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チェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたものは何か-放射能狂騒終了の鐘は鳴り響く(上)

2012年01月18日 08時19分43秒 | Weblog

 


前稿(↓)に引き続き、ブログ友のteroさんにご教示いただいた情報を紹介させていただきます。「チェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたのは放射能ではない」および、山名元・京都大学原子炉実験所教授の「日本再生の年頭に-過度なリスク回避に縮こまるな」他です。



・高田純教授「福島県民は誰も甲状腺がんにならない」
 -放射能狂騒状態の宴の終了を告げる鐘音
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/0310d2573c00291a4b0e194161f3e84b



而して、放射線被曝の危険性、就中、(現下の日本の社会で百鬼夜行する、すなわち、放射能狂騒の風評被害を惹起する魑魅魍魎の跳梁跋扈の<汚染源>としての)低線量積年平準の放射線被曝の<危険性>なるものについての私の理解は前稿に記した通りです。読者の倦怠を恐れず、以下、引用させていただきます。

* * *

蓋し、「放射能狂騒状態」の現下の日本に対して批判的な論者の多くも、誰も「放射線被曝が、低線量のものにしても、危険ではない」などと論じていません。要は、私も含むそのような論者は、

①低線量放射線の積年平準の被爆の危険性は確認されていない
②確認されていないことと存在しないことは別の事柄ではあろう

③定性的な観点からは、この世に絶対の<安全>など存在しない
④定量的な観点からは、例えば、致死量の青酸系毒物の如き絶対の<危険>は存在するものの、他方、例えば、酸素も水も極論すれば有害であり得るように、絶対の<安全>は存在しない
⑤定性的と定量的の双方において<危険>と<安全>は非対称的

⑥放射線被爆の許容値は、原子力発電の社会的利得と<危険の可能性>との比較衡量から割り出されるしかない。すなわち、放射線被曝の許容値は、(「赤信号」や「郵便ポスト」が赤色である必然性はないけれど、それが「赤」なら「赤」に社会的に決まっていることには、社会的な利得と意味があるのとパラレルに、低線量放射線/積年/平準/被爆の許容値も、)社会的な取り決めの範疇に属する所謂「調整問題」である


と、そう考えているのだと思います。而して、今般の福島の原発事故を経験した現在でも、否、日本における原子力政策にとっての「ノアの洪水」とも言うべき今般の福島第一原子力発電所の事故を経験した現在こそでしょうか、

原子力発電の、(A)短期的にはリーズナブルで安定的な電力の供給というメリット、(A)長中期的には、(a)エネルギー安全保障に不可欠なエネルギー源の多様化の維持推進、および、(b)日本が比較的容易に核武装することができる核武装のポテンシャルの維持確保。(B)これらのメリット、社会的利得の大きさは、臨床的・疫学的には健康被害がほとんど全く確認されない低線量放射線積年平準被爆の<危険の可能性>のデメリットを遙かに凌駕するものだとも。

この問題に、「福島発のノアの洪水」を潜る中で否応なく洪水前よりもより真摯に向き合い反芻した結果、日本国民は、そう確信をもって言える地平に、好むと好まざるとに関わらず降り立った。と、そう私は考えています。(以上、自家記事引用終了)

* * *

蓋し、例えば、上記自家記事中の(Aa)に関して、(低線量放射線被曝の危険性は、社会的に無視可能な程度の<危険の可能性>でしかない以上、)使用済み核燃料処理のコストを算入したとしても、「原子力発電を推進するメリット、社会的利得の大きさは、臨床的・疫学的には健康被害がほとんど全く確認されない低線量放射線積年平準被爆の<危険の可能性>のデメリットを遙かに凌駕する」と私は考えるのです。

要は、現在の被爆許容値を100倍から200倍に引き上げれば(ちなみに、その引き上げられた帯域でも、現在の被爆許容値と同様、有意の健康障害は臨床的・疫学的に確認されていないのです!)、福島原発事故などは(福島第一原子力発電所のそれまた原子炉近傍を除けばですけれども、)瞬時に雲散霧消する類のものにすぎない、とも。

尚、この放射線被曝の危険性、すなわち、<危険性の可能性>を巡る私の基本的な考えについては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。


・ドイツの大腸菌騒動
 -脱原発の<夢物語>は足元の安心安全を確保してからにしたらどうだ
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/6207784b62ce34386bfc691a78658034

・放射線被曝の危険性論は霊感商法?
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/7c286f3b86f2d6f2b8bd054af6bc3212

・魔女裁判としての放射線被曝危険論
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/54614e99fb98e2b28bd96c1022c1e029

・社会現象として現れるであろうすべての将来の原発問題への序説
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/95bf9c9a01aca3435196a8a613787ce2

・放射能の恐怖から解脱して可及的速やかに<原発立国>に回帰せよ!
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/65344571.html







畢竟、脱原発論、そして、その脱原発カルトの「理論的根拠」(?)らしい、彼等の「低線量放射線被曝も危険性がある」という閾値を否定する言説は(その言説の仮説としての論理的と数学的な妥当性とは逆に、それが、<危険性の可能性>が論理的可能性にすぎないことに、故意か過失か知りませんけれども、口を噤いでいる/論理的可能性にすぎないことを看過している点で)、正に、「科学的言説を纏った非科学性」でしかない。と、そう私は考えます。

