中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

「適当」とはどういう状態をさすのか

2019年02月27日 | コンサルティング

日本人:「トロミが出てきたら適当なところで火を止めてください。煮詰まっちゃうので」

外国人:「『トロミ』?『テキトウナトコロ』トハ、ドコデスカ?「ニツマッチャウ」?」

これは先日ある飲食チェーンのお店で、指導役の日本人がアジア人の従業員を指導していた際のやりとりの一コマです。

外国人従業員が鍋をかき混ぜているところに、日本人の指導役が冒頭の言葉をかけたのです。しかし、言われた側の外国人従業員は内容をほとんど理解できなかったようで、結局、指導役が慌てて火を止めていました。

このやりとりの一部始終を見ていた私は、特に「適当なところ」の「適当」がどういう状態をさすのか。日本人であったとしても経験を積んでいない人にはなかなか伝わりにくいのだから、それが外国人であればなおさらのことだろうなと感じました。

実は企業で行われる部下指導の際にも、この「適当なところ」をはじめとして、「あいまい」とも言えるような表現が想像以上に使われているのです。

「適当」の他にも「できるだけ急いで」や「可能な限り」などの表現もよく使用されます。「できるだけ」や「可能な限り」も業務に精通していない人からすると、その範囲はどの程度なのか、なかなか判断が難しい表現です。

日本では今後、冒頭の例ように、いろいろな職場で外国人労働者がさらに増えていくことは周知のとおりです。

先日、研修の現場でお会いしたある製造業に勤める中国人の女性社員は、次のようは話をしてくれました。

「日本の人が使う『社交辞令』と言うものが最近ようやく理解できるようになりました。日本人女性の『今度、ご飯を食べに行きましょう』という言葉に初めのころは『いつにする?』とすぐにスケジュール帳を出してしまっていたのです。しかし、それが必ずしも本当に食事に行くつもりではなくて、日常的に挨拶のように使う『社交辞令』だというものだということがようやく理解できるようになりました。社交辞令と言う言葉や考え方は私の国にはありませんから」

この社交辞令はよく言われる例ですが、その場の空気や雰囲気に頼ったコミュニケーションをとることが多い日本人のスタイルです。日本人同士であったとしても、誤解を招くことが少なくありません。

ましてや、当事者の一方が外国人であれば、これまでのようにそれを前提としたコミュニケーションは成り立たないのだということをあらためて認識しておく必要があります。

今後、様々な業種で外国人労働者がますます増えていくことを踏まえ、行間を読むことや空気を読むなどに頼ったコミュニケーションスタイルから、数字や具体的な例を示しながらどうしてほしいのかをはっきりと伝える。そしてそれがきちんと理解されたかを確認する。というコミュニケーションスタイルに変えていく努力が我々にも必要です。

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中小企業が「人が辞めない会社」になるには

2019年02月24日 | コンサルティング

最近「若手社員の早期離職現象」が多くの企業を悩ませています。「大卒で採用した社員の3割が3年以内に辞める」当社はこれを3.3(さんざん)現象と呼んでいます。長い時間と高いコストを払ってようやく新人を採用したと思ったら、一人前になる前に会社を去って行く。まさに会社にとって散々な事態以外の何ものでもありません。

言うまでもありませんが、こうした事態の根底には日本における絶対的な人手不足という国家的な問題があります。しかし、この問題に対処すべき立場にあるのは、首相をはじめとした国の舵取りをする人たちです。

企業ができることは、少ない人材の奪い合いと若手社員を辞めないように引き留めることしかありません。大企業ならば、以前にも紹介したようなリテンションマネジメント(retention management)※は有効です。

では、「ヒト・モノ・カネ」で大企業には到底及ばない中小企業はどうすれば良いのでしょう。

ご推察のとおり、即効性のある対応策はありません。ただ、経営者の皆様に実行していただきたいことが1つあります。

それは「良い会社」を定義し、口にすることです。

拍子抜けされたかもしれませんが、とても大事なことです。

経営者自身が「良い会社」とはこういう会社なのだ、ということを具体的に言えなければ、若手社員を引き留めることなど到底無理です。まず社長自身が「良い会社」とはこれこれこういう会社のことだ、うちの会社はそれに向かって毎日仕事をしている、と信じて口にすることが大切です。

ただし、この定義は「社是」や「経営理念」ではありません。しかも毎日変わっても構いません。

たとえば、お客様が喜ぶようなちょっとした工夫を社員がしたとき「いまやったことを続けるのが良い会社だ」と伝えれば良いのです。

取引先の会社の廊下にゴミが落ちていたら、社長であるあなた自身がすぐにそれを拾って「いまやったことを続けるのが良い会社だ」と伝えれば良いのです。

そうした日々のちょっとした行動が積み重なっていくと、少しずつ「良い会社」に近づいて行きます。もちろん即効性はありませんから、相変わらず散々な状態は続くかもしれません。

しかし、わずか1%の改善でも365日続ければ元の数の37.78倍になります。実行した会社としなかった会社の差は時間が経てば経つほど開いていきます。ですから、信じてやりぬくことです。

気がつけばいつのまにか「人が辞めない会社」になっていた。それを目指しましょう!

