中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,226話 自身の得意分野ではなく、全体最適で考えるとは

2024年07月31日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「メゾソプラノやアルトの人が少ないのなら、私はソプラノではなくどちらかのパートを担当するね」

これは、合唱の練習の前に私の同級生が語った言葉です。

以前にこのブログでも紹介したことがありますが、私は毎年「青春かながわ校歌祭」に参加しています。「青春かながわ校歌祭」とは、神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露することを通じて親睦を深めることを目的に行われているものです。

校歌祭は毎年秋に行われるため、各同窓会では初夏頃から練習を開始するのですが、私の母校でも同様に今年もすでに練習を始めています。その際に、今年からこの練習に参加することになった2人の同級生が、自身が歌うパートを決める際に言ったのが冒頭の言葉です。

彼女たちは高校の頃から抜群の歌唱力があり、現在でも地元の合唱団に参加するなど日々活躍しているのですが、そこで担当しているパートはソプラノなのです。

因みに、私の母校は当時神奈川県に7校存在していた県立の女子高の一つで、同窓生は圧倒的に女性が多いので、パートはソプラノ、メゾソプラノ、アルトに分けられています。

それでは、彼女たちが自身の得意パートのソプラノではなく、メゾかアルトで歌うことを希望したのはなぜなのでしょうか。その理由は、すでに参加しているメンバーが歌っているパートが主旋律であるソプラノが圧倒的に多いからです。メゾやアルトはこれまで少数のメンバーが頑張って歌ってくれていたのですが、全体のハーモニーとしては今ひとつバランスを欠いていたわけです。

そこで、歌唱力がある彼女たちは日頃自分が歌っているパートではなく、全体のハーモニーを考えて敢えてメゾやアルトを選んでくれたというわけです。その結果、今年からハーモニー全体の完成度が飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

これは、彼女たちが自身の専門分野に固執する「部分最適」ではなく、全体のバランスを考えてくれた「全体最適」の結果だと思います。

全体最適とは、組織やチームなどが全体として最適化されている状態を言います。組織全体が最適化されると、業務のムダが排除されることにより組織間の連携が強まり、生産性の向上につなげることができるのです。一方、部分最適とは全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方で、組織においては自身や所属部署のことだけを考えて行動すると、部門間で衝突したり壁ができたりしてうまく回らなくなる原因になってしまいます。

そして、このことは会社や企業などに限らず、全ての組織のメンバーの構成においても言えることなのではないでしょうか。組織やチームを全体として最適化するためには、それぞれメンバーがどういう役割を担うのか明確にしておく必要があります。そして異動や退職などでメンバーが入れ替わった場合には、メンバーが担う役割も状況に応じて替えた方が良いケースが出てくるわけです。

先述の合唱のパートの例と同様に、「現在のメンバー構成において、自身はどういう役割を担うと組織全体が最適化されるのか」を考える必要があるのだと思います。自身の得意分野だけを追求するのではなく、全体のバランスとして何が必要なのかを考える視点をそれぞれのメンバーが持つと、その組織は自ずと最適化されていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が母校の合唱のレベルがどのくらい上がるのか、今からとても楽しみにしています。

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第1,225話 何にでも「さん」を付ける人の意識

2024年07月24日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「受講者さんの・・・・」

これは、先日ある研修会社の担当者と打ち合わせをした際に、担当者から何度も発せられた言葉です。私が研修の進め方について説明をした後に、担当者から質問を受けたのですが、その際に「受講者さんが演習を行う時間はどれくらいあるのですか?」と受講者に「さん」をつけて表現されていたのです。それまで受講者に「さん」を付けて表現したことがなかった私としては、その表現に少々驚いたのですが、同時に新鮮に感じたことも確かです。

