の受講者から受けた質問です。

研修は管理職を対象として部下の育成をテーマに行ったのですが、質問をした管理職(A氏)は部下(B氏)との関係がしっくりいかないことに悩んでいるとのことでした。

A氏に詳しく状況をお尋ねしたところ、部下のB氏との間で仕事の進め方や仕事に対する考え方に異なる部分があり、指導をしてもなかなか聞き入れてもらえないとのことでした。もともとお互いの価値観の違いもあり、A氏としては自分の考えをわかってもらいたい一心で厳しい言い方をしたり、自分の考えをわかってもらうためにメールを送ったりしたこともあったそうです。

しかし、それらを繰り返せば繰り返すほどB氏の態度はますます硬化してしまい、今ではオンラインで指導する際も、あるいは対面であっても、A氏と接するときのB氏はまるで心を閉ざしてしまったように、自ら積極的に話をすることはないそうです。

一連の話を聴いていて思い出したのが、イソップ物語の「北風と太陽」です。多くの方がご存知と思いますが、あるとき北風と太陽が力比べをすることになり、旅人の上着をどちらが先に脱がせることができるかという勝負をすることになった話です。北風は旅人の服を脱がせるために、力いっぱい北風を吹かせて上着を吹き飛ばそうとしたのですが、旅人は北風が吹いたことで、逆に上着をしっかりと押さえてしまい、結局旅人の服を脱がせることができなかったのです。次に太陽は旅人の上着を脱がせるために、暖かく日差しを照らしたところ、旅人は暑く感じられたため、自ら上着を脱いだのです。

これが「北風と太陽」の顛末ですが、この話からは声高に自分の考えを押し付けたり、厳しい言葉で人を動かそうとしたりすると、言われた方の気持ちは反対に離れてしまう。本当に相手の理解を得たいと思うのであれば、相手の気持ちに寄り添ったり思いやりのある態度を示したりすることで、言われた人はそれを受け入れることができるようになるという教訓が得られると思います。

冒頭のA氏の話に戻ると、もしかするとA氏の指導は管理職としての権威を笠に行ってしまったのかもしれませんし、一方的だったのかもしれません。部下のB氏から話を聴いていませんので、どうしてA氏へ対して頑なになってしまったのか本当のところはわかりませんが、A氏の話から判断するとA氏の対応は少々拙速だったのかもしれないと感じました。管理職としてA氏が部下のB氏へ伝えた内容は正論ではあったのでしょう。しかし、それが正論だったとしても、強い口調で一方的に言われたりしたら、B氏でなくても心を閉ざしてしまうのではないでしょうか。「この人には何を言っても無駄だ。分かり合えない」と考えてしまうのも無理のないことかもしれません。

部下の育成に限ったことではありませんが、自分の考えを相手にわかってもらいたいと思うのであれば、北風と太陽の教訓のように自分の考えを押し付けたり声高に言ったり、一方的に伝えたりするのではなく、太陽のように時間をかけたり、対話を続けることが大切だということです。

管理職の皆さん、あなたの指導は北風になっていないか、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

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第1,039話 3つの「ムダ」について考えてみる

2021年07月18日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「疑うからはじめる。」という本を読みました。その本の中で、ムダな仕事として槍玉に上がっていたのは次の通りです。(1)毎朝9時に出社する、(2)「報告」「連絡」ばかりの会議をしている、(3)毎日、会社に行く。

私は「なるほど!」と思いましたが、反発される方も多いのではないでしょうか。その理由や考え方などは本を読んでいただくとして、この3つを単に行動面から考えてみたいと思います。

まず、毎朝9時(定時)に出社するです。これについては職種によって要・不要が決まります。工場のラインは言うまでもなく、警察や自衛隊に至るまで、現場仕事には「定時」が不可欠です。一方、そうでない職種ならば工夫次第で「定時」を無くすことはできるはずです。

次に「報告」「連絡」ばかりの会議をしている。確かにわざわざ同じ空間に複数の人間が集まって行う必要はなさそうです。まさに時間と労力の無駄と言えます。とはいえ、報告や連絡から話が繋がっていって重要な課題が見つかるということもないわけではありません。

最後の、毎日会社に行く。私は特に必要がなければ行かなくて良いという考え方に賛成です。何よりも通勤は「時間の使い方は、そのまま命の使い方になる」(ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子氏)ことを考えれば命の無駄使いです。しかし、通勤ですることで意識を切り替え、仕事に集中できるようになる人もいることを忘れてはいけないと思います。

