うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

cheekはいらない(前編)

2023年12月09日 22時44分22秒 | ノベルズ

「”ファウンデーション”? もちろん知っているさ。今日の閣議の議題に上がる国だろ?」
カガリが鏡の向こうから鋭い眼光で自分を見やるルナマリアに、負けじと強くでれば、
「違いますよ、代表。ファウンデーションじゃなく『ファンデーション』!『ウ』を消してください!」
同じく鏡の向こうにいるルナマリアが、更に”これでもか!”と言わんばかりにカガリの頭の上から発破をかける。

二度の大戦が終結を迎えるも、火種はまだまだ各所に燻っている。
その為、中立国オーブの代表としてカガリが提案発起し、その火種が大火を産まないよう、いわゆる火消しをしてまわる機関―――『コンパス』が発足した。
国を、人種を問わず結成されたこのチームは、普段であればモニター越しに会議を行い、定期的な連絡や情報交換を行っているのだが、モニターではできない…政治家らしく対面してこそ口にできる事柄も多いため、各所代表たちが集い、直接その場で閣議を行う機会も、数こそ少ないがこうして実施される。

今期の会議開催国はオーブ。
その為、当然ながら『コンパス』からも総帥がやってくる。
会議がいよいよ開催されるその日の朝、アスハ邸にいたカガリの元に、いきなり現れた女性が二人。
ルナマリアは護衛任務に就いている。とすれば当然護衛される重要人物がいるわけで。
「そんな化粧なんていいから…ルナを何とかしてくれよ、ラクス~」
「そうはまいりませんわ。カガリさん♪」
ドレッサーの前に無理やり座らせられたカガリが縋る思いで助けを呼ぶが、ニコニコとあの柔らかい笑顔を見せながら、鏡の向こうのラクスもやはり、カガリの両肩に柔らかく手を添えて押える。優しいのに、有無を言わさぬ圧があり、カガリは思わず気圧されてしまった。

―――それは前触れもなくやってきたのだ。
彼女たちとは会議場で対面すると、当たり前のように思っていたカガリが、私室で支度を整えて、いよいよ向かおうか―——と立ち上がろうとしたところで<コンコン>と2回のノックの後に、二人が乱入(!)してきたのだ。
「ラクス!?ルナマリアまで。何でいきなりこんな急に――」
驚きのあまり言葉が出ないカガリに、二人は顔を見合わせニッコリ♥とほほ笑む、とするや否や、カガリの元に猛然と近づき、ドレッサーの前に無理やり座り直させた。
「代表、まさか今日に限って、そのメイクで会議に出席されるのですか??」
カガリとは別の方向の驚きでもって、ルナマリアが目を丸くする。
「え、あ、もちろんだが…何か不味いのか?」
「当然です!今日は各機関の代表が集まるんですよ!?となれば当然あの人も来ますよね!?だって主席者一覧に名前ありましたよね!?ちゃんとご覧になったんですか!?」
早口で一気にまくしたてられ、カガリは口をはさむ暇もない。だが生来の気の強さなら負けはしない。
「あ、当たり前だ!今日はオーブ、プラント、大西洋連邦に加えて、コンパスと、ターミナルからも出席―――」
「なのに何ですか、そのメイクは!?」
会議とメイクがどう繋がるのか分からず、ついでに話も途中でシャットアウトされて、カガリが目を丸くする。
流石にルナマリアでは言葉不足と、ラクスが説明を加える。
「カガリさんはお肌がとてもお美しいから必要が無いのやもしれませんが、折角ですもの。ちゃんと女性首長にふさわしくメイクをされてはいかがかと思いまして。」
「いや、ちゃんとメイクしたぞ?」
ラクスの言葉に、今度は鏡ではなく、椅子から振り返って、カガリは目の前のラクスに自分の頬を指してみせる。

確かにメイクはしている。
BBクリームとアイブロー、そして唇の色とほぼ同じグロス。
言ってしまえばナチュラルメイクだが、カガリにとっては、これでも精一杯メイクした方だ。
元々オシャレに興味もないし、相手に失礼のない程度の気品さえ保てれば十分という認識。
だが、ラクスとルナマリアが再び顔を見合わせると
「代表。ファンデーションもお持ちですよね?」
とルナマリアが訝し気に尋ねてきたところで、冒頭の会話に戻る。

