中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

どうすれば引継ぎを上手くできるのか

2017年03月29日 | コンサルティング

「異動が決まりました。後任は○○です」

毎年、この時期になると、お客様からこのようなご挨拶の連絡をいただきます。

異動の連絡をいただくと「出会いは別れの始まり」とはよく言ったものだと、こちらも少々感傷的な気持ちになります。後任の方との新たな出会いの楽しみはありますが、せっかく築いた人間関係が異動によって途切れてしまうことへの一抹の寂しさも感じます。

春は異動する人が新たな門出を迎えるだけでなく、残された人にとっても出会いと別れの季節なのだなと、今更ながらに思うのです。

しかし、現実問題として毎年この時期には、前任者から後任者への仕事の引継ぎがきちんとされていないことにより、大なり小なりの行き違いが発生することも有り、特別なエネルギーを使うように感じます。

たとえば、新年度に行う研修の内容の打合せを前任者と終えていたとしても、異動を挟むとそれが後任者にきちんと伝わっていないのです。そのため一から打合せをし直さなければならないことが多いです。

また、数年間継続して依頼いただいている研修については、紆余曲折があって現在の内容になっているのにもかかわらず、その経緯がきちんと引き継がれていません。その結果、後任者から質問をいただくことも多く、こちらが経緯をお伝えしなければならなくなってしまいます。

こうした場面に出くわすと、「一体、引継ぎはどうなっているのだろうか?」と心配になってしまうのですが、実際の引継ぎの様子を聞くと、引継ぎ期間は想像以上に短いようです。双方が忙しい中で引継ぎをしなければなりませんから、短時間でしかも口頭のやりとりで終るようです。異動した人はさらに新天地での引き継ぎも受けなければなりませんから、どうしても細かい内容までは引継ぎできず、結局「あとはよろしくやって!」ということになってしまうことが多いとのことです。せめて、「未了案件」だけでも文書できちんと引き継いでもらえればと思うのですが、話を聞いていると、簡単にはいかないことが伺えます。

「どうして引継ぎが上手く進まないのか」、これは今に始まった話ではありませんので、これまでいろいろな人に尋ねてみたところ、理由は大きく次の2点に集約できるようす。

1点目は、自分の仕事の分析がきちんとできていないことです。目の前の仕事を作業として取り組むことはできても、全体を俯瞰し細かい部分を分析するほどまでには深く精通していない。数年間も担当してきた仕事であるのにもかかわらず、引継ぎの際にその仕事を作業に分解したり、内容を的確に説明したりすることができない。そのため、どうしても口頭で簡単に説明するだけの引継ぎになってしまうというわけです。

2点目は、引継ぎが個人任せになっていて組織やチームで対応していないため、人によって引継ぎのレベルに差が生じてしまっています。同じ組織でありながら丁寧な引き継ぎ書を作成する人がいる一方で、口頭で簡単に済ませてしまう人も出てくるわけです。

弊社がコンサルテイングを担当させていただいている企業では、引継ぎをする際には引き継ぎ書の定型のフォームを決めて、必ずそれに記入することをルールにしていただいています。

文書にすることで、前任者にとっては、あらためて仕事を俯瞰し整理してまとめることができます。また、後任者もとっても、文書になっていれば全体像も把握しやすく、さらに引継ぎが終わった後でも、何度でも細かい点まで繰り返して確認することができる利点があるのです。

つまりは、引継ぎがスムーズかつ効率的に行えるわけで、口頭で「あとはよろしく」では決してそのようには行きません。

大きな組織であればあるほど、異動する人数も多くなるわけですから、スムーズに引継ぎができるかどうかは、組織全体の効率にも大きな影響を及ぼすことになります。

多くの組織では明後日に2016年度の最終日を迎えます。「立つ鳥跡を濁さない」ためにも、引継ぎは個人任せにするのではなく、組織でルールを決めて行うことをお薦めいたします。

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「最年少で最優秀」は要注意!

