中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,238話 声はその人の価値観や生き方まで映す

2024年10月30日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

今年は声優の皆さんの訃報に接することが多い年です。具体的には11名の声優が亡くなられてしまったようですが、中でも「ちびまる子ちゃん」のまる子役のTARAKOさん、「サザエさん」の花沢さん役の山本圭子さん、「ルパン三世」の峰不二子役の増山江威子さん、「ドラえもん」のび太役の小原乃梨子さんは私自身もアニメの中で長年親しんだ声でしたので、とても残念に感じます。同時に各々のキャラクターが他の人の声に代わってしまうと、役そのものが別のものになってしまうようにも感じます。それくらいに声とは、その人(キャラクター)の個性だと言えるのかもしれません。

これまで本ブログでもたびたび取り上げてきていますが、最近若い人(なかでも特に女性)の声が小さいと感じることが多いです。弊社が担当させていただく研修では、演習等で発表をしていただく機会が度々ありますが、その際にマイクを使ってもらっても聞き取れないくらいに声が小さい人がいます。それには、発言する内容に自信が持てないということも影響があると思っていたのですが、実はそれは声の大きさだけでなく声の高さにも関係があることを、この度音声認知の専門家の山崎広子氏の記事(朝日新聞 2024年10月25日)により知りました。

山崎氏によると、日本の女性は本来はもっと低い声のはずの人まで甲高い、場合によっては1オクターブ近く上の声を出しているのだそうです。その理由は、社会(男性)が高い声を暗黙裏に求めているからで、日本の女性は世間から求められているイメージに無意識に自分を合わせてきた結果であるとのことです。

確かに、私自身の記憶でも子どもの頃に固定電話にかかってきた電話に母が出る際に、普段よりも少々高めの「よそ行き」の声で応対していたことが思い出されます。また私自身も、社会人になって電話に出る際に、それに近いことをしてきたのかもしれないとも感じます。

こうしたことを考えると、研修でお会いする受講者の中に極端に声が小さくて聞き取るのが難しいという人が少なからずいるということも、それは声の大きさのみならず声の高さも影響していたのではないかと思っています。つまり、世間(主に男性)から可愛い・保護対象などのイメージと結びつく高めの声を求められていると感じていて、研修でも自身の本来の声とは別の高い声や裏声を出すことで、結果として聞き取りにくい声になってしまっていたとも考えられるということです。

前述の記事の中で、山崎氏は「声は心身の状態だけでなく価値観や生き方まで映す、その人そのものと言ってよい存在。また、日本では自分の声が嫌いな人が8割超に上りました。作り声は、他者だけでなく自分自身をも偽っているようなもの」とおっしゃっています。

他者と話している自分の声の録音を聞くと、日々自分が話している声を聞いているときとは違って聞こえることがあるかと思います。それにはいろいろ理由があるそうですが、もしかするとその一つに無意識に高い声を出しているからなのかもしれないと思うとともに、私自身も自分のありのままの声を自信をもって発していきたいと今回の記事を通して考えました。

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第1,237話 研修においても心理的安全性を担保する

2024年10月23日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「発言を否定されないので、安心して発表することができました」

これは弊社が研修を担当させていただいた際、終了時の受講アンケートでいただくことの多い感想の一つです。

具体的には、研修の中で受講者に発言を促し答えてもらったり、発表してもらったりするような場面はたくさんあるのですが、その際の私からのフィードバックが否定的なものではなく、肯定的な表現だったことを評価してくれた感想のようです。

近年、アンケートで「発言を否定しない」ことに対する記述が増えたように感じます。こうした記述が増えた背景には、自身の発言に対して否定されることを過度に心配したり、発言後の周囲の反応に過敏になったりしていることがあるのかもしれません。

自身の発言を否定されるより肯定をしてもらった方が嬉しい気持ちになるというのは当然のように思えます。しかし、それがあまりに過剰になってしまうと発言することへの敷居があがってしまい、同時に窮屈な気持ちにもなってしまいます。

このように発言の結果に過度なほどに敏感になってしまうのは、SNSの普及などによる「情報の即時性」が影響しているのかもしれません。その結果、否定的な反応を恐れるあまり自分の意見を言えなかったり、自己表現が難しくなったりしているようにも思います。

これについて、先日ある企業の研修終了後の懇親会に参加する機会がありましたので、その際数人の受講者にその理由を尋ねてみたところ、次のように答えてくれました。「そもそも自分に対して自信がないため発言が否定されるようなことがあると、自分の価値や判断が否定されたように感じてしまうんです。少人数であればともかく、研修時に大勢の前で発言して、間違ったことを言ってしまったらどうしようと考えてしまいます。間違った発言をしたことで、周囲のメンバーから笑われてしまうのではないかと心配になるのです」とのことです。

これは「心理的安全性が欠如している状態」であると考えられます。以前、本ブログでも取り上げていますが、「心理的安全性」とは組織行動学を研究するハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授(Amy Claire Edmondson)が1999年に提唱した心理学用語で、「心理的安全性」を自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態、つまり「チームのメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。

