中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,172話 研修は受講者にとって必要のないものなのか?

2023年06月28日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「研修、イヤだね。座っているだけの研修ならまだ良いけれど・・・」

これは、先日私が初めて担当させていただいたある組織の監督職研修の開始前に、聞こえてきた言葉です。そのとき私はトイレの個室の中にいたのですが、後からトイレに入ってきた受講者同士の会話をたまたま耳にしてしまったのです。

この受講者の言葉のように、一般的に社員研修はマイナスのイメージを持たれてしまうことが多く、できれば避けて通りたいものという位置づけのようです。研修がマイナスのものとして感じられてしまう理由は様々あると思いますが、一つにはそもそも受講者が研修の必要性を感じていないということがあると思います。

では、その人にとって研修は本当に必要のないものなのかどうか?状況によるとは思いますが、たとえば、受講者にとって本来は必要なものなのに本人がそれを自覚していなかったり、自身はできているつもりになっているものの、実際にはできていなかったりということも少なからずあるのではないでしょうか。それに対して、そうしたことを自身で確認し、あらためて身に付けるように取り組むきっかけとなること。それこそが、研修に求められているものではないかと私は考えています。

しかし、多くの人がマイナスイメージを持ってしまうのには、過去の研修で希望していないのに大勢の前で発表させられたり、それがうまくいかなかったなどの経験があり、結果的に研修が苦痛なものになってしまっているというようなことがあるのかもしれません。

組織にとっては、戦略の達成に向けて必要となる知識やスキルを社員に獲得してもらうための人材育成の一つとして研修を行うわけですが、知識やスキルを得る方法は他にもOJTや自己啓発などもあります。一番影響力があるのはOJTだという調査結果もあることから、研修の成果はただちに目に見えるというものではないのかもしれません。しかし、OJTも万能ではなく伝えきれない部分は必ずあり、それを補完する意味から、また物ごとの原理原則の部分をきちんと整理して提示する意味からも研修は間違いなく受講者にプラスの影響をもたらしているものなのです。

そのように考えると、研修を提供する側の一員としては、1日からせいぜい5日間程度の限られた時間を少しでも前向きな気持ちで過ごしていただくために、どのようにすれば良いのかを考え続け、それを形にして提供していくしかないと思っています。私が人材育成の仕事を始めてから30年以上が経過しましたが、永遠の課題とも言えそうなこのテーマについて今後も努力し続ける必要がありそうです。

さて、冒頭の研修前の話ですが、終了後のアンケートに「グループワークでは、同じ演習に取り組んでも人によって様々な考え方があるのだということを知ることができました。また、チェックリストやロールプレイングに取り組んだことにより、自分の課題を知ることができました。」との記述がありました。研修を担当した者として、彼女の研修に対するイメージが変わるとともに、今後の仕事の一助になったのであれば大変に喜ばしいと感じた瞬間でした。

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第1,171話 採用活動はwin-winの関係

2023年06月21日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「面接官の感じがとてもよかったので、それが入社の決め手となりました」

これは、新入社員が入社を決めた際の理由として紹介されることが多い言葉です。複数の組織から内定を得た人が、最終的に一つを選ぶ判断をする際の決め手となるのは、組織の規模や給料などより、面接官などの直接接触を持った人との相性や雰囲気といったものなのかもしれません。

これに関して、最近は採用業務を外部に委託する企業が増えているとのことです。矢野総合経済研究所の調査によると、2021年度に採用業務を外部に任せた「採用アウトソーシング」市場は、前年の2020年度と比べ15%増えており、今後ますます拡大する傾向にあるとのことです。外部委託をするのは、新卒採用だけでなく通年化した中途採用等の業務の増加にともなって、自社では対応が難しくなっていることが理由の一つにあるようです。

最近では、売り手市場になっていることや、国が人材の流動化を積極的に進めようとしていることなどもあり、採用業務にかかる時間は増えているようです。特に、採用に加えそれ以外の業務も兼務している担当者にとっては、大きな負担になっているであろうことは容易に想像できますので、外注化が増えてきているのも当然なのかもしれません。

