中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,114話 配偶者の転勤に伴う女性のキャリアの決断

2022年04月27日 | キャリア

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「夫のアメリカへの転勤に伴うため、退職することにしました」、「転勤する前に同じ職場だった夫と社内結婚をしましたが、遠方のため当初から別居結婚でした。夫の転勤があと3年はかなわないことがわかりましたので、この度私が退職して一緒に暮らすことにしました」

これは先月末に別々の企業に勤める2人の女性からそれぞれ聞いた言葉です。2人は人事部に所属していましたが、とても優秀な社員で生き生きとした表情で活躍し、将来を期待されていました。そういう2人が同じタイミングで退職という決断をされたため、連絡を受けたときは、正直驚きました。

夫の転勤への同伴を理由に、女性がそれまで築いてきたキャリアを断念せざるを得ないことは、本人のみならず組織にとっても大きな損失です。特に女性自身の希望とは異なるわけですから、苦渋の決断をしなければならなかったことは非常に残念だと思います。

近年、さまざまな組織において社員の異動をどのように考えるのか、活発な議論が交わされるようになっています。転居を伴う異動を敬遠する人も少なからずいることから、そうした人から選ばれる組織になるためには、全国への異動はさせず地域を限定して異動させたり、また、異動を受け入れる社員に対しては報酬面で優遇したりと、いろいろと工夫をする組織が増えています。世の風潮としては転勤を見直す方向に動き始めているようですが、それでは今後、転勤は減少へと進むのでしょうか?

これに関しては、簡単に答えを出せるものではないと思います。それは、転居を伴う異動の目的は組織により様々だからです。一般的に、異動を行う目的は人材育成をはじめ、ローテーション、組織の活性化、転勤先の社員の教育、社員のモチベーションの向上、顧客開拓など、実に多様です。これらの目的を達成する手段は他にもあるかもしれませんが、異動による効果は大変大きいこともあり、多くの組織で取り入れられてきた経緯があります。

私は以前に異動を積極的に行っていない企業の研修を長期にわたり担当させていただいたことがありますが、それによるプラスの面もある一方、マイナス面も多々顕在化していると感じました。マイナス面の一番には、セクショナリズムがありました。異動がなく一つの部署に居続けることで、自部署のことには精通する反面、他部署との交流が限られてしまうことから「垣根」ができてしまうのです。その結果、部署ごとに部分最適の視点のみで仕事をしてしまい、全体最適の視点が生まれにくいのだと感じました。その企業では、マイナスを解消し社内を活性化するために、部署横断的なメンバーを集めプロジェクトチームを作ったり、レクリエーションを行ったりしましたが、部署の壁を超えることは簡単ではなかったようです。

このような企業の実例を知っている者としては、組織における異動によるメリットはデメリットをはるかに凌ぐものだとは考えていますが、一方でそれによって冒頭の例のように、女性がキャリアを中断せざるを得なくなることはとても残念だと考えています。

それぞれの家庭の事情や人生観なども関わることから、それぞれがどのように折り合いをつけるのか、その答えを見つけるのは簡単なことではありません。

しかし、「女性の活躍」が叫ばれている中、また今後ますますそれが求められていくであろう中、組織はこうした問題をどのように考え対応するのか、個人はどのように決断するのか、今後も議論は続きそうです。

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第1,113話 自由と自律の中で進められる在宅勤務

2022年04月20日 | 仕事

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「出勤できていいですね」

これは、私の知り合いが隣人からかけられた言葉です。エッセンシャルワーカーであるこの知り合いは、本人の希望というわけではなかったようですが、2年前の第1回目の緊急事態宣言下からずっと出勤しているのです。そして先日、帰宅時にたまたまこの隣人と会い、その際にかけられたのが冒頭の言葉だそうです。知り合いが「どういうことですか?」と聞いたところ、隣人はこの2年間ほぼ在宅勤務だそうで、出勤している知り合いに対して「もう在宅勤務は疲れました。思うように仕事もはかどりませんし、出勤できる人がうらやましいです。」としみじみと言ったのだそうです。

