◆『公式中心 英作文の基礎』
:岩田一男・評論社、新版・1972年7月 (絶版)
著者の岩田一男先生は数多の英単語と英作文の学習参考を世に送りだされていますが、岩田先生は単に学習参考書の著者というだけでなく、語源を中心に英語にまつわる楽しい故事来歴の知識の宝庫にして児童英語からビジネス英語まで、使える英語が身につく教材作りの手だれとして有名です。『公式中心 英作文の基礎』は高校生用の英作文の参考書として書かれたものですが、おそらく、学習参考書としてもビジネス英文作成の入門書としても中途半端であり岩田先生の代表作というわけではないと思います。しかし、私にとっては忘れられない一書ということもありここで取り上げさせていただきます。
「もう一世代前の本なんだ」。これがこの記事を書くために久しぶりに書架から本書を取り出した時の正直な感想でした。しかも、本書は版を重ねた旧版の改訂新版なのです! 1969年9月付けの「はしがき」にはこう書いてあります;本書が「長年世に迎えられ、版を重ねてきたことは、著者として喜ばしい。しかし、世の中はめまぐるしく変わる。そこで、こんど思い切って、大はばに書き改めることにした。(中略)とくに内容的にグッと新しいものにした」、と。そして、その「グッと新しいものになった内容」の例として、「ジャンボー、原子力潜水艦、ボーリング、アクァラング、高速道路、角材、電子計算機」が挙げられているのです(!)。2005年の現在では、「角材」や「電子計算機」は、最早、死語でしょうし、「ジャンボー」(旅客機)・「原子力潜水艦」・(ピンを倒すあの)「ボーリング」・「アクァラング」・「高速道路」などは今では郷愁漂う普通の概念になっていますよね。本当に「世の中はめまぐるしく変わる」ものです。
『公式中心 英作文の基礎』では、150項目の語法と文法事項を、基本文例→解説→英作文の例題の順で各々1頁で紹介してあります。内容は流石に名人岩田の作品らしく実践的で、実際に(初級レヴェルの)日本人がいざ英文を読んだり書いたりする際に躓くポイントから厳選されて収録されていると思います。ラフに分類してみると様々なイデオムや慣用表現を除けば全150項目の内訳数の上位は、第一位:準動詞(26)、第2位:比較表現(24)、第3位:話法の助動詞(12)、第4位:時制(11)、第5位:仮主語/仮目的語(11)、第6位:副詞節・仮定法(各7)と続きます(括弧内は項目数)。
著者の本書制作の意図は何だったか? それは、最初の100項目(全体の三分の二)が、仮主語/仮目的語(11)→時制(11)→話法の助動詞(12)→仮定法(7)→準動詞(26)→比較表現(24)と続くことでもわかる通り(文型・述語動詞の変化・品詞としての動詞の変化・最も使用頻度の高い比較表現を説明することで、)、多少ナチュラルでなかろうとも意味がなんとか通る英文をこの『公式中心 英作文の基礎』読者ができるだけ早く書けるようになって欲しいというのが著者の狙いだったと思われます。
著者の狙いのためか、英文を書けるようになるために重要だと著者が考えるポイントは項目を横断して何度も何度も何度もでてくる(例えば、最初の項目からくどいほど例題や解説の中で名詞節・関係節が登場する)。そう言えば、受動態に独立の項目が割り当てられていないことも同じ狙いの表れなのかもしれません。とにかく、例題の難易度はそう高くはなく、読者が途中でギブアップしない配慮も行きとどいていますし、流石、使える英語が身につく教材作りの名人の作だと言えると思います。
本書は受験参考書としては総ての出題範囲をカバーしているわけではなく、当時(70年代から80年代前半にかけて)出題頻度の高い、英文書き換え型の穴埋め問題に対応できない弱点があったと思います。しかも、文型論と可算/不可算名詞の区別、それに上でも言いましたように関係代名詞や受動態の知識を読者は既にそなえているという前提で解説は書かれている。更に、句前置詞や群動詞の収録は極めて乏しい(よって、上智大学型の問題や79年入試から始まった共通一次→センター試験向きでもない)。
要は、受験参考書としては情報量から見れば初級教材なのに内容は(高校生としては)上級向きという<無茶苦茶な教材>だったのではないかと思います。それにしては、少なくとも90年代半ばまでは街で少し大き目の書店では結構本書を見かけましたから、本書は満更売れていなかったのでもないのです。 ふみゅ? 誰が買っていたのかな?
本書は英文作成のスキルを身につけるためには隠れた名著だったと思います。実は、MBA留学を志望されるビジネスパーソンには出願準備中から私は本書『公式中心 英作文の基礎』を薦めていましたし、評判は上々でした。「出願書類を作成するのにも役に立ったけれど、GMATやTOEFLの文法問題の成績も上がったしリーディング問題も早く正確に読めるようになりました」、と。これらのポジティブな感想に力を得て、私は晴れて合格通知を取得された方々にも有名な"Harbrace College Handbook"(アメリカでも最も売れているライティングの自習可能なテキスト)とともに本書『公式中心 英作文の基礎』を薦めてきました。次の言葉を添えて・・・。
合格おめでとうございます。でもえーですか、みなさん。大学院留学は学位取得できな単なるお金と時間の無駄使いにすぎしまへんのです。そして、どうせ「スピーキング」ではアメリカ人学生には勝てへんのですから、日本人(在日韓国人の方を含む日本語の母語話者のこと。)がキックアウト喰らわんと学位取得できるかどうかは一重に提出するペーパにかかってますのやで。
で、みなさんの多くは、6月にサマースクールに出発するまで、数学や簿記/会計/財務諸表の苦手な方はそれらをキャッチアップしたい思てはるに違いない。それもやらなあかんです。けれど、ライティングの力をアップするのもこの残された2ヵ月で絶対やらなあかんことの一つです。いや、それは第一番目かもしらん。
少なくとも、留学準備でこの1年余り苦労をかけた分の親孝行/奥さん孝行/ご主人孝行の次にはライティングが重要や私は思います。合格おめでとうございました。これからも日本のために頑張ってください。次の戦争では日本がアメリカに勝てるかどうかは皆さんのこれからの5年間にかかっていると言っても満更嘘ではないと思いますから、と。
尚、大学院留学に関しての簡単なお話は下記の拙稿を参照してください。
ご意見をいただければ嬉しいです。
・英米の大学院留学準備の心得みたいなもの
https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/459373e67aa7a4be826125ceeea5c465
・大学院留学のTipsのさわりのようなもの <エッセー編>
https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d879ae5ed8c458f6e5f3f4f4225e3607
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