中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

サービスに「過剰品質」を求めていないか

2016年11月30日 | コンサルティング

Amazonが注文から1時間以内に、商品を届けるサービスを開始したと報道されています。

注文の翌日に届くサービスや、その日のうちに届くサービスが始まったときには、随分とスピーディな時代になったものだと感動したものですが、いつしかそれは当たり前になってしまった今日この頃。今度は1時間以内に届くサービスが始まったとは、更なる驚きです。

もちろん、そのような需要があるからこそのサービスだと思いますが、ふと消費者は一体どこまでのサービスを求めるのだろうとも思います。

その一方で、宅配便の再配達も問題になっています。宅配便の配達時の不在により、再配達により発生する労働力のコストも相当のものになっているとのことです。再配達にかかる労力は年9万人分、再配達によりトラックから排出されるCO2が年間42万トン(山手線の内側の2.5倍の面積のスギ林の年間の吸収量に相当)にものぼるそうです。

再配達という制度自体は非常に便利なものですので、これをなくすことは困る人も多く現実には難しいでしょうし、その結果のコストもゼロにはできません。しかし、このコスト(再配送という労務に対して支払う賃金や環境負荷)は、最初の配達で荷物を届けられれば発生しないで済むものです。その意味で本来は無駄なもの(社会的損失)であることは明らかです。

このところ、以前にも増して長時間労働の削減が叫ばれ、メディアやネットなどで「働き方改革」について目にしない日はないくらい、このテーマが注目されています。

もちろん非常に大切なことですから、今問題が顕在化している企業はもちろんのこと、潜在的に問題を抱えている予備軍の企業も、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。

しかし、この問題を真剣に考えるのであれば、同時に私達自身も今こそ「サービス」に対する認識を改める必要があるのではないかと思います。

前述のように、サービスにはそれにともなうコストが生じますが、それを負担することにも当然一定の限界があります。

サービスの質を上げれば、それにともなってコストも上がるわけですが、たとえばある企業がサービスの品質を高めようした結果、上昇するコストを自社だけで負担しきれなくなった場合、下請け業者等にも負担させようとするケースが数多く見られます。そして、下請けでも負担しきれない場合は、サービスの価格の上昇などで、私達サービスの受益者もそのコストを負担することになります。

これは当然のことのようにも思えますが、この場合に問題なのは時に過剰とも思えるサービスにかかるコストも負担しなければならないことです。

あるユーザーにとっては良い・必要だと考えられるサービスでも、そこまでは必要としないユーザーにはメリットはありませんし、社会全体で考えればあまりにも過剰な品質のサービスは結果的にマイナスになっているとも言えるのではないかと思います。

「何が過剰か否か」は人それぞれで、これ自体非常に難しい問題です。過剰なサービスを求める結果、業者が長時間労働になったり、下請け企業にしわ寄せが行ったり、コストカットのために賃金が安くなったりと、回りまわって様々なところに問題になる現実があります。これはサービスの受益者の側でも真剣に考えなければならない問題です。

便利なサービスを次々と求める前に、それが本当に必要なものなのか、過剰な品質になっていないのかを考えてみる必要があると考えています。

(人材育成社)


営業パーソンが当然知っているはずの「日数」

2016年11月27日 | コンサルティング

多くの方は、営業パーソンの頭の中にあるのは売上目標(つまりはノルマ)だけだと思っているかもしれません。しかし、現役の営業パーソンあるいは営業職を経験したことがある方なら、もうひとつ重要なものがあることをご存知のはずです。

それは回収です。営業が売り上げた金額を100%現金で会社が手に入れることです。

「回収は経理や営業所の事務の人がやることでしょ?」とか、「そんなこと気にしなくてもお客さんはいつもきちんと振り込んでくれるよ」と思われた方は営業失格です。

当たり前のことですが、会社にとって売上が立った(計上された)瞬間は、売掛金という「ツケ」が発生したに過ぎません。会社の銀行口座にお客さんが現金を振り込んでくれるまではあくまでも「ツケ」ですから、本当に商品の代金を払ってくれるかどうかわからないのです。もし払ってくれなければ、商品を返してもらうしかありません。万が一商品すら返してくれなかったら、それこそ一大事です。

もちろん、お客さんが大企業や官庁ならば、回収なんて気にしなくても良いかもしれません。「ツケ」で売っても必ず代金を払ってくれます。しかし、そうでない場合は回収率100%などあり得ません。

