中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,201話 問題解決に取り組んだ後のドキュメントとは

2024年01月31日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「いずれ新たなパンデミックは発生するだろう。そうであれば、『古株』の最後の仕事として、これまでの経験を記録に残すべきだと考えるようになった。」

これは、新型コロナウィルス感染症対策分科会会長をはじめ、コロナ対策で数々の役割を担った医師である尾身茂氏が、その著書「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」(日経BP)の中で語っている言葉です。

本書には、尾身氏をはじめ専門家が出した100以上の提言の根拠やそれらに込めた思い、専門家同士の激しい議論、首相や大臣、行政官などとのやり取りなどが詳しく書かれています。特に、第1回緊急事態宣言の解除の条件を議論する勉強会で尾身氏自身が声を張り上げたときの生々しいやりとりをはじめ、当時の緊張感あふれた様子などにもふれられており、3年半にわたるコロナ禍の中、専門家としてどのようにコロナ対策に向き合ったのかを知ることができます。

コロナに対応した専門家ほどの大きな問題ではないかもしれませんが、私たちも公私を問わず日々大なり小なり様々な問題にぶつかり、その解決を模索しながら生きています。問題が生じることは滅多にないという人もいるにはいるようですが、そういう人はそれほど多くはないのではないでしょうか。

さて、弊社では定期的に問題発見・課題解決をテーマとした研修を担当させていただいていますが、その際は問題を発見し解決するまでの一連の流れを6つのステップ(①問題を発見し、②原因を分析し、③3現主義によって調査し、④解決策を立案する、⑤解決策を実施、⑥評価と対策)に則って進めることが多いです。

このステップに基づいて問題解決に取り組む場合に、①から⑤までは熱心に取り組む人が多いかと思いますが、⑥の評価と対策まで取り組む人は限られているようです。本来は解決策を実施した後には、実行からその評価までのプロセスをドキュメントにして、記録として残すことが必要なはずですが、問題が解決できるとそこで安心してしまい、その後にしっかりと記録を残すという人は多くないというのが実際のところのようです。

しかし、せっかく問題解決に取り組んでも、ドキュメントをきちんと残さないと、一連のプロセスの中で行われた議論やそこで獲得した知識や経験等が、時間の経過とともにやがては薄れていってしまいます。次に同様の問題が発生してもそれを活かすことができず、最悪は再び0(ゼロ)からのスタートになってしまうなど、せっかくの取組みの積み重ねが無駄になってしまいます。

そのように考えると、今回尾身氏が執筆された本書はまさに問題解決の最終ステップである「評価と対策」を中心に書かれています。尾身氏も指摘するとおり今後新たなパンデミックが発生するようなことがあった場合には、今回書かれたようなドキュメント(書籍)が役に立つことは間違いないと思います。

私たちも、日々の仕事の中で遭遇する問題発見・課題解決に取り組む際は、同じことを繰り返さないためにも、また速やかに対応できるようにするためにも、一連の流れを必ずドキュメントとして残しておくことが肝要だと、今回尾身氏の書籍を読んで改めて感じました。

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第1,200話 管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか

2024年01月24日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

社員(職員)を管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか。これについては、古今・官民問わず様々な考え方があると思います。私がこれまでお付き合いをいただいている組織においては、本人の希望の有無にかかわらず人事考課の結果によって昇格を判断しているところが圧倒的に多いと感じています。実際、「等級制度と昇進昇格・降格の最新実態」(労務行政『労政時報』第4036号⦅2022. 6.10⦆)によると、一般社員から管理職への昇進・昇格の際に試験を導入しているのは1,000人以上の組織の場合で76.3%とのことです。このデータからは、規模が大きい組織の方が昇格試験を導入しているところが多いということが読み取れます。

昇格試験にはメリット・デメリットの双方が考えられ、一概にどちらがよいと言えるものではありません。試験を導入するメリットとしては、管理職として活躍したいというやる気がある人を見出せること、試験を通して管理職としての適性の有無を見極めることができ、その後の活躍が期待できることが挙げられます。一方、昇格試験を導入しないのであれば、昇進・昇格にかかる上司の部下の評価のレベルを一定に保つためにも継続的な訓練が必要となりますが、それはそれで簡単なものではありません。