2017年03月26日 | コンサルティング

「新入社員のときに売上目標200パーセントを達成。翌年、最年少で全国最優秀セールス表彰を受賞。その後、売上金額最高記録を5年連続更新する。28歳で最年少営業部長に昇進し・・・」これは、何人かの営業研修講師の自己紹介文から抜き出した言葉を合成したものです。

営業研修の講師は、こうした華やかな経歴の持ち主が多いようです。研修会社のホームページなどで10人の研修講師の経歴や自己紹介を調べたところ、8人が「最年少」、「最優秀」、「最短記録」、「表彰」、「全国トップ」など、自分の卓越した営業成績について触れていました。

もちろん、名選手だからこそ名コーチになれるのでしょう。プロスポーツ(野球や相撲など)を見てもそれはうなづける話です。
ところが、セールス(営業)とスポーツでは大きく異なる点が1つあります。
「ルールの変更」です。
スポーツも時代によってルールが変えられることがあります。特に柔道や水泳など、日本が得意とするオリンピック種目では「日本いじめ?」とも思われるようなルールの変更があります(あくまでも個人の見解です)。

一方、セールスは明文化されたルールはなく、社会情勢や慣習によって仕事のやり方が決まります。

たとえば、「セールスは訪問件数だ!」という信念を持つ講師がいます。しかし、現代のセールス活動は単に「お客と会って商品の説明をする」仕事ではなくなっています。顧客の抱える固有の問題に対処する適切な提案ができなければ、商談になりません。提案作りには時間がかかりますから、訪問件数という「量」よりも、1回の面談の「質」を高める必要があります。

また、「新規開拓は、とにかく会ってもらえるまでしつこく食い下がれ!」という講師もいますが考えものです。あまりしつこいと「悪質なセールス」という悪名をネットを通じて流布されてしまいます。

50代、60代の営業研修講師の中には、こうした「自分はこうやって成功したのだから、この通りにやれば良い」という人が(いまだに)たくさんいます。
もしも「営業のルール」という明文化されたものがあるとすれば、この20年程で大きく書き変えられたと考えるべきです。古いルールの元で「最優秀セールス表彰を何度も受賞」したような講師は要注意です。

では、それよりも若い講師(50歳以下)はどうかというと、その経歴をみると営業職を10年以上続けた人はほとんどいません。従って、後進を育てた経験が無い人が多いようです。

私が考える優秀な営業研修の講師は次のとおりです。
(1)過去の営業成績は「中の上」程度であればOK、(2)複数の部下や後輩を育てて独り立ちさせたことがある、(3)社内の他部署とも連携してトラブルに対処した経験を持つ
・・・以上に加えて、経済情勢や業界に関する最新の知識と自分なりの意見を持っていることです。

いかがでしょうか。一見、たくさんいそうな感じがするかもしれませんが、とんでもない。
「全国最優秀営業マン」だった講師の10分の1もいないことは確かです。
もしそのような方を見つけたら当社にご連絡ください。研修講師として採用したいと思います。

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値引きしますか、しませんか

2017年03月22日 | コンサルティング

お客様からの「値引き依頼」にどう対応するのか。これは、いつの時代も非常に悩ましい問題です。

自社の商品やサービスの価値を十分に理解いただけてはいても、予算がネックになって導入が危ぶまれるような局面では、何とかお客様の値引き要望に応えて導入に結び付けたいと思うのが、営業担当者の心理です。しかし、値引きをすれば当然利益は減りますから、その「つけ」は自分に返ってきます。

このように、どこまで値引きに応じるのかは、本当に判断が難しいものです。

一方、多くの場合、値引きを依頼されるにお客様の側にもそれ相応の理由があります。たとえば、大量発注によるボリュームディスカウントの依頼や、以前からの長い付き合いを引き合いに、値引きを求めてくる方もいらっしゃいます。

また、過去にお付き合いはないけれど、今後の大量発注を示唆しての値引き依頼もあります。

これに対して、営業担当者は関連する情報を集め総合的に判断して、値引きに応じたり応じなかったりするわけですが、お客様の中には値下げを要求するのはルーティンのように当たり前のことのように考えている方もいらっしゃいます。予算のあるなしに関わらず営業努力をしてほしいとおっしゃるのです。

