「ちょっと待て。カガリ、これって…」
珍しい位夏の日差し並みの笑顔全開だったアスランの表情が、一気に曇る。それに気づいたカガリも「あー・・・その・・・」と視線をそらし、かゆくもない頬をポリポリとかく。
アスランの視線はカガリ・・・の向こう。その後ろにいた。
「あ!驚いた?アスラン。やったね!サプライズ成功v」
「よかったですわね~キラ」
カガリの後ろから、夏の日差しより空恐ろしい眩しさ全開でハートをまき散らしている、あの最強・・・いや、最恐カップルだった。
アスランの瞼にらんらんと輝いていた『カガリと二人きりの砂浜』の風景は、割れたガラスのように見事に音を立てて砕け散り、眼前が暗転した。
「お、おい、大丈夫か?アスラン。」
ふらついたアスランに慌ててカガリが駆け寄る。
「か、カガリ・・・これは一体・・・」
溜息を多分に含んだアスランの震える声に、カガリは心から申し訳なさそうに告白した。
「すまん。その・・・マーナが・・・」
―――「その御旅行、どうしても参られたいとおっしゃるなら、お嬢様を野獣の群れから守るため、キラ様をご同行させていただきます!」
―――「えー!?キラを!?」
眉間に思いっきりしわを寄せたカガリに隙を与えず、マーナは更にたたみかけた。
―――「はい!男性とはいえキラ様はお嬢様と真のご兄妹でいらっしゃいますし、キラ様がご一緒なら、間違いを犯せるような真似はなさいません!キラ様はそれはもうお嬢様を、このマーナ同様大事に大事に思ってくださっております故。」
そうかな~・・・ただ単に小さい時から自分の後ろを追っかけてきている、ちょっとシスコンなだけだと思うのだが、『血縁』というところでは、マーナにとってはウズミ以外では一番信用たる人物・・・に相関図が出来上がっているようだ。
―――「ということで、ただ今よりキラ様に予定を申し上げたうえ、このマーナよりザラ家にそのこともお伝えさせていただきます。お嬢様は口出し無用。いいですね。」
―――「・・・でも・・・」
―――「い・い・で・す・ね!?」
―――「・・・はい・・・」
「―――ということなんだ・・・」
カガリがばつが悪そうに言うが、その後ろからキラが憎たらしいほどの笑顔でアスランを見下ろした。
「当然!ウズミさまやマーナさんの頼みとあれば、妹のために僕は何でもします、って言ってから で、3人だけだと2:1だと面白くないし、ラクスを呼んでみたんだ」
「えぇ、私もキラとカガリさん、アスランさんとご一緒なら是非とお返事しましたの」
「それで、折角だからアスランには「サプライズ」ってことで、ザラ家の皆さんにはアスランに内緒にしてもらっていたんだ。」
「「ねー」」
・・・『確信犯』だ。この二人、もし俺に先に同行を告げれば、俺がどうにかしてカガリと二人きりになるよう手を回すはず。絶対それはさせまいと、このシスコン男が、相手の上手をとるのが得意なラクスに相談し、それで土壇場で断れない状況を作ったのか・・・。
「・・・ごめんな、アスラン。私も今朝二人がうちに迎えに来るまで、事の詳細教えてもらえなかったんだ・・・」
シュンとするカガリ。
(だめだ。彼女の笑顔が見たくて、旅行に誘ったのに。カガリにはいつだって、真夏の太陽のような笑顔でいてほしい。)
「大丈夫だ。別荘には部屋数もあるし、君が心配することはないよ。」
柔らかな金糸をクシャっと撫ぜながら、アスランは微笑みかける。
(まぁいいさ。いくらでも彼女を独り占めする舞台は整えられる。)
アスランがカガリのために車のドアを開ける。その間にその有能な頭脳はカガリと二人きりになるシチュエーションを設定する計算が瞬時になされていた。
ただ『一つ』の誤算が生じることになろうとは・・・
***
車はあっという間に飛行場につき、ザラ家の自家用セスナが飛び立った。
