中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

部長ができます

2017年09月27日 | コンサルティング

採用担当者:「あなたは何ができますか?(どういうことで会社に貢献してくれますか?)」

応募者「部長ができます」

これは、昔バブルがはじけた頃にリストラされた、ある中高年の再就職活動の中での発言です。本当にこのようなやりとりがあったのか、真偽のほどはわかりません。しかし、中高年の人たちが長年勤めた会社から思いもよらずに退職勧告をされた後の再就職活動の際に、自分の強みが言えずに困っている様子をよく表しているやりとりだと思います。

最近、中高年の知り合いが企業からリストラされた後、長い就職活動を経てようやく就職先が決まったという話を聞きました。彼は文系の大学を卒業後メーカーに入社し、営業一筋、真面目にコツコツと働いてきたそうです。しかし、1年前にいきなり退職勧告をされたとのことでした。

「こういう話はこれまでにもいろいろ聞いてきたけれど、まさか自分の身に降りかかるとは思っていなかった。長年、真面目にやってきたし、毎年ではなかったけれど営業数字もまずまず達成してきたつもりだったから」とのことです。さらに、彼は続けて次のように話してくれました。

「再就職活動は想像以上に大変だった。でも一番ショックだったのは、人に語れるような自分のキャリアがなかったこと。法人営業ができますということ以外に、自分のキャリアで人に言えることが何もなかったんだ」とのことでした。これは彼に限った話ではないと思いますし、冒頭の「部長ができます」という話と同じことだと思います。

ビジネスパーソンが所属していた会社で、長年一所懸命に働いたにもかかわらず、結果として他社で役に立つような知識やスキル・経験など、いわゆるポータブルスキルが獲得できていないのです。では一体なぜ、こういうことが起きてしまうのでしょうか。

それには、日本特有の新卒一括採用などの原因もあるかと思いますが、もう一点思うのは、ビジネスパーソン自身に危機意識がないのではないかということです。

もはや終身雇用の時代ではなくなったと言われて久しいです。しかし、それにもかかわらず、目の前のことで一杯一杯になっていて、自分のキャリアをどのように作り上げていくのかについて全く意識していないビジネスパーソンが実に多いです。

弊社が担当させていただく研修の中で行っている自己診断で、受講者の回答の数値が相対的に低くなる設問の一つに「自己啓発(仕事に関連する本を読む、セミナーを受講するなど)に努めているか?」があります。低い点数になってしまう理由を尋ねると、「目の前の仕事が忙しい」、「家に帰ると疲れてしまっていて、何をする気にもなれない」とのことです。

ほとんどの方は、実際にそのとおりなのだろうと思います。 

しかし、会社のためにそこまで努力して働いたとしても、では20年後30年後に会社が面倒を見てくれるかどうかは、残念ながら定かではないと言わざるを得ないのが現実です。

「ポータブルスキルを身に付けることは自己責任」と言われるようになって20年以上もたつのに、あまりに危機意識が薄いビジネスパーソン。ここを何とかしないと、今後も冒頭のやりとりが繰り返されるのではないでしょうか。

話は変わりますが、NHKの朝のドラマ「ひよっこ」はいよいよ今週末で終わってしまいますが、皆さんはご覧になっていますか。

本日はバスの車掌をしていた次郎さんがキャリアチェンジに向けて動き出していることがわかりました。バスがワンマンカーになり車掌の仕事がなくなってしまった次郎さんは、何と奥茨城の町長戦に出馬したということです。危機意識を持って準備していたわけではないでしょうが、実際に車掌から町長への華麗なる転身ができるかどうか・・・それはまだわかりません。が、これもキャリアチェンジの形でしょう。

さて、「忙しい、忙しい」が口癖になってしまっている方は自分を次郎さんに置き換えたら一体どうするのか、「ひよっこ」は後3日で終わってしまいますが、考えてみるのもいいかもしれません。

