中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,168話 他社との交流は、本人が欲すればこそ意味がある?

2023年05月31日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

私が研修業界に身を置くようになって30数年が経ちますが、その昔から企業規模の大小に関わらず、他企業と合同で研修を実施したいとの相談をいただくことがあります。他社と合同で研修を実施する目的は、自社とは異なる考え方や価値観に触れることで、様々な刺激を得て今後の仕事に活かしてほしいという願いが根底にあるようです。そのような刺激を受けることはとても重要ですが、実際のところは研修内容、対象者の設定、参加人数や日程など細かい条件を調整することはことのほか難しく、研修が成立するケースはさほど多くありませんでした。

その後、企業を取り巻く状況は大きく変わってきましたが、現在でもときどき「他社との合同研修を希望している」との話を研修のご担当者から聞くことがあります。社員を他社の社員と交流させたいという考え方は、昔も今も変わらずに存在するものなのだと感じます。

言うまでもありませんが、他社の社員と交流する方法は合同研修に限られているわけではありません。企業が社員を交流させる最も身近な方法としては、公開型のセミナーがあります。公開型であれば業種だけでなく、テーマによっては年代が異なる人も多数出席することから、本人が希望すれば休憩時間やセミナーの前後などに、手っ取り早く交流することができます。

私は、定期的に公開型のセミナーを担当させていただく機会があります。毎回、様々な業種や業態の人が参加されることが多いのですが、実際のところ研修のご担当者が希望されるほどには、参加者同士で交流をしている例は多くないと感じています。確かに、一昔前まではセミナーの中で同じグループで演習に取り組んだ人同士が、休憩時間に名刺交換をしている場面を見かけることが結構ありました。しかし、現在は休憩時間はひたすらスマートフォンを操作している人が多く、名刺交換をしているような風景を見ることは極めて少なくなりました。つまりは、セミナーに派遣されている当人は研修のご担当者が考えるほどには他社の人との交流を望んでいないということなのでしょう。そのような場面を見ると、「馬を水辺につれていけても水を飲ませることはできない」という諺を思い出します。本人にその気がなければ、いくら周囲の人間が気をもんだり強制したりしても、さほどの効果は得られないということなのでしょう。

外部からの刺激を得るのは、もちろん対面の研修やセミナーに限ったことではありません。もっと簡単にオンラインでつながることもできますし、SNSでは勉強会などの案内もたくさんあります。

しかし、どのような機会であっても「他からの刺激を受けて自らの成長や改善につなげる」ことは、周囲からお膳立てをされて行うようなものではなく、あくまで本人がそれを必要としているかどうかに尽きるのかもしれません。何事も、まず本人が欲しなければ本当の効果は得られないということであり、研修においてもいかに本人に前向きな気持ちで参加してもらえるか、勝負はそこから始まっているのだと、このブログを書きながら気持ちを新たにしています。

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第1,167話 親しい間柄ではない相手が、友達言葉を使用する心理とは

2023年05月24日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「馴れ馴れしい言葉遣いが気になりました」

これは、私の知り合いが自身が勤めている会社の階層別研修に出席した際に、外部講師の言葉遣いが非常に「フレンドリー」であったことに違和感を覚えたと話をしてくれたときの言葉です。

その研修を担当した講師は50代後半くらいの男性で、30代が中心の受講者に対して成長してもらいたいということを繰り返し熱く語っていたとのことです。そうした気持ちが強く働いたためかどうかはわかりませんが、受講者への語り口は「ここがポイントだよ」「これの目的はここにあるんだ」など終始「フレンドリー」だったそうです。そのため、知り合いは講師のその言葉遣いの方が気になってしまい、研修内容はあまり頭に入ってこなかったとのことでした。

研修に限ったことではありませんが、様々な接客の場面、たとえば病院での医師や看護師、老齢の親に付き添って訪れた美容院や介護施設などでも、「友だち言葉」で話をする人が少なからずいるように感じています。もちろん、相手は親しみを込めてそのような言葉遣いをしていることは想像がつくのですが、面識の程度にかかわらずさほど親しい間柄ではない相手からそのように話しかけられることについては、私自身は正直あまり居心地がよくありません。皆さんはこの点はいかがでしょうか。