営業の仕事は会社の生命の源である利益をもたらすことです。回収できないということは、会社の命を削るのと同じことです。

さらに、回収率が100%だったら問題はないかというと、決してそうではありません。売掛金がどのくらいで回収されるのか(「ツケ」が何日で現金になるのか)、その日数も極めて重要です。

通常、売上の集計は月末で締めて、翌月末に現金で振込みというパターンだと思います。たとえば7月1日に売上が立ったとすれば、8月31日に現金化します。約60日で回収できたわけです。7月31日なら約30日です。両者の平均をとって約45日としてみます。

ある税理士法人のホームページよれば、売上債権(売掛金+受取手形)の回収日数は、建設業、製造業、運輸業、卸売業は平均40~50日とのことです。ご参考までに。

この日数は、短ければ短いほど良いのは言うまでもありません。

100万円の売上で回収日数が45日だとすれば、45日間100万円の現金が「不在」なわけです。言い換えれば100万円をお客さんに無利子で貸しているのと同じことです。

もしあなたが営業パーソンなら、当然自分の会社の売上債権回収日数(平均)を知っていますよね。また、その数値は決算書から簡単に計算できることもご存知のはずです。

さて、あなたの会社は何日ですか?

(人材育成社)

 


発注側と請負側の「フェアトレード」

2016年11月23日 | コンサルティング

 受講者 「請負の仕事が75%終了したところで、その仕事がキャンセルになってしまったんです。それが2度もあったので、泣いてしまいそうです」

私    「えっ、3/4も終わったところでキャンセルですか? そういう場合、お客様(発注者)からキャンセル料はとれないのですか?」

受講者 「とれないんだそうです。それが一度ならず二度も続けてあったので、辛いです・・・」

これは、先日担当させていただいた、ある研修でお会いした受講者から伺ったお話しです。

この会社のある部署では、発注者からの依頼によって仕事を開始するのですが、実際には仕事を受けてから内容変更が度々生じ、何度もやり直しになったり、仕事そのものが中止になったりすることもよくあるのだそうです。

このような事態であれば、本来はキャンセル料などの料金を請求できるはずではないのかと思いますし、そもそも仕事に入る前に契約で詳細を詰めておくべきものだと思うのですが、この業界のルールなのか、それがなかなかかなわないとのことです。

確かに、発注側と請負側の力関係に差があることは、業種業態に限らず数多く見受けられることです。

先日も、テレビでコンビニエンスストアの本部とフランチャイズ契約を結んだ店舗の経営者が、契約を更新してもらえるのかどうかが直前まで不透明で困っているとのことで、今後明らかにしてほしいとの要望を出すという番組を報道していました。この番組を見た際にも、本部と加盟店の力関係を強く感じました。

公平な貿易を目指す「フェアトレード」という言葉があります。フェアトレードは、コーヒーやカカオを始めとして開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみのことを言います。

フェアトレードでは、生産者が品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証され持続可能な取引のサイクルを作っていくことが重要であるとされています。改めて、最近これと同じように発注側と請負側の間にも「フェアトレード」の考え方が必要なのではないかと思っています。

冒頭のお話しのように、請負側に一方的に負担を強いることで、発注側ばかりが潤うような仕事の仕組みにはやはり無理があり、こうした関係はいつまでも続けられるものではないでしょう。

貿易にフェアトレードの考え方があるように、仕事においても発注側と請負側の関係に一定の公平性を担保できる仕組みが必要なのではないかと強く感じます。

最近、長時間労働の問題により、午後10時に一斉消灯を始めた会社のことが話題になりました。この会社の労働環境が改善されることはもちろん良いことなのですが、同時にそのしわ寄せが下請けの会社に行かなければいいけれど、と心配になってしまいます。

日本の発注側と請負側の双方が良い関係を築け、互いに持続的に成長していける間柄になるためにも、このフェアトレードの考えが重要だと思います。

(人材育成社)


猫型営業の時代?