この3つについて私が言いたいことは次の通りです。

「そう思う人はそうすれば良い」です。

定時に出社し、報告会議を行い、休日以外は会社に行く。それで成果を生むことができる人が集まって仕事をすれば良いのです。そうでない人は自分なりの働き方に合った職場を選ぶことになります。

ただし、1つだけ条件があります。

新人(新入社員)は「毎日定時に出社して報告だけの会議のある職場」で働くことを強く勧めます。

実はこのところ様々な「生産性」に関わる情報を集めているのですが、どれもこの3つの事柄が大前提なのです。なぜなら、人類は「(物理的に)集まって話し合う」ことで発展してきたからです。大袈裟なようですが、人類の歴史の流れをいきなりスイッチするのはやや危険な感じがしています。まあ、あまりロジカルではないですが。

とりあえず「毎日定時に出社して報告だけの会議のある職場」を一種の義務教育のように考えてみてはいかがでしょうか。

数年間そういう職場で働いて「無駄だ」と思えば会社を変わり、そうでなければそのまま働き続けます。

テレワークという大きな変化に止むを得ず直面している現在、好き・嫌いは別として、一度この本の主張について考えてみるのも良いのではないでしょうか。

※『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』アスコム 、2021年、澤 円著

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第1,038話 建前と実態に生じている大きな差

2021年07月14日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「ロールプレイングをはじめ、ディスカッションなど2名以上で行うものは、すべて中止してください。」

これは弊社がある企業の研修を担当させていただく前に、研修のご担当者からいただいたメッセージです。この企業では、コロナ禍における研修の進め方としてオンラインではなく、対面型の集合の形で行うことを決断されたのですが、感染を避けるために演習はすべて個々で取り組むスタイルで行うとの考えでした。

コロナ禍になり既に1年半ほど経ちますが、多くの企業が感染拡大を防ぐための様々な取り組みを行っている中、弊社が担当させていただく研修の8割もオンラインを通して行われるようになりました。

一方で、コロナ禍においても研修は同じ会場に集合し対面で行う方が効果を高いとの考えから、感染防止を徹底した上でロールプレイングやグループディスカッションを積極的に取り入れたいと考える企業もあります。

コロナ禍での研修の進め方は、個々の企業によって様々な考え方がありますので、いずれも否定されるものではありません。研修を担当させていただく者としては、それぞれの企業の考えに基づいて、制約条件がある中で最大限の効果が得られるように進め方を工夫しています。

このため、冒頭の企業の研修では、すべての演習を個人で取り組めるものに変更して進めましたが、研修中に一つ気になることがありました。

それは、受講者の休憩時間の過ごし方です。研修では、1時間に1回は休憩をとってほしいというご要望もいただいていましたので定期的にとるようにしていたのですが、休憩時間になった途端に受講者同士が盛んに雑談をしていたのです。

受講者同士が積極的にコミュニケーションをとることは、本来は歓迎すべきことではあります。しかし感染リスクを避けるために研修で行う演習を受講者同士の接触をなくすものにしたのにもかかわらず、休憩時間に受講者同士が接触してしまっては、その意味がなくなってしまいかねません。

休憩時間のたびに同じ光景が繰り返されたのですが、研修のご担当者は特に受講者に注意を促すこともなく、その様子を眺められていたのです。

これを見て、建前と実態に大きな差が生じてしまっているように私には感じられました。組織の建前として感染防止を徹底するけれど、休憩時間は「個人の責任でお好きなように過ごしてください」と言っているような感じがしました。研修中は組織としての責任の範囲だけれど、休憩時間は個人の責任というように考えられていたのかもしれません。

これでは、いわば「部分の最適」にはなっていても、「全体の最適」にはなっていないと言えるのではないでしょうか。

コロナ感染防止の対策に限った話ではありませんが、たとえば組織のルールを決めたとしてもそれで安心してしまって、実態が伴わないということはよくあることです。しかし、それでは本末転倒になってしまうわけで、全体の最適を目指して一貫した取り組みを進めていくことが必要なのです。

何事にも、まずコロナの感染防止を最優先に考えなければならない現在ですが、目的をきちんと意識したうえで、それに向けしっかりと取り組んでいくことが必要であるということをあらためて考えた瞬間でした。

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第1,037話 社員のモチベーションが上がらない時は・・・

2021年07月11日 | 研修

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「テレワークになってから社員のモチベーションが下がってきて困っている。なんとかする方法はないものか・・」ある中小企業の経営者の言葉です。その話を聞いて、例によって私は「社長、モチベーションとは何なのかお分かりですか?」と質問しました。この人本当に分かって言っているのかな?と思った時に反射的に質問をしてしまうのが私の悪い癖です。