「ですから、BBクリームじゃなく、ファンデーション!ちゃんと、服装やシチュエーションに合わせたファンデ使わなくってどうするんですか!?」
「え?別にいつものこの首長服にこのメイクだぞ?別に皆何も言わないし」
何だか叱られた子どもみたいに言い訳するが、ルナマリアは仁王立ちでカガリを眼下に睨みつける。
「ラクス、ルナマリアを止めてくれよ。」
最後の頼みでラクスにヘルプの視線を送るが、やはり彼女も敵だった(苦笑)
「カガリさん。今日という日ですもの。折角ですからきちんとメイクされたら、お喜びになりますよ。」
「は?」
一体誰が自分の化粧で喜ぶというのか。
第一本人があんまり喜んでいないのだが。
まだ状況が飲み込めていないカガリに、ルナマリアは遂に口を出した。
「もう!今日は『ターミナル』からも参列者がいるんです!その人の名前はよぉ~~~~~~~~~くご存知ですよね、代表は!!!」
「えっと、あ…」
そういえば、いつもは管理責任者が来ていたが、任務中で外すことができず、代わりに優秀な部下を送ってよこす、と言ってきたんだっけ。
(それって・・・)
ようやく真顔になったカガリを見て、ラクスが頷いた。
「お分かりになられたようですね。どのくらいお会いしていらっしゃらないのですか?彼とは。」
「うん…もう半年以上かな?」
忙殺される日々の中にあっても、直ぐにそれだけは思い出せる。
ターミナルに出向命令を出して早半年。直ぐに帰還できない場所と任務。
命じたのは自分ではあるが、決断したはずなのに、どこか否応ない寂しさを心のどこかに抱えたままだった。
そのカガリの俯きかけた横顔を見て、ルナマリアとラクスがカガリの身体をもう一度ドレッサーに向かわせる。
「さ、代表。こうなったらアスランさんに、とびっきりの綺麗な代表を見せつけてあげなきゃいけませんよね!」
「は、はぁ!?」
何故にアスランと久しぶりに対面できるからといって、化粧を厚塗り(カガリにはそう思える)しなきゃいけないんだ????
「べ、別にアスランはそんなことしても、よろこば―――」
「はいはい。じゃぁ、先ずはファンデーションからですね。…うわぁ…流石は代表。これって最高級品のファンデじゃないですか✨」
ルナマリアが感嘆の声を上げる。
確かにカガリも幼い時からこの環境にいたこともあり、化粧品ブランドの名前も知ってはいる。以前フレイが「買い出しに行くならこれも買ってきて!」と、高い化粧水や乳液などを注文してきたが、ザフト勢力下の砂漠の国で、そんなものがどこにも売っていないことくらいは気づけた。
しかし、如何に高級なものだろうと、ブランドものだろうと、カガリにとっては「化粧品は化粧品」。プチプラでも構わないほど興味はないのだ。
(何で女の子たちはみんな、ブランド物が好きなんだろう?)
カガリが頭に「ハテナ」を浮かべている間に、さっさとケープを掛けられた。さらにルナマリアとラクスがドレッサーから次々と、カガリが普段使いしない、文字通りタンス、ではなく引き出しの肥やしになっている化粧品と道具を取り出す。
「カガリさんはお肌の色も薄いですし、このタイプのオークルなんかよろしいんじゃないでしょうか?」
そう言ってラクスは、オレンジに近いピンクのマットタイプのプレストパウダーを取り出す。
「ラクス様、代表にはツヤの方がいいんじゃないですか?まだお若いんですし。」
「いいえ、会議場は意外と照明が明るいので、反射を抑えるべきかと。」
「なるほど~それは私にはわからないですね。私の仕事場はMSのコクピットですもん。」
女性二人が和気藹々、ファンデーションのパフをカガリの柔肌にはたいていく。
「おい、粉はたきすぎじゃないのか?」
「いーえ!このくらいは普通ですよ、代表。」
「・・・」
ルナマリアに畳みかけられ二の句も告げない。