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女性エンジニアから見た職場の問題

2017年09月24日 | コンサルティング

女性をエンジニアとして採用するIT系の企業が増えてきました。企業研修の場でも、彼女たちが活躍している様子を本人の口から直接聞くことがあります。特にSE(システム・エンジニア)の仕事に関しては、女性の進出がかなり進んでいます。とはいえ、技術系の職場では今でも男性の比率が圧倒的に高いのが現実です。その中で第一線のエンジニアとして働き続けるのは、大変な苦労を伴うことだと思います。

ある会社の研修(プロジェクトマネジメント)の際、参加していた数人の女性エンジニアに職場での悩みを聞いたことがあります。おそらく、長時間労働や男性上司の無理解といった答えが多いだろうと想像していました。ところが一番の悩みは「自分の将来」についてでした。

「ほとんどの社員は毎日夜遅くまで、忙しいときは休日も出てきてコンピュータに向かって仕事をしています。」
「長時間労働は良いことではありませんし、すぐにでも改善すべきです。でも、それより問題だと思うのは、ほとんどの男性社員が、とにかく目の前の仕事に没頭することがすべて、みたいな感じで働いていることです。」

これはIT系の企業に限らずですが、男性の技術職にありがちな傾向のひとつです。職場という大きな機械の一部品となって、ひたすら動き続けることが優秀なエンジニアであるという考え方です。

仕事に100%没頭できることは、エンジニアにとって重要な資質です。ただし、自分の将来について、あらためて時間を確保してしっかり考えることも大事です。

「私は将来のキャリアのことが気になっています。これから何十年も働くとして、次のステップはどうすれば良いのか悩んでいます。」その女性SEはそう答えました。キャリアについて悩むということは、長期的な視点に立って考えているということでもあります。

ある大手SIer(システム・インテグレーター)の人事部長は次のように話していました。「若手のエンジニアには、将来も技術系の職場で働きたいなら今のうちから次のことはしっかり実行しておくべきだと繰り返し言っています。」

・新しい技術に興味を持ち、学び続けること
・技術面だけではなく、すべての仕事で無駄をなくし生産性を上げる工夫をすること
・コミュニケーション能力を磨き、社内外からの信頼を獲得すること

確かに、こうした努力を続けることで自分のキャリアが徐々に見えてきます。
忙しさに追われているエンジニアの皆さん、永遠に今の状態を続けることが果たしてよいのかどうか、一度立ち止まって考えてみてください。

さて、先ほどの人事部長さんは次のようにも言っていました。

「やたら残業が多いエンジニアって生産性が低いんですよ。そういう奴に限って妙に技術者としてのプライドが高くて扱いにくいです。」

もっともこれはエンジニアに限った話しではありませんね。あなたは大丈夫ですか。

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面と向かって言うのには、抵抗がある

2017年09月20日 | コンサルティング

「改善点は特にないと思います」

これは弊社が行う研修のプログラムの中で、受講者同士がそれぞれの「良い点」と「改善点」を互いにフィードバックしあう場面でたびたび聞かれる言葉です。

たとえば、スピーチやプレゼンテーションを行う場合に、事前に「より良くするための改善点」を互いに伝え合っておけば、本番での「質」を高めることができます。

このため、お互いの良い点だけでなく、改善点も必ず伝えましょうと伝えていても、受講者にとっては冒頭の言葉のように相手に面と向かって伝えることは敷居が高く感じられるようです。

そして、そのように感じる背景には様々な理由があると思います。一つには「より良くなってもらうためとは言え、改善すべき点を伝えるのだから、相手に嫌われてしまったらどうしよう」ということがあるでしょう。さらに、「そもそも自分自身が完璧にできているわけではないのだから、他者に言える立場にはない」と考えているのかもしれません。また、他者に伝えるような経験がないためにどこが良かったのか、どこが改善点なのかがわからない」という人もいます。


以上のように理由はいろいろと考えられます。実際に研修の中で受講者に聞いてみると、圧倒的に多いのが「他者に改善点を伝えること自体に対する抵抗」です。そこからは、「マイナスのことを伝えることによって相手に嫌われたら困る」ことが本音だということがわかりました。

