さざ波の優しい音が、普段の都会の喧騒からカガリを別世界へといざなってくれる。
オーシャンビューのテラスからは、色とりどりのネオンの代わりに淡い光をたたえた天の川が、漆黒の夜空をたゆたい流れている。
こんな夜には物思いにふけるのはぴったりだ。
「はぁ・・・」
ため息をついてシャープペンシルを転がすカガリに、柔らかな声がかかった。
「いかがされましたか?カガリさん。何かわからないところがございましたか?」
声とたがわぬ優しい笑みをたたえながら、ラクスは手慣れたように薫り高いアールグレイを二つのカップに注いだ。
別荘にバカンスに行くと決めた際の条件の一つに『夜は受験勉強』という目的も掲げていた。ただ遊びに行く、だけでは流石に寛容な養父であっても見逃してくれそうにない。なんといっても受験生なのだ。静かで誰にも邪魔されない、勉強にはうってつけの環境・・・それが今回の旅行を認めてくれた一因でもあると思う。
最高の環境で、最高のパートナーと、励ましあいながらわからないところを教えあって―――
だが、隣で微笑んでくれるはずの彼が、今ここにはいない。
代わりにカガリを訪ねてきてくれたのは、ラクスだった。
「うん・・・ちょっと、な・・・」
指先だけが終始落ち着かなく、トントンとノートの端を叩いている。ラクスはカガリの向かいから紅茶カップを差し出した。
「フフv かなりの難問のようですわね。カガリさんをここまで手こずらせるなんて。」
ラクスがにっこりと笑う。開いた数学の問題集は、真っ白なままだった。
カガリが国立大学を目指していることはラクスも知っている。そのカガリが問題集の基礎問題だけで躓くわけはない。ラクスのいう『問題』は別の意味を示していることを、カガリは暗に感じ取った。
「どうしてかな・・・私、こんなにアイツを怒らせるようなこと、何かしちゃったのかな? だったらちゃんと謝らなきゃ、って思っているんだけど、それが何かわからなくって・・・」
本当はみんなが笑顔で楽しいはずだった。なのになぜこんなに気まずくなってしまったのだろう・・・
思えば初めてだ。恋人になってから、アスランの方から、こんなによそよそしくされたことなんて。
あの穏やかな光をたたえる碧がスッと外される。それがこんなに怖くて苦しいなんて。
「どうしよう・・・ラクス・・・」
琥珀の瞳にたちまち海が満ちる。
「あらあら。」俯くカガリにラクスはそっと囁いた。
「カガリさん、アスランは怒っているのではありませんわ。」
「じゃあ何で、私のこと、避けるようにするのかな?」
「それは・・・」
ここで回答を言ってあげたいのは山々だ。だが、それをラクスが答えてしまったら、カガリとアスランの関係の成長はない。二人で悩んで、二人で答えを出さなければ、何の解決にもならないのだ。
「・・・じゃぁ、カガリさんに、ヒントを差し上げますわ。」
「っ!ホントか!?」
カガリがテーブルを両手で<バン!>と叩き、ラクスに向かって身を乗り出す。紅茶の水面がその衝撃に波だった。
「はい。では、明日は私の言うとおりにしていただけますか?」
ティーソーサーに優雅にカップを置き、ラクスは再びにっこりとほほ笑んだ。
***
「―――で、君は一体何やっているのさ。」
その頃アスランの部屋に乗り込んだキラは、仏頂面で各個室毎備え付けられている冷蔵庫から、勝手にイオン飲料を取り出した。
「確かに、君に内緒で勝手に乗り込んできた僕らのことを怒っているのなら、そりゃちょっと調子に乗りすぎたな、って謝るよ。でもカガリは知らなかったんだから、その不満をカガリにぶつけるのは筋違いってもんでしょ?」
キラに詰問される形でベッドの端に座り込んでいるアスランは、重々しく口を開いた。
「別に俺は怒っていない。確かにお前達のことは少々気にはなったが。」
ただ、ここでキラとラクスに文句を言えば、それは度量の狭い男だと公言しているようなものだ。特にキラはカガリの唯一の血縁だし、ラクスはカガリの相談相手にもなってくれている(※『V&B』参照)。そんな二人を糾弾するようなことは、かえってカガリの好感度を下げるだけだ。そんな愚かな真似はしない。
