中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,229話 営業成績を上げられる普遍的な方法とは

2024年08月28日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たこ焼き屋さんを始めませんか?」、「ゴルフ事業を始めませんか?」

これは、弊社のホームページの問い合わせフォームに届いた売り込みメールの内容です。

人材育成を生業としている弊社がたこ焼き屋やゴルフ事業を始める可能性は0(ゼロ)と言っていいほど低いですので、売り込みとしては極めて成功率が低い営業行為であると感じています。

さて、昨年私は「ザ・ミュージック・マン」というミュージカルを観劇したのですが、そこでは20世紀のセールスの厳しさが歌われていました。内容は、1912年頃にデパートやチェーン等の大型日用品雑貨店の登場や自家用車による生活の変化により、汽車で土地から土地へ移動し商品を売るセールスマンは時代遅れなものになり、セールスが厳しくなったというものです。

営業パーソンがセールスをするということは、古今東西このように簡単なものではないということを、このところ改めて感じています。

今から20年ほど前でも、現在のようにホームページのお問い合わせフォームを使用して営業活動をしたりSNSを駆使したりする営業活動は主流ではなく、電話や郵送やFAX、飛び込みなどが主な営業方法だったわけですから、現在とは隔世の感があります。

しかしどのような手法を使用するにしても、「モノを売る」ということは昔も今も簡単なことではありません。ましてや、現在のように商品やサービスの内容、価格に歴然とした差がない場合には、他への優位性をつけるためにも営業パーソンの技術を磨くということが大切なのではないかと考えています。

弊社では、定期的に営業研修を担当させていただいたり営業パーソンに同行したりするなどして、コンサルティングを担当させていただくことがあります。それらの経験を通して改めて思うのは、「営業パーソンが一律に良い営業成績を上げられるような、簡単かつ普遍的な方法はない」ということです。

営業は実に奥が深く、様々な知識や技術が必要となる仕事です。具体的にはアプローチ方法、実際のアプローチ、顧客との信頼構築、プレゼンテーション(実際の提案)、顧客の拒否反応への対応、クロージングという一連の流れが必要であり、それらを顧客との関係性を維持しながら効果的に行う必要があるのです。

それでは、営業パーソンの技術を上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

具体的には、まずは営業に対する動機づけ、タイムマネジメントの訓練、営業パーソンの製品知識訓練、コミュニケーション力等の訓練が必要となります。さらに、個々の顧客の業種や置かれた状況に応じたきめ細かな対応も必要となってきますので、これらを職場でのOJT や研修などで身に付けて行くことが求められます。このように、営業には知識や経験、コニュニケーション力をはじめ、様々な力が求められるものであり、冒頭の例のように人材育成を目的に研修やアセスメントを主たる業務としている弊社へ「たこ焼き屋さん」 を始めませんか?といったような画一的なメールを送り付けてくるなどということは、本来はあり得ないことなのだと考えています。

営業活動はかように難しいものではありますが、同時にその分やりがいがあるものでもあります。営業パーソンの皆さんにはぜひ、頑張っていただきたいと思います。

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第1,228話 部下に自分の言葉で話してもらうことから始める

2024年08月21日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下に何度言っても、言ったとおりにやらないんです」

「部下に伝わらないので、つい『だから・・・!』と感情的に言ってしまうのです」

これらの言葉は、弊社が管理職研修や部下育成研修を担当させていただいた際に、必ずと言ってよいくらいに受講者から相談される内容です。

部下の育成に関する悩みは、古今つきないものだと思います。毎年厚労省が行っている「能力開発基本調査」の最新の令和5年の調査においても、人材育成に問題があるとしている会社は約8割になっています。この数値からも、現場での部下育成が思うように進んでいないことが伺えます。

さて、先日パリオリンピックが終了したところですが、日本選手団の活躍は国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得しました。それだけの活躍ができた背景には様々な理由があるのだと思いますが、その一つには外国から招いたコーチの指導があると言われています。

報道された中で私が最も印象に残っているのは、男子バレーボールチームを指導したフランス人のフィリップ・ブラン氏です。各国での指導経験を持つブラン氏は2017年から日本チームでの指導を始め、強豪国とも対等に渡り合えるようになったものの、就任当初は日本人選手との接し方に戸惑いを覚えたといいます。

それについてブラン氏は、「選手それぞれと面談をして、『私は君にこういうプレーを求めている』とリクエストを出したんです。選手たちはみんな『ハイ』と答えていたんですが、まったくプレーが変わらない。最初は通訳が正しくないのかと思いました。私もあきれて、3度目の面談の時には『私の方から説明はたっぷりしたから、今度は私がいったい何を求めているのか、あなたの言葉で説明してください』と言ったら、みんなびっくりしていました。日本の選手たちは心の中では『ノー』と思っていても、指導者の前では『ハイ』と言える。そうした社会になっています。これは私にとって大きな学びでした」といった話をしています。こうした中で、指導してもそれがなかなか生かされず、チームの成績にも結び付かないということが続いたのではないかと思います。