そういう方は、「他社はいくらくらいで出してきているから、これでは上司に話ができない」などと、いろいろな理由を挙げられますから、営業担当者として依頼に応じるのかお断りをするのかは本当に悩ましいところだと思います。

こうしたお客様の多くが、「来年も頼む予定だから、そこのところも考慮してね」と言いますが、そういう方に限って実際には次年度の依頼はないことが多いと聞きますので、営業担当者にとって、この判断は本当に難しく悩ましいものだろうと感じます。

もちろん、業種業態によっていろいろな状況があると思いますので、値引きの依頼自体、一概にいい悪いと言えるものではないと思いますが、私自身の経験として、商談の始めから値引きを依頼してくるお客様は、結果的にあまり長いお付き合いにはならないケースが多いと感じています。

さて、冒頭の写真ですが、先日我が家で住宅設備関係の会社にある見積もりを依頼したところ、この見積もりが郵送されてきました。

こちらでは値引きの依頼をしていないのですが、ご丁寧にはじめから値引きがされています。40万円弱の設備に対して、調整値引きと称した値引きがされていますが、その額200円と堂々と表記されています。値引き率は約0.05%ですが、この額を見て皆さんはどのように感じられるでしょうか?

我が家ではこの見積書を見た瞬間、思わず笑いが出てしまい、その後「200円ぽっきり値引きしてもらってもね・・・・」と、見積書はさっさと閉じられてしまいました。この会社の商品を買う気満々で現場を見てもらって見積もりを依頼したのでしたが、わずかな額の値引きを前面に押し出す姿勢に買う気がすっかり失せてしまい、この会社に依頼することを見送りました。

購入する側としては、僅かな額であっても値引きをしてもらうこと自体はもちろん嬉しいことですが、それを強調しすぎて「お客さんにサービスしているんですよ」という姿勢を押しつけているように思われてしまっては、逆効果になってしまうと思うのです。

値引きを依頼されたお客様の期待に応えられずにお客様を逃すこともありますが、反対に値引きを依頼されてもいないのに値引きをした結果、顧客を逃してしまうこともあるわけで、値引きを巡る問題は本当に難しい、悩ましいと思わされた出来事でした。 

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顧客はなんでも知っている

2017年03月19日 | コンサルティング

「セールス」について考えるとき、どんな言葉が思い浮かびますか?「人を動かす、あらたな3原則(ダニエル・ピンク著、講談社、2013年)」によると、多くの人は「押しが強い」、「媚びる」、「不誠実」などの嫌悪の感情を含む言葉を答えるそうです。アメリカでは特に「格子縞の背広を着て化繊のズボンをはいた(同書より)」中古車のセールスマンを思い出す人が多いとのこと。それも、こと中古車販売に限っては「セールスウーマン」を思い出す人は全くいないとか。なんとなく想像できてしまいますね。

こうしたネガティブな感情が生まれたのは、セールスに関してそういう(不快な)経験をした人が多かったからでしょう。そうでなければ、ここまで嫌悪感が広く定着するはずがありません。

さて、中古車販売店を想像してみてください。セールスマンは中古車について全てを知っています。事故車だったとか、電気系統が壊れやすいとか、前のオーナーが車の中で自殺をはかったとか・・・。車を高く売るためにはこうしたマイナス情報を隠しておくのが一番です。だから、お客さんも「何か隠しているのかもしれない」と考えてしまうのはごく自然なことです。

ところが、とても良い車で本当にお買い得であっても、お客さんはセールスマンの言葉を信用できないので「ずいぶん高いなあ。安くしてよ」と言います。セールスマンとしては、十分に高く売る価値のある車だとわかっているので、「いや、いや。もうこれ以上は無理です。」と答えます。その結果、質の良い車は売れず、もっと安くて質の悪い車が売れることになります。

このように、売り手(セールスマン)と買い手(お客さん)の間に、商品についての情報の格差があることを情報の非対称性と言います。そのため、本来は良い車から売れていくはずが、そうならない事態(逆選択と言います)が生じるのです。経済学を学んだ方にはおなじみの、アカロフのレモン市場※です。