2016年11月20日 | コンサルティング

「優秀な営業パーソンを動物にたとえるとしたら?」と聞かれたら、多くの人は犬と答えるでしょう。犬は飼い主に忠実で言うことをよく聞き、我慢強いというイメージがあります。まさに企業の組織構造、命令系統に馴染んで生きている感じがします。

一方、猫は気まぐれで言うことを聞かず、飼い主をせいぜい餌をくれる同居人(同居動物)くらいにしか思っていないようです。どう考えても会社員、特に「体育会系」の営業に向いているとは思えません。

犬型と猫型の営業パーソンの違いは、たとえばこんなふうです。営業部の会議の場面を思い浮かべてください。

課長 「来期の個人別の売上目標は資料に書いてあるとおりだ。みんな頑張って必ず達成してくれ。」
犬型 「はいっ、頑張ります!毎月100件訪問します!」
猫型 「私の目標数字が大き過ぎると思いますが、頑張ります。」
犬型 「おい、猫田。もっと気合の入った言い方はできんのか?」
猫型 「犬山先輩、自分には自分のやり方がありますんで。」
犬型 「じゃあ、どうやるんだよ!具体的に言ってみろよ。」
猫型 「お客さんも色々ですから、そこは臨機応変にやりますよ。」
犬型 「なんだそれは?大体おまえはいつも報連相が・・・」
課長 「まあ、まあ。やり方は任せるから目標必達で頼むよ。」

犬型営業パーソンはとにかく全力で仕事に向かいます。スタートと同時に走り出して止まらないスタイルです。一方、猫型営業パーソンは、あくまでもマイペースです。しかし、ぼーっとしているわけではなく、獲物を見つけるそっと近寄ってチャンスとみれば一気に仕留めます。

組織よりも個人としての成果を第一に考える猫型ですが、裏を返せば、自分のスキルを高めることを重視しているといえます。私の知る数少ない猫型営業パーソンは、組織に対する忠誠心はあまりないのですが、能力は抜群に高かったように記憶しています。

最近、働き方改革というかけ声のもとに、無駄な長時間労働を撲滅しようという動きがあります。大手企業の多くはそうした世間の風潮を気にしてか、全館一斉消灯やノー残業デーを実施しています。

しかし、仕事を家に持ち帰って「家庭内残業」に励んだり、「自主的に」早朝出勤したりといった、マイナスの話しか聞こえてきません。営業に限らず犬型社員が多いというのは、企業という組織の特性なのでしょう。

したがって、企業が組織として目標数字を掲げている限り、組織に忠実な犬型社員の働き方は変わらないと思います。

少し過激ですが、犬型組織の典型である営業部のメンバーの半分以上を、思い切って猫型社員にしてみてはどうでしょうか。もちろん失敗する可能性はありますが、上手くいけば企業の体質が変わり、ワーク・ライフ・バランスが実現できると思います。

時代はすでに猫型に向けて動き出している・・・のかもしれません。

(人材育成社)


営業パーソンの自己啓発意欲

2016年11月16日 | コンサルティング

A 「自己啓発?全くしていないですね。本も読まないし、最後に読んだのはいつだろう・・」

B 「私も全然本は読んでいない。もともと本を読むのは好きじゃないから、前から読まないし・・自己啓発  は全くしていないですね」

C 「私ももう随分長いこと本は読んでいないです。自己啓発はやっぱりやらないとだめなのですか?」

これは、先日担当した中堅営業パーソンを対象にした研修の中で「自己啓発」を話題にしたときのやりとりです。営業スキルのみならず、自身の自己啓発に関する取り組みについてグループ内で紹介をしてもらったときに、こうした発言がありました。この研修の受講者は20名ほどでしたが、その中で半年以内に本を1冊以上読んだ人は1人もいませんでした。

これは一体どういうことなのでしょうか。

公開セミナーを数多く開催している会社の人からは、「以前から営業に関するセミナーは人が集まらないので、やむを得ず中止にすることが多いのです。とはいっても、営業のセミナーを全くやらないということもできないし、これまでにも手を変え品を変え、いろいろやってみたのですが、結果はあまり変わりません。まあ、内容の問題ではなく、忙しいということもあるのかもしれませんが・・・でも、忙しいのは営業に限ったことではないですし・・・」との話を聞いたことがあります。

また、別の企業の担当者からも「自己啓発の通信教育を実施しても、営業ジャンルの講座には申し込みがない。そもそも営業職で受講申し込みをする人がほとんどいないのです」との話を何度も聞いたことがありました。

近年、スマホをはじめとするデジタルメディアの普及によって、営業パーソンに限らず、本を読む人が減っているという話をよく聞きますが、実態はどうなのでしょうか。

厚労省が毎年行っている能力開発基本調査の昨年度の結果を調べてみると、自己啓発を行った正社員は43%で、自己啓発を行った時間は10~20時間未満が21%で最も割合が高く、内容はテレビ・インターネットによる自主学習が48.%、通信教育が22%となっています。