そういえばマーナにも化粧品の使う量が少ないようなことを言われたことがある。
でもカガリの私物は国民の血税で得たものだ。なるべく使わず節約したほうが、国民のためにもなるのではないだろうか。フレイの様に化粧品に拘る女性だったらその予算もかかるだろうが、ありかたいこと(?)に、こういうお金のかかるものに興味のない代表なのだから、削れる部分は削って良いと思うのだが。まだ完全な平和を手にしていないのに、こんな悠長で良いのだろうか?
(でも・・・)
ふとカガリが鏡に映るふたりの表情を見やる。
やれ「アイブローはオレンジ系ですよね!」「アスランをイメージして、オレンジと相性のいいグリーンのマスカラにしましょうか。」「ならアイライナーもエメラルドを入れたらいいんじゃないでしょうか?」
そこに映るのは世界平和監視機構の総裁でもなく、その護衛で優秀なるMSパイロットでもない。
どこにでもいる普通の女性だ。
平和であれば、こうした愛らしい笑顔を溢れさせ、この穏やかで優しい時間をもっとずっと味わせることができるのに。
「?いかがされましたか?カガリさん。」
カガリの表情の変化に気づいたのはラクス。カガリは軽く首を振る。
「いや、何でもない。何でもないんだが・・・」
緩んだ表情が鏡に映る自分を見て、少しこわばる。
「なぁ、ちょっと塗りすぎじゃないのか?」
普段見慣れない自分に驚きと動揺を隠せないカガリ。
「いいえ、とてもお美しいですわよ。」
「ホント!でもまだまだ仕上げまで行ってませんから。完成したらバッチリ見惚れちゃいますよ♥」
ラクスとルナマリアはカガリの不安を反比例するようにご機嫌だ。
するとルナマリアがカガリの髪を梳きながら、ふと漏らす。
「よくこうやって、メイリンの髪を梳いてやったんですよ。あの子はおしゃれ好きだから、私なんかよりずっと上手に代表をメイクアップできたんでしょうけど。」
「でもルナマリアさんも、メイクも手慣れていらっしゃいますわよ。」
「ありがとうございます、ラクス様。」
ルナマリアもカガリと同じく、戦場に出る女だ。メイクより自分の愛機に手や気をかけるタイプかと見えたが・・・
(あ、もしかして、シンのお陰なのかな?)
メイリンが出向前に話していた気がする。「二人が付き合っている」と。
だったら―――
「ルナマリアもやっぱりメイクするようになったのは、シンのお陰なのか?」
何気なく聞いたつもりのカガリだが、途端ブラッシングの手が止まる。
「ん?どうした?ルナ。」
「アイツがそんなことに気づく奴だと思いますか?」
あ、鏡の中のルナの口元がヒクヒクしている。
「仕事仕事で忙しい中、ようやくできた非番!折角のデートでおしゃれして、メイクもしっかりして、待ち合わせに行ったのに、アイツ、何て言ったと思います!?「そんなのどうでもいいから、早く行こうぜ。時間が勿体ないだろう。」ですって!!(怒)「どうでもいい」んですよ!?私のオシャレなんて!!」
ぷんすかふくれっ面のルナマリアに、ラクスが少し苦笑するようにして諭した。
「「どうでもいい」ということは、化粧する前からルナマリアさんが美しい、かえってその素顔を隠すのは勿体ない。・・・そういう意味のはずですわ。」
「そうでしょうか?だったらもっと「言い方」ってものがあると思うんですが・・・」
「なぁ、その時、シンは目を逸らさなかったか?」
カガリに聞かれてルナマリアがふと記憶を反芻する。
「そういえば・・・そんなだった気がしますが、何でお気づきになられたんですか?代表」
カガリは思わず口元を緩める。
「なんかシンって捻くれてるからさ。良いものを素直に”いい”って言えない感じがするから。」

―――「俺はオーブが大嫌いだ!」

あの時憎々しげに叫んだシン。
だが最後の戦いで、オーブが撃たれなかったことに涙した、と教えてもらった。
本音ほど隠したがったり否定する―――カガリはそうシンを受け止めた。
「確かに。でもこっちが頑張って相手のためにしたことだから、素直に言ってくれた方が嬉しいですけど。―――その点、ヤマト隊長はラクス様にちゃんと伝えていそうで羨ましいです✨」
そう言って笑顔をラクスに向けるが―――
(あれ?)
ラクスは笑んでいる。笑んでいるが「笑っていない」。
「キラは・・・そうですわね