新型コロナにより、多くの組織がテレワークなどの在宅勤務を導入して、はや2年が経過しました。それまでに比べれば「働き方改革」と言ってもいいような状況だと思っていますが、実際、通勤時間の削減などのテレワークのメリットは広く知れ渡るようになっています。しかし、一方でテレワークのデメリットとして、上司や部下などの同僚とのコミュニケーションの難しさはもちろんのこと、出社しないことにより本人のオンとオフの仕事の切り替えが難しく、仕事の生産性が上がらないということも注目されるようになっています。

日経BP総合研究所イノベーションICTラボが2020年10月に行った調査によると、テレワークを阻害する要因として「ずっと自宅にいると、心身を仕事モードに切り替えにくい」が2位(36.3%)でした。私自身これまで職場で働いていたときには、周囲に人がいるためそれが良い刺激になっていると感じていました。同僚が一心不乱にパソコンに向かっていたり、電話対応をしていたり、数人のメンバーが雑談をしていたり・・・。それらを見聞きしていると、少々仕事にのっていないようなことがあったとしても、雑音を含めたそうした刺激が自分を仕事モードにしてくれていると感じていました。

職場のようにオフィシャルな場で仕事をする場合には、あくびをしたくなったときには周囲を気にして自然と口を手で覆ったりします。しかし在宅で仕事をする場合は気にせず堂々とあくびをできてしまいます。この点は服装についても然りで、在宅勤務であれば極端に言えば寝間着のまま仕事をすることもできてしまうわけですから、確かにオンとオフの切り替えは難しく、仕事モードに切り替えにくくなってしまうことが少なくないのではないでしょうか。

しかし、今後も好むと好まざるにかかわらず、在宅勤務をはじめとしたテレワークは今後続いていくわけですから、どうすれば仕事モードのスイッチを入れることができるのかを自分自身で見つけていく必要があると思います。

以前から組織において求められる人材像に、「自律型人材」があります。自律型人材とは、自分が何をすべきかを考え、他者から指示されなくても主体的に責任感をもって仕事を進めて、成果を出せる人材のことですが、テレワークで成果を上げていくためには、まさに自律型人材になることが必要だということです。

今後も在宅勤務中心の生活を続けていく上では、自身にあった方法で自らを律していくことが不可欠であり、この意味で自由と自律は背中合わせなのだということを改めて感じています。

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第1,112話 ペットの存在とリーダーシップ

2022年04月13日 | コミュニケーション

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近年、ペットの存在が様々なプラスの影響を与えていることが認識されてきています。家庭はもちろんのこと、病院や高齢者施設、そして企業等においてもその効果が認識されつつあるようです。たとえば犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護が必要になったり亡くなったりするリスクが半減することや、過去に犬を飼っていた高齢者は一度も飼っていない人に比べ、介護が必要な状態や死亡のリスクが2割ほど低いという調査結果も明らかになっているそうです。(国立環境研究所や東京都健康長寿医療センターの研究チーム)

過去の犬の飼育の有無が、現在の健康状態にまで影響するということに少々驚きをおぼえますが、これらからも犬の存在が人間にいかに大きな影響をもたらしているかがわかります。

さて、企業において「犬の社員」がいることで有名なのが日本オラクルです。1991年にスタートした社員犬で現在は4代目、人間でいうと40代社員とのことです。毎週水曜日の昼に出勤しイベントやセミナーに登場したり、お客様を訪問したりなど、会社の内外で活躍をしているとのことです。同じように、和歌山電鐵貴志川線貴志駅の猫のたま駅長(現在は、にたま)の活躍も広く知られているところです。

話は戻りますが、最近では社員犬のみならずペット同伴で出勤できる会社もあるようで、リードを付けておけばオフィスでも自由に行動することができるなどは、オフィシャルな場でもペットの存在意義が認められている証拠と言えるのではないでしょうか。

では、ペットの存在意義とは具体的にどのようなものなのでしょうか?これには、社員同士のコミュニケーションが活発になったり、社員のやる気が上がったり、企業の知名度が上がったりということが考えられます。その結果として業績の向上も期待できるなど、いろいろなメリットがあるのではないかと思います。

それでは企業は業績向上のためにペットを飼えばいいのかと考えてしまいそうですが、企業でペットを飼うのはそんなに簡単なことではありません。それではどうすればよいのでしょうか?

