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2012年大統領選挙の火蓋切られる!-アメリカ大統領選挙における「副大統領」と「宗教」の意味

2012年01月04日 12時10分04秒 | 海外報道2012米国大統領選挙


昨日、2012年1月3日のアイオワ州の共和党党員集会(Iowa Republican caucuses)で今回2012年のアメリカ大統領選挙の火蓋が切られました。而して、共和党と民主党でその大統領候補が絞り込まれるプロセス(The series of presidential primary)においても、アメリカの大統領選挙の観戦Tipsの一つは「その「大統領候補の候補」が誰を「副大統領候補」に指名するだろうか」ということ、鴨。

その点、ここ40年程のことにせよ慣例によれば、現職の大統領と副大統領のコンビで今年11月6日、11月の第1月曜日の次の火曜日の<関ヶ原>に臨むことがほぼ確実な民主党オバマ陣営に比べて共和党側により「観戦の楽しみ」があるということでしょう。

前回2008年の「the tickets」(大統領候補-副大統領候補のコンビの名が書かれた投票名簿)は民主党の「オバマ-バイデン」に対する共和党の「マケイン-ペイリン」でした。それらの副大統領候補は、民主党が上院議員歴35年の党重鎮、他方、共和党が一期目のアラスカ州知事。


・2008年大統領選挙のthe two ticketsのプロフィール

 


正に、好対照な人選。好対照な二人ではありますが、しかし、それぞれ「自党の大統領候補にない資質を持っている」という点では共通していた。蓋し、この共通点は偶さかのことではなく、むしろ、アメリカ政治の一つの定番と言ってもよいものです。

なぜならば、(名目上は連邦上院議院の議長でもありますが)アメリカの副大統領の最重要な使命は大統領が欠けた際に大統領に昇格すること。逆に言えば、大統領が暗殺でもされない限り副大統領には特に定まった職務はない(★)。よって、副大統領候補の最大の役目は大統領選挙で自党の大統領候補を勝利させることだからです。

すなわち、大統領選挙で国民からより広範な支持を自党の「ticket」に獲得すべく、アメリカでは大統領と副大統領の候補は、政治的立場-出身地-支持基盤-エスニカルバックグラウンド-所属するキリスト教の宗派等々、多様な側面で異質な組み合わせになることも稀ではない。もって、両者併せて<集票の守備範囲>を広げる戦略は(20世紀中葉、大衆民主主義下の福祉国家にアメリカ社会が移行して以降の、就中、1870年に全人種の成人男子の普通選挙権が、また、1920年に女性の普通選挙権がアメリカ合衆国憲法修正15条と19条によって導入されて以降、)一種アメリカ政治の常道なのです。

例えば、東部出身のJFKとテキサスのジョンソン副大統領、(このticketで大統領選自体を戦ったわけではないのですが)カリフォルニアのやり手弁護士ニクソンと中西部の党人政治家フォード副大統領のタッグがその典型だったと言えるでしょう。而して、この点、前回2008年の「本番の大統領選挙:popular vote」の二つのticketsは共に、黒人の大統領候補とカトリックの白人副大統領候補、中道リベラルの老獪な大統領候補と保守系の若き女性副大統領候補というアメリカ政治史上で最も<守備範囲>の広いものになったと思います。

★註:大統領継承順位

連邦憲法2条1節6項および修正25条1節によれば、大統領が欠けた場合には副大統領が大統領に昇格する、大統領と副大統領がともに欠けた場合の大統領継承順位については法律でこれを定めると規定しています。而して、その「法律」、「大統領継承法:The Presidential Succession Act」(1947年)はそのa条1項で、

If, by reason of death, resignation, removal from office, inability, or failure to qualify, there is neither a President nor Vice President to discharge the powers and duties of the office of President, then the Speaker of the House of Representatives shall, upon his resignation as Speaker and as Representative in Congress, act as President.
(もし死亡、辞任、解任、執務不能などの理由により、大統領と副大統領の双方が大統領の責務を果たし権限を執行できない場合には、下院議長が、下院議長と下院議員を辞職したのちに、大統領としてこれを行う)

と規定しており、加之、下院議長以下の大統領継承順位も(具体的には、上院仮議長→国務長官→財務長官→国防長官→司法長官→・・・の如く)詳細に定められています。

実際、トルーマン大統領はフランクリン・ルーズベルト大統領の、ジョンソン大統領はJFKの、ニクソン大統領はアイゼンハワー大統領のそれぞれ副大統領でしたが、オバマ大統領までの歴代44代-43人の大統領の中で、副大統領経験者は14名の32.56%であり(大統領の暗殺・病死にともなう昇格は内9人)、副大統領のポジションは大統領になる上での主要なステップなの、鴨。

尚、日本ではその公職選挙法で、国会議員や知事などが他の公職の選挙に出馬するときは、立候補届け出が受理された段階でそれまでの公職を辞したとみなされ失職する旨定められていますが、アメリカでは連邦議員や知事はその職に留まったまま大統領選挙に出馬することが可能です(アメリカ大統領選挙のトリビア、および、アメリカ大統領選挙に直接関わるアメリカ合衆国憲法の条項に関しては下記拙稿と私が作成したYahoo検定をご参照いただければ嬉しいです)。閑話休題。


