すでに何度か書いていますが、イノベーションとは新結合、すなわち新しい組み合わせによるビジネスの創造です。実際、私たちの暮らしに役立つ新しい製品やサービスは新結合の産物が多いといえます。
「コピーキャット―模倣者こそがイノベーションを起こす(東洋経済新報社・2013年)」という本の中では「イノベーション(革新)とイミテーション(模倣)を融合させて、競争優位を築くもの」としてイモベーションという言葉を提示しています。独自性を生み出すのは新しい要素ではなく、模倣(真似)でありその組み合わせ方であるという主張です。
さて、日本の家電の歴史において「結合型」の革新者といえばSONYでしょう。その代表例ウォークマンは、カセットテープレコーダから録音機能を取り去った(マイナスした)製品です。SONYは「マイナスの結合」というイノベーションによって、携帯音楽プレイヤーという巨大な市場を創造しました。
一方、「模倣型」の代表である松下電器(Panasonic)は、SONYなどが創り出した市場に後から参入してくるため、「マネシタ電器」などと揶揄されていました。しかし、松下電器の製品は単なる二番煎じではなく、消費者に「買いたい」と思わせる魅力がありました。同様にIBMやAppleも、模倣と結合によって様々な製品を生み出してきました。
ところで、イノベーションはどのようにして生まれるのでしょう。
模倣と結合がイノベーションだとすれば、最も必要なものは「質」よりも「量」です。人、モノ、金、時間、情報などを使って延々と試行錯誤を積み重ねた結果がイノベーションです。
当然ですが、その過程で没になったアイデアや試作品止まりで廃棄されたモノなどが山のように積み重なって行きます。ヒット商品の陰には膨大な失敗作があることは想像に難くありません。イノベーションとは、多産多死の結果なのです。
さて、冒頭の画像は新結合によって生み出された製品です。何だか分かりますか(答えは下記)? 我が家の押し入れから出てきたものですが、完動します。さすがは松下電器です。
(人材育成社)