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※ リテンション・マネジメントは非現実的?


Win-Winは幻想なのか

2019年02月20日 | コンサルティング

「Win-Winの関係なんて現在はありえない。30年くらい前のA社、B社ではあったけれど・・・」

これは先日ある製造業での研修の打ち合わせ時に、経営者から伺った言葉です。

具体的には、営業研修のプログラムの内容についてのディスカッションをしていた際に、この言葉をお聞きしたのですが、A社、B社はいずれも日本のトップ企業です。

今では、たとえトップ企業であっても発注側が圧倒的に有利であり、一方的に短納期や値引きを要求し、受注側は立場的にそれに応じざるを得ない状況とのことです。

Win-Winとは、ビジネスの取り引きの場において、売り手側と買い手側の両者が利益を得ることができる関係のことです。直訳すると「勝ちと勝ち」、「自分も勝つ。相手も勝つ」という解釈です。

このWin-Winと言う言葉は、日本では1996年に出版されたスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」の中でも紹介されており、それで一気に広まったと記憶しています。

これまで、「営業の使命として現場ではWin-Winを目指すことが大前提」と考えていた私としては、冒頭の話を伺ったときには正直なところとても驚きました。

しかし一方で、我々研修講師の業界においても、研修を提案させていただく企業(顧客)から短納期での提案を求められて、何とか間に合わせるべく睡眠時間を削って必死に作成することもままあります。

しかし、そこまでして完成させた提案書であっても、採用されない場合は先方からは連絡の一本もないこともあるのです。

改めて考えてみると、これではとてもWin-Winの関係とは言えないのは確かかもしれません。

仕事と生活の調和推進官民トップ会議「仕事と生活の調和推進のための行動指針(2010年)の中では、「取引先への計画的な発注や納期の設定」を求めています。

発注側は、受注側に対して一方的な条件を提示したり、それに応えられなければ付き合いの打ち切りを提示したりするのではなく、双方が望む結果を共有し、少しでもWin-Winの関係を共有できるようにする。今の時代にそれを望むことは、もはや幻想なのでしょうか。

しかし、自社の利益の追求だけでなく、それを支える受注側の利益も考える。

きれいごとなのかもしれませんが、もしどちらか一方のみが得をするようなシステムであれば、いずれもう一方は立ちいかなくなってしまうのは明白です。最終的には企業が長期にわたり存続しつづけることは難しくなってしまうのではないでしょうか。

完全なWin-Winの関係は難しいのは事実でしょう。しかし、双方が歩み寄って少しでも利益を共有できる、そういった関係を築いていくことが大事なのだと改めて考えています。

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講師が乗ってきたらチャンス到来

2019年02月17日 | コンサルティング

講師として研修やセミナーに登壇すると、受講者の様子が手に取るようにわかります。数百名を前にした講演会のような場合は別ですが、公開セミナーなどで50人以上の受講者がいてもよくわかります。

こんなことを書くと「講師は50人を相手にしゃべっているのだから、自分のことなんか眼中にないだろう」、「まして、自分が講師の話をどう思っているかなど、わかるはずがない」と思われたかもしれません。

経験の少ない講師や自慢話をしたいだけの講師は別ですが、まともな講師ならば「受講者がどう感じているのか、何を思っているか」はほぼわかります。

「眠そうだな」
「一所懸命に話を聴いてくれているな」
 といった、見るからにわかる場合はもちろん、

「あの人とあの人は理解していないな」
「窓際の席に座っているあの人は納得していないな」
 といった、はっきりと態度に表れない場合でもよくわかります。

経験のある講師は、話を続けながらときに言葉や言い方を変えたり、ホワイトボードを使って補足説明をしたり、スライドを何枚か端折ったり、逆に戻してもう一度見せたりと様々な工夫をしながら講義を進めます。