・来年はなんの年? アメリカ大統領選挙-観戦資格検定案内

 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60927803.html





大急ぎで補足。それは、福祉国家における行政権肥大化の趨勢、加之、現下のグローバル化の進行にともないホワイトハウスがかってないほど大量かつ多様なタスクを抱えるようになったことの裏面でしょうけれども、漸次、少なくともここ20年あまり(ゴア副大統領やチェイニー副大統領を想起すれば明らかなように)大統領選挙後も副大統領は単なる「名誉職」ではなくなってきているということ。

而して、必然的に、遅くとも90年代半ば以降は、副大統領候補と大統領候補は政治的傾向の近しいコンビ(ticket)にならざるをえなくなった。これは、(単一の大統領選挙の結果、1位の候補者が大統領に2位の候補者が副大統領になる仕組みの下で、往々にして)不倶戴天のライバルが正副大統領のコンビを形成していた連邦憲法の当初のルール(2条1節3項)が、大統領と副大統領を別々に選挙するよう1804年に改められ、政治上もより近しい同志の二人がa ticketを形成するようになったジェファーソン第3代大統領時代の憲法修正(修正12条)の趣旨から見れば、より憲法に沿った形に現状が変わってきたということなの、鴨。

蓋し、ならば、前回の両党のticketは表面的-形式的には90年代半ば以前のそれに戻った観さえあるのですが、それは様々な面でのアメリカ社会の分裂が更に昂進していることの証左なのかもしれません。両党ともに<守備範囲の拡大&既存の陣地の確保>を少しでも怠れば大統領選に勝ち残れないということでしょうから。


・歴代アメリカ大統領のキリスト教宗派

 


前回の大統領選挙。民主党のオバマ候補は自身に対する「外交経験不足」という批判に対抗すべく外交専門家バイデン氏を副大統領に指名した。そう噂されています。もちろんこれも間違いないでしょうが、オバマ候補は自身が打ち負かしたヒラリー・クリントン候補(否、クリントン家)の金城湯池的の票田であった白人労働者階級とスペイン語を話す中南米系グループの票を確保するために、白人労働者階級出身のカトリック、バイデン氏を副大統領に指名した側面もあると私は考えています。

その多くはいまだに低所得層に分類される中南米系の人々の大部分は敬虔なカトリックであり、前々回2004年の大統領選挙では、彼等にとってはより好ましいはずの民主党の経済雇用政策ではなくキリスト教倫理の堅持を唱えたブッシュ大統領の主張に共感して少なくないこのグループの票が共和党に流れたと言われていますから。

ならば、今回2012年の共和党大統領候補選挙でも、例えば、アメリカ社会では少数派の「モルモン教:末日聖徒イエス・キリスト教会」に属する、(下馬評では最有力とされる)中道右派のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事にとってはこの宗教の契機は他の候補にもまして重要になるの、鴨。と、そう私は考えます。

蓋し、例えば、下馬評通りロムニー氏が共和党の大統領候補の指名を確実にした段階では、現在、全米を席巻している保守主義の潮流、「茶話会運動:Tea Party movement」のマスコットになった感のある(この4年間で、降りかかる数多のスキャンダルをものともせず、否、麻薬・異性問題・身内びいき批判等々の攻撃を肥やしにしてコースト・ツー・コーストでの政治力を涵養してきた)ペイリン氏に代表される保守派の支持を得るために「福音派と親しい保守派の、かつ、南部/西部を地盤とする人物」を副大統領候補に指名することは確実であろうとも。


・2004年アメリカ大統領選挙の争点

 


2012年の大統領選挙戦が開幕したばかりでもあり昔話に終始しますけれども。前々回2004年の選挙では、全有権者の22%が「誰に投票するかを決める上で候補者の倫理観(倫理宗教的立場)を最も重視した」と回答しています。これは、宗教と倫理の問題が8年前の2004年のアメリカ社会においては経済・雇用(20%)やテロ対策(19%)よりも重要な問題だったということです。

畢竟、それがアメリカ社会。而して、サブプライムローンの破綻(2007年)、それに引き続いたリーマンショック(2008年)もあって不調が続くアメリカ経済の状況の裏面として、「the 99%」による徒花的な騒動に端的な如き経済不如意が加速させるアメリカ社会の閉塞感を打破するに足りる、理念と腕力が大統領に求められている今回の2012年は、2008年とは違い、寧ろ、2004年とパラレルに、宗教と倫理観が(すなわち、妊娠中絶と同性愛を巡る是非が)大統領選挙でも有権者の投票行動決定の重要な要因になる可能性は低くはないの、鴨。

そして、この予想が満更間違いではないとするならば、ドングリの背比べの共和党大統領候補のリストとは別に、その彼や彼女が共和党の大統領候補になって指名する副大統領候補は、繰り返しになりますが、福音派の保守系有権者と中南米系の敬虔なカトリックの有権者を狙い撃ちした人物にならざるを得ない。と、私はそう考えています。

б(≧◇≦)ノ ・・・楽しみ~♪
б(≧◇≦)ノ ・・・興味津々~♪

それに比べて、日本の

б(≧◇≦)ノ ・・・民主党政権の凄まじさと自民党現執行部の情けなさよ-!
б(≧◇≦)ノ ・・・世界の保守派はアメリカの「茶話会運動」と連帯すべき、鴨!






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