そのように考えると、昇格試験はもっとも公平・公正な手段だと言えます。しかし、昇格試験と一言で言ってもその中身にはいろいろな方法があります。具体的には、筆記試験・論文試験・プレゼンテーション・面接試験等々あり、フルコースで導入している組織もあれば、一部のみを実施しているところがあります。

外部の私が担当させていただくことが最も多いのが面接試験で、受験者に対して先入観がない外部の面接官として、受験者に様々な質問をすることにより、管理職としての適性を評価させていただいています。これまでの経験では、面接でお会いする受験者は課長になりたいという思いが強く伝わってくる人が多く、真面目で真摯に業務に取り組んでいる様子が伝わってくる人がほとんどです。一方で、管理職とし組織の目標を達成するためにリーダーシップを発揮することができるだろうか、部下指導を熱心に行えるだろうかなど、管理職としてはやや物足りないと感じる受験者がいるのも事実です。そして当然のことながら、ある一定の割合で合格には至らない人もいます。翌年以降再びチャレンジする人も多いのですが、1年間で見違えるほど成長して管理職としての適性が感じられるようになる人がいる一方で、残念ながらあまり変わらない人もいます。

それらを踏まえ、私が昇格試験を担当させていただく中で改めて思うことは、不合格だった人にはなぜ不合格になってしまったのか、今後どのような改善を行っていけばよいのかなどについて、適切なフィードバックをすることが大切だということです。管理職への登用試験は確かに公平・公正な手段ではありますが、同時に適切なフィードバックを怠ってしまうと受験者のやる気が失われたり、仕事そのものへのモチベーションが下がったりという危険性も考えられるのです。そうした事態を避けるためにも、残念ながら不合格となってしまった人には、どういった点が足りなかったのか等についてのフィードバックを必ず行い、それをふまえて上司と部下で話し合って、その後の成長につなげていくことが強く望まれます。

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第1,199話 「くまモン」が大人に人気があるわけ

2024年01月17日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

皆さんは、熊本県のPRマスコットキャラクターのくまモンをお好きでしょうか?」

今更言うまでもありませんが、ゆるキャラグランプリ2011王者であり、現在は熊本県の営業部長兼しあわせ部長を務めています。

先日熊本県を訪れた際に、くまモンの活動拠点である「くまモンスクエア」に行く機会がありました。当日くまモンは午前に続き午後2時にも出勤予定だったため、それに合わせて少々早めに1時間前に現地に到着したのですが、既に会場には大勢の人が集まっていました。

開演1時間前にも関わらずそうした状況だったため、一体どこに立って待っていればよいのか、どこにいればくまモンの舞台を見ることができるのか側にいた人に聞いたところ、「舞台を囲んで並んでいる20席には子どもしか座ることができない。」とのことで、見やすい場所を教えていただきました。話を聞いた人は常連で、定期的にくまモンスクエアを訪れているそうですが、立って待ちその後舞台を観るのは長時間で大変なので、毎回折りたたみ椅子を持参しているとのことでした。

待つこと1時間、開演前には舞台を取り囲む何重もの人の列ができていました。そしていよいよ開演、くまモン隊のスタッフの女性が観客に「どこから来たか」、「午前中も観たか」などと質問しましたが、日本各地以外からも台湾やアメリカから来ている人や、午前中に続いて2回目だという人もかなりの人数いました。くまモンスクエアには、子どもとその保護者が集まっているのだろうとイメージしていた私からすると、このように大勢の大人が何度もくまモンに会いに訪れていることは少々驚きであり、同時に新鮮にも感じました。

では、これほど多くの大人がこのようにくまモンに惹かれるのは、一体なぜなのでしょうか。理由は様々あるかと思いますが、私はくまモンがステージの上を自由に動き回って、観客にハグをしたりするなどの「非言語」に加え、大人に対しても子どもにと同じように愛嬌を振りまいている、ある意味では公平に接しているというところにもあるのではないかと思っています。