それでは、前述のように顧客や患者、利用者に対して友達言葉で話をする人がいるのはなぜなのでしょうか?職種や個人により様々な考え方があるかと思いますが、多くの人は意識するしないにかかわらず相手との心理的距離を縮めたい、親しみやすさを表現したいという気持ちから、フレンドリーな友だち言葉を使用しているのではないでしょうか。

フレンドリーな対応を違和感なく受け入れられる人ももちろんいるかと思いますが、必ずしもそのような人ばかりではありませんので、受け取り方は様々なのではないでしょうか。

 それでは、話しかけた相手がどのように受け取っているのかを確認するためには、どうすればよいのでしょうか。相手に直接聞くことができれば話は簡単ですが、冒頭の例のように外部から来た研修講師の言葉遣いを受講者が指摘することは簡単にできることではなさそうです。また、そもそも相手に「どう受け取っています?」と確認すること自体が簡単なことではありません。

そこで、相手の受け取り方によって対応を変えるのではなく、親しみやすいことと馴れ馴れしい言葉遣いは別のこととして、一線を引いて考えてみてはいかがでしょうか。もし相手に対して親しみやすさを表わしたいと考えるのならば、言葉遣いをフレンドリーにするのではなく、親しみを込めた小さな対応を少しずつ、時間がかかってでも積み重ねていくのが一番確実ではないかと思います。

親しい関係は「焦らずじっくり」構築していくことがお勧めです。そして、信頼関係が構築できた結果、気が付いたらお互いが親しみやすい言葉遣いで話ができるようになっていたというのが理想なのではないでしょうか。

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第1,166話 他の人がどう思うかではなく、自分が好きで選んだ仕事を楽しんでやる

2023年05月17日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たとえば映画に出たとして、10人が映画を見てくれたら10人が好きっていうことはない。何人かは木村佳乃の顔が嫌い、声が嫌い、まず演技を見てもらう前に。という人もいるし、もちろん作品を見て木村佳乃の演技が嫌いだという人もいる。また、好きだと言ってくださる人もいるけど、評価って本当にバラバラ。何が大事かって、自分が好きでやってることが大事で、評価ばっかり気にしていたら、それこそ心が持たないような気がする。何が大事って、自分が好きでやっているという、その気持ちが一番大事だと思う。」

これは、5月15日に放送されたNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」にゲストとして出演した、女優の木村佳乃さんの言葉です。高校生から「メンタルの持ち方はどうしているのですか?」と質問されて答えたものです。

「何が大事かって、自分が好きでやってることが大事」と語ったときの木村さんは特に気負ったところもなく、とても清々しい表情でした。この言葉を聞いて私が感じたことは、「自身の仕事を好きな気持ちで行っていることは幸せなことだな。そして、そうした仕事を自らつかんだのは木村さん自身なんだな」と思いました。というのは、以前他の番組で木村さんは学生時代に女優になりたいと考え、伝手を頼って現在所属している事務所の社長に「女優になりたい」と訴え、その結果社長は木村さんの一途な思いに応えるべく事務所を開設したということを聞いたことがあったからです。木村さんは女優になりたいという夢をかなえるべく主体的に動き、その結果、夢を実現し、現在その仕事を心から楽しんでやっているわけです。

私たちは「他者から認められたい、評価されたい」などと、とかく他者からの評価を優先し自分がどうしたいのか、どうなりたいのかということを軽視してしまうことがあります。

他者の考えを大切にしたり、その評価を気にしたりすること自体はもちろん悪いことではありません。しかし、そこに重きを置きすぎると自分の気持ちや考えは二の次となってしまい、そもそも誰のために、何のために頑張っているのかという大事な本質を見失ってしまうことがあるのではないでしょうか。

では、私たちが自身より他者の評価を優先してしまうことがあるのはなぜなのでしょうか?