「じゃぁなんで、あんなにカガリのこと避けるようにするわけ? あんなに自分で追いかけておいて、僕が大事な妹を必死に守ろうとしている横から見事にさらっていったくせにさ。何にしてもカガリを泣かせるようなことなんてしたら、僕は一生君を恨むからね。」
子どものころは、俺だけでなく自分だってカガリの後を追いかけていたくせに。『血のつながり』という錦の御旗を持っているからか、キラはカガリがらみのことになると、容赦なく上から目線で攻撃してくる。キラとの喧嘩の原因は大体がカガリがらみのことだが、今はカガリは俺の大事な恋人だ。ひいてはもう結婚だってできる年齢だ。正々堂々と保護者(どちらかというと実際は保護されている方)気取りの兄から彼女を奪い取ることができる。いつまでも優位に立たせるわけにはいかない。
「泣かせるつもりはない!これからも俺はカガリを守る―――」
「じゃぁ、なんで今泣かせているのさ。」
たたみかけるようなキラの言葉。視線にも鋭さが増し、友人同士のじゃれあいではない本気であることを雄弁に伝えている。
「君じゃなくたって、カガリを守れる男はいるもん。カガリは可愛いよ。確かにちょっと気は強くて無理するところあるけど、素直だし裏がないし。顔も可愛いし、しかも今日の水着姿見てびっくりしたくらいプロポーションだって―――」
「ゴホッ!」
何も口にしていないのにアスランが咽た。咽ただけじゃない。何だか急に顔が赤くなっている。
(・・・まさか・・・)
キラは口調を落として囁くように言った。
「・・・まさか君・・・カガリの水着姿が正面切って見れなくて、そっぽ向いてたんじゃ・・・」
<ビクッ!>
キラは目をむいた。見た目にもわかるほど、アスランの身体が震えたからだ。
(まさか、あのアスランが女性の水着姿に動揺していた・・・!?!?)
「アスラン、マジ!? そんなに君って初心だったの!?そんなでカガリと付き合うとかしてたの!?」
「ち、違うっ!!別に水着姿の女性なんか見ても、何とも思わない!」
実際にそうだ。海外暮らしの長いアスランは養父の仕事に付き合って、海外の避暑地に何度も出かけたことがある。その時に水着、しかも過激なものや、場所によってはトップレスしている女性がいたこともある。だが、全くそれに対し関心が働くことはなかった。ただ一人、カガリ以外は―――
深くため息をついてアスランは、澱のようにたまっていたものを、キラに吐き出した。
「・・・まさかカガリがあんなに女性らしいというか、その・・・水着を着て来るなんて、思いもよらなくって・・・」
「それを言うなら、カガリは結構普段着だって露出多いでしょ。」
「そうなんだが・・・」
そう。確かに夏場のデートではTシャツに短パンといった、肌が見える軽装が多かった。しかし、そのボーイッシュな姿に見慣れ過ぎて、今日のような『女性性』を意識させられたことはなかったのだ。
すらりとした手足に服の上からは全く想像もしえなかった、豊かなバスト。細くくびれた腰。なだらかな張りのある体躯。そして、すべらかな肌。
「カガリのことだから、「スクール水着で十分だ」とか言いながら来ると思い込んでいたんで。あまりにも驚いて、どうしていいか・・・」
俯き加減で朴訥と話すアスランに、キラは内心感心していた。
(・・・流石は(認めたくないけど)彼氏。カガリの行動パターンはよくわかっているんだ。でも―――)
「まぁ、確かにカガリだったらどこにいっても『スク水』着そうだけどさ。大体カガリの裸だって見たことあるでしょ?一緒にお風呂入った仲じゃない。」
「馬鹿なこと言うなっ!!アレは3歳ごろの話だろっ!」
アスランが慌てて立ち上がった。養護施設の入浴なら、確かに学童児ではない子供は男女関わらず集団で入った。カガリは・・・まぁ、日焼けし放題の肌に擦り傷・アザだらけだった気がする。
だからこそ、余計に今日の姿は堪えたのだ。幼虫が美しい蝶に生まれ変わったように。
キラはため息交じりに言った。