そのようなことを考えていたところ、本日の朝日新聞の朝刊に「リアル歌会 こわいの?」という記事が掲載されていました。何が「こわい」のかと思って記事を読んでみると、そこで紹介されていたのはタイトルとは異なる現実で、きつい言葉を投げかけられる不安よりも、「批評することが難しい」ということから慣れない場で他者の歌を批評することへの恐れや、ネットではなくリアルな歌会に出たいという本音が浮かび上がったことが紹介されていました。

歌会と研修では相手にフィードバックする内容はもちろん別ものです。しかし、やはりここでも「他者に対して自分の考えをぶつけることへの抵抗」があるように感じます。

では、この抵抗感はどのようにクリアしていけば良いのでしょうか。

他者に対して批評する、自分の考えをぶつけることへの苦手意識を払しょくするためには、まずは相手の「良い点」を見つける、繰り返し伝えるなどの経験が必要だと考えています。そして、それを積み重ねることで、だんだんと相手に対して「伝える」ことの心理的なハードルが低くなって、批評や相手が改善した方がいい点についても伝えやすくなっていくのではないでしょうか。

同時に、良い点を見つけることを繰り返すことによって、相対的に改善点も見えてくるということもあるでしょう。

誰も、自分のことはなかなか客観的に見ることができません。だからこそ、他者からのフィードバックが非常に有効になります。

「面と向かって言うのはちょっと・・・」という方は、まずは相手の良い点を見つけることから始めてみませんか。

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物流が主役になる日

2017年09月17日 | コンサルティング

「製造部はなんでもかんでもたくさん作りたがる」、「営業部はいつだってお客の言いなりだ」。こういう愚痴を聞きたければ物流部に行ってみることです。物流を担当する部署は、製品の保管や移送を担っています。物流倉庫には溢れんばかりの製品が山積みになっています。何年も出荷されずに滞留している不良在庫も目立ちます。だから倉庫の中では先程の愚痴が聞こえてくるのです。

愚痴の原因のひとつは製造部の事情です。人件費は固定費ですから、1時間に100個作るよりは200個作った方が1個当たりのコストが下がります。材料だって一度にたくさん購入した方が割安です。製造原価を下げることが至上命題ですから、製品をたくさん作りたがるのは自然なことです。

もうひとつは営業部の事情です。大幅に値引きをしてでも大量の注文が欲しいので、倉庫には製品在庫をたくさん用意しておきたいのです。また、お客様から返品の依頼があった時など、営業にとっては心証を良くする絶好のチャンス!即座に引き取りに行って倉庫に戻します。

かくして倉庫には大量の製品が押し込まれ、物流部の愚痴は一向に収まりません。

しかし、この愚痴にこそ真実が集約されています。

日本の人口が減り続け、モノに対する需要も減少していきます。売れなければ作り過ぎはかえってコストの上昇を招きます。また、お客様の言いなりで小口出荷や返品の受け入れを続ければ、余計なコストがかかります。

モノの流れを確実につかんでいるのは物流部です。そこで提案ですが、物流部を製造と営業の上位に位置づけてみてはいかがでしょうか。もちろん、企業の利益に対する責任も同時に負わせます。

過去の物流データを洗い出し、製造と営業からも情報を集めて徹底的に分析します。物流が製造原価を仕切り、販売目標を決定するというのは一見無謀なことのようですが、営業利益ベースで考えれば案外合理的ではないでしょうか。

物流部門の皆さん、いつまでも脇役でいることはありません。主役になる日は近い!