実際に退職者の減少につながっているという例をはじめ、採用の外注化には様々なメリットがあるようです。それでは採用業務の中で外部委託をしているのは、具体的にどの部分なのでしょうか。

これも採用業務の全体、あるいはその中の一部分など様々な形があるようなのですが、そうした中でも私は面接だけは必ず自社の担当者が行うことが大切だと考えています。なぜなら、応募者側からすると面接官が「組織の代表」そのものになるからです。応募者は面接官とのやり取りを通じ、その組織の風土や雰囲気を想像することになるのであり、それが「この組織に入りたい」、「この組織は自分には合わない」という判断をする際の大きな要素になっているのではないでしょうか。

面接は、組織側からすると大勢の応募者の中から自組織で活躍してくれそうな人を選ぶ場の一つですが、同時に応募者側にとっても、内定を得られている複数の組織の中からどこに入りたいかを判断する場になるわけです。そのように考えると、採用業務における面接は双方が互いを選ぶ判断をする際の大切な機会であり、双方にとって多くのことを得ることができる場となることが望まれるのです。しかし、採用業務において面接を外部に委託してしまうと、少なくとも応募者側は判断の材料を得る場にはなりにくくなってしまうと思います。

今後、人(労働力)の流動化がますます盛んになると、採用活動はますます長期化することともいます。そのような中で、業務効率化の一環として外部委託することも一つの手段だとは思いますが、応募者を選ぶ側という視点だけではなく、応募者から選ばれる組織になるという視点、まさに採用活動はwin-winの関係であることを忘れないでいただきたいと思うのです。

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第1,170話 部下に遠慮してしまう上司が与えてしまう影響

2023年06月14日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「圧をかけていると思われませんか?」

これは、先日弊社が監督職研修を担当させていただいた際に、受講者から質問された言葉です。研修では、監督職の役割をはじめ様々な内容について確認や練習をしていただきましたが、その一つとしてコミュニケーションにおける「質問の仕方」の演習をしていただきました。そのときに冒頭の質問を受けたのですが、その受講者が言うには「部下に指示した仕事の進捗状況を尋ねることは、部下へ圧力をかけることになってしまうと思います。ですから、質問したくてもしない方がよいのではないでしょうか。」とのことでした。

この研修では、他の受講者からも「部下を叱ったり注意をしたりするなんてとんでもない、そもそも叱ったり注意をしたりすることは、親が子どもに行うことであって、部下に行うことはよくない」、「部下に伝えたいことがあるのであれば、あくまで助言にとどめるべきだ」と考えているとの話もありました。

さらには、「喫煙のために離席する部下がいて、その都度記録をしたところ、離席時間は1日に2時間にも及ぶことがある。その間、問い合わせの電話が入っても、本人がその場にいないために、電話をかけてきた人を待たせてしまっている。そのことを指摘したいけれど、嫌われたくないのでついニコニコしてしまう。このままではいけないと思うけれど、どうすればよいのでしょうか」などの質問もありました。

この話を聞いて、皆さんはどのように考えますか?

部下を育成することは昔も今も簡単なことではありませんが、これらの話を聞いていて私がまず感じたことは、そもそも部下育成以前の話であり、上司があまりにも部下に対して腰が引けてしまっているのではないかということです。そして、そのために自分にはできない理由をつけているようにさえ感じられてしまいました。

それではなぜここまで腰が引けてしまうのでしょうか?

