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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

ずっと照らして下さる

2014-12-22 08:28:02 | 日記
 小さな庭の西の端に大きな柿の木があった。秋になると葉が落ちて急に広くなった青い空に色づいた柿の実がよく映えた。
 その実が私たち家族の胃袋に消えてしまうと、柿の木の脇にちょこんと植えられている青々としたモミの木が俄然注目の的になった。寒さが増してきたある週末の午後、半ドンで帰って来た父が、モミの木の回りをスコップでさくさく掘って鉢に移した。父は鉢をさらにバケツに入れ、モミの木が勝手口の上部にぶつからないように慎重に家の中に運び込み居間の隅に置く。すると、すかさず母がレンガの鉢に見えるように作ったボール紙の囲いでバケツを覆った。

 スツールに乗って押入れの天袋に収まっていた緑色の箱を取り出して来た母が私と妹を見て「さあ、始めましょう」と言いながら箱の蓋を開ける。そわそわして待っていた私と妹は箱の中の電飾や飾り付けを見て思わず「わぁ」と声を上げてしまう。まず長いコードに繋がった電飾をモミの木の回りにぐるぐる巻きにする。これは、父と私の役割だ。それからキラキラ光る様々な飾り付けを母と妹と私が行う。金銀の星、ひいらぎ、羊飼いの杖や、小さなりんごの実の飾りなどをあちこちにバランスよくぶら下げていく。金銀のモールを巻きつけてひと通り飾り付けが済むと脱脂綿の雪をモミの木の葉と根本に積もらせて行く。飾り付けの最後の仕上げは銀に輝く大きなベツレヘムの星だ。

 本当は私が飾りたいのだが、兄らしいところをみせるために妹に譲る。父に抱きかかえられてモミの木のてっぺんに星を飾る妹は誇らしげに見える。妹が星を飾ると「ずっと照らして下さるようにね」と母が言う。

 てっぺんの星は譲ったのだから、ということで最後の最後は誰にも譲れない役回りを私が受け持つことにする。星やそのほかの飾り付けをちょっと身体を離して見てちょいちょいと微調整してから「さあ、どうぞ」と母が言う。その合図を待って、「では」という感じで電飾のスイッチを私が入れる。

 夕暮れで薄暗くなった部屋の中に赤や緑の明かりが鮮やかに広がって、またしても「わぁ」と声を上げてしまう。妹と私は何だかとても嬉しくなって身体が勝手に動いてしまうのを止められない。「さ、これでクリスマスの準備は万端ね。あとはサンタさんがプレゼントを持って来てくれるのを待つだけ」そう言って母は父を振り返る。私にはサンタが誰なのか、もうわかってしまっているのだが妹はまだ知らない。妹は「プレゼント、プレゼント」と不思議な節を付けて歌うように唱えながら父や母やツリーの回りを踊り回る。
 
 あれから半世紀近くが過ぎ、振り返って見ると大きな銀の星は変わらずに今もずっと妹と私を照らし続けてくれていることに気が付く。そう願ってくれた母は病床にあってなお子供たちの身体を気遣い夕飯の心配をしたりする。メリークリスマス。ありがとう。メリークリスマス(三)


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株式会社ジェイエスピー
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