それは、チームの中で自分の意見を(仮にそれが的外れだったり、間違っていたりする意見であったとしても)臆することなく発信できる状態であり、心理的安全性が高くなれば、組織にとっても様々なプラスの要因が働くことになるのです。具体的には、コミュニケーションが活発になり、仕事の生産性が上がったりエンゲージメントが高くなったりすることなどが期待できるのです。

そして、私はこの心理的安全性は研修においても大変重要な要素であると考えています。それは、自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態が担保されていないと、大勢の中で自分の考えを発言することに気後れしてしまうようになりがちです。そうなるとせっかくの研修で得られるはずの成果が減じてしまうことになりかねないからです。

こうしたこともあり、私は研修の冒頭には必ず主体的に発言していただくことを推奨しています。同時に、「こちらが行う質問に対して唯一絶対の答えがあるわけではありませんから、どういう発言であってもダメ出しをするようなことは決してしません」と伝えています。今後も担当させていただいた研修においては心理的安全性を担保していきたいと考えています。

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第1,236話 要望に応じられないときの聴き方とは

2024年10月16日 | コミュニケーション

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「顧客の要望に応じることができないときにも、傾聴しなければならないのでしょうか?」

これは先日、弊社が公開型のセミナーを担当させていただいた際に、一人の受講者から受けた質問の内容です。

具体的に話しを聞いたところ、接客時に顧客からの苦情があったものの要望に応じることができない内容だったため、お詫びとともに対応できない旨を伝えたのだそうです。その際、顧客から「私の話に頷いたり、『ええ』や『はい』と言いながら聴いていたじゃないか。それなのに対応できないというのか。だったら頷いたりするんじゃない」と厳しい言い方をされてしまったとのことでした。

一般的には、顧客の要望に応じられない場合であっても、相手の話をしっかり聴く姿勢を示すことは接客対応として重要であると考えられています。その理由としては、頷いたり相槌を打ったりすることで相手への理解を示すとともに、相手の感情をも尊重しているということを表現でき、それらにより顧客との信頼関係を構築することができるからだと言われています。

しかし、頷いたり相槌を打ったからと言って、顧客の全ての要望に同意したことを示すものでないことは言うまでもないことです。とは言え、特に苦情への対応の場合には利害が絡んでいることも少なくないことから、頷くや相槌などの「非言語」が相手方の主張を承諾したかのように受け取られてしまうことがあるのだろうと思います。そして、こうしたことは苦情対応に限らず交渉事や営業などの場面でも少なからず同じことが言えるのではないかと思います。

このように、主張をする側は何とか自分の要望・要求を認めてほしいと思ってそれをしている中で、それにかかるやり取りも自分の都合の良いように受け取ってしまいがちだと考えられます。それでは冒頭の話のような場面ではどのように対応すればよいのでしょうか。

苦情や要望などへの対応には、唯一絶対の方法といったものがあるわけではないと思います。その都度、状況に応じた臨機応変な対応が求められるのも事実ですが、くれぐれも注意をしなければならないのは、苦情や要望に対して嫌々対応しているという雰囲気を出してしまわないことが重要です。

そのためにも何と言っても必要になるのは、やはり「相手の話をしっかり聴くこと」になります。同時にそれが顧客に伝わらないと「話を聴いていない」などと新たな苦情につながってしまいかねないことから、話をしっかりと聴いていることを示すために「相手の目を見る」こと。そして、話が長いようであればメモを取ることがお勧めです。

そして、相手の話が終わった際に、「お客様のご要望は〇〇ということですね。」とメモを見ながら要約し、「内容は理解しました。」とお伝えするとスムースにやり取りが進むのではないかと考えます。そして、そのうえで要望を受け入れらないないことを丁寧に説明して理解していただけるようにしていくという、一連の流れで進めていくことが大切であるというように考えています。

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第1,235話 サービスを提供する側の神髄とは

2024年10月09日 | 仕事

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「このイクラは逆さにしても粒が落ちない。日本ではここでしか食べられない。また、このネタは日本で5%しか食べられないから、食べないで死んでしまう人がほとんど。それだけ珍しくて美味しい」

これは、私が年に何回か行く寿司屋の大将が寿司を説明する際の言葉です。都心から1時間ほどかかる町にあるのにもかかわらず遠方からも足を運ぶ人が多いかなりの人気店であり、さらに10数席しかないということもあり、予約が取りにくい店です。

この店では、寿司ネタが大きいことにまず驚かされるのですが、それ以外にも仕入れから客に寿司を提供するまでの細部にわたる大将のこだわりが特色と言えます。私がいつも驚かされるのは、寿司を出す際に、このネタはどこの海で取れたものかだけでなく、最近は温暖化により魚が獲れる場所や漁獲量にも影響が出ていること、さらに調理や味付けなどについても大将の微に入り細に入った説明があることです。その説明は長い時には3~5分くらいになります。

