醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  820号  白井一道

2018-08-13 11:23:11 | 随筆・小説


 吟醸酒を楽しむ黒耀会のたより「月中天と聖」


侘輔 今日のお酒は香川県のお酒なんだ。
呑助 香川県のお酒と言うと有名な銘柄のお酒があるんですかね。
侘助 私が今まで楽しんだお酒というと観音寺の「川鶴」、「川の流れの如く、素直な気持ちで呑み手に感動を」初代より受け継がれたこの酒造りの精神を守り蔵人たちが想いをこめて造っているというお酒かな。
呑助 真心というやつですか。
侘助 それから「綾菊」かな。「現代の名工」に選ばれ、黄綬褒章の受賞暦がある「国重弘明」名誉杜氏のもと、愛弟子の「宮家秀一」杜氏が、讃岐の豊かな風土と文化をしっかりと携えた伝統と技術を継承したお酒かな。
呑助 「川鶴」は黒耀会で楽しんだような記憶がありますね。
侘助 間違いなく、一回は飲んでいると思うな。
呑助 今日楽しむ香川のお酒は何ですか。
侘助 今まで間違いなく一回は楽しんでいるお酒、「月中天」、香川県は琴平のお酒なんだ。琴平というと何が有名何だったけ。
呑助 金毘羅さんですかね。
侘助 「おんひらひら蝶も金比羅参哉」と俳人の小林一茶が金毘羅さんに参った時に詠んだ句のようだ。
呑助 私らが子供だった頃、映画「清水の次郎長」に出てくる森の石松が金毘羅さんに親分の代わりに参り、帰り道その香典を狙われ命果てる物語が有名ですかね。
侘助 義理人情に篤く、喧嘩に強いキャラクターが庶民の喝采をうけたのかな。
呑助 金陵酒造さんのお酒も義理と人情に篤い味わいのお酒なのかもしれませんね。
侘助 そうなんじゃないのかな。「こころをこめた酒造りで、食文化を創造」したいと言っているからね。また「こころが香る、お酒の歴史と文化の空間」を創造していくと胸を張っているからね。
呑助 疲れた体と心にやさしく入ってくる癒しのお酒ということですか。
侘助 そうだと思うな。造りは純米だから、醸造用アルコールが添加されていないお酒。無濾過だから炭素で濾過しなくとも酒の旨味が表現されている。生酒だから火入れをしていない。酵母の命がかすかに息づいているおさけだということ。原酒だから水で薄められていないお酒だということかな。
呑助 純米、無濾過、生原酒のお酒なんですね。
侘助 炭素濾過をするとお酒の旨味も一緒に取ってしまうようだからね。
呑助 無濾過のお酒は、酒本来の味が楽しめるということですかね。
侘助 もう一本のお酒は群馬県渋川のお酒、聖酒造のお酒なんだ。酒造米「若水」で醸したお酒なんだ。今年、五月にも黒耀会で楽しんだお酒なんだ。覚えているかな。
呑助 「若水」という酒造米はどこで開発された酒造米なんですか。
侘助 愛知県農業総合試験所で開発された愛知県酒造組合がこだわって醸しているお酒のようなんだ。酒造米「五百万石」を親としている酒造米だから新潟県のお酒に通じる端麗辛口のお酒に仕上がっているんじゃないかな。
呑助 「月中天」の方がどちらかというとしっかり味の載っている酒ですか。