「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「若手で活躍をしていた人が複数人退職することになってしまって・・・とても残念です。」
これはつい先日、ある1,000人規模のサービス業の人事部の管理職から聞いた言葉です。
詳しく話を聞いてみると、退職を表明した人はいずれも20~30歳代だそうですが、彼らは若手の中でも中心的な存在で、生き生きとした表情で仕事をしていたそうです。上司からの評価も高く、周囲との関係性もよく将来を期待されていた逸材だったということです。
このように周囲に期待され、生き生きと仕事をしていたのにも関わらず、彼らはなぜ退職を決意したのでしょうか?
直属の上司、そして人事部が個々に面談し退職理由を聞いたところ、「もっとキャリアアップしたい」、「自分の能力や技能をより活かせるところに転職する」とのことだったそうです。いずれの理由も非常に前向きな理由だと感じます。
私が様々な組織で研修を担当させていただいたり、上述のように人事部のご担当者の話を聞かせていただいたりする中で感じているのは、近年、若手社員のスキルアップへの関心がますます強くなったり、成長欲求が高まっているという傾向です。
スキルアップへの関心や成長欲求が強いことは、前向きでとても素晴らしいことだと感じます。一方ですぐには成長感を得られにくい部署での仕事だったり、学生時代の友人との相対的に比較して成長感を得られていない場合、そのことに焦ってしまう人が多いように感じます。
たとえば、学生時代の友人が上司の同行なしに一人で営業に出かけているような話を聞いた場合に、自身はまだ上司の同行のもとに営業活動をしていたりすると、友人は目覚ましく成長しているのに自身は置いてきぼりにされているように感じてしまうことがあるようです。その結果「早くキャリアップできる会社へ転職しよう」と考えてしまうこともあるようなのです。
では、そもそも「成長する」とはどのような状態をいうのでしょうか?実際に若手社員にインタビューをしたことがあるのですが、多くの人は「できないことができるようになること」と答えます。具体的には「素晴らしい企画書が作成できるようになる」、「大勢の前でも堂々とプレゼンテーションができる」など、華々しい状態をイメージする人が圧倒的に多いようです。
しかし、机上で習得できる知識やスキルならともかく、働く中で身につける知識やスキルは時間をかけながら、経験を重ねる中でようやく身につくものであり、それはそう簡単に手に入れることはできないものだと私は考えています。時間をかけて真面目に仕事に取り組んだ結果、ようやく手に入れることができるものであり、「成長する」ことはそれほど簡単なことではないと思っているのです。
成長欲求が強いこと自体は悪いことではありません。しかし、くれぐれも目に見える成長感を得ることが目的にならないでほしい、そのために焦らないでじっくりと仕事に打ち込んでほしいと老婆心ながら思っています。