このブログの中上級編(4月25日)で、研修講師は人材育成の共同解決者であると申し上げました。共同解決者とは文字通り「一緒になって問題解決にあたるパートナー」です。
研修を外部の講師に依頼する際、この「一緒になって」という点に抵抗を感じる担当者の方も少なくありません。同じ会社内ですら価値観や考え方が違うのに、第三者に解決できるわけがない。そもそも社外の人間に人材育成の問題をさらけ出すなんてとんでもない、という気持ちがあるようです。
しかし、あなたが病気になったとき、自分と同じ病気にかかったことがない医者には治療してほしくないと思うでしょうか。大事なのはその医者が病気という「問題」を過去に解決したのか(治したのか)、その実力があるのかという点です。
もちろん、研修講師は医者ではありませんから「治療」することはありませんが、医者が診察をするように、講師も客観的な視点から社員をじっくりと観察します。研修中の討議や演習を通じて受講者のものの見方や行動パターンを推し測り、修正すべき点があれば指摘します。
こうした講師によるフィードバックには、社内の人間には見えていなかった客観的で有用なアドバイスが含まれています。それは研修の中で講師の口から発せられることになりますので、担当者は受講者以上に研修に集中していなければなりません。研修中「講師にお任せ」で席を外してしまうのは、実は大変にもったいないことなのです。
研修担当者の役割は、講師による指摘を真摯に受け止め、人材育成に関する問題解決に役立てることです。そのためには、研修実施前に自社の問題点を講師に伝え、研修中に意識してもらうよう依頼します。また、研修後の振り返りや講師所感などで、気づいた点を話してもらうことも必要です。
共同解決とはこうしたプロセスを講師と担当者が「一緒になって」取り組むことです。当然、力量のない講師には無理なことですから、事前に講師と十分時間をとって話し合い、いくつかの質問を投げかけ、返ってきた答えを吟味し、その能力をしっかりと見極めなければなりません。
以上のことから、研修会社の営業トークだけで講師を選ぶことは良くて博打(ばくち)、最悪の場合は自殺行為となることがおわかりいただけたと思います。
研修担当者の責任はとても重いのです。