ところがインターネットの普及によって、情報の非対称性は多くの市場からなくなりつつあります。中古車を買おうと思ったら、ほとんどの人は最初にネットで相場を調べます。そして評判の良い中古車ディーラーに出かけて行って、販売員に色々と質問をし、満足する答えを得てから購入するはずです。何の下調べもせず「格子縞の背広を着て化繊のズボンをはいたセールスマン」がいる店に行くことはないでしょう。

「顧客はなんでも知っている」わけです。

セールスを職業としている人は、この原理原則からスタートしなければなりません。これは中古車に限ったことではなく、消費財を中心に多くの市場で起きていることです。

現代のセールスでは、情報量の多さは武器になりません。商品を使うことによって得られる「満足度」を顧客にわかってもらう努力こそ武器と言えます。

顧客は、他者による商品の評価はネットで入手できますが、自分が使ったときの満足度は想像するしかありません。つまり「知らない」のです。

顧客の想像を助けるのがセールスの役目です。なんと創造的な仕事でしょう。

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レモン市場 - Wikipedia


誠実な営業と不誠実な顧客

2017年03月15日 | コンサルティング

EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは「心の知能指数」と呼ばれるもので、自己認識や共感といった、対人関係を良好に保つために必要ないくつかの要素から構成されています。そのため、仕事ができる人はEQが高いと言われています。特に営業のように、顧客との良好なコミュニケーションを通じて人間関係を構築することが不可欠な職種では、EQは重要な指標と言えるでしょう。

しかし、顧客のことを第一に考え、できる限り前向きな対応をしてきたつもりでも上手く行かないことがあります。

ある電子部品メーカーの営業部に勤務するK君(28歳)は、EQ測定テストで高い点数を獲得し、上司から「高EQ営業マン」などと言われていました。

K君が担当する大手電機メーカーのN氏は、K君の最も重要な顧客の一人です。

ところがこのN氏、なかなか扱いにくい人物でした。決して怒りっぽかったり、話下手というわけではありません。穏やかな感じで会話をする、ごく普通の技術者という感じです。しかし、N氏はK君を結果的に追い詰めてしまいました。

まず、N氏はとにかくメールの返事が遅いのです。らちが明かないので何度も電話をしても、居留守を使ったりするのです。そのせいで製品の手配ができず、K君は社内の他部署に迷惑をかけてしまいました。

また、請求書を渡しても期日までに支払ってくれず、連絡するたびに「来月お支払します」と言うばかりで、何ヶ月も遅れてしまったことがありました。

面談したときにその件について聞いてみたところ、「上司がなかなか承認印を押してくれないので、経理に回せなかった」とのことでした。

どうやら、N氏は「営業」を一段低く見ていたようです。そのため、誠意がない対応を繰り返していたのでした。

それでもK君はN氏に対して誠心誠意対応しました。しかし、N氏のK君に対する態度は変わらず、K君はすっかり消耗してしまいました。
見かねたK君の上司は、K君を担当から外すことにしました。

新しくN氏の担当になったのは、K君の1年下の「低EQ」のJ君でした。

J君は、N氏の不誠実ぶりものともせず、N氏の上司に直接電話をして「早く払ってください」と言ったり、時にはN氏の会社の経理部まで出かけて行って請求書のコピーを見せて「これ、回ってきてますか?」と聞きに行ったりと縦横無尽(?)の活躍をしました。

こうした行動に対して、N氏やその上司からクレームが来ることがありました。そのたびにJ君は、営業記録と見積書や請求書のコピーを持って出かけて行きました。

やがてN氏はJ君を避けるようになりましたが、J君はお構いなく営業活動に励みました。すると、ある日からN氏に代わって新しい担当者が対応するようになりました。新しい担当者は誠実な人だったので、J君の営業成績も徐々に上がって行きました。

EQの解説書によれば「相手がどのように考えて行動したのか常にチェックをしながら、コミュニケーションをとりましょう。自分の思考をいったん置いて、相手の思考に寄り添うことが大事です。」と書いてあります。