しかし、終始受講者の反応だけを見て話をするわけではありません。優れた講師は、自分の思いを乗せて伝えたい部分、ここぞというところは思い切り情熱をこめて語ります。そのときは声も大きくなり、やや早口になります。いわゆる乗っている、テンションが上がっている状態です。

すると、ほとんどの受講者が「おや?急に気合が入ってきたぞ!?」という反応を見せます。おおむね前向きな興味を示してくれるのですが、中には「ドン引き」といった表情をする人もいます。言うまでもなく、その様子は講師にも十分に伝わります。

講師が乗ってきたら、価値あるメッセージを集中して受け取ることができるチャンスです。「ここだけは何としても伝えたい」と講師が信じている、とても重要なポイントだからです。

研修やセミナーを受講していて、講師の話し方に熱がこもってきたなと思ったら、とりあえず真剣に聴いてください。そして、得た知識を職場に戻ってから実践してみてください。「すぐに」とは言えませんが、費やした時間とお金を補って余りある成果が得られます。

研修やセミナーが、単に時間とお金を使う「消費」ではなく、将来見返りのある「投資」になるかどうかは受講中の態度と受講後の行動次第ということです。

「講師が乗ってきたら講義に集中」・・・お忘れなく!

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なぜそんなにキャリアアップを急ぐのか

2019年02月13日 | コンサルティング

「私の大学時代の友人は既に重要な仕事を任されています。それに比べて、自分は相変わらず営業にも一人で行かせてもらえない。こんなことを続けていたら、いつまでたってもキャリアアップができません。その結果、皆から取り残されてしまいそうです」

これは、先日ある企業の人事担当者から伺った言葉です。その企業の入社1年目の新人男性社員がこのように言い残し、わずか半年で職場を去ってしまったとのことです。

実はこの企業は設備機器メーカーであるため、取り扱っているのはほとんどが専門的なものです。そのため、営業として独り立ちできるようになるには、最低でも3年位はかかります。

こうした理由から、入社後半年以内の彼のケースでは先輩や上司の営業に同行することを通して、まず営業技術を覚えることはもちろんのこと、同時に商品に関する高度な専門知識も覚える必要もあるのです。当然独り立ちできるようになるまでには、相当の時間を要することになります。

一方、彼の「学生時代の友人」がどのような会社に就職したのかはわかりませんが、短期間で独り立ちし、さらに重要な仕事を任されているということは、比較的単純な商材を扱っている可能性が高そうです。

そういうケースでは、新入社員研修を行っている最中に一人で営業に行かせる会社もあります。またそこまで極端ではなくても、配属後3か月間くらいは先輩社員や上司の営業に同行して、その後すぐに担当企業を持って一人で営業に出かけさせるような会社もたくさんあります。

そのような会社に就職した友人の話を聞けば、片や独り立ちして仕事を任されている反面、自分は半年たっても自分の担当企業すら持てない。相変わらず先輩や上司の同行ばかりさせられていると焦る気持ちが募るのも、理解できないわけではありません。

もちろん、冒頭の企業では退職を表明した彼に対し、上司や人事担当者が業界の特色や将来活躍してもらうために必要な知識やスキルを今、獲得してもらっているなどの人材育成方針を繰り返し説明したそうです。しかし、彼の決意は固かったとのことです。

人事担当者は、「当社の人材育成方針は、会社説明会でも丁寧に話をしたつもりです。彼もそれを覚悟して入社したはずなのに、学生時代の友人の話を聞いて『隣の芝生は青く見えた』のでしょうか。修業期間が長いということは、それだけ他業界に比べ奥が深い製品を取り扱っているからです。身に付いた知識やスキルは差別化されたものだけに、自身のキャリア形成につながるはずなのに」と残念そうな表情でおっしゃっていました。

この話を伺って、私は「たった半年で退職を決断するなんて、キャリアアップをそこまで急がなくてもよいのではないか」と率直に感じました。

そのように考えていたところ、先日の日経新聞に「入社前から転職活動」という記事が掲載されていました。

そこには、「理想のキャリアや安定した生活を手にするには、早くから転職の可能性を考え、備えておかなければ安心できない。転職活動をする若手に共通するのは、そういう不安である」と書かれていました。

この記事を読んで「理想のキャリアとは?」、「安定した生活とは?」と思いました。同時に「入社前から転職活動をするってどういうこと?」と次々に疑問が湧いてきました。

そもそも、新入社員がそれらを焦って獲得しなければならないと不安に思う背景には、何があるのでしょうか?