近年、これまでは「さん」を付けることがあまりなかった言葉に「さん」を付けた表現を聞くことが多々あります。たとえば、派遣社員やアルバイトのことを「派遣さん」や「アルバイトさん」と表現したり、農家のことを「農家さん」と表現したりするのもよく聞きます。また、若い人達の会話の中では彼氏や彼女のことを「彼氏さん」・「彼女さん」と表現するのはもはや普通のことのようです。

この「さん」について、私は本来は人の呼称に付けるものだと思っていたのですが、最近では前述のように会社名や大学名、店舗名に至るまで、何にでも「さん」を付ける人が増えてきたように感じています。このような、いろいろな場面で「さん」付けをする最近の言葉遣いを、皆さんはどのように感じていますか。

そもそも「さん」にはどのような意味があるのでしょうか。改めて広辞苑で調べてみると、「人名などの下に添える呼称。「さま」よりもくだけた言い方。また、丁寧にいうときにつける語」とあり、例として「ご苦労さん」「お早うさん」とありました。

このように「さん」は人名などに添える呼称ですから、先述の「受講者さん」や「派遣さん」などの表現は、本来の意味とは異なる使い方であると考えられます。

それにもかかわらず、「さん」を付けることがこれほど多いのはなぜでしょうか。

これにはいろいろな理由があると思いますが、一つには「丁寧にいうとき」という意味合いからの、相手に対する配慮の現れなのだと考えられます。相手に対する尊敬や丁寧さ、または親しさを表現するために「さん」を付けているということもあり、今の若い人たちがさん付けを多用するのも分かるような感じがします。

また同様の意味で、ビジネスパーソンが会社名などに「さん」を付けるのも、取引関係や競合関係など仕事上で関係がある会社であることを踏まえ、会社を人物のように捉えて敬意を示して丁寧に表現しているということです。

このように、「さん」は相手に敬意を表す言葉としてとても大切な表現ではありますが、とは言え何にでも付けるというのも、またちょっと違うような気がします。こちらは丁寧に言ったつもりでも、相手に違和感を持たせてしまうような言葉遣いをすることは、少なくとも交渉事などをはじめとするビジネスシーンなどでは、できるだけ避けるほうがいいと考えています。

最近では、ちょっとした言葉遣いが大きくニュースで報道されるなどの例もあり、言葉を適切に使うことは簡単なようで実は結構難しいものだなと思います。また、言葉そのものもその時々の社会情勢などを反映しつつ、時代時代で意味合いや使い方などが移り変わっていくものだと思います。だからこそ「今ここでこの言葉を使うのはおかしくないかな」という視点もあわせて持ち続けていきたいと考えています。

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第1,224話 役職定年廃止による影響は如何に

2024年07月17日 | キャリア

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「上司の役職定年が延長されなければ、退職しようとは考えなかったです」

これは、ある企業に20年以上勤務し、監督職として働いていたAさんが自らの退職を決断した際に、その理由として私に語ってくれた言葉です。私はAさんが勤める企業の研修を以前から担当させていただいていたため、Aさんとは何度かお会いしたことがありました。Aさんの研修中の発言や研修に取り組む姿勢を見ていて、前向きに仕事に取り組む人であると同時にリーダーシップもある人ではないかと考えていましたので、将来が楽しみな逸材だと感じていました。

そのAさんが冒頭のように今回、退職を決断したということなのです。話によると、Aさんは自分たちの世代が管理職になったら「今よりも、もっとよい会社にしたい」と考えていたとのことで、彼なりの夢があったとのことです。そしてそれを実現するためには、監督職よりさらに大きな権限が必要となることから、早く管理職になってプラスの影響力を発揮したいと考えていたそうです。しかし、この度会社が役職定年の廃止を決めたため、上の世代が会社に残っている以上、会社を変えていくのは簡単なことではないと判断して、退職の決断に至ったとのことでした。

近年、役職定年制を廃止する企業が増えています。パーソル総合研究所の役職定年制導入の有無などについてのヒアリング調査によると、役職定年制の制度があるとした企業は31%、新設した企業は13%、反対に制度廃止が16%、廃止予定が13%、制度なしが28%とのことです。(2024年7月15日 朝日新聞 朝刊)