この数字からは、正社員のうちの半分に満たない人が、しかも1年間に20時間未満しか自己啓発をしていないことになりますから、冒頭の研修時の受講者の話も納得がいくところかもしれません。

また、冒頭の研修の中で自己啓発の話題以外に、自社の売上げや経常利益率についても質問をしてみたところ、正確に答えられた人は1人のみで、他は自社の実際の売上げの三分の一くらいの数字をあげる人や、逆にトヨタの売上げに匹敵するくらいの数字を上げるような極端な人もいました。また、営業利益と経常利益の違いを理解している人も少数でした。

実際にこうした営業パーソンの声を聞くと、自身の営業数字だけは理解していても、その他のことは一切見えていない状態で営業をしている様子が伝わってきます。

自己啓発に取り組まない、あるいは取り組めない理由として、「忙しくて時間がとれない」という声をよく聞きますが、営業パーソンとしては自社の「数字」がどのようになっているのか、利益率がどれくらいなのか、自身が数字を達成できればどういう影響があるのか、経費をおさえるとはどういうことかなどは少なくとも押さえておく必要があります。

 「忙しい」を理由にせずに、まずは自社のさまざまな「数字」を確認するころから始め、次のステップではビジネスパーソンとして必要なスキルに関する書籍を1冊読むことから始めて欲しいと伝えています。

 (人材育成社)


なぜ損益計算書が読めない営業は失格なのか

2016年11月13日 | コンサルティング

「営業担当者はたくさん売ることだけを考えればよい。そのためには経費をいくら使っても構わない。」この考え方は、必ずしも間違っているとは言えません。売上がなければ利益もないのですから。

しかし、100万円の売上を得るために100万円以上使ってしまっては、肝心の利益がなくなってしまいます。

では、利益が出ないなら一切売らなくても良いかというと、そうでもありません。多少赤字になっても、売上による入金がなければ給料も払えなくなってしまいます。

また「損して得取れ」ではありませんが、当面赤字でもたくさん売ってシェアを確保しておいた方が、その後の営業活動にプラスになることもあります。

営業とは単純そうでいて、かくもややこしいものです。

こうしたややこしさを整理して、どのように営業活動を行なえば良いのかを考えるとき、絶対に必要になるのが財務諸表、特に損益計算書(P/L)を読むスキルです。

損益計算書は一定期間(1年、四半期など)の営業成績を記載した表です。一番上に売上高があり、以下売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益(連結の場合は「税金等調整前当期純利益」)、当期純利益と5つもの「利益」が並んでいます。

最初に出てくる売上総利益は、一般に粗利(あらり)と呼ばれる利益です。売上から売上原価(仕入値)を差し引いた利益です。50万円の商品を仕入れて100万円で売れば、100-50=50(万円)が売上総利益(粗利)です。

次の営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた利益です。商品を売るためにかかった人件費や家賃、光熱費、交通費、広告宣伝費、交際費など、いわゆる「経費」が販管費です。そうした様々な販管費(売るための費用)が30万円発生したとすれば、50-30=20(万円)が営業利益です。

さて、次の経常利益は営業利益に営業外収益をプラスし、営業外費用をマイナスしたものです。営業外収益とは受取利息(銀行に預けていたら利息が入ってきた)、営業外費用とは支払利息(借金の利息を払った)などです。「営業外」とあるように、こうしたお金の出入りは営業活動とは直接関係ありません。ですから営業担当者の「責任範囲外」と考えてよいでしょう。

したがって、営業担当者の「責任範囲」は売上高、売上総利益、営業利益の3つです。

営業担当者は損益計算書の構造をしっかり頭に入れ、責任範囲内での最終的な利益=営業利益を最大化することを第一に考える必要があります。

すなわち、(1)売上のボリュームを増やすこと、(2)できるだけ値引きをせずに粗利を確保すること、そして(3)経費を徹底的に抑えること、この3点を常に考えながら営業活動を行なわなければなりません。

売上を多くすることだけしか考えず、大幅な値引きをしたり、無駄な残業代や交際費を使ったりしていては営業失格と言わざるを得ません。

また、財務諸表の読み方が身についていれば、顧客や仕入先、競合企業の利益の出し方が見えてきます。そうした情報は、営業活動にとって大いにプラスになります。

もし、あなたが営業の仕事に携わっているとしたら、損益計算書を読むスキルぐらいは当然お持ちですよね?