弊社が管理職研修や管理職登用試験の面接官の担当をさせていただく際、「上司から公平に接してもらえなかったり、気分屋だったりする上司の指導を受けて苦労をした」という話を聞くことが頻繁にあります。そのためか、上司に声をかける前に「今日の機嫌はどうだろうか?」、「今声をかけて怒られたりしないだろうか?」などと、恐る恐る声をかけたという経験を持つ人は少なくないようです。

私たちは、日々周囲の人と様々なコミュニケーションをとっています。このブログでも、これまでたびたびコミュニケーションについてふれていますが、永遠の課題と言ってもいいのではないかと思えるほどに難しいテーマでもあります。

職場においては、くまモンのようにいつもニコニコして愛嬌を振りまいているだけでは、コミュニケーションはなかなか成立しません。しかし、それでも今回くまモンの笑顔を見ていて、職場での対人関係・コミュニケーションの中では、相手によって態度を変えたり自身のマイナスの感情をストレートにぶつけてしまうことは控えなければならない態度だということです。特に管理監督職は部下に対しては公平に接することを心がけること、そのことが回りまわってくまモンのように周囲からの好感につながり、信頼を築くなどのよい結果につながっていくのかもしれないなと改めて感じました。

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第1,198話 コミュニケーションは部下指導の万能薬ではない

2024年01月10日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「コミュニケーションに力を入れます」、「毎日、全員に必ず1回は声をかけるようにしています」

これは、弊社が管理職研修や昇格試験の面接官を担当させていただく際に、管理職である受講者や管理職を目指す受験者から繰り返し聞く言葉の一つです。

具体的には「管理職として心がけたいことは何か」、「部下指導で力を入れたいことは何か」などの質問への回答なのですが、近年ではその傾向がますます強まっているように感じています。

公私を問わず、私たちは日々コミュニケーションを通して生きているわけで、コミュニケーションが重要であることは言うまでもありません。一方でコミュケーションがまるで「生きる術」のように使われることには、少々違和感を覚えることがあります。

研修や面接の場面で、あまりにも頻繁にコミュニケーションという言葉が繰り返されるため、私から「コミュニケーションをどのように捉えているのですか」と質問することもあるのですが、「言葉を交わすこと」以上の答えがないことも少なくないのです。こうしたこともあり、多くの人はコミュニケーションの「量」を増やすことのみに関心があり、「質」を高めることを重視している人は少ないように感じています。

ところで、組織の中で管理職に必要とされる能力について述べているものに、アメリカの心理学者のロバート・カッツ(Katz, Robert L.)の「カッツ理論」があります。カッツはマネージャーに求められる能力を、業務遂行能力(テクニカルスキル)、対人関係能力(ヒューマンスキル)、概念化能力(コンセプチュアルスキ)の3つに分類しています。3つのスキルについては、組織の上層部に行くほど概念能力の重要性が増し、反対に組織の現場に近いほど業務遂行能力が求められるとされています。

この理論からも、管理職に求められるスキルはコミュニケーションスキルや対人関係能力ばかりではなく、論理思考や批判的思考などの概念化能力も必要となると考えられるわけですが、コミュニケーションのスキルにばかり関心を示す人が圧倒的に多いのはなぜなのでしょうか。

理由はいろいろあるかと思いますが、コミュニケーション以外のスキルは何となくイメージにしにくく、具体的に何をどのように達成すればよいのかを明確にしにくいのかもしれません。一方で、コミュニケーションのスキルは誰でも簡単に高めることができるようにイメージされてしまいやすく、多くの人が「量を増やすこと」=「スキルアップ」と簡単に考えてしまい、結果としてコミュニケーションをまるで万能薬のようにイメージしてしまっている人が多いのではないでしょうか。

コミュニケーションは量だけでなく質そのものを高めることも必要ですし、そもそもそれだけをスキルアップすれば済むというものでもありません。管理職には、前述のような概念化能力を始めとする能力、DXなどをはじめとするテクニカルスキルも求められるものですので、現管理職・管理職を目指す皆さんにはスキルアップに向け頑張っていただきたいと考えています。

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