「もちろん分かっているよ。やる気、難しい言葉で言えば動機付けのことだろ?動機って言うのは人が何かの行動を起こすときの要因のことだね。報酬を与えたり、逆に脅したりすることを外発的動機付けと言うんだ。そうじゃなくて、相手をほめたり目標を達成できるように色々な面からサポートすることで、自らやる気にさせることを内発的動機付けと言う・・・だよね?」

私は思わず拍手してしまいました。「社長、研修講師になれますよ!」

実はモチベーション理論は研修講師にとっての「宝庫」なのです。

マズローの欲求5段階説、ハーズバーグの動機づけ衛生理論、マクレガーのX理論・Y理論、マクレランドの欲求理論、ホワイトのコンピテンシー理論、これらに加えて「ホーソン実験(古典です)」から始まる様々な労務管理系、心理学系の実験があります。

これらは、研修講師にとっては落語家のネタのようなもので、自分なりに味付けをして高座に・・・いや、講座にかけます。

ざっくり言ってしまうと、人間は多かれ少なかれ「やる気」はあるものだ、だから色々な手段でそれを引き出しましょう、というのがモチベーション理論の言わんとするところです。

いずれの理論や実験も、やる気を引き出す側と引き出される側が、リアルに同じ空間いるというのが前提です。当たり前ですが、テレワークなどという事態を想定して作られたわけではありません。

ですから、先ほどの社長さんは困ってしまったわけです。

「で、どうしたら良い?今時のモチベーション理論で役に立ちそうなものはある?」と私に聞いてきました。

私にとって、これは新しいコンサルや研修を売り込む絶好のチャンスです。しかし、例によって私はこう答えてしまいました。

「さっぱりわかりません。」

「・・ああ、やっぱりね」

「でも社長、誰も分からないんですよ。研修講師もコンサルも心理学者も色々言ってはいますが、本当に分からないんです。だからそういう人たちの言うことを鵜呑みにしないことです。中でもコンサルは責任を取らないことで成り立っている商売ですから。」

例によって私は言ってしまってから自分もその中に入っていることを思い出しました。

さて、本当にどうすれば良いのでしょう。答えは「分からないのでやってみて判断しましょう」です。

「理論」として残っていることは少なくとも間違いではありません。もちろん正しいとも言い切れませんが。自分なりに学んで少しずつ実践してみることです。ただし「これ一本に賭ける!」は避けて、上手くいかないようだったら早めに中止しましょう。

試行錯誤を繰り返すことで、皆さんの会社の社員や部下たちは、少なくとも「上の人たちは一所懸命やっているんだな」というメッセージを受け取ると思います(そうでない人もいます)。やがてそれがモチベーションにとってプラスとなる日が来ます。そう信じましょう。

もし、上記に紹介したモチベーション理論についてお知りになりたければ、お付き合いのある研修講師にお尋ねください。万が一知らなかったとしたら、それはプロの講師ではありません。くれぐれもお気をつけください。

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第1,036話 研修講師や研修会社の特徴とは?

2021年07月07日 | 研修

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「『講義一辺倒ではなく演習を取り入れていることが特徴です。』という以外の話を初めて聞くことができました」

これは、私が先日ある企業の研修のご担当者(A氏)との打ち合わせの際に、お聞きした言葉です。A氏はこの4月に他部門から研修の担当部門に異動されたとのことで、現在付き合いのある研修会社の講師や営業担当と積極的に会っているそうです。

その際、それぞれの研修にどういう特徴があるのか質問しているそうですが、これまでの会社は一律に「講義一辺倒ではなく、演習を取り入れているところが特徴です」と答えたということです。

A氏は、「私は異動前は営業部門にいたので、これまで研修会社の人と会う機会はありませんでしたが、今回会った研修会社が一律同じ答えをするということは、研修会社には特徴がないのかと不思議に感じていたのです。」とおしゃっていました。

この話を伺って、今度は私自身が驚いてしまいました。というのは、私は人材育成に関わる仕事を始めてから約30年になりますが、その頃であっても研修会社が請け負う研修で、講義を一方的に行うのみのものはほとんどなかったはずです。未だに「演習をしていること」を特徴としてPRしている会社があるとは正直思っていなかったからです。

もちろん、たとえば企業が自社の新入社員に社内の制度の説明をするようなときには、知識を伝えることがそもそもの目的ですので、講義中心になるだろうとは思います。しかし、研修会社が担当する研修においては、たとえコンプライアンスのような知識を伝える内容の研修であっても、多くの場合は受講者の理解が深まるように講義の途中で診断テストを入れたり、ケース研究を取り入れたりしてグループでディスカッションをしてもらっています。そうすることで、一方通行の講義にならないように工夫をしているところが多いのではと思っています。

