現役の金メダリストを落選させる、という選考が物議を醸した、4年前のアテネ五輪の女子マラソン代表選考について、当時の強化委員長として、世論の矢面に立たされた、澤木啓祐専務理事が当時、月刊陸上競技のインタビューでこんな話をしている。
金メダリストであり、世界最高記録も作った高橋尚子の実績を選考に際してどう評価したのかという質問に対して、
「実績の評価を4年というスパンで行なうならばこれ(高橋の実績)は『文句なし』です。しかし4年のスパンで評価するというのには無理があります。今回の選考基準は2年前に作ったものです。この基準による実績評価に尽きました。」(2004年5月号)
インタビュワーは当時の同誌の編集長、廣瀬豊氏。既に鬼籍に入られている。
澤木氏のこの見解に異論を唱える方もいらっしゃるだろう。少なくとも、ここで代表選考において一つの見解が確立した。
「実績には、賞味期限がある。」
これまでになく、五輪のマラソン代表選考が静かだ。まあ、本来はこのくらいが正常な状態でこれまでが異様だったとも言えるが、思いの他、すんなりと決まりそうである。世界選手権銅メダルの土佐礼子が既に内定。東京国際女子では野口みずきが2007年の世界2位となる2時間21分37秒で優勝。大阪国際女子で2位の森本友のタイム2時間25分34秒を上回るタイムで優勝したランナーが自動的に代表内定だろう。2位のランナーも野口のタイムを上回れば、野口が落選、となるか?それよりも可能性が高いのは、優勝タイムが森本のタイムを下回った場合である。
ずばり、名古屋の優勝タイムが森本よりも1分以内、2時間26分30秒前後であれば、名古屋の優勝者の方が代表となるであろう。12年前のアトランタ五輪の選考を思い出されたし。大阪2位の鈴木博美の方が名古屋優勝の真木和よりも上回っていたのに真木が選出された。「優勝」という結果はそのくらい優位に立てる要素なのだ。さらに言えば、世界選手権で、土佐にも嶋原清子にも敗れているマーラ・ヤマウチに勝てなかったのはマイナス要因だと思う。4年前の選考で、高橋の評価が思い切り下がったのは、野口、千葉真子、坂本直子が2~4位を占めたパリの世界選手権で5位のランナーに敗れたせいではないかと僕は思っている。
さて、名古屋の出場選手、国内招待選手のリストを見て、気づいたことがある。持ちタイムの順にリストが作成しているが、その持ちタイムをマークしたのがアテネ五輪以前のランナーもいる。これをそのランナーの「現在の力」と見るのはおかしいのではないか?
「実績の賞味期限」、それはずばり、2年なのではないか。こういった国際マラソンに出場するためには、一般参加のランナーは2006年の3月以降に資格タイムを記録していないと出場できない。4年前に土佐に次いで2位でゴールした大島(旧姓田中)めぐみは、今回、ハーフマラソンの記録でエントリーしている。
そこで、今回の招待選手を、2006年3月以降の記録でランキングを作成してみた。優勝者を予想するための参考資料に活用してみてはいかがだろうか?
1位 弘山晴美(資生堂)2:23:26
2位 原裕美子(京セラ)2:23:48
3位 加納由理(セカンドウインドAC)2:24:43
4位 堀江