敷衍しておきます。脱原発論者の持ち出す低線量放射線被曝の危険性の主張、例えば、京都大学の研究チームが発表した『チェルノブイリ原発事故の実相解明への多角的アプローチ~20年を機会とする事故被害のまとめ~』(2007年)に収録されているマーチン・トンデル「北スウェーデン地域でのガン発生率増加はチェルノブイリ事故が原因か?」(スウェーデン)は、低線量放射線被曝の危険性を肯定(?)した極めて稀少な研究なのですが、このレポートにおいて、

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/tondel.pdf

①喫煙や社会経済的要因といった特定の発癌要因以外での癌発生を放射線被曝によるものと仮定していること、よって、②放射線被曝と食生活や食材の変化等々の他の有力な発癌要因との間の重回帰分析は施されていないこと、なにより、③被曝線量の多少と癌発生件数との間に相関関係が見られないこと、そして、④この研究によっても、甲状腺癌・白血病といった放射線被曝との因果関係が想定される健康障害と放射線被曝との間に有意の相関関係は認められなかったと報告されていること等々

    
を鑑みれば、このレポートは、タイトルとは裏腹に、「北スウェーデン地域でのガン発生率増加はチェルノブイリ事故が原因ではない」と言っているに等しい論稿なのです。

蓋し、このような(低線量積年平準の放射線被曝の危険性を否定するものと「見立てる」ことも満更我田引水や牽強付会ではない)論稿を低線量放射線被曝の危険性の根拠と強弁する脱原発派の主張は、正に、結論ありきの/原発推進論批判の為にする「科学的言説を纏った非科学性」の顕現以外の何ものでもないのではないでしょうか。

すなわち、上記の理路を反芻するに、これまた前稿の転記とその補訂になりますが、

(甲)原子力発電をその政権下で半世紀以上推進してきた自民党政権と電力会社には何の落ち度もない。よって、(乙)福島原発事故がかくも長期に亘って続いており、その実損害、現実の被害が広範かつ重大になったこと/なり続けていることの責任は、一重に、事故に対処した/対処している民主党政権の無能に収斂する。畢竟、この社会を風評被害が蔓延する「放射能狂騒状態」に貶めかつその異常と不健全を放置している民主党政権は地獄に落ちろ。

(丙)東京電力には、原発事故に際して無限責任を電力会社に課すことの帰結として、「原子力損害の賠償に関する法律」が規定した、前代未聞の自然災害が引き起こした損害に関する免責規定が適用されるべきであり、而して、(丁)その免責によって減額されたとしても、到底、今般の原発事故の損害は東京電力の資金的体力では賄えるものではない以上、東京電力は粛々と法的処理に付され、解散されるべきだ。もっとも、(戊)東京電力は民主党政権の拙劣な事故対処に起因する損害部分に関しては遠慮なく民主党と国に賠償を求めてよいことは言うまでもない。民主党政権はこの部面でも地獄に落ちるがいい。

と、そう私は考えます。以下、ブログ友のteroさんにご教示いただいた情報の転記です。







チェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたのは放射能ではない

2012年01月05日(木)19時52分

1986年に当時のソ連で起こったチェルノブイリ原発事故から、昨年で25年。ロシア政府は、25年間の調査をまとめた報告書を出した。これはロシア語でしか発表されていないため、ほとんど知られていないが、重要な教訓を含んでいる。中川恵一氏(東大)の新著『放射線医が語る被ばくと発がんの真実』には、その結論部分が訳されているので紹介しよう。

事故で死亡したのは、原子炉の消火にあたって急性放射線障害になった作業員134人のうち28人。さらに22人が、2010年末までに死亡した。これをすべて含めても直接の死者は50人であり、これ以外に急性被曝による死者は確認されていない。

ただ放射能に汚染された牛乳を飲んだ子供が5000人にのぼり、そのうち9人が死亡した。これはソ連政府が事故を隠したため、汚染された牧草を食べた牛によって放射能が濃縮され、それを飲んだ子供が10シーベルト以上の高い放射線を浴びたことが原因である。福島の場合、すぐ出荷停止措置がとられたため、子供の被曝量は最大でも35ミリシーベルト。甲状腺癌の心配はない。

IAEA(国際原子力機関)は90年代に「4000人が慢性被曝で癌になる」と予想し、児玉龍彦氏(東大)は「チェルノブイリで膀胱癌が増えた」と国会で証言したが、これは間違いである。国連科学委員会(UNSCEAR)の調査の行なった被災者53万人の疫学調査でも、小児甲状腺癌以外の癌は増えていない。つまりチェルノブイリ事故の放射能による死者は、59人しか確認されていないのだ。

ところが事故後、ロシアの平均寿命は1994年には事故前と比べて7歳も下がり、特に高齢者の死亡率が上がった。一部の人々はこれを放射能の影響だと主張するが、死亡率の上昇は原発からの距離に関係なく、むしろ現地のウクライナより遠いロシアのほうが上昇率が大きい。また放射線の影響は癌以外には出ないが、事故後に増えたのは心疾患などのストレス性の病気だった。こうした結果をロシア政府は次のように分析している。

『事故処理にあたった最初の数年において見込み違いだったのは、以下のことである。[中略]何年にもわたってチェルノブイリ原発事故が及ぼす社会的・経済的および精神的な影響を何倍も大きくさせてしまったのは、基準値としてセシウム137の汚染度を過剰に厳重に設定した1990年代の法律によるところが大きい。この結果、自然放射線量より低い地域が法的に被災地に含まれることになってしまった。』






<続く>



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