理由は様々ありそうですが、まず部下をはじめ周囲の人に嫌われたくない、自分に対して自信が持てないということがあるのではないでしょうか。

当人にとっては、4月に監督職に昇格し新たに部下育成が任務として加わったものの、経験がなかったり周囲にモデルとなる人がいなかったりなどで、監督職としてのイメージが全くつかめておらず、何をどうしてよいかわからずに不安で一杯ということなのかもしれません。

だからこそ、新任時の監督職研修で監督職の役割を学ぶことには大きな意味があるのですが、同時にいくら研修で講義を聞いたり、ロールプレイングなどの演習に取組んだり練習を重ねても、それは実践されなければ何の意味もないことになってしまうのです。実際に職場で部下に対し具体的に質問や指摘をし、改善を求めるといったことをしなければ、こちらの考えは伝わらず、行動を変えることはできないのです。

それでも苦手と思う方は、まずはあまり大上段に構えずトライしてみる。そして旨く行ったところ、いかなかったところを確認しながら、経験を積み重ねていっていただきたいと思うのです。

部下の指導や育成は上司の大事な役割です。嫌われたくないという理由で部下に指摘すべきことを放置してしまうようなことは、くれぐれもしてはいけないということです。それは見て見ぬふりをすることと同じ行為であり、その状態を続けると前向きに仕事をしている人のモチベーションまで下がることにもつながります。その結果、やがて職場全体の雰囲気が悪くなり仕事の生産性までも下がることになってしまいかねません。

上司の皆さん、嫌われることを恐れずに、勇気をもって部下に声をかけてみてください。

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第1,169話 部下を評価することは難しい

2023年06月07日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下を評価することが苦手です」

これは、弊社が評価者研修を担当させていただく際に、管理・監督職の皆さんから聞くことが多い言葉です。実際に、上司が部下を評価することは昔も今も簡単なことではありませんが、一方で部下の側からすると「上司から的確に評価されない」結果、部下のモチベーションが下がってしまうことによる、離職の増加という問題が顕在化している組織も実際にあるのです。

人が他者を評価するということはそもそも大変なものですが、組織においてそれをさらに難しくしている原因は一体何なのでしょうか。様々な原因があるかと思いますが、その一つに管理職の中に「評価とは、最終的な数値の判断をすること」だと誤解をしている人が少なからずいることがあるように感じます。

評価には、その前段の段取りがあり、また評価をした後のフィードバックも必要です。つまり、前段、本番、後段の3つのステップを総じての「評価」なのだと私は考えています。しかし、前段と後段を省略して本番でいきなり数値評価だけをしようとしても、評価に関する材料がまったくないことから、感覚的な評価にならざるを得ないわけです。

では、評価の前段では何をすればよいのでしょうか。前段では、管理職は部下を観察したり、部下とコミュニケーションをとったりすることによって、部下が求められている役割を担えているのか。部下の強みや弱みは何か。部下自身は今後どのようになりたいと考えているのか。それは組織が求める役割に合致しているのか。管理職の自分としては部下にどのように成長してほしいと考えているのか。そのためには、マイルストーンをどのように設定するのかなど、様々な観点で見極める必要があるのです。

そのようなプロセスを経ることによって、はじめて評価の際の具体的な指標を設定しやすくなるのです。このプロセスを経ずにいきなり評価指標を設定しようとすると、精神論的なあいまいなものになってしまいがちです。

さらには、前段のステップで上記の観点に加えて何を、いつまでに、どのように行うのかといった定量化もしておけば、次のステップの評価をずっとスムーズに進めることができると思います。

そして後段のステップでは、どのようなに事柄に基づいて、どのような考え方で評価をしたのか、評価の根拠を明確に示すとともに、さらなる成長を目指すためにはどうすればよいかを、上司としての期待とともに共に考えていく姿勢を見せるというフィードバックが大変重要になってくるのです。

そうすることにより、部下が「しっかりと見守ってもらっている」「期待されている」ことを感じることができ、その結果「組織に貢献したい」と強く感じてエンゲージメントが高まり、離職率の低下を期待することができるのです。

冒頭のように、部下評価に対して苦手意識を持っている管理・監督職の皆さん。確かに評価には時間も手間もかかりますし、何より責任を伴うものではあります。しかし、きちんとステップを踏んだうえで部下とともに自身も成長する機会なのだと捉えていただき、前向きに取り組んでいただくようにお願いしたいと思います。

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