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わかりやすいことだけを追い求めてはいけない

2017年09月13日 | コンサルティング

 説明がわかりやすくてよかったです」

研修終了後の受講者アンケートにこのように書かれていると、思わずホッとします。

こうしたこともあって、弊社では年に何度も担当するようなテーマの研修であっても、業種や職種、階層、個々の企業が抱えている問題や要望をあらかじめ確認して、それに沿ってわかりやすいようなケースを作ったり、紹介する事例を工夫したりしています。

しかし、同時にわかりやすいメッセージを送ることにばかりに集中してしまうことに一抹の不安も感じています。

では、「わかりやすい」ことは本当に良いことなのでしょうか?

実は「わかりやすい」を重要視することについては、これまでにも多くの人が警鐘を鳴らしているのです。

「わかりやすい」という言葉を辞書で調べてみると、「理解するのが簡単である、見つけるのがたやすい、明快である、単純である」などの意味があります。

確かに、わかりやすいメッセージだけを送ろうとすると、どうしても物事を単純化してしまいがちです。本来なら背景などを含めた全体像を伝えるべきであるところを、一部分だけ切り取って、そこだけが重要だというような伝え方をしてしまうことがあります。

さらには、わかりやすさを追い求めることによって、本当は別の見方もあるのにそれを伝えなかったりします。事実は他にもたくさんあるのに、他面的な見方をそぎおとしてしまったりするようなこともあります。

弊社では、研修のテキストは通常はWordで作っていますが、文章が書いてあるWordのテキストは読むのが面倒だから、スライドで紹介したパワーポイントの資料をもらいたい。そのほうが文字が少なくてわかりやすい、と要望する受講者もいます。

しかし、果たしてそれでよいのでしょうか。

一見、わかりやすいことはわかりにくいことよりも良いことだと考えられます。

しかし、その一方でわかりやすくすることによって、考えたり想像したりする「思考」を止めさせてしまうことにつながる面があることも確かです。

実際に、演習で課題に取り組んでいただいても、すぐに答えを見いだせないと考えることを放棄して、すぐに正解を求めてくる方も結構います。

もちろん、考えれば必ず答えを見いだせることばかりではないのも確かです。今はスマホで簡単に検索ができるわけですから、「考えたけれども答えは出なかった。だったら自分で調べてみよう。わかりにくかったから、ちょっと調べてみよう」と考えて実際にそうしてみることが必要でしょう。

以上のことから、弊社では当面の間、研修アンケートの項目から「説明がわかりやすかったか、否か」の質問は外すことにしました。講師の立場からはアンケート結果を見る楽しみ(不安?)はなくなるのはちょっぴり寂しい気持ちもしますが・・・

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取扱説明書をなくさないために

2017年09月10日 | コンサルティング

世の中には「ありそうだけどないもの」と「どう考えてもないもの」があります。「読んで面白い取扱説明書(ユーザーズ・マニュアル)」は間違いなく後者でしょう。なぜ取扱説明書(以下トリセツ)は面白くないのでしょう。

まず考えられるのは、面白くする必要がないということです。新しいコンピュータやスマートフォンを買ったときにトリセツを読むのは、使い方を知るためです。必要な情報さえ入手できればあとは要りません。とは言っても、この先またわからないことが出てきたときに手元にないと困るから、まあ捨てずに置いておくか、といったところです。

次に考えられるのは、「面白い」ということと「正確に情報を伝える」ということが両立しにくいからです。読み手に必要な情報を正確に伝えるためには、論理的で簡潔な文章でなければなりません。論旨があいまいで冗長な文章で綴られトリセツでは、本来の役目を果たすことができません。こうなると「読んで面白いトリセツ」とは形容矛盾(互いに矛盾している複数の表現を含むこと)であるとさえ言えそうです。

ところで、私はトリセツが必要になったので探してみたけれど見つからない、といった経験を数多く持っています。当面使わないからどこかにしまったはずだが、さてどこにしまったのか、いっこうに思い出せない。捨てたかな?いや絶対捨てていない。じゃあ、どこにあるんだ?