理由は様々とは思いますが、日本には古今、個よりも集団を大切にしたり出る杭は打たれたりするという風土が多かれ少なかれあるように思います。つまり、周囲に受け入れてもらいうまくやっていくためには、自分の考えよりもまず他者がどのように感じるのかを考える他者優先の習慣が身についてしまっている傾向が少なからずあるように思えます。もちろん、集団を大切にすることは悪いことではないのですが、最近は周囲の評価を気にしすぎるあまり、窮屈な生き方になってしまっている人が少なくないように思えるのです。

言うまでもないことですが、私達の人生の主役は自分自身です。他者がどのように思うかという他者評価は一旦脇において、まず「自分がどうしたいのか、どこへ向かいたいのか、最終的にどのようになりたいのか」を考えることの大切さは、言うまでもないことです。

木村佳乃さんの「他の人がどう思うかではなく、自分が好きで選んだ仕事を楽しんでやる」という言葉を聞いた高校生が「あのとき木村佳乃さんから言われた言葉が自分の人生にプラスの影響があった」と思う日が来るのではないかと思うとともに、自分自身もいろいろ考えさせられた番組でした。

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第1,165話 挑戦しなければ、自分のパンチは相手に当たらない

2023年05月10日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「受けないように避けてると、間違いなく相手からのパンチは当たらないから、ダメージはない。けれど、避けるってことは前に出ないから、自分のパンチも相手に当たらない」

これは、以前読んだ内館牧子氏の小説「今度生まれたら」(講談社)の中の台詞の一つです。「自分が前に出なければ相手にパンチは当たらない」というこの言葉は、私自身が一歩を踏み出すことをためらうようなときに、また自分を鼓舞するときに何度か反芻してきました。

5月も半ばになり、新入社員が今後の仕事を具体的に始める時期になりました。多くの新人が、それぞれの職場ではりきって仕事を覚えようとしていることと思います。

近年、若手と言われる年代の特徴の一つとして「成長欲求が高い」ことがありますが、弊社が研修を担当させていただいた際にも、ちょっとした会話からスキルや知識などの習得に余念がない人が多いことが感じられます。また、実際に入社前に仕事に役立つスキルや知識を身につけたいとの問合わせが入ることがあるという話を採用のご担当者から聞いたこともあります。「スキルや知識を身に付けることによって成長したい、そのために勉強したい」と考えることは素晴らしいことですので、年長者として若手のそのような気持ちをぜひ応援したいと考えています。

しかしながら、もう一方では「若手社員の挑戦意欲の低下」という傾向も顕著になっているようなのです。リクルートマネジメントソリューションズが、2022年3~4月に新入社員525人を対象に「働くうえで大切にしたいこと」を複数選択で尋ねた結果、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」は24,8%、「何があってもあきらめずにやりきること」は13,9%と、いずれもこれまでの調査で最低の数値だったとのことです。

言うまでもありませんが、挑戦とは「困難なことに挑むこと」です。自分が今持ち合わせているスキルや知識では及ばないかもしれないことに対して敢えて挑んだ結果として、苦労したり途中で失敗したりすることは当然にありえるものなのです。そして、そうした経験を通じて困難を乗り越えるためにはどうすればよいのか、次に同じような事柄が現れたときにはどのように対応すればよいのかということを、間違いなくその経験から身に付けることができるのです。

若手に限ったことではありませんが、成長とは経験したことがないことや、今の自分には少々ハードルが高いことに挑戦した結果として得られるものなのではないでしょうか。そしてその結果「何とか乗り切った」という感覚を得られたときに、はじめてこれまで目にできなかったような新たな景色(世界)が見えてくるのではないかと思うのです。

成長したいと考えることはとても素晴らしいことですので、ぜひ若手の皆さんには今後もその気持ちを大切にして、様々なことに挑戦を続けていただきたいと思います。その際には、はじめはあまり大上段に構えずに、まずは小さな事柄で構わないので、経験したことのないことや少し背伸びが必要なことに挑んでみることが大切なのではないでしょうか。

もちろん、成長への挑戦は若手に限ったことではありません。「パンチを相手に当てるため」にも、自戒の念を込めて私も引き続き挑戦を続けたいと思います。

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