「でもさ、だからって顔くらいは見て話せばいいじゃん。体見ないで。わざわざ背まで向けてって、露骨すぎ――・・・・・・もしかしてさ、君・・・」
「何だ?」
「その、カガリの姿見て『勃っちゃった』ってヤツ?」
<ビクッ!!>
更に10m離れた先からでも見て取れるであろうアスランの動揺ぶりに、キラは今度はお腹を抱えて笑い出した。
「アスラン、君、『男の子』過ぎ(笑)」
「笑うなっ!! カガリにそんなところを見つかったら、俺が彼女によこしまな妄想を抱いていると思われるだろうが!」
「だけどさ―――」
笑いが収まらないキラだったが、アスランが本気で怒る、というより悩んでいることを察し、流石に笑いを収めていった。ここからは同じ「男同士」の悩みだ。
「確かに『大事な相手』には見られたくないよね。健全な男子ならフツーにあり得ることだけど、女の子にはわからないだろうし。」
真っ赤になって俯いているアスラン・ザラ。エターナル学院きっての王子様だが、実際はどこにでもいる普通の男子なんだ。みんな憧れすぎて近づき難いところを、その壁をぶち壊してくれたのは誰でもないカガリだ。そのカガリなんだから、アスランの素の姿だって受け入れてくれると思うけどな。
キラはふと思いながら、幼馴染の肩を叩いた。
「大丈夫。カガリはそんなことで怒ったりしないはずだよ。それは君が一番よくわかっていることでしょ?」
「・・・あぁ。」
アスランの口元が少し緩んだ気がする。
友人が自信を取り戻してくれたみたいでよかった。それと同時に愛する妹のことを、こんなに大事に思っていてくれたことを感謝したが、それは心の奥にしまい、結婚するまでは(いや、してからでも)厳しい目で見ようと思うキラだった。
・・・(9月までに終わりたく、続く。)
***
え~水着一枚で大騒ぎですよ、この子たち(笑)
いえ、普通にキャッキャ💛イチャイチャだったら、他のアスカガ作家さんの作品がみんな素晴らしすぎるので、そちらでなごませていただいているので、かもしたは変なベクトル方面で青春の甘酸っぱい一面(苦笑)を掘り下げてみましたv
キラ様の問題発言は『大人部屋』にはぎりぎり入らないと思いますので、見逃してくださいませ<(__)>
オーシャンビューのテラスからは、色とりどりのネオンの代わりに淡い光をたたえた天の川が、漆黒の夜空をたゆたい流れている。
こんな夜には物思いにふけるのはぴったりだ。
「はぁ・・・」
ため息をついてシャープペンシルを転がすカガリに、柔らかな声がかかった。
「いかがされましたか?カガリさん。何かわからないところがございましたか?」
声とたがわぬ優しい笑みをたたえながら、ラクスは手慣れたように薫り高いアールグレイを二つのカップに注いだ。
別荘にバカンスに行くと決めた際の条件の一つに『夜は受験勉強』という目的も掲げていた。ただ遊びに行く、だけでは流石に寛容な養父であっても見逃してくれそうにない。なんといっても受験生なのだ。静かで誰にも邪魔されない、勉強にはうってつけの環境・・・それが今回の旅行を認めてくれた一因でもあると思う。
最高の環境で、最高のパートナーと、励ましあいながらわからないところを教えあって―――
だが、隣で微笑んでくれるはずの彼が、今ここにはいない。
代わりにカガリを訪ねてきてくれたのは、ラクスだった。
「うん・・・ちょっと、な・・・」
指先だけが終始落ち着かなく、トントンとノートの端を叩いている。ラクスはカガリの向かいから紅茶カップを差し出した。
「フフv かなりの難問のようですわね。カガリさんをここまで手こずらせるなんて。」
ラクスがにっこりと笑う。開いた数学の問題集は、真っ白なままだった。
カガリが国立大学を目指していることはラクスも知っている。そのカガリが問題集の基礎問題だけで躓くわけはない。ラクスのいう『問題』は別の意味を示していることを、カガリは暗に感じ取った。
「どうしてかな・・・私、こんなにアイツを怒らせるようなこと、何かしちゃったのかな? だったらちゃんと謝らなきゃ、って思っているんだけど、それが何かわからなくって・・・」