(人材育成社)

 


ネガティブな人が「売れる営業マン」になるには

2016年11月09日 | コンサルティング

営業マン向けのウェブサイトには、様々な「売れる」ノウハウが書かれています。そうしたサイトを見ていると「売れる営業マン」の特徴が浮かび上がってきます。それは次の3点にほぼ集約できます。

(1)ポジティブ、(2)聞き上手、(3)共感力がある

確かに「そのとおり」です。いずれも身につけるためのハードルはそれほど高くないように見えます。

まず、ポジティブであるためには否定的な考え方を止め、何事も前向きに捉えることです。何が起こっても、自分のプラスになると信じて仕事に取り組めばよいのです。

次に、聞き上手になるには、多少忍耐が必要でしょう。どんなに自分からしゃべりたいことがあっても、ぐっとこらえて顧客の話を聞く必要があります。聞くことで顧客のニーズを探り出し、適切なタイミングで適切な質問をぶっつけることです。

最後に、なくてはならないのが顧客の置かれた現状や問題点を親身になって考える姿勢です。人は、話し相手が自分に共感してくれていると感じるときに、相手を信用しても良いという気持ちになります。

以上の3点を習得すれば「売れる」営業マンになれることは間違いありません。

しかし、残念ながらこの3点を身につけることはとても難しいのです。なぜならこの3点、いずれも意識あるいは考え方に依存するからです。

20歳を過ぎた人間にとって、意識や考え方を変えることほど難しいことはありません。もし簡単に変えることができるならば、ほとんどの営業マンは苦労していないはずです。

もともとネガティブな考え方の人に向かって、「もっとポジティブになりなさい」と言っても変わらないでしょう。むしろますますネガティブになって行くような気がします。

「聞き上手」になるのも、かなり大変です。人は、ちょっとしたしぐさや態度から、相手がどの程度自分の話しに興味を持っているのかを簡単に見抜いてしまいます。

共感についても同様に、口先だけなのか、本当に共感してくれているのかはすぐにわかります。それに、たとえ顧客であっても共感したくない場合もあるでしょう。

では、ネガティブで人の話を聞くのが苦手で共感力の低い人はどうすれば良いのでしょうか。

ご推察のとおり、「ずばり、こうすればいい!」という答えはありません。とりあえずは「ポジティブで聞き上手で共感力の高い営業マン」を演じてみてください。

最初は下手でも構いません。演じることが仕事だと割り切ってください。そのうち少しずつ板についた演技ができるようになります。

私が今までに見てきた「売れる営業マン」の多くは、演じることが大変上手でした。

ポジティブな人間になるのは不可能でも、ポジティブな人間を演じることは努力次第で可能なのです。

(人材育成社)

 


営業部だからワーク・ライフ・バランスが実現できる

2016年11月06日 | コンサルティング

コンサルティングやセミナーで「営業にこそワーク・ライフ・バランスが必要です!」と言うと、次のような反応が返ってくることがあります。

「仕事より家庭を優先したら、売上はあっという間に落ちてしまいますよ。」「仕事時間とプライベートの時間を半々にしろってことでしょ?それは無理だな。」こうおっしゃるのは、大体は中小企業の経営者の方々です。

営業部といえば、「朝から晩まで働きづめ」という印象があります。外回りから帰ってくるのが夜の7時頃。そこからメールの処理をして日報を書き、必要ならば会議をする。そして、翌日の顧客訪問のための資料を仕上げて時計を見るとそろそろ終電間近・・・。こんな働き方をしている人は決して少なくはありません。ワーク・ライフ・バランスという言葉から最も遠いところにあるのが営業部のようです。

ここで大きな誤解があることを指摘しておきたいと思います。それは「ワーク・ライフ・バランス」という言葉についてです。

内閣府によれば、ワーク・ライフ・バランスとは「個人が仕事上の責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加等、個人や多様なライフスタイルの家族がライフステージに応じた希望を実現できるようにすることである。」とあります。
(平成19年6月、内閣府「子供と家族を応援する日本」重点戦略検討会議)

バランスというと、バランスシート(貸借対照表)のように左右の数字が一致しているというイメージが強いため、仕事時間とプライベートな時間を同じにすることと思われがちです。

ですが、それは間違いです。

定義にもあるように「仕事上の責任を果たしつつ」、「(個人や家族の)希望を実現できるようにする」ということですから、無理やり時間を一致させることではありません。仕事と自分や家族のライフスタイルを上手に両立させることがワーク・ライフ・バランスです。