調査から見えてきたのは、今後も役職定年を廃止する企業は増える傾向にあり、その割合は約6割になるとのことです。役職定年を廃止する理由には、給与が下がることによる役職者の仕事に対するモチベーションの低下、管理職の不足、また労働人口の減少により若手を採用することが難しくなっていることから、労働力の補足などがあると言われています。こうした状況の中では、役職者のこれまでの経験により培われた様々なノウハウを維持できることは、組織とって魅力があることは確かだと思います。

しかし同時に、組織には定期的に人が入れ替わることで次の世代が育つという面や、それによる活性化が期待できるという面があります。先述のAさんの例ように、役職定年の廃止によって組織の新陳代謝が阻まれることになり、人事が硬直化してしまう結果になってしまうことや、次世代を担う人材のモチベーションが低下してしまうなどの弊害が生じる可能性があることも、また事実です。

人件費の抑制や組織の活性化などを目的に始まった役職定年制度ですが、人手不足やモチベーションの低下をはじめとする現在の状況は、制度の導入当初の想定を超えるものになり、企業などでは様々な試行錯誤をしながら、そのバランスを探っている状況だと思います。

今後、役職定年制度がどのように推移していくのかは今の時点では定かではありません。仮になくしていくような流れであるにしても、単純に以前と同じ形に戻すのではなく、どのような形が一番合っているのか、それぞれの企業にはさらなる工夫が求められるのではないかと考えています。

前述の新聞記事でも、各社様々な取組みを既に行っているとのことであり、今後どのような形にまとまっていくのか、引き続き注視していきたいと考えています。

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第1,223話 研修中の休憩は何回、そして何分あるとよいのか

2024年07月10日 | 研修

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「休憩時間の回数を増やしてほしい」、「休憩は10分では短い。電話対応したいので30分にして欲しい」

研修が終わりアンケートを撮った際に、このように書かれることが時々あります。

研修の際の休憩は何回程度が、また1回あたりどれくらいの時間が適切なのか。これは私が研修業界に身を置くようになった30数年前から定期的に話題になってきていることの一つです。

これについては、研修のテーマや時間、研修の進め方は講義中心なのかディスカッションやロールプレイングなどを採り入れるのかなどによって変わってくることから、唯一絶対の正解というものはないと私は考えています。

勤務時間中の昼休みは、労働基準法の定めもあって通常は1時間とることが大多数でしょうが、研修での休憩については、どのように考えればよいのでしょうか。

これにはいろいろな考え方があり、前述のように一概には言えないとは思います。まず休憩を入れる目的を考えてみると、お手洗いなどの用足しのためや、集中力を維持するためなどと言われています。

それでは、人間の集中力が続くのはどれくらいの時間なのでしょうか。集中力が高い人とそうでない人とでは違いがあるかとは思いますが、これを考える際の参考になるのが、ボブ・パイク氏が提唱する「90/20/8の法則」です。

ボブ・パイク氏は、ボブ・パイクグループ創設者・元会長で「参加者主体」の研修手法についての著作があります。(中村文子、ボブ・パイク著「2021年」『オンライン研修ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)。この書籍によると、人が集中をキープして話を聞ける時間は90分、記憶をしながら話を聞ける時間は20分、さらに人が受け身の状態で興味を持って話を聞ける時間は8分とのことです。これに基づけば、研修では長くても90分以内に1回は休憩を入れた方が良いということになります。

振り返れば、私が小学生の時の授業時間は1科目40分でした。中学・高校は50分、大学では90分でした。さらに、社会人大学院に至っては、一コマの授業は180分でした。今にしてみれば随分と長時間でしたから、どれくらい集中できていたのかと考えると自信はありません。

また、同時通訳などは15分程度が限界だそうですし、自治体での研修で手話通訳者がつく時にも、3人位の方が約15分ごとに交替されています。このあたりの時間も、ボブ・パイク氏の説にかなっているように思えます。