これでは「困ったときに役に立つ」というトリセツの存在意義が失われてしまいます。もちろん、ネットを探せばほとんどのユーザーズ・マニュアルは入手できます。どこかへやってしまった自分がいけないことも、重々承知しています。それでも新製品を手に入れたときに同梱されていた、あのトリセツをなくしてしまったことが残念でなりません。

こうした悲劇を避けるためには「読んで面白いトリセツ」を作るしかありません。実際、面白い読み物はそう簡単になくなったりはしません。なにより、面白ければ読み返すこともあるでしょう。ひょっとすると愛読書になるかもしれません。自宅の本棚にいろいろな電気製品や自動車、家具などのトリセツがずらりと並んでいる様子を思い浮かべてみました。暇なときはそこから1冊のトリセツを手に取ってページをめくってみます。そこに書いてある内容は・・・

残念ながら私の妄想もここで止まってしまいました。面白いトリセツは、どう考えても世の中にないもののひとつのようです。

大手メーカーで取扱説明書を担当されている方々に無理を承知でお願いいたします。ぜひ「読んで面白いトリセツ」に挑戦してください。

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債務は返済しなければならない

2017年09月06日 | コンサルティング

「すみません。ここのところ残業が続いていて家に帰るのが遅いので、ずっと睡眠不足の状態です。座るとすぐに眠くなってしまうので、立ったまま受講してもいいですか?」

これは、先日弊社が行った研修で午後のプログラムが始まって少し経ったころに、実際に一人の受講者からかけられた言葉です。

研修では昼食後の時間を「魔の時間」と表現することがあります。生理学的にも睡魔が襲ってくる時間だということは、皆さんも身をもって感じていらっしゃると思います。

もちろん、研修を提供する側としても睡魔が襲ってくることのないように、演習や討議を取り入れるなどのメリハリをつけたり、早めに休憩を取り入れたりするようにはしています。

しかし、これは人間の生理現象ですから、完全に防ぎきれるものではないようです。

ところで、皆さんは9月3日が「睡眠の日」ということをご存知ですか?

「ぐっ(9)すり(3)」の語呂合わせから、9月3日を「秋の睡眠の日」としています。これは2011年に睡眠に関する知識と啓発を目的に、睡眠健康推進機構が定めたものだそうです。

日本人の睡眠不足はかねてより問題になっていますが、ここ最近「睡眠債務」という言葉を聞くことが多くなりました。ご存知の方も多いと思いますが、睡眠債務とは睡眠不足が借金のように積み重なっていく状態のことを言います。

先日のNHKの「あさイチ」でも、睡眠債務について取り上げていました。それによれば、睡眠負債とがんには非常に強い関係があり、6時間以下の睡眠時間の人の乳がんの罹患率は何と1.67倍にもなるとのことです。

さらに、睡眠が不足していると認知症のリスクが高まったり、脳卒中、心筋梗塞、肥満や認知症にもつながったりするのだそうです。

たとえば、認知症ではアミロイドβという認知症の原因の一つと疑われている物質は毎日脳内に発生しているのだそうです。本来であれば眠っている時間に排出されるものが、睡眠時間が短いと十分に排出できないために、認知症のリスクが高まるということです。

番組の中では日本人は何となく睡眠不足を自慢するような傾向があることにも触れていましたが、こうなると「たかが睡眠不足」とは言えない大きな問題です。

さて、通常、私たちは借金が増えれば返済時には利息を含めて返済しなければなりません。当然、それは大きな負担になります。同様に体も睡眠負債という「借金」をし続けると、その分の負担が余計にかかることになります。

そのために、睡眠債務をできる限りこまめに返済していかないと、健康のバランスを崩すことになってしまいかねないわけです。

それでは、冒頭の受講者をはじめとして、仕事などで十分な睡眠時間を確保しづらい人が睡眠債務をためないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。

そこで、有効なのが「パワーナップ (power-nap)」です。パワーナップとは15~30分程度の短い仮眠のことです。睡眠の不足分を補うためによく用いられます。これが睡眠負債が蓄積してしまっている人の返済に効果的なのだそうです。