会社の中には、ひたすら仕事の量をこなすことで短期的な成果を上げたいと望む人がいます。また、介護や育児のために残業をせずに帰宅する人もいます。終業後に専門学校や公開セミナーに参加して長期的にスキルアップを目指す人だって少なからずいます。

このように、人によって最適な働き方は様々です。

共通している点はただひとつ、限られた時間を最大限有効に使わなければ実現できないということです。ですから、営業のように時間を取られる仕事こそ、他の仕事よりもっと効率良く進めていく必要があります。

しかし残念なことに、仕事の進め方に関しては、当社が知る限り多くの会社の営業部は驚くほど「受身」で「消極的」です。「そんなことは絶対にない!」、「うちの営業ほど積極果敢な連中はいない!」といつも反論されるのですが・・・。

実際に営業部の仕事の進め方を調べてみると、「進んでお客様の言いなりになること」や「自社の工場や倉庫、管理部門に無理強いをすること」を積極的であると勘違いしている場合がほとんどです。

そんな仕事の進め方をしていれば、目先の仕事に振り回されて時間と労力を無駄にしてしまうことは明らかです。

本当に積極的に動くということは、お客様にも社内の他部署にも「先手」を打って効率良く仕事を進めることです。

そして、効率の良い働き方が実現できれば、まさに人によって最適な仕事と生活の両面において充実した時間を過ごすことができます。

「先手」が打てる営業部ほどワーク・ライフ・バランスを実現するのにふさわしい職場はありません。

(人材育成社)

 


営業ノートは何のため?

2016年11月02日 | コンサルティング

「君は当社でどのような仕事がしたいですか?」大手建設会社の新卒採用面接で担当者が質問すると、A君は元気よくこう答えました。「私の希望する職種は営業です。」そして、A君は首尾よくこの会社に採用されました。

念願の営業部に配属されたA君は、毎朝7時には会社に着いて様々な資料を読み漁りました。先輩や上司が出社してくる8時半頃には質問事項をノートに書き終え、仕事中に先輩や上司に聞いては答えを書き込んでいました。

半年もするとノートは2冊目になり、A君の知識もかなり増えてきました。もともと地頭の良いA君はどんどん知識を吸収し、見積システムや顧客管理システム等の使い方も身につけて行きました。

そうして1年が過ぎて新しい年度が始まると、いままで上司だったB課長は他部署に異動し、代わりに地方の営業所からC課長がやってきました。理論派だったB課長とは違って、C課長は「体育会系」そのものでした。

A君は、それまでに蓄積してきた情報が書き込まれたノートを持って、C課長にいくつか提言をしてみました。

A君「課長、業務課に出す積算依頼書を入力するとき、より簡単に入力できるよう、こういうテンプレートを作ってみたのですがいかがでしょうか。」

C課長「うん?テンプレート?どれどれ・・・まあ、確かに簡単になるけど、若いうちからこういう手抜きをしちゃいけないよ。手間がかかってもちゃんと手で書いて、それを見ながら入力するようにしなさい。」

A君「はあ・・・」

入力作業をより正確に、しかも効率良く改善しようとしたのに「手抜き」と言われて、A君はとてもショックを受けました。

それからA君はノートを片手に何度かC課長に相談や提案をしたのですが、ことごとく本題から外れた細かい点を指摘されたり、わざわざ手間のかかるやり方を指示されたりと、否定的な態度を取られました。

そして半年後の人事評価面接で、C課長はA君に対して「ノートに何か書いている暇があったらもっと足を使って営業してきなさい!」と説教をしたのです。

これがきっかけになり、A君のモチベーションは大きく下がり、ノートを付けるのを止めました。C課長はますますA君を遠ざけるようになり、A君は精神的にも疲れ果ててしまいました。やがてA君は転職も考えるようになりました。

それから5年経った今、A君は同じ建設業界の中堅企業X社で働いています。X社は前の会社に比べれば売上規模は半分以下ですが、A君はそこで「敏腕営業主任」として大活躍しています。

A君がX社に入社してから書いたノートは20冊にもなっていました。

営業は、経験を積むことによって実力がアップして行く職種です。しかし、ただ経験をするだけでは実力はつきません。経験は、それを得た瞬間からどんどん小さくなって行くからです。

経験を逃がさないために記録をすること。それが実力をつけるための最善の方法なのです。

(人材育成社)