ここで話は少々飛びますが、実はこれらのペットを飼うメリットはリーダーが取るべき行動(PM理論)の中の「集団維持機能」に該当しているものなのです。集団維持機能とは、組織や職場など集団をまとめるために発揮されるリーダーシップのことで、人間関係を良好にしたりチームワークを維持・強化したりする機能です。具体的にはメンバーに積極的に声をかける、メンバー間に対立が生じたような場合には、その解消に向け積極的に関与したりなどの行動を指します。

よく「あの人がいると、職場の雰囲気がよくなる」というように、口数は決して多くはないのに、その場にいるだけで存在感を発揮している人がいますが、そういう存在であれば、ペットの場合と同様に職場の雰囲気も活性化されるのではないでしょうか。職場でのペットの存在と職場のリーダーシップを同列で取り上げることにびっくりされた方もいらっしゃるとは思いますが、このように考えると意外にも共通点が少なくないのかもしれません。

最後に、リーダーシップというと行動力や統率力など「動」のイメージを持たれる方が多いのではないかと思いますが、人の話を一生懸命に聞いたりするなど「静」のリーダーシップもあります。「動」が苦手だと感じる人は、眠っている猫のイメージように「静」のリーダーシップを発揮してみてはいかがでしょうか?

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第1,111話 役職名で呼ぶのか、呼ばないのか

2022年04月06日 | コミュニケーション

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「あなたが課長や部長になったら、役職名で呼ばれたいと思いますか?それとも名前に「さん」付けで呼ばれたいですか?」

役職者に対する呼び方は役職名にするのか否か。考え方が分かれるところだと思いますが、皆さんの組織ではどのようにされていらっしゃいますか?私自身は、新卒で入社した会社がたまたま「さん」付けで呼ぶことを慣例としている組織だったため、当時50代の部長に対しても抵抗なく、「〇〇さん」と呼んでいたことを覚えています。

役職名で呼ぶのか、それ以外で呼ぶのかについては各々メリットとデメリットがあるようです。たとえば、役職名で呼ばれる場合にはおのずとその役職自体の重みも意識することになり、役職者自身の責任感が強くなるということもあるようで、これは多くの組織にはメリットと言えそうです。一方、デメリットとしては役職名で呼ぶことにより、役職者に対してある種の威厳のようなものを感じてものが言いにくくなり、その結果、組織の風通しが悪くなってしまうということがあるように聞くことがあります。

このように一長一短があるわけですが、この呼称に関しては「ホブランドとワイス」による興味深い実験結果があります。実験では、はじめに学生からある社会問題に関する意見を聴取した後に学生をAとBの2つに分け、その社会問題について書かれた記事を見せたそうです。その際、Aのグループへはその記事が「専門的な雑誌の記事」であると伝え、Bのグループへは「大衆的な記事」であると伝えてから読んでもらったのです。その情報によってAとB各々のグループの人が考えを変えるのかどうかを実験したのですが、AのグループはBグループの4倍もの学生が意見を変えたのだそうです。(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構より)

これは「専門」という呼称が人のとらえ方に影響を与えたことを示しているのですが、同様に「役職」という呼称も人(本人及び周囲)のとらえ方に対して何らかの影響を与えていると考えられるのではないでしょうか。

たとえば役職者自身の側で考えてみると、役職名で呼ばれるか否かで本人の仕事に対するモチベーションに少なからず影響があるケースが少なくないように思われるのです。実際、私の知り合いの会社では、社長になる前には「私が社長になっても、絶対に社長とは呼ばないでほしい。これまで通り名前で呼ばれたい」と言っていた人が、実際に社長になって周囲が〇〇社長と呼ぶようになったら、すぐにそれになじんだとともに、それにともなってモチベーションも上がったのだそうです。

このように、呼び方一つでも権威やモチベーションに少なからず影響を与えるということであり、「たかが呼び方、されど呼び方」なのかもしれません。

そしてこのように考えると、組織においてそれまで役職についていた人が定年で再雇用などのシルバー社員になり、役職名で呼ばれなくなった場合などには、そのモチベーションには思った以上の影響を及ぼしているのではないでしょうか。

今はちょうど年度替わりのタイミングで、役職から外れた人も多いと思います。また、今後組織には60歳以上の再雇用された人がますます増えていくことなると思いますが、呼び方によっては、モチベーションが下がることを防ぐことができるのかもしれません。シルバー社員の呼び方も「さん」でよいのか、一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

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