私の知り合いは、通勤の往復時は別途料金を払ってでも指定席を確保して、パワーナップを取り入れているそうです。将来も含めた自分の健康のことを考えれば、ある程度の現実の出費が発生しても、それで睡眠債務が返済できるのであれば合理的と言えます。

まずは、睡眠債務をできる限りためないようにすることが肝要です。しかし、どうしてもたまってしまったら、様々な工夫をしてパワーナップを取り入れ、積極的に返済に努めていくことをお奨めします。

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人を縛らない。しかし、ルールは徹底する会社

2017年09月03日 | コンサルティング

「好きな日に出勤すればよい。休みの連絡の必要はない。嫌いな作業はやらなくてよい」

これは社員2名、パート9名のエビ工場の「株式会社パプアニューギニア海産」の労務管理です。最近、経営者である武藤北斗氏著の「生きる職場」(イーストプレス)がマスコミ等でたびたび紹介されていますので、私も先日読んでみました。

武藤氏が導入した「フリースケジュール制度」では、前述のように事前に出勤予定を決めたり、欠勤の連絡をしたりすることを禁止しています。さらに、仕事においては嫌いな作業はしなくてもよいとのことです。

一般的には理解しがたい経営手法ですが、この制度の導入は功を奏したそうです。制度の導入当初は退職した人もいたようですが、その後、離職率は低下して、現在9名中7名は当初からのパートとのことです。その結果、熟練者が業務を担うことになり、品質も向上したそうです。

このように、この制度の肝は「従業員を信用する。そして任せる」ことで、武藤氏は就業規則を設けず社員の自主性に任せているのです。

しかし、一方で現場の仕事に関しては、「人の悪口は言わない」「時間は守る」をはじめとしてルールを徹底させています。つまり、労務に関しては自由にするけれど、現場の作業については細かいルールを作り、徹底して守らせるというようにしているわけです。

「自由」と「ルールの徹底」、一見相対しているように思いますが、制度の成功の肝はこの2点にあると感じました。

現場の作業を円滑に進めるためには日々改善が必要ですが、改善したらそれをきちんとルールにする、それを武藤氏は徹底しているのです。そのために現場に行き、従業員の話を聞く時間を惜しみませんし、折に触れて面談時間を設け本音の声を聴いています。そして、それを従業員にフィードバックしているのです。さらに、ルールを決める際もトップダウンではなく、従業員に話し合いをさせて決めさせています。

本の中では、「現場において争いを生まないためには、まずは作業の根本的なところを統一し、曖昧なルールもきちんと線引きするようにした。その際も品質のことを考えながらパートさんの意見を反映した。」とされています。

ルールには、作業には直結しない「包丁の使い方」、「掃除の順番」、「朝の挨拶のタイミング」、「室温が何度になったら冷房をつけるのか」「トイレに行きたくなったら誰に報告するか」などがありますが、曖昧さを排除してルールとして明確にしたとのことです。

このルール、直訳すれば規則という意味です。規則というと、一般的には縛られる窮屈なものというイメージがありますが、一方では誰が作業を行ったとしても、同じ時間で求める品質を保つためにはなくてはならないものだということです。

企業規模にかかわらず、仕事を進めていく上では大なり小なり問題が起きることは常のことです。それを放置するのではなく、問題点を皆で共有して、改善するためのルールを作ることはとても大切なことです。しかし、これは簡単なことではありません。

それを当たり前のように日々行っているのが、このパプアニューギニア海産という会社なのです。

フリースケジュールや嫌いな仕事はやらなくてもよいなど、「人を縛らない会社」というイメージが先行しているパプアニューギニア海産です。一方、同時にこのように決めなければならないことは細かくルールを作っていることが特徴であり、それが成功の土台にあるということなのでしょう。

本の中で武藤氏はこのようにも言っています。「ルールは働きやすい職場を作るための一つの手段に過ぎず、結論ではない」

実に印象的な言葉です。(冒頭の写真はパプアニューギニア海産のHPより)

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