テーブルに寿司が置かれると、女将から「これから大将が寿司の説明をしますので、しっかり聞いてください」と声がかかります。私たち客は大将の熱のこもった説明に驚いたり唸ったりしつつひたすら傾聴して、その後に寿司をいただくことになるのです。説明を聞いた分、それぞれの寿司ネタの貴重さや有難み、そして何よりその味に納得することができるわけです。

話は変わりますが、私たちはオンオフを問わず様々な企業などからの売り込みのダイレクトメールや電話を受けたりします。こうしたセールスを歓迎してはいませんが、たまたま関心があるサービスやモノのセールスの連絡が来た際には、試しにセールスポイントやその会社のことを質問してみることがあります。

しかし、ほとんどの場合相手のセールスパーソンは端的に説明することができないのです。きちんとした説明ができないだけでなく、中には「最近入社したばかりなのでよくわかりません」や「そういう質問は想定していなかったのでわかりません」、さらに「新人研修の一環として電話をしていますので、わかりません」など、正直すぎる返答をされることも少なくないのです。こうした対応ではサービス検討以前の問題と感じざるを得ないことから、購入にまで至ることはまずありません。

そうした観点で考えると、先述の寿司屋の大将はおいしい寿司を出すのはもちろん、そのためにネタにこだわり、そしてその良さを顧客に理解してもらいやすいように、できるだけ定量化して論理的に説明をしてくれるのです。これは、客に新鮮なネタを満足して美味しく食べてほしいという寿司職人としてのプライドのあらわれであり、サービスを提供する側の神髄を見ているような気にすらなります。

モノやサービスを売るということは、決して簡単なことではありません。しかし、何よりセールスパーソンが熱い気持ちを持って、顧客にわかり易く伝えることができなければなければ顧客の気持ちを動かすことはできないわけです。

そのためには、この大将のようにプライドと熱い気持ちを持って工夫し努力することが欠かせないのではないかと、大将の寿司を食べるたびに思うのです。

という本ブログを書いていたら、近々またこの寿司屋に訪れたい気持ちになりました。(残念ながら予約は簡単にはとれませんが)

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第1,234話 あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか

2024年10月02日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「お尋ねしたのはそういうことではなく、〇〇について知りたいのです。そこを教えていただけますか?」

これは、最近私の知り合いが家電製品を購入する際のやり取りの中で、店員に伝えた言葉だそうです。具体的には、友人は2つの製品のどちらかを購入したいと考え性能の違いを繰り返し質問したのだそうです。しかし、店員は話を聞いているようには見えても、質問の意味を理解できていないのか、ピントのはずれな答えしか返ってこなかったとのことです。結局、知り合いはその店での購入を諦めたと話していました。

知り合いが言うには、店員であっても全ての製品の知識があるとは限らないので、わからなくて返答できないのであれば、別の人に代わってもらうなどの対応をしてもらえれば良かったとのことです。しかし、その時の状況を改めて振り返ってみると、知識の有無というよりもそもそもこちらの質問の意味を理解してもらえていなかったようで、そのために返答がずれてしまっていたのではないかとのことでした。

コミュニケーションにおいては話すことも大切ですが、話をすることの前提として聞くことの重要性について注目されるようになって久しいです。特に、コミュニケーションでは傾聴することが必要不可欠であると多くの人が理解しているのではないかと思います。

傾聴とは、「話し手の話を心を傾けて熱心に聴くこと、相手の言いたいことを言葉や態度で丁寧に示しながら聴くこと」です。これはアメリカの心理学者であるカール・ロジャースが提唱したもので、ロジャース自身がクライアントに対して行うカウンセリングにおいて、傾聴することの有効性を強く感じたことが始まりと言われています。

私自身の経験でも、研修を担当している際に受講者が頷いたり、前のめり(積極的)になったりするなどの傾聴の姿勢を示してくれると話がし易いと感じますので、傾聴は本当に大切なことだと思っています。

しかし、傾聴してくれているように見えても、実際にはこちらの話や意図があまり通じていないということが少なからずあるのも事実です。冒頭の例のようにこちらの意図とは異なる返答をされてしまったりすると、コミュニケーションを深めることができず、話が終わってしまうことになってしまいかねないのです。

それでは、相手の話をしっかり正確に聞きとれるようにするためには、どうすればよいのでしょうか?

相手の話を集中して聞くことはもちろんですが、自分の経験や考えに基づいて相手の話を解釈してしまうと正しい理解が難しくなる場合もあるため、まずは自身の先入観や偏見といったものを排除することが重要になると思います。さらには、自分の答えのピントがずれているようであれば、相手(話し手)が話が通じていないという表情になるなど何らかの変化が生じる場合もありますので、こうした「非言語的のサイン」を見落とさないことも必要です。

私は、コミュニケーションには「聞く(聴く)」「理解する」「表現する」などの総合的な力が必要だと考えていますが、それはあくまで話し手と聞き手の双方向で分かち合いながら行われるものです。

一方通行では成立し得ないものだからこそ、私たちはまずは相手の話を傾聴したうえで、先述のように相手が言わんとすることを正しく理解することができているのか、そしてそれに対して自分の考えをきちんと返せているのか、コミュニケーションの中で見返すことが必要だと考えています。

あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか。

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