―――「キラ。この服はいかがですか?」
   「うん、いいんじゃないかな。」 

   「キラ、この口紅はいかがでしょうか?」
   「うん、いいんじゃないかな。」

   「では、こちらのイヤリングは・・・」
   「うん、いいんじゃないかな。」

「・・・なんですか、それ・・・」
ルナマリアの顔が一気に引き攣った。
ラクスも物憂げに視線を逸らす。
「何と言いましょうか・・・彼は優しすぎるのです。似合っても似合わなくても、きっと私を傷つけまいと・・・」
「それは違うぞ、ラクス。」
彼女の不安を切り捨てたのはカガリ。
「キラはなんというか、滅茶苦茶語彙が少ないんだ。言葉不足で私も喧嘩になったことがあるし。」
あの砂漠で再会したとき、お互い言葉が足りず、引っ叩いたりグーで殴ったり(しかも殴ったのはカガリの方)。でも言葉にしなくとも、彼の不安や寂しさ、心に負っている傷の痛みを理解できた。それは双子ゆえ・・・かもしれないが、キラは言葉にできない。好意を持つ相手ほど口にできる言葉が少ないのだ。特に苦しさも痛みも。
「ラクスの言う通り、アイツは優しいヤツだから、言葉を選べないんだ。でもラクスには絶対に嘘はつかない。好きな相手だからこそ、嘘は言わないんだ。本音でぶつかってくる。そういうやつなんだ。姉である私が保証するぞ!」
「そうですわね。カガリさんがおっしゃるんですもの。ありがとうございます。少し自信が持てましたわ。」
「えーーーーーーっ!?!?代表とヤマト隊長ってご姉弟だったんですか!?!?Σ( ̄口 ̄;)」
先ほどから一転して、口が開きっぱなしのまま固まるルナマリア。
「「・・・」」
ラクスとカガリは顔を合わせて、その様子に
「あはは!」
「うふふ♪」
「ちょっと、二人とも!!笑わないでくださいっ!!💦」

平和だ
実に平和だ
こんな時間がずっと続けばいいのに
何の屈託もなく、年齢も、コーディネーターもナチュラルも関係なく、こうして友達の様に笑いあえる日が、一番みんな欲しいんだ

そんな胸中のカガリにしっぺ返しとばかりにルナマリアが攻めてきた。
「でしたら、代表はアスランさんにはなんて言ってもらっているんですかぁ?」
「・・・」
途端に笑っていた口が噤む。
「アスランは・・・」

そういえば、今の今まで容姿について、聞いたことも話したこともない。
何しろデートなんてする暇はなかった。
会えばいつも軍服や首長服で。
化粧だって、殆どしたことがない。

(そういえば・・・デュランダル議長と面会する時も)

―――「ドレスは持ってきたんだろうな。必要なんだよ。演出的なことも」

アイツはドレスも戦闘服の一つにしか見ていなかった気がする。
私が着飾ったところで、それは彼の為でもなく、相手に対しての礼儀であり気圧させる武器でしかない。

そんな私が、こうして化粧して相対したところで、アイツは・・・

 

(アスランはこの鏡に映る私の姿を見て、どう思うのだろう・・・?)

 

・・・to be Continued.



***

 

プチが終わって、母が少し介護の手を離れたので、そのせいかちょこっと空いた時間でSSをカキカキ。
今回は、来月のアミューズイベントの頬染めカガリ

↑の可愛さに触発されて、なんとなくプロット切った感じで書き始めてみました♥

劇場版のカガリをはじめ、主だった20歳以上の女性キャラはみんな口紅つけてますし、今度香水も発売されるので、お化粧に関した話があってもいいかな、って。

カガリはお姫様ですから、以前フレイが注文した「エリザリオの化粧水だの乳液だの・・・」が高級品というのを一発で分かりましたし、「友君」でもAAで食事の作法が「いいところのお嬢様」とフレイに見抜かれましたし、興味はないけど知識はありそう。
ただ、ちゃんとお化粧しているかは謎。
ルージュもマリューさんやナタルさんみたいに、赤のリップではなく、肌に近い薄いピンクというかパープル↑(※上のイラストをよく見ると)で主張は抑えてますよね。

先日Xのフォロワーさんが、口紅について化粧品売り場の方から色んな説明を受けられた解説を掲載されていて、肌の色や服と組み合わせながらの色遣いが、拝見させていただいて、なかなかに面白かったです。

さて問題は、アスランよ・・・
この男が、果たして化粧したカガリを見てどう思うのか。
キラ以上にポジティブ語彙が少ない(哀)男なので、実際どういう感想を抱くかは謎です(苦笑)
劇場版でもそういうシーンは描かれないだろうな~尺の問題もあって。

なので、妄想で夢見ます。
そしてカキカキする時間の尺が足りなくって(現実問題)、無駄に続き物になってしまいました💦
後半は、また時間ができた時にUPします(`・ω・´)ゞ
(でもブログに書きなぐっている程度のものですので、大したものではないです。<(_ _)>)

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヲタグッズ回収日誌 | トップ | GUNDAM FACTORY YOKOHAMAに行... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ノベルズ」カテゴリの最新記事