研修に関しては、会社を設立したり自らを講師と名乗ったりするのに国家資格や免許の類は必要ありません。自分で「研修講師」と名乗り仕事の依頼が来れば、それで研修講師として仕事ができるわけです。

こうしたことで、研修を生業としている会社や講師があまた存在しているわけです。しかし、そういう中で自社や自身が行う研修の特徴が「講義一辺倒ではなく、演習を取り入れているところ」というアピールだけでは、少々説得力に欠けるように思いました。あらためて、弊社としては演習の進め方を含め今後も研修内容のさらなる充実に努めていきたいと思っています。

それでは、弊社の特徴は何か、何を大切にしているのかということですが、弊社は「調査」を大切にしています。研修やコンサルティングのご依頼をいただいた際は、ご担当者のみならず経営者からお話をお聴きしたり、受講者にインタビューをしたり、受講対象者の上司や部下からお話をお聴きしたり、アンケート調査をさせていただいたりといった事前の調査を必ずさせていただいています。

これらは時間も労力もかかりますが、そういう機会をいただきデータをとったり分析をさせていただいたりすることによって、ご依頼いただいた企業に合致した研修やコンサルティングが提供できます。本当に意味のあるサービスの提供ができると考えていますので、今後もこの点に力を入れていくつもりです。

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第1,035話 大企業の不正報道を「他山の石」とする

2021年07月04日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

すでにご存じのことと思いますが、三菱電機が鉄道向け空調機器の検査で長年不正行為を行っていたことが発覚しました。しかも、検査結果を自動作成する「専用プログラム」まで作っていたというのですから驚きです。明らかに組織的な不正行為と言えます。

三菱電機は「安全性に影響はない」と説明していましたが、あきらかに論点のすり替えです。車が赤信号を無視して道路を突っ切っても、事故に至らなければ「安全性に影響はない」というの同じです。

三菱電機は過去にもいくつかの不祥事を起こし、そのたびに「再発防止」を約束してきました。経済同友会の桜田代表幹事は会見で「会社の文化の問題は従業員の問題ではなく、経営の責任だ」として経営の責任を指摘しました。

企業文化については当社も何度か調査したことがあります。大規模な調査を何度も行ったわけではないので、あくまでも私見ですが「大企業ほど不正に甘い」というのが実感です。それは大企業の経営者だけではなく、管理者や一般従業員にも言えることです。その背景には、このブログでも先日触れた「大船に乗った感」があります。

本来なら「大船に乗った」気持ちでいれば、日々の業務に安心して取り組むことができます。そのおかげで高品質の製品が大量に生み出され、ますます利益を増やしていくという好循環が生まれます。大きな船が悠々と海原を進んで行くイメージですね。それ自体は大変良いことなのですが、一度悪い方向にはたらきだすととても危ういことになります。

不正と言っても、始めはちょっとしたことだったのかもしれません。現場の片隅で上司に「なんとかしろ」と言われた部下が、コストや納期を気にして少しだけ手順を省いた。それが後工程に影響を与え、困った挙句に辻褄合わせをすることになった。やがて部署全体で暗黙のうちにそれを受け入れるようになり、組織として「不正の仕組み」を作り上げてしまった。・・・もちろん、単なる想像に過ぎませんが。

何万人もの社員が働く大企業では、こうしたことが何度か起こってもそう簡単には潰れません。潰れたしまったら株主や銀行、取引先はもちろん、国や自治体までにも大きな影響を与えるからです。大きな船は、船底に多少穴が開いてもすぐには沈みません。

実際、私がかつて勤めていた会社(かなりの大企業です)で「うちの会社は大きいから、何かまずいことがあっても国はうちを潰せないよ」とはっきりと口にしていた社員がいました。まったくあきれてしまいますが、それは少なからぬ社員の「本音」のようでした。

しかし、今や三菱電機や東芝ですらこの先どうなるかわかりません。

このブログを読まれている皆さんの会社は「大船」でしょうか。そうでなければ、小さな不正が発覚しただけでも沈みはじめることでしょう。

「他山の石」とは「他人の誤った言行やつまらない出来事でもそれを参考にしてよく用いれば,自分の修養の助けとなるという意味(文化庁のホームページより)」です。

今こそ大企業の不祥事を他山の石として、一度自社の内部を徹底的に調査してみてはいかがでしょうか。

皆さんの会社が沈んでしまう前に。

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