本当はみんなが笑顔で楽しいはずだった。なのになぜこんなに気まずくなってしまったのだろう・・・
思えば初めてだ。恋人になってから、アスランの方から、こんなによそよそしくされたことなんて。
あの穏やかな光をたたえる碧がスッと外される。それがこんなに怖くて苦しいなんて。
「どうしよう・・・ラクス・・・」
琥珀の瞳にたちまち海が満ちる。
「あらあら。」俯くカガリにラクスはそっと囁いた。
「カガリさん、アスランは怒っているのではありませんわ。」
「じゃあ何で、私のこと、避けるようにするのかな?」
「それは・・・」
ここで回答を言ってあげたいのは山々だ。だが、それをラクスが答えてしまったら、カガリとアスランの関係の成長はない。二人で悩んで、二人で答えを出さなければ、何の解決にもならないのだ。
「・・・じゃぁ、カガリさんに、ヒントを差し上げますわ。」
「っ!ホントか!?」
カガリがテーブルを両手で<バン!>と叩き、ラクスに向かって身を乗り出す。紅茶の水面がその衝撃に波だった。
「はい。では、明日は私の言うとおりにしていただけますか?」
ティーソーサーに優雅にカップを置き、ラクスは再びにっこりとほほ笑んだ。
***
「―――で、君は一体何やっているのさ。」
その頃アスランの部屋に乗り込んだキラは、仏頂面で各個室毎備え付けられている冷蔵庫から、勝手にイオン飲料を取り出した。
「確かに、君に内緒で勝手に乗り込んできた僕らのことを怒っているのなら、そりゃちょっと調子に乗りすぎたな、って謝るよ。でもカガリは知らなかったんだから、その不満をカガリにぶつけるのは筋違いってもんでしょ?」
キラに詰問される形でベッドの端に座り込んでいるアスランは、重々しく口を開いた。
「別に俺は怒っていない。確かにお前達のことは少々気にはなったが。」
ただ、ここでキラとラクスに文句を言えば、それは度量の狭い男だと公言しているようなものだ。特にキラはカガリの唯一の血縁だし、ラクスはカガリの相談相手にもなってくれている(※『V&B』参照)。そんな二人を糾弾するようなことは、かえってカガリの好感度を下げるだけだ。そんな愚かな真似はしない。
「じゃぁなんで、あんなにカガリのこと避けるようにするわけ? あんなに自分で追いかけておいて、僕が大事な妹を必死に守ろうとしている横から見事にさらっていったくせにさ。何にしてもカガリを泣かせるようなことなんてしたら、僕は一生君を恨むからね。」
子どものころは、俺だけでなく自分だってカガリの後を追いかけていたくせに。『血のつながり』という錦の御旗を持っているからか、キラはカガリがらみのことになると、容赦なく上から目線で攻撃してくる。キラとの喧嘩の原因は大体がカガリがらみのことだが、今はカガリは俺の大事な恋人だ。ひいてはもう結婚だってできる年齢だ。正々堂々と保護者(どちらかというと実際は保護されている方)気取りの兄から彼女を奪い取ることができる。いつまでも優位に立たせるわけにはいかない。
「泣かせるつもりはない!これからも俺はカガリを守る―――」
「じゃぁ、なんで今泣かせているのさ。」
たたみかけるようなキラの言葉。視線にも鋭さが増し、友人同士のじゃれあいではない本気であることを雄弁に伝えている。
「君じゃなくたって、カガリを守れる男はいるもん。カガリは可愛いよ。確かにちょっと気は強くて無理するところあるけど、素直だし裏がないし。顔も可愛いし、しかも今日の水着姿見てびっくりしたくらいプロポーションだって―――」
「ゴホッ!」
何も口にしていないのにアスランが咽た。咽ただけじゃない。何だか急に顔が赤くなっている。
(・・・まさか・・・)
キラは口調を落として囁くように言った。
「・・・まさか君・・・カガリの水着姿が正面切って見れなくて、そっぽ向いてたんじゃ・・・」
<ビクッ!>
キラは目をむいた。見た目にもわかるほど、アスランの身体が震えたからだ。
(まさか、あのアスランが女性の水着姿に動揺していた・・・!?!?)