これは、指導が一方的な情報の伝達になってしまっていて双方向のやり取りになっていない状況であり、「はい」と返事はするものの実際は内容がきちんと伝わっておらず理解されていない状況であり、結果として指導にはなっていないということです。

同じように、部下がなかなか育たないと悩んでいる管理職の皆さんは、部下に指示をしたり指導したりする際に、一方的に伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。そして、伝えたことが部下にきちんと伝わったか確かめることをしないままで、部下を指導したつもりになってしまっているように思えます。

自分が伝えたことが相手に理解をされているのかどうかは、まさにブラン氏が行っているように、部下の言葉で語ってもらうことによって、どれくらい伝わったか、理解されたのかを確認できます。ブラン氏は先述のようなコミュニケーションを選手と行うことによって少しずつ信頼関係を築いていき、チームの成績もそれに伴って上がっていったとのことです。

部下が育たない、部下に伝えたはずのことが伝わらないと悩んでいる管理職の方は、この例のように部下に自分の言葉で話してもらうということから始めてみてはいかがでしょうか。

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第1,227話 予定人数を採用することはゴールではなくスタートである

2024年08月07日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「41.5%」

これは、2024年新卒者の採用計画人数に対する実際の充足率です。(2023年「新卒者の採用・選考活動に関する調査」東京商工会議所)

近年、労働人口の減少に伴って採用活動の厳しさが増していることを、報道や企業の採用の担当者から耳にすることが増えてきています。実際に2025年4月入社の大卒求人倍率は1.75倍で、2024年卒の1.71倍から0.04ポイント上昇しているとのことです。小さな数字のようにも思えますが、この数値からは多くの企業において採用意欲が旺盛になっている結果若手の奪い合いとなり、予定通りの人数を採用できている企業がある一方で、中小を中心に希望人数を採用できていない企業があることがうかがえます。その結果、冒頭のように採用充足率が50%を切る結果になっているのだと思います。

こうした状況を受けて、それぞれの企業では採用に繋げるために初任給を引き上げたり、福利厚生制度を充実させたりするなど、様々な取り組みを行っているようです。

実際に、今春ある企業の新入社員研修を担当させていただいた際にも、受講者から「数社から内定を得たけれど、給与の高さでここに入社することに決めた」と話す人が複数いました。また、同様に中堅社員研修を担当させていただいた際にも、「こんなにもらってよいのか」と昇給額に驚いている声を聞いたこともあります。

給与を受け取る側の社員のからすれば、もちろん高い方が良いでしょうから嬉しい限りだと思います。しかし企業側の視点で考えると人材を採用するということはゴールではなく、人材を育成するスタートになるということですから、採用して諸制度を充実してそれで終わりということでないことは言うまでもありません。

では、採用した人をどのように育てていけばよいのか。せっかく予定数の人材を採用することができたとしても、その後にきちんと計画的に育成していかなければ、あっという間に当人のモチベーションが下がってしまい、退職してしまうということにもなりかねないのです。実際、厚労省の調査(令和5年10月20日)によると、新規就職者のうちの2020年3月卒業者の3年以内の離職率は新規高卒就職者37%、新規大卒就職者32.3%と、3年以内に3割強の人が退職しています。

退職理由を調べた調査は複数ありますが、近年注目されている理由の一つに、新人が「自己実現」を強く目指し、自らの成長にスピード感を求めたり、そのためのスキルの習得を急いだりするということがあります。そして、それが短期間で叶わないと他での実現を求めて退職につながってしまうのです。 

実際、私の知人の職場でも入社しても数年以内に退職して他へ移ってしまう例が珍しくなくなってきているそうです。そんなことになってしまっては採用の際やその後のせっかくの取組みも意味がないということにとどまらず、組織の将来にも少なからず影響を与えることになってしまいます。

私はこうした事態を防ぐためにも、組織として採用後の人材育成の充実を今まで以上にしっかり考えて進めていくことが重要になっていくと考えています。本人の希望を踏まえながら短期~長期など期間ごとの目標を定めるとともに、それに向けて具体的にどのように育成していくのか、その過程をはっきり示し本人と共有する。同時に育成の過程で本人が成長しているという実感を味わえるようにしていくことも大切なのではないでしょうか。

労働力が不足していることで事業が拡大できない、回らないという企業の話も最近は少なくなです。そのような事態を招かないために、せっかく採用した人を丁寧に育てていくことが大切だと改めて考えています。

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