醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  814号  白井一道

2018-08-07 13:20:17 | 随筆・小説



 安倍晋三総理はファシストか①

 安倍総理をファシストだと主張している政治学者がいる。一橋大学名誉教授加藤哲郎氏である。私は加藤先生のブログ「ネチズンカレッジ」の愛読者である。
 加藤先生のブログには次のような「ファシズムの初期症候」が掲げてある。
・強情なナショナリズム
・人権の軽視
・団体のための敵国づくり
・軍事の優先
・性差別の横行
・マスメディアのコントロー
 ル
・国家の治安に対する執着
・宗教と政治の癒着
・企業の保護
・労働者の抑圧
・学問と芸術の軽視
・犯罪の厳罰化への執着
・身びいきの横行と腐敗
・不正選挙
 これらのファシズム初期症候群はアメリカ・ワシントンD.C.にある「ホロコースト記念博物館」の”Early Warning Sign of Fascism”と題された展示ポスターにか書かれている14カ条のようだ。この条項を解明したのは現代アメリカの政治学者、ローレンス・ブリットのようだ。
 この14カ条に現安倍政権はすべて当てはまると主張する人がネットにあふれていることに気が付いた。例えば最初の「強情なナショナリズム」と加藤先生が訳された項目を英語で表現し、「強力かつ継続的なナショナリズム」と訳している人がいた。「ナショナリズム」を「国家主義」と訳している人もいる。
 私がよく見るテレビ番組の一つに「クールジャパン」がある。日本は素晴らしいという番組だ。在日外国人が日本各地で日本の素晴らしさを発見する番組である。私はこの番組を見て、日本を再発見した気分になる。この番組は日本人に日本の民族意識を喚起する役割をしているのかもしれない。アメリカ大リーグで活躍する大谷翔平選手を称えないなんてことはできない。大谷選手が活躍することを自分のことのように喜びたいという気持ちにテレビを見ているといつしかなっていることに気が付き、驚く。
 世界中の人々が自分の民族を誇りたい。この気持ちは実に強固なものだ。この民族の気持ちをくすぐられると弱い。日本民族を誇って近隣の他民族を差別し、見下げるようなことがあってはならない。しかし実に難しい。
 例えば、元海上自衛隊自衛艦隊司令官・海将の香田洋二氏は読売新聞1018年8月3日朝刊のコラム『論点』朝鮮戦争の「総括」不可欠で次のようなことを書いている。朝鮮戦争の「総括なき終戦は、東アジアの将来の安全保障に禍根を残す。」と書き、朝鮮戦争の「総括」とは、具体的には開戦責任を明確にすることのようだ。確かに朝鮮戦争を開戦したのは北朝鮮側であることは間違いない事実のようだ。しかし外交交渉でこのことを北朝鮮側に認めさせることは、外交交渉をぶっ壊すことになるだろう。きっと北朝鮮側にも言い分はあるだろう。日本が朝鮮を植民地支配したため、朝鮮は二つの国に分断されたとその日本の責任を追求してくるかもしれない。スターリンの命令の下、金日成は南朝鮮解放戦争をした事情など明らかにはできないだろう。朝鮮戦争開戦の責任を問うことは、朝鮮戦争終結をぶっ壊す提案だ。香田洋二氏の主張を読み、彼は北朝鮮を対等な国とは見なしていない。軍事力でアメリカや日本の意思を北朝鮮に押し付けることができると考えているから話し合いで解決しようという考えにはならないのだ。北朝鮮民主主義人民共和国をアメリカや中国と同様に対等な国として尊重することがなければ休戦協定に代わる平和協定締結にはいたらないであろう。どうも香田氏は朝戦半島の平和ではなく、戦争を望んでいるようだ。戦争によってアメリカと一体となった日本の意思、北朝鮮の非核化を強制したい。香田氏の主張には「強情なナショナリズム」がある。寛容さのない強情なナショナリズムだ。
 「強情なナショナリズム」団体である「日本会議」にとって北朝鮮は敵国なのであろう。北朝鮮や中国、ロシアを香田氏は敵国にしたいのであろう。強情なナショナリスト香田氏は北朝鮮を敵国と認識しているからこそ、読売新聞のコラム『論点』の主張となるのだ。
 日本で最も販売部数が多い読売新聞に香田氏の主張が載る。ここに今の日本の状況がある。
ローレンス・ブリット氏の言う「ファシズムの初期症候」が読売新聞『論点』香田洋二元海上自衛隊艦隊司令官、海将の主張にある。