「愛と勇気とチェリーパイ」や、古い曲で言えば「パンプキン・パイとシナモン・ティー」、「不思議なピーチパイ」などなど曲名にもなっているパイ!きっと皆さんもお好きだと思います。
私も、あのサクサクとした歯ごたえを味わいたくてよく食べているのですが、薄いパイ生地が交互に重なり合うように何層にも重なったものは、特に食べ応えがあると思います。
実はパイの歴史は意外にも結構古く、一般にも普及したのは16世紀で、オーブンの改良によるものだそうです。
「パイを奪い合う」、「パイが大きくなる(=市場規模が大きくなる)」などの言葉は、このパイから来ています。ホールのパイは切り分けて大勢で食べますが、一人あたりの量は食べる人数によって変わります。こうしたことから、複数の人によって分け合う収益や顧客などの総量の比喩にパイが使われるようになったのだそうです。ご存知でしたか?
ところでこのパイ、おいしさの秘密は生地が重なった層の厚さにあると私は思っています。パイ生地が何層にも積み重なるとボリュームが出て、お腹にもたまります。まさに「層が厚い」ということでしょう。
話は変わりますが、先日ランチをご一緒したお二人の方から、「層の厚い」管理者のお話しを聞きました。
その管理者についての二人の言葉です。
Aさん「プレゼンの大役を終えたものの、緊張がほぐれていない私を気遣って、タイミングよく「プレゼン良かったよ」と声をかけてくれました」「本当に気遣いのある上司でした」
Bさん「採用の面接の時にかけてくれた言葉が今も忘れられません。採用の時からずっと良い上司だと思っていました」
1年も前に異動してしまった上司のことを思い出して、二人の部下が口々に語ってくれたのです。異動してしまったため、直属の時以上に改めて良い上司だったと感じるとのことでした。
お二人の話は、当時のエピソードとして記憶に鮮明に残っているようで、その場にいなかった私までその場に居合わせたのではないかと思うくらいに、状況を具体的にイメージできました。
ランチの1時間は、この上司の話題でもちきりでしたし、話し終えた時にお二人がおっしゃった言葉は、「あの上司のことを思い出しているだけで、気持ちが温かくなってきました」でした。
実は私自身もこの上司には何回かお会いしたことがありますので、お二人の一つ一つの話に合点がいきましたし、嬉しそうに話されるお二人を見て、「ここまで部下に慕われていらっしゃったとは。想像していた以上に、部下にプラスの影響力がある管理者でいらっしゃったのだな」とあらためて思いました。
管理者としての懐の深さ、人としての厚み、何層にも重なった信頼感は決して一朝一夕で身に着くものでないのでしょう。パイ生地ではないですが、様々な知識や経験を時間をかけて一つ一つ積み重ね、やがては厚い「層」になっていくのでしょうし、それが上司としての魅力になるのでしょう。
上司として「層」をいかに厚くしていくのか。お二人の話を聞いていて、その軌跡をあらためて思ったのでした。
(人材育成社)