おそらく、様々な理由があるのでしょうし、できればインタビューなどの形で一度本音を聞いてみたいです。

しかし、仕事を覚え一人前の戦力になるためには、前述のとおり一定の時間をかけてきちんとステップを踏んでいくことは必要です。同時にそれは仕事の面白さも味わえるチャンスです。

「新入社員、若手の皆さん、漠然とした不安に不必要に踊らされることなく、まずは腰を落ち着けて目の前の仕事に集中して取り組んでみましょう」と先を歩く者の1人として今後担当する新入社員研修や若手を対象にした研修で伝える所存です。

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上司は部下の「召使い」?

2019年02月10日 | コンサルティング

「サーバントリーダーシップ」という本※1を読んだのは10年近く前のことです。とても興味深い内容でした。組織におけるリーダーはサーバント(召使い、使用人、従者、家来・・・)であれというのがその主張です。たとえば、会社では上司はまず部下に「奉仕」して、その後部下を正しい方向に導きなさいというものです。 

かつて日本の会社では、上司が部下に対して一方的に指示・命令を下す「支配型リーダーシップ」が主流でした。2000年に出版された「上司が鬼とならねば部下は動かず」※2という本では「良い上司とは部下から恐れられる「鬼」でなければならない」という考え方に貫かれていました。この本のタイトルは極端ですが、「リーダーとは”ボス”であるべき」というのが日本的なリーダーシップの在り方でした。

しかし、人手不足が深刻化している現代では、鬼のような上司がいる会社は敬遠されます。もしも「〇〇社のXXという部長は、いつも部下に対して一方的な命令をする」といった社員の話がネットで流れようものなら、採用でかなり苦労することになるでしょう。

そのせいか、一部の管理職研修で「上司は部下の召使いであれ」といった誤った指導がなされることがあります。そこでは、部下の要望はできる限り受け入れる、部下の心を「癒す」ことを心掛ける、といった「なんでもかんでも部下中心マネジメントとでも言うべき内容が教えられています。

前回のブログでも書きましたが、一部の不勉強な研修講師が「上司は部下を呼びつけてはいけない」とか「上司は最優先で部下に気を遣え」などと滅茶苦茶なことを言うわけです。

言うまでもありませんが、上司は召使いでも鬼でもありません。「上司」や「部下」というのは、あくまでもfunction(ファンクション:機能、役目)です。職場では、上司は部下に指示・命令をするという「役目」を果たさなければなりません。それは人として上位にあるからではなく、そういうfunction(機能)だからです。

「サーバントリーダーシップ 」とは、本をしっかり読めばわかりますが、部下を支援しつつ正しい行動に向かわせるための指導方法です。

「上司は鬼」論も「上司は召使い」論も、その時々の社会情勢でもてはやされしまうのは仕方がないとしても、せめて人材育成に携わる研修講師はもう少しまともな講義をしてほしいものです。

それが研修講師のfunctionではありませんか。

※1「サーバントリーダーシップ 」R・K・グリーンリーフ(著)、英治出版、2008年

※2「上司が「鬼」とならねば部下は動かず―強い上司、強い部下を作る、31の黄金律」染谷 和巳  (著)、 プレジデント社 、2000年

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上司は部下を呼びつけてはいけないのか

2019年02月06日 | コンサルティング

 「上司は部下を呼びつけちゃいけない。部下に用があるときには、上司の方が部下のそばに行って、今、声をかけてよいかを確認してから声をかけなければならない。もし、部下が仕事に集中しているようであれば、声をかけるのは止めにして、少し時間を置く必要があるそうです」

これは先日お会いした、ある企業の人材育成担当者から伺った話です。以前、その企業で「ハラスメント防止」研修を行った際に、外部講師が語った言葉なのだそうです。

その育成担当者は続けて「うちの管理者はいつも部下を呼んで指導していますよ。この行為は、上司としてやっていけない行為だったのですね」と話しました。

さて、皆さんはこの話を聞いてどのように感じますか。

上司が部下を呼んではいけない?