しかし、このケースのように「相手の思考に寄り添う」のが苦手な(できない?)J君のような人が、問題を解決することがあります。

「毒を以て毒を制す」とは言い過ぎかもしれませんが、不誠実さに対しては断固たる態度が必要なときもあるようです。

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商談に効くおまじない

2017年03月12日 | コンサルティング

あなたは仕事で大きな買い物をしたことがありますか? 今、あなたがある会社の総務部長だったとします。現在使っている人事管理システムが古くなったため、コンピュータとソフトウエアをリプレースすることになりました。半年後の稼動開始を目標に、複数のシステム・インテグレーター(SI)に数千万円規模の見積もりを依頼しました。

ここからSI同士が火花を散らす商戦が始まります。と書くと、あたかもSIが入り乱れてのバトルロイヤル(ご存じない方はWikiで調べましょう)を想像するかもしれません。

しかし、実態は全く違います。SI各社はお互い相手を攻撃することはありませんし、営業担当者同士が直接会うこともほとんどありません。それどころか、顧客が競合他社の名前を教えてくれない場合もあります。

戦いは、発注部門の責任者であるあなた(総務部長)と営業担当者との間で始まるのです。

あなたは自分の会社と総務の仕事には詳しいのですが、システムのことはよくわかりません。しかも、SIと商談をするのは初めてのことです。そこで情報システム部から助っ人を1人派遣してもらい、商談時には必ず一緒にいてもらうことにしました。しかし、この助っ人、知識は豊富なのですがコミュニケーションにやや難があります。(こいつ何を言っているんだ?と思うことがしばしばあります。

一方、攻める側の各社は、優秀な営業担当者をあなたにぶつけてきました。どの会社の営業担当者も抜群のコミュケーション力を持ち、製品知識はもちろん業界動向や社会情勢にも詳しく、身なりもきちんとしていて、全く嫌味がありません。当然ですがセールス・トレーニングをしっかり受けてきており、営業に関するビジネス書を何冊も読んでいます。

商談のはじめに、営業担当者はあなたとのラポールを築くためミラーリングし、チューニングし、マッチングしてきます。商談が進むにつれ「顧客と面談する際の応酬話法」で身につけたYES BUT法などのセールス・テクニックを繰り出してきます。そして終盤では二者択一法、推定承諾法、結果指摘法、第三者話法などなどで契約を迫ります。

いかがでしょうか。こんな「スーパーセールスマン」に素手で立ち向かっても勝ち目はなさそうですね。

でも、ご心配なく。商談中に次のおまじないを唱えてください。そうすれば誤った選択をせずに済みます。

「魔法は無い!」・・・これだけです。

営業担当者は嘘はつきません。しかし、優秀な営業担当者はセールス・テクニックを駆使して自社の製品を「素晴らしいシステム」に思わせることはできます。

営業担当者の言葉を聞いているときに、ちょっと魔法チックなきらきらしたイメージが頭に浮かんだら「魔法は無い!」と唱えるのです。

すると、不思議なことに言葉のきらめきが消え、現実が見えてきます。

現実が見えてきたら、落ち着いて相手に質問をしてください。「処理時間はどのくらい短縮できますか?」、「こういう場合どうなりますか?」、「制度が変わった時に修正できますか?」、「修正にかかる時間は?」、「コストは?」

そして、全ての質問に対してきちんとした答えが返ってこない限り商談を進めないことです。

このおまじない、本当に効きます。

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営業担当者にとって最も良い顧客とは

2017年03月08日 | コンサルティング

過去に営業職を経験した人ならば、1人や2人、いわゆる「合わない」顧客がいたはずです。「いや、いや、そんなもんじゃない。1ダースはいたよ。」という人もいます。前世紀(と書くと大昔のようですがバブルの頃)、私が営業を担当していた某電機メーカーの技術管理部にAさんという方がいました。Aさんは、開発部が使う計測器やCADの導入を取りまとめる立場でした。私からすればAさんは月に2回は面談をする交渉窓口であり、発注に大きな権限を持つキーパーソンでした。