「アスラン、そういえば詳しい旅先聞かなかったけど、どこら辺なんだ?」
「南の方の島なんだが、北側に町とリゾートホテルがあって、南側は別荘地なんだ。別荘地といっても、うちの別荘だけだけどね。」
カガリが大きな丸い瞳をキラキラと輝かせた。
「すごいな!うちも別荘一応あるけど、山の中だからな。キラなんか、一度来たことあるけど、蛇とクモとムカデが怖いからって、二度と来なくなったし。」
「カガリ!それは言わない約束でしょ!」
キラが慌てて止めに入ったが、騙してくれた罰だ。思いっきり笑ってやれ。
「クスクスクス・・・お前、蛇はともかくクモとムカデが怖いのか。」
「何だよ、アスランだって小さいときゴキブリ出たときすごい怖がっていたじゃん。」
「3歳ごろの話だろ。今は全く平気だ。」
「~~~~っ!」
ラクスが「その方が可愛いですわv」とキラをなだめる。カガリも一緒に笑って元気を取り戻したようだ。
だったらもう一つ、ここでプレゼントを。
「カガリ、下を見てごらん。」
「下? ・・・うわぁ・・・」
アスランが指をさした先には、まばゆいオーシャンブルーの海に、どこまでも真っ白な砂浜をたたえた島が、彼らを出迎えていた。
「すごい!すごい綺麗だ!見てみろよアスラン!!」
「あぁ。」
嬉しそうに歓声を上げるカガリ。その眩しいほど笑顔が、アスランにとっては一番の宝物だった。
***
セスナが一機降りられるほどの空港には、既に別荘から出迎えが来ていた。たいていの観光客は船で大きな島から渡って来る上、港のあるホテル群も遠方にあるため、別荘周辺は波の音だけの静けさだった。
「じゃぁさっそく着替えて浜辺に集合な!」
あてがわれた部屋にそれぞれが散らばる。流石に女性二人の支度は時間がかかるだろう。アスランはキラを連れて先にビーチで準備を始めた。
「あ~ラクスはどんな水着着てくるのかな~」
背伸びをしながらのんびりと呟くキラの発言内容に、アスランの持つクーラーバックのペットボトルが「ゴトリ」と音を立てた。
「やだな~アスラン。何変な想像してるのさ。」
「べ、別に変な想像なんて―――」
「だって、君だって気になるでしょ?カガリの水着姿v」
<ドキン!>
「あれ?顔真っ赤だけど大丈夫?」
「大丈夫だ。いい加減にさぼっていないで、お前も手伝え――」
「お待たせしました。」
その時柔らかな声がかかった。
「あ、ラクス、可愛いよ、その水着!」
ピンクのポニーテールに似合う、淡い色のマリンブルーのワンピース。フリルが多分に付いた胸元に薄いレースを羽織った着こなしは流石はラクス、よく似合う。
キラに褒められ気をよくしたのか、ラクスは笑顔で背後に声をかけた。
「ありがとうございますv さぁ、カガリさんも。」
「う・・・うん・・・」
ラクスの背に隠れて体はおろか顔すら隠していたカガリが、ラクスに促されてようやくちょこんと顔を出す、と―――
「うわ!カガリ、ちょっとソレ大胆!」
フレイが選んでくれた、あのバンドゥのビキニだ。細く長い脚にくびれた腰、そしてバストの良さが、あの試着した時以上にカガリのプロポーションの良さを際立たせた。
普段が普段(プロポーションなど一切構わない服しか着ない)だけに、ラクス以上に女性美を意識させてしまう。
キラが歓声とも驚きともとれる大声に、カガリがたちまち赤くなった。
(で、でも、これ着たら、アスランは―――)
「あ、あ、あの…これ…」
勇気を出して俯いていた視線を彼に注げば・・・
(あれ・・・)
最愛の彼は、喜ぶどころかカガリに背を向けて、一言も声を発しなかった。
・・・(続く、かもよ。)
***
台風一過で暑かった今日ですが、こちらも熱く!熱く!―――っ行きたいところなのに、このヘタレは何をやっているんだか・・・。
そんなかもしたは今日で夏休みが終わりです。