以上のことから考えると、研修の途中で入れる休憩は60分から90分に1回くらいの頻度が適切だと考えます。次に1回あたりの休憩時間は、全体のプログラムとのバランスなどによって決めるのが良いと思いますが、通常は10分もあれば用足しやリフレッシュするには十分なはずです。そもそも研修の休憩時間には、営業職の人などが顧客への連絡をするというようなことは想定されていないのです。

そうは言っても、では営業職の人などの研修中の顧客への連絡はどうすればよいのか。その対応についての考え方もいろいろあるかと思います。しかし研修中に顧客へ急いで連絡をしなければならないような状況ができるだけ起こらないように、事前に顧客と段取りしておく、また職場の人にフォローを依頼していく等の対応をしておくことに尽きるのではないでしょうか。

年に何日もないせっかくの研修です。事前準備を十分にして、集中して研修に臨んでいただきたいと考えています。

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第1,222話 ライバルの存在は必要か否か

2024年07月03日 | キャリア

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「AにとってBはライバルなんですよ。たぶん双方が意識していると思います」

これは、先日弊社がある企業の中堅社員研修を担当させていただいた際に、研修終了後にご担当者から聞いた言葉です。

私は以前にもAさんとBさんにお会いしたことがあるのですが、今回研修で再会したところお二人とも実に溌溂とした表情で研修に参加し、演習にも終始前向きな姿勢で取り組んでいらっしゃいましたので、頼もしさを感じると同時に着実に成長されているように感じました。そのことをご担当者にお伝えした際にお聞きしたのが、冒頭の言葉です。

ご担当者のおっしゃるように、AさんとBさんは互いにライバルとして、日々切磋琢磨しているのかもしれません。ライバルとは言うまでもありませんが、競争相手、対抗者、好敵手という意味です。AさんとBさんが普段からお互いに相手をどのように思って仕事をしているのか、直接聞いたことはないので実際のところは定かではありません。しかし共に生き生きとした表情でリーダーシップを発揮しながらグループ演習に参加していましたので、お互いの存在が良い意味での刺激になっているのではないかと想像しています。

私は、様々な企業などの昇格や採用試験の面接官、また研修を担当させていただく中で、Z世代と言われる近年の若手社員の特徴の一つに、「競争心の低下」があるのではないかと感じていました。それは、採用試験の集団討議や研修中のディスカッションの中で、相手を気遣いすぎるあまり自身の発言を控えたり、しっかり話し合わずにジャンケンで結論を出したりするような場面を見ることがしばしばあるからなのです。

しかし、AさんやBさんのような前向きに研修に取組む中堅社員に出会い、その理由の一つにライバルの存在があるとしたら、それはライバルが身近にいることによるプラスの刺激によるものであり、とても素敵なことだと感じました。

あらためてライバルの存在について考えてみると、メリットとしては何と言っても競争心が刺激されるということがあると思います。「負けたくない」という思いが、自身が積極的に努力をする動機づけになるのであり、それによって自身の目標が明確になります。そしてそれが具体的な行動につながり、その結果としてパフォーマンスの向上に結び付いていくように考えています。

しかし一方では、ライバルのことを過度に意識しすぎてしまうと、自身との相対的な比較に囚われてしまい、相手が新たな役割を得たり活躍しているようなことを見聞きすると、嫉妬心を燃やすようなことになってしまいます。それは本末転倒な状態であり、自身のモチベーションやパフォーマンスの低下にもつながりかねないものだと思います。

ライバルの存在にはこのように多くのメリットがある一方、デメリットもあるわけです。ネガティブな感情に陥らないように意識し、ポジティブでバランスの取れた競争心を保ちながらライバルとの健全な競争関係を築き、それを自己の成長や目標達成に向けたモチベーションとしていくことが大切だと考えています。

ライバルとの良き出会いを!

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