「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
先日、弊社が担当させていただいたある公開セミナーでの出来事です。
午前中の時間がそろそろ終了しようかというタイミングで、私は受講者に「この課題について、どなたか発表してくださる方はいらっしゃいますか?」と声をかけました。
そのセミナーの受講者は40代が中心だったのですが、30名の受講者の中で、それに対して手を挙げてくれたのは1人の女性でした。彼女は立ちあがり、持参した資料を他の受講者に示しながら、自身の考えを丁寧に説明してくれました。他の受講者は、当初は挙手をした彼女にそれほどの関心を示していなかったのです。しかし、いざ彼女が説明を始めると、その説得力のある説明にくぎ付けになり、最後には会場一同が「すばらしい!」という感嘆の声を挙げていました。
彼女は説明の中で入社2年目であること、先輩からアドバイスをもらって仕事の進め方をいろいろ改善したことなどを紹介してくれました。
40代が中心の中で、入社2年目の彼女が大勢の前で発表するのはかなり勇気が要ることだったのではないかと思いました。彼女の姿勢がとても真摯だったこともあり、聞いている他の受講者もいつの間にか頷きながら前のめりで話を聴いていたのが印象的でした。
このときの様子を見ていて感じたのは、「育てる、教えるということは、決して一方通行で行われるものではない」ということです。通常、私たちは部下や後輩を指導する際には「育てたり、教えたりする側」が、「育てられる、教えられる側」を一方的に指導するというように考えがちです。
しかし、その行為は必ずしも一方通行で行われるものではなく、その逆も起こりえるものなのです。「育てたり、教えたり」する側が、同時に「育てられたり、教えられたり、気づかされたりする」ことがあるということであり、「育てたり、教えたり」という行為は、実は「双方向の関係」であるということです。
このような関係性は職場の中だけで起こることではなく、どのような場所や間柄であっても起こりえることだと思います。親子の間柄であってもそうですし、また実際に私が研修やセミナーを担当する中でも、同様のことが頻繁に起こっているのを目にしています。
受講者の反応を見たり発言や感想を聞く中で、私自身に新たな気づきがあったり、新たな視点が持てたりということが実際にあるのです。
このように考えると、上司や先輩の皆さんは日々部下や後輩を「育てる、教える」ことは大変だと考えられている方も少なくないことと思います。しかし、それは決して一方的なものではなく、自身も同時に「育てられる機会でもある」ことを再認識していただく必要があると考えています。
そしてそのように考えると、部下や後輩の育成も大変なだけでなく、楽しいことでもあるのだと感じられるのではないでしょうか。
どうか、上司や先輩の皆さん、自分も育てられている、一緒に育っているのだと思い、楽しく積極的に部下や後輩に話しかけてみてはいかがでしょうか。