食 その２

美味しかった話のあとに、美味しくなかった話。

私は毎週ハローワークに行っている。
と言っても決して求職中なのではなく、求人票を出しに、である。

お昼時は職員さんがほとんど昼食に行ってしまい対応に時間がかかるため、私はだいたいその前後の時間を狙って行き、近くのドトールかジョナサンか、駅ナカのイートインできるパン屋で昼食をとって戻るのが水曜日のお決まりである。

その日は時間的にちょうどお昼時になってしまったので、先に昼食をとることにした。
たまには他の、チェーン店じゃないところに行きたいと思いググってみるのだが、馬車道は正直、ない。
駅名的にお洒落なカフェが立ち並んでいそうなので最初はそれを期待してお昼時を狙ったのだが、毎週来て思う。ビルが立ち並ぶだけで近くをちょっとばかし歩いても、ない。
どうしようかなーと思いながら、なさそうだがとりあえず小道を歩いていると、ふと、良さげなお店が目にとまった。
扉を開け放しているので、オープンキッチン、カウンター、背の高い椅子、そしてワインも並んでいるのがよく見えた。イタリアンバールのような雰囲気だ。

あるじゃん！！

ランチメニューがハンバーグプレート、ライスボウル、カレーとジャンルがよくわからないが、値段は800～1200円くらいなので、早速そのお店に入った。

イケメンの店員さんが爽やかな笑顔で案内してくれて、私はライスボウルとアイスティを注文した。店内には美味しそうなメニューがたくさん書かれていて、サラダだけでも5種類はあった。夜はちょっとしたパーティができそうだ。
期待に胸を膨らませながら待っていた私のもとに、ライスボウルが運ばれてきた。のだが…

…んっ、すっぱい！すっぱいぞ！？なんだこのすっぱいにおいは！

酸味のある爽やかな、とは言い難い、とにかくすっぱいにおいがした。
イケメンの店員さんが、私が食前にアイスティを頼んでいたことを思い出し慌てて持ってきたことなんてどうでもよくなるほどだった。
あまり食欲のそそる匂いではなかったが、食べればきっと美味しい、美味しいはずだと思い、とりあえずセットのスープを飲んだ。

…ん？

塩か？胡椒も足りないのか？そもそも何ベースだ？
不味いとは言わないが、…ん？と思ってしまうような味付けだった。

気を取り直して、すっぱいサラダボウルを食べることにした。

…。

もう、何なのだろう。
本当に美味しいものって、口に入れた瞬間「美味しい！」と言ってしまうものである。
そこまでじゃなくても、せめて普通に美味しいくらいのレベルであってほしかった。
期待が大きかっただけに、残念な気持ちでいっぱいだった。

一応フォローしておくが、ライスの上に乗っている具とソース(すっぱいにおいの元？)は、まあまあ美味しかった。
スープも具だくさんだし、ランチ全体の彩りもよかった。
本当に残念だ。
外食でこんなに？？？となる料理を食べたのは初めてかもしれない。

たまたまだ、たまたま、その日シェフに何かあったのだ。
または、私の口と合わなかったのだ、ただそれだけのことだ。

そう言い聞かせ、お腹は満たされても心が満たされないまま、ハローワークに向かった。
(い)

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