しかし、私はAさんと全く馬が合いませんでした。商談のときのAさんは無口、無表情で、ときどき「揚げ足を取る」のでした。

Aさん「なぜ保守契約がこんなに高いのですか?」
私  「ソフトウェアのバージョンアップを定期的に行うからです。」
Aさん「バージョンアップの内容は?」
私  「機能の改善だとか、バグフィックスとかです。」
Aさん「バグは欠陥ですよね。欠陥商品を売っておいてさらにお金を取るのですか?」
私  「いや、機能が良くなって、どんどん使い易くなりますから・・」
Aさん「当社で必要としない機能だったら、それは押し売りですよね?」
私  「機能だけではなく品質全般の改善と考えてください。」
Aさん「意味がわかりません。」
私  「・・・」 心の中で(じゃあ買わなきゃいいじゃないか!)

やや誇張気味ですが、だいたいこんなやり取りでした。

営業担当者と顧客、お互い人間同士ですから感情に流されることもあります。今思うと、私もAさんとの商談のときは早く切り上げたい気持ちが顔や態度に出ていたのだと思います。とはいえ大口のお客様ですから、ぐっと我慢して2年ほどAさんと付き合いました。

Aさんが異動してBさんという年配の方が後任になったとき、私はとても喜びました。Bさんは温厚であまり細かいことも言わず、揚げ足を取ることもありませんでした。

ところが、Bさんになってから徐々に発注金額が下がってきたのです。

開発部の若手社員に、それとなくBさんのことを聞いてみたところ「Bさんに機器のことをいろいろと質問しても、”俺はよくわからないからメーカーに直接聞いてくれ”と言うばかりで困っているんですよ」と答えました。

その結果、開発部内で同じ機器を重複して発注しようとしたり、用途に合わないものを購入してしまったりという問題が生じていたのです。

Aさんが担当者だった頃は、製品について細かいことを徹底的に質問されました。それは社内のユーザーを第一に考えてのことだったのです。

理不尽なことを言われたり、揚げ足取りもありましたが、Aさんのおかげで自社製品の弱点や改善点を十分に知ることができました。そうして、弱点を知った上で強みを強調することができるようになり、商談に自信がついてきました。思えばAさんは最も厳しくて優れた教師でした。

その後、Aさんは開発部門を率いる執行役員になりました。納得でした。

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なぜバランスシートが読めない営業は失格なのか

2017年03月05日 | コンサルティング

営業担当者にとって、損益計算書(P/L)は馴染み深い書類です※。何しろ、この書類の一番上に書かれているのは売上高だからです。当然、粗利(売上総利益)や営業利益には敏感になります。経常利益以下は、営業部門の仕事に直接関係するわけではありませんが、会社の業績ですから気にはなるでしょう。

ところが、バランスシート(貸借対照表)についてはあまり興味が湧かない、それどころかほとんど関心がないという営業担当者はたくさんいます。しかし、バランスシートこそ営業部門にとって非常に大切な書類なのです。

バランスシートは見た目、ちょっと取っ付きにくい感じがします。まず、縦に1本線が引かれ左右に分かれています。左側は「資産の部」で、ある時点(決算日。3月31日が多い)の会社が持っている財産の一覧表になっています。右側は上下に2分されており、上の方には「負債の部」があり、そこには会社の借金(正しくは、これから支払うべき金額)が並んでいます。その下の「純資産の部」は、資本金や今までに溜め込んできた利益が記載されています。つまり、バランスシートは会社の金銭面の「実情」を表しているのです。

売上にしか関心がない営業担当者は、自社のバランスシートの資産の部にある「受取手形及び売掛金」を見てください。これは、商品を売った代金が、まだ現金として回収されていない残高です。現金になっていませんから、お客様に「お金を貸している」状態です。銀行はお金を貸して利息を取りますが、あなたの会社はそれができません。無利息でお金を貸しているわけです。

また、その下にある「商品」は在庫の金額を表しています。営業担当者の中には「お客様が商品を欲しいときにすぐに出荷できるよう、在庫はたくさん持っていて欲しい」という人がいます。商品在庫がたくさんあれば売り損じ(チャンス・ロス)がなくなるので、確かに安心です。しかし、商品は時間の経過とともに陳腐化し、売れ残りになる可能性が大きくなります。また、倉庫代、保険料、その他の間接費がかかります。