私自身はこの話を聞いて「では、部下が10人も20人もいる上司だったら、どうするのだろう?仕事の指示をしたり、部下から報告を聞いたりしなければならないとき、いちいち上司が部下の席まで行くのだろうか?」

そして、「部下が集中して仕事をしていたら、声をかけるのを止めなければならない。さらに、その都度出直さなければならないのか?」

「そんなことをしていたら、逆に上司の仕事はどうなるのだろう?」など、次々に疑問がわいてきてしまいました。

上司の仕事は職場の目標達成のために、経営資源(人、モノ、カネ・・・)を効果的に活用することのはずです。そのためには、部下にも最大限の力を発揮してもらう。さらに、そのためにコミュニケーションを通して行動変容を起こさせることも必要なはずです。

現在、いわゆる「売り手市場」と言われるようになって久しいです。企業は新人に限らず中途であってもなかなか採用するのが難しい時代です。

したがって、ほとんどの企業はせっかく採用した人は辞めさせてはならないと考えています。無論その考えには何ら異論はありません。

せっかく採用した人に簡単に辞められてしまっては、企業にとって大きな損失であり、そうならないように様々な対策を打つことはもちろん必要です。

その一つとして、直属の上司のみならず組織として新人を丁寧に育成することには、私も大賛成です。

また、近年ではハラスメントに関する問題がますます顕在化してきています。実際、パワーハラスメントにかかる労災申請の件数は右肩上がりの状況が続いています。

パワーハラスメントは、被害者だけでなく、周囲も組織も、最終的には加害者にも大きなリスクがあるわけですから、決して看過できない問題です。

しかし、いくら「採用した人を辞めさせてはならない」、「パワーハラスメントはいけない」からといって、冒頭の話のように「上司が部下を自分の席に呼んで仕事の指示をしたり、報告させたり、部下が集中しているときには指導したりしてはいけない」ということになったら、仕事はどうなるのでしょうか。円滑な進行に支障が出てしまうだろうことは容易に想像できます。また、部下自身は成長の機会を失います。やがては組織全体にもマイナスの影響が出てきます。

人を辞めさせないこと、パワハラをしてはいけないことと、上司が部下に対してまるでお客様扱いのように対応することとは、まったく別の話です。弊社では上司は必要なときには毅然として部下指導を行うべきであると考えています。

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部下の「態度」はどう評価する?

2019年02月03日 | コンサルティング

管理職に昇格し、はじめて部下を評価するときは誰しも緊張するものです。とはいえ、人事部門がしっかりとした評価マニュアルを作り、評価者研修を行っている会社もありますから、そういう会社にお勤めの方は心配する必要はありません。一般に人事評価マニュアルには、部下が仕事に取り組むときの「1.知識・技能、2.判断・表現、3.態度」等についての評価方法が書かれています。

「知識・技能」、「判断・表現」については比較的明確な判断基準が示されているので、上司も把握しやすいでしょう。しかし、「態度」については、なかなか判断が難しいと思います。

ある部下が一所懸命仕事をしていれば「態度」を高く評価すると思います。しかし、何をもって「一所懸命」とするかです。残業や休日出勤が多ければ「一所懸命」なのでしょうか。

以下に、部下の態度を評価する際に参考になる、ある「報告」がありますのでその一部を紹介しておきます。新任の管理職から経営者に至るまで、とてもためになる内容です。

「仕事に取り組む態度を、(1)粘り強く仕事に取り組む態度(粘り強さ)(2)自らの仕事を調整しようという態度(自己調整力)……という二つの側面に分けます。これらは、心理学で言う「メタ認知」と関わっています。メタ(高次の)認知とは難しい言葉ですが『自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考の過程等を客観的に捉える力』としています。自分の姿をもう一人の自分が外から眺める、あるいは、鳥が空中から地形を俯瞰ふかんする(見渡す)イメージだと言えばわかりやすいでしょうか。」

つまり部下を評価、指導する際は、部下本人が自身を客観視する力、すなわち「メタ認知」に着目しなさいということです。

たとえば「一所懸命」長時間残業をやっていたとしても、部下本人がそれをどう捉えているかが重要です。「何十時間残業をしてでもこの仕事をやり切る!」という意気込みだけを見るのではなく、「なぜこんなに時間がかかってしまったのだろう。自分の仕事の進め方に改善の余地はないだろうか?」と考えて行動に移しているのかを評価しなければならないのです。

私たちは「一所懸命」さに弱く、ときには「がむしゃら」であることを最大限に評価しがちです。しかし、公正な評価においてはそれを行ってはなりません。管理職全員が「一所懸命」を評価基準にしてしまったら、仕事の効率は大きく低下してしまうことでしょう。

それを避けるためには、まず評価者自身が自分をメタ認知できるようになる必要があります。当社の「管理職のための部下評価研修(評価者研修)」では徹底してその点を学んでいただいています。

さて、実は上記の「報告」は、文部科学省の中央教育審議会が作成した「小学校の学習評価についての報告」の一部をコピペして「学習」を「仕事」に置き換えたものです。つまり、小学校の先生が生徒の学習態度を評価するときに参考にするものです。

人の「態度」に関する評価基準として、大変優れた記述だと思います。

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