「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「口や手を出して何の責任も負わないような人には、どうかならないでほしい」
これはNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」の先日(9月5日)の放送の中で、主人公(虎子)の娘(優未)が義理の姉(のどか)を蹴り飛ばした後に、家を飛び出し駆け込んだ先の法律事務所で虎子の仕事仲間らに不満(蹴り飛ばした理由)を打ち明けた際に、諭された言葉です。
蹴り飛ばしたことを謝りたくないという優未に対して、虎子の仕事仲間らは「口や手を出したりするということは、変わってしまうってことだけは覚えておいて欲しい。その人との関係や状況や自分自身も・・・その変わったことの責任は自分が背負わなければければいけない」とも伝えたのです。
さて、このところ連日兵庫県知事のパワーハラスメントの疑いにかかる告発文書が出された問題が報道されています。知事は「重く受け止め、反省すべきところは反省する」と述べる一方、辞職の要求には応じない考えを示していることも報道されています。知事が辞職しない理由には様々あるようですが、これまでの流れを見ている中で最も私が気になっているのは、ここまで大きく信頼を失ってしまった組織のトップが、今後リーダーシップを発揮できるのかということです。
リーダーシップを発揮するためには人心の和が不可欠ですが、そもそも人心をつかむためには信頼される必要があります。この信頼とは、人の「言葉、行動、姿勢」を他者が見た結果、人間性や習慣といった目に見えないものに対して期待したり、その期待に応えてくれるだろうと当てにしたりする気持ちのあらわれではないかと私は考えています。そして、信頼は日常的な振る舞いを周囲がプラス評価をすることで、徐々に積み上がっていくものだとも思います。
しかし、こうして時間をかけて積み上げた信頼も、ちょっとしたことで簡単に崩れてしまうものであるということも、また確かだと思います。信頼を築くのには時間がかかりますが、崩れるのはあっという間だということです。
これに関連して、新入社員、若手社員を育てていく中で「上司が後姿を見せても、なかなか部下は育たない」というように感じている上司もいるかと思います。私が若手社員の研修などを担当させていただく中で感じるのは、上司としてお手本としてほしいと思うところはなかなか伝わらなくても、逆にあまり手本にしてほしくないようなところについても、案外しっかりと観察しているように感じます。
このように考えると、信頼を失った(手本にしてほしくない行為などをした)人が周囲にプラスの影響を与えるということは簡単にはできないということになります。
今回の兵庫県知事の例を見るまでもなく、法的に問題がある行為はもちろんのこと、余りに一般とかけ離れたような言動や行為というものは、周囲との関係を(大抵の場合は悪い方へ)変えてしまうということです。そして同時に様々な事柄も停滞させてしまうこと、そしてその責任は自ら負わなければならないということを、自戒の念を込めて認識を深めなければいけないと考えています。