このような話をすると「なんで営業が経理や仕入の心配までしなくちゃいけないの?」と反発をする人がいます。

これに対して、私は「営業が経理や仕入などに気を配るのは当然のことです!」と言い切ります。

営業は、企業が生きていくために必要なお金を得る唯一の部署です。売掛金も商品在庫も、「ある」だけで命の元であるお金を消費するのです。営業担当者こそバランスシートをしっかり読み、極力現金回収を早くし、在庫を少なくする努力をしなければなりません。

真っ先に取り組むべきは、経理や仕入部門との情報共有を徹底することです。

「たくさん売れば後のことはどうでも良い」では営業失格です。

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※ なぜ損益計算書が読めない営業は失格なのか


情報のブラックボックスを作らない

2017年03月01日 | コンサルティング

「同じことを知っていれば、同じ判断ができます」、「条件を同じにしています」

これは先日お会いした、ある中小企業の経営者の言葉です

この企業は、業績などの経営状況に関する情報を包み隠さず、全て社員に公開しているとのことでした。例年、年度末からわずか4日後には全社員を招集して、確定した数字などの情報を全てオープンにして、利益はどのくらい出たのか、社員にはいくら配当できるのか。1人あたりの額はいくらになるのかという情報を明確に伝えるそうです。

「業績などの情報を社員に伝えるのは、当たり前のことなのでは?」と思われるかもしれませんが、現実には役員のみに明らかにする、あるいは上層部には伝えるけれど一般社員には一切伝えない、という企業も相当数あるように感じています。

そういった企業では、社員に対しては経営数字にかかるプロセスは一切伝えずに、結果としてボーナスが減らされる(状況によっては全く出ない)という事実だけが伝えられるようになります。

前年対比でいくら減ったのか、利益は出たのか出なかったのか、赤字なのかどうなのか、などの情報の全てがブラックボックスになってしまうのです。こうなると、株式が公開されている企業ならばともかく、そうでない企業では、社員は数字を知る術がなくなってしまいます。

社員にすれば、経営者はきちんと責任を負っているのか、自分たちにだけにしわ寄せがきていないかなどの疑問は尽きず、疑心暗鬼になってしまうこともあるようです。

このように、経営数字に限らずポジションによって情報を限定している企業もありますが、そうすると、情報を知らされない従業員は「情報難民」になっていまいます。「情報を知っている人」と「そうでない人」に2分されてしまうと、当然知っている人だけが優位に立つことになります。知らされない人は個々人が自分で判断する術がないために、やがては主体的に動かなくなり、指示を待つだけの受け身の仕事をするようになってしまいかなません。

組織が目標に向かい一丸となって進んでいくためには、社員一人一人がそれに向かって自律的に仕事をしていくことが求められるわけですが、それが上手くいかない大きな原因に、この「情報共有ができていない」ことがあるように思います。

ですから、今後こうした問題を生じさせないためには、まずは経営者自身が情報をブラックボックスにしないことの重要性を認識する必要がありますし、情報提供する際には、ポジションに関係なくきちんと行うことが必要です。

近年、この情報共有に関して、あたかも「万能薬」のように言われるグループウェアですが、グループウェア自体はあくまでも道具に過ぎません。導入したらそれで全てがうまくいくわけではなく、情報共有の重要性や共有されない場合のマイナス面などをきちんと理解していなければ、使いこなすことはできないことは言うまでもありません。

まずは、情報を共有すること本当の意味、つまり「同じことを知っていれば、同じ判断ができる」こと、「条件を同じにする」ことの重要性を認識したうえで活用することが必要なわけです。

さて、先日冒頭で紹介した経営者の会社にお邪魔したのですが、この会社の社員の年間の残業時間は1人あたり20時間ほどと効率的に生き生きと働いていることや、離職率が少ないことなどが数字としてはっきりと出ていました。

情報が全社員にオープンにされ、ブラックボックスを作らないことの影響はやはり大きいのです。

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