「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「すみません。トラブル対応しなければならないので、ちょっと失礼します」
先日、弊社が担当させていただいた、ある企業の中堅社員を対象にした研修の最中に、受講者のAさんがトラブル対応のために、このように私に声をかけて度々席を外していました。
その研修は2日間のプログラムでしたが、1日目の午前中に顧客からクレームの連絡が入り、その後Aさんは研修時だけでなく、夜に行われた懇親会の時間まで、たびたび対応に追われることになってしまったのでした。
それでは、Aさんはどのようなトラブルに対応しなければならなかったのでしょうか?Aさんおよび研修のご担当者から話を聞いたところ、今回のトラブルはこちら側に非があるというより、顧客の勘違いと考えられることが原因により生じたものであったため対応が難しく、Aさんは上司への報告や相談に加え、関係各位へも連絡や相談をしなければならなくなったのだそうです。
私がAさんには会うのは、2か月前に続き今回で2回目でしたが、Aさんの研修への取組み姿勢は非常に前向きであり、熱心な姿勢だと感じていました。そのようなAさんがトラブル対応をせざるを得ず、その結果何度も席を外して対応しなければならないことで、結果的に研修に集中することができなかったことは、本人もとても残念だったのではないかと感じました。そして同時に思ったのは、階層別研修を受講する機会は数年に一回程度と限られたものであるため、万が一トラブルが生じた際の対応は研修受講者本人ではなく別の人がすることができないものなのだろうかということです。
これについては、様々な考え方があると思いますし、必ずしも正解があるものでもないと思います。しかし、これまで私が様々な企業の研修を担当させていただいてきてあらためて思うのは、研修は仕事の一環として行われるものであり、多くの場合、階層別研修は年度初めには実施されることが決定しています。そうであるならば、受講者が集中して研修に取り組むことができるように、上司は周囲のメンバーとともに受講者の仕事のフォローができるように体制を整えておくことが大切なのではないかということです。
そして、このことは何も研修に限った話ではありません。現在、企業などでは社員に一定以上の有給休暇を取得させることが義務付けられていますし、男性の育休の取得にも目標が掲げられるなど、社員が仕事を離れることはたくさんあるわけです。そのようなときに、何らかのトラブルが発生した場合に主担当である人が全て対応をしなければならないとなると、おちおち有給休暇や育児休暇をとることができなくなってしまいかねませんし、研修にも参加しづらくなってしまいます。
もちろん、組織によっては主担当と副担当をあらかじめ決めてあり、主担当が対応できないときには副担当が対応するということになっています。しかし、私の経験から考えても実際には大半の組織ではそれぞれが自分の仕事で手一杯で、他者が担当している仕事の状況を詳しく把握できているというケースはあまりないようです。ある程度の余裕をもった社員配置ができるのであれば、こうした問題は生じないと思いますが、そこまでの余裕があるところは多くないというのが実際のところではないでしょうか。
そうした中で社員が安心して休暇を取得できるようにしていくためには、まずは主担当がいないときに周囲がどのように対応するかについて改めて確認し、メンバーそれぞれがきちんと認識しておくことからはじめることが必要なのではないかと考えています。そうすれば少なくともいざ事が起こった時にも慌てず、全ての対応を不在の人間がしなければならなくなるような事態を少しでも避けることができるのではないかと考えています。
皆さんの組織では、そのような体制は整っていますか?