明日から仕事かぁ・・・はぁ(溜息)
珍しい位夏の日差し並みの笑顔全開だったアスランの表情が、一気に曇る。それに気づいたカガリも「あー・・・その・・・」と視線をそらし、かゆくもない頬をポリポリとかく。
アスランの視線はカガリ・・・の向こう。その後ろにいた。
「あ!驚いた?アスラン。やったね!サプライズ成功v」
「よかったですわね~キラ」
カガリの後ろから、夏の日差しより空恐ろしい眩しさ全開でハートをまき散らしている、あの最強・・・いや、最恐カップルだった。
アスランの瞼にらんらんと輝いていた『カガリと二人きりの砂浜』の風景は、割れたガラスのように見事に音を立てて砕け散り、眼前が暗転した。
「お、おい、大丈夫か?アスラン。」
ふらついたアスランに慌ててカガリが駆け寄る。
「か、カガリ・・・これは一体・・・」
溜息を多分に含んだアスランの震える声に、カガリは心から申し訳なさそうに告白した。
「すまん。その・・・マーナが・・・」
―――「その御旅行、どうしても参られたいとおっしゃるなら、お嬢様を野獣の群れから守るため、キラ様をご同行させていただきます!」
―――「えー!?キラを!?」
眉間に思いっきりしわを寄せたカガリに隙を与えず、マーナは更にたたみかけた。
―――「はい!男性とはいえキラ様はお嬢様と真のご兄妹でいらっしゃいますし、キラ様がご一緒なら、間違いを犯せるような真似はなさいません!キラ様はそれはもうお嬢様を、このマーナ同様大事に大事に思ってくださっております故。」
そうかな~・・・ただ単に小さい時から自分の後ろを追っかけてきている、ちょっとシスコンなだけだと思うのだが、『血縁』というところでは、マーナにとってはウズミ以外では一番信用たる人物・・・に相関図が出来上がっているようだ。
―――「ということで、ただ今よりキラ様に予定を申し上げたうえ、このマーナよりザラ家にそのこともお伝えさせていただきます。お嬢様は口出し無用。いいですね。」
―――「・・・でも・・・」
―――「い・い・で・す・ね!?」
―――「・・・はい・・・」
「―――ということなんだ・・・」
カガリがばつが悪そうに言うが、その後ろからキラが憎たらしいほどの笑顔でアスランを見下ろした。
「当然!ウズミさまやマーナさんの頼みとあれば、妹のために僕は何でもします、って言ってから で、3人だけだと2:1だと面白くないし、ラクスを呼んでみたんだ」
「えぇ、私もキラとカガリさん、アスランさんとご一緒なら是非とお返事しましたの」
「それで、折角だからアスランには「サプライズ」ってことで、ザラ家の皆さんにはアスランに内緒にしてもらっていたんだ。」
「「ねー」」
・・・『確信犯』だ。この二人、もし俺に先に同行を告げれば、俺がどうにかしてカガリと二人きりになるよう手を回すはず。絶対それはさせまいと、このシスコン男が、相手の上手をとるのが得意なラクスに相談し、それで土壇場で断れない状況を作ったのか・・・。
「・・・ごめんな、アスラン。私も今朝二人がうちに迎えに来るまで、事の詳細教えてもらえなかったんだ・・・」
シュンとするカガリ。
(だめだ。彼女の笑顔が見たくて、旅行に誘ったのに。カガリにはいつだって、真夏の太陽のような笑顔でいてほしい。)
「大丈夫だ。別荘には部屋数もあるし、君が心配することはないよ。」
柔らかな金糸をクシャっと撫ぜながら、アスランは微笑みかける。
(まぁいいさ。いくらでも彼女を独り占めする舞台は整えられる。)
アスランがカガリのために車のドアを開ける。その間にその有能な頭脳はカガリと二人きりになるシチュエーションを設定する計算が瞬時になされていた。
ただ『一つ』の誤算が生じることになろうとは・・・
***
車はあっという間に飛行場につき、ザラ家の自家用セスナが飛び立った。