「アスラン、マジ!? そんなに君って初心だったの!?そんなでカガリと付き合うとかしてたの!?」
「ち、違うっ!!別に水着姿の女性なんか見ても、何とも思わない!」
実際にそうだ。海外暮らしの長いアスランは養父の仕事に付き合って、海外の避暑地に何度も出かけたことがある。その時に水着、しかも過激なものや、場所によってはトップレスしている女性がいたこともある。だが、全くそれに対し関心が働くことはなかった。ただ一人、カガリ以外は―――
深くため息をついてアスランは、澱のようにたまっていたものを、キラに吐き出した。
「・・・まさかカガリがあんなに女性らしいというか、その・・・水着を着て来るなんて、思いもよらなくって・・・」
「それを言うなら、カガリは結構普段着だって露出多いでしょ。」
「そうなんだが・・・」
そう。確かに夏場のデートではTシャツに短パンといった、肌が見える軽装が多かった。しかし、そのボーイッシュな姿に見慣れ過ぎて、今日のような『女性性』を意識させられたことはなかったのだ。
すらりとした手足に服の上からは全く想像もしえなかった、豊かなバスト。細くくびれた腰。なだらかな張りのある体躯。そして、すべらかな肌。
「カガリのことだから、「スクール水着で十分だ」とか言いながら来ると思い込んでいたんで。あまりにも驚いて、どうしていいか・・・」
俯き加減で朴訥と話すアスランに、キラは内心感心していた。
(・・・流石は(認めたくないけど)彼氏。カガリの行動パターンはよくわかっているんだ。でも―――)
「まぁ、確かにカガリだったらどこにいっても『スク水』着そうだけどさ。大体カガリの裸だって見たことあるでしょ?一緒にお風呂入った仲じゃない。」
「馬鹿なこと言うなっ!!アレは3歳ごろの話だろっ!」
アスランが慌てて立ち上がった。養護施設の入浴なら、確かに学童児ではない子供は男女関わらず集団で入った。カガリは・・・まぁ、日焼けし放題の肌に擦り傷・アザだらけだった気がする。
だからこそ、余計に今日の姿は堪えたのだ。幼虫が美しい蝶に生まれ変わったように。
キラはため息交じりに言った。
「でもさ、だからって顔くらいは見て話せばいいじゃん。体見ないで。わざわざ背まで向けてって、露骨すぎ――・・・・・・もしかしてさ、君・・・」
「何だ?」
「その、カガリの姿見て『勃っちゃった』ってヤツ?」
<ビクッ!!>
更に10m離れた先からでも見て取れるであろうアスランの動揺ぶりに、キラは今度はお腹を抱えて笑い出した。
「アスラン、君、『男の子』過ぎ(笑)」
「笑うなっ!! カガリにそんなところを見つかったら、俺が彼女によこしまな妄想を抱いていると思われるだろうが!」
「だけどさ―――」
笑いが収まらないキラだったが、アスランが本気で怒る、というより悩んでいることを察し、流石に笑いを収めていった。ここからは同じ「男同士」の悩みだ。
「確かに『大事な相手』には見られたくないよね。健全な男子ならフツーにあり得ることだけど、女の子にはわからないだろうし。」
真っ赤になって俯いているアスラン・ザラ。エターナル学院きっての王子様だが、実際はどこにでもいる普通の男子なんだ。みんな憧れすぎて近づき難いところを、その壁をぶち壊してくれたのは誰でもないカガリだ。そのカガリなんだから、アスランの素の姿だって受け入れてくれると思うけどな。
キラはふと思いながら、幼馴染の肩を叩いた。
「大丈夫。カガリはそんなことで怒ったりしないはずだよ。それは君が一番よくわかっていることでしょ?」
「・・・あぁ。」
アスランの口元が少し緩んだ気がする。
友人が自信を取り戻してくれたみたいでよかった。それと同時に愛する妹のことを、こんなに大事に思っていてくれたことを感謝したが、それは心の奥にしまい、結婚するまでは(いや、してからでも)厳しい目で見ようと思うキラだった。
・・・(9月までに終わりたく、続く。)
***
え~水着一枚で大騒ぎですよ、この子たち(笑)
いえ、普通にキャッキャ💛イチャイチャだったら、他のアスカガ作家さんの作品がみんな素晴らしすぎるので、そちらでなごませていただいているので、かもしたは変なベクトル方面で青春の甘酸っぱい一面(苦笑)を掘り下げてみましたv
キラ様の問題発言は『大人部屋』にはぎりぎり入らないと思いますので、見逃してくださいませ<(__)>