「アスラン、そういえば詳しい旅先聞かなかったけど、どこら辺なんだ?」
「南の方の島なんだが、北側に町とリゾートホテルがあって、南側は別荘地なんだ。別荘地といっても、うちの別荘だけだけどね。」
カガリが大きな丸い瞳をキラキラと輝かせた。
「すごいな!うちも別荘一応あるけど、山の中だからな。キラなんか、一度来たことあるけど、蛇とクモとムカデが怖いからって、二度と来なくなったし。」
「カガリ!それは言わない約束でしょ!」
キラが慌てて止めに入ったが、騙してくれた罰だ。思いっきり笑ってやれ。
「クスクスクス・・・お前、蛇はともかくクモとムカデが怖いのか。」
「何だよ、アスランだって小さいときゴキブリ出たときすごい怖がっていたじゃん。」
「3歳ごろの話だろ。今は全く平気だ。」
「~~~~っ!」
ラクスが「その方が可愛いですわv」とキラをなだめる。カガリも一緒に笑って元気を取り戻したようだ。
だったらもう一つ、ここでプレゼントを。
「カガリ、下を見てごらん。」
「下? ・・・うわぁ・・・」
アスランが指をさした先には、まばゆいオーシャンブルーの海に、どこまでも真っ白な砂浜をたたえた島が、彼らを出迎えていた。
「すごい!すごい綺麗だ!見てみろよアスラン!!」
「あぁ。」
嬉しそうに歓声を上げるカガリ。その眩しいほど笑顔が、アスランにとっては一番の宝物だった。
***
セスナが一機降りられるほどの空港には、既に別荘から出迎えが来ていた。たいていの観光客は船で大きな島から渡って来る上、港のあるホテル群も遠方にあるため、別荘周辺は波の音だけの静けさだった。
「じゃぁさっそく着替えて浜辺に集合な!」
あてがわれた部屋にそれぞれが散らばる。流石に女性二人の支度は時間がかかるだろう。アスランはキラを連れて先にビーチで準備を始めた。
「あ~ラクスはどんな水着着てくるのかな~」
背伸びをしながらのんびりと呟くキラの発言内容に、アスランの持つクーラーバックのペットボトルが「ゴトリ」と音を立てた。
「やだな~アスラン。何変な想像してるのさ。」
「べ、別に変な想像なんて―――」
「だって、君だって気になるでしょ?カガリの水着姿v」
<ドキン!>
「あれ?顔真っ赤だけど大丈夫?」
「大丈夫だ。いい加減にさぼっていないで、お前も手伝え――」
「お待たせしました。」
その時柔らかな声がかかった。
「あ、ラクス、可愛いよ、その水着!」
ピンクのポニーテールに似合う、淡い色のマリンブルーのワンピース。フリルが多分に付いた胸元に薄いレースを羽織った着こなしは流石はラクス、よく似合う。
キラに褒められ気をよくしたのか、ラクスは笑顔で背後に声をかけた。
「ありがとうございますv さぁ、カガリさんも。」
「う・・・うん・・・」
ラクスの背に隠れて体はおろか顔すら隠していたカガリが、ラクスに促されてようやくちょこんと顔を出す、と―――
「うわ!カガリ、ちょっとソレ大胆!」
フレイが選んでくれた、あのバンドゥのビキニだ。細く長い脚にくびれた腰、そしてバストの良さが、あの試着した時以上にカガリのプロポーションの良さを際立たせた。
普段が普段(プロポーションなど一切構わない服しか着ない)だけに、ラクス以上に女性美を意識させてしまう。
キラが歓声とも驚きともとれる大声に、カガリがたちまち赤くなった。
(で、でも、これ着たら、アスランは―――)
「あ、あ、あの…これ…」
勇気を出して俯いていた視線を彼に注げば・・・
(あれ・・・)
最愛の彼は、喜ぶどころかカガリに背を向けて、一言も声を発しなかった。
・・・(続く、かもよ。)
***
台風一過で暑かった今日ですが、こちらも熱く!熱く!―――っ行きたいところなのに、このヘタレは何をやっているんだか・・・。
そんなかもしたは今日で夏休みが終わりです。
明日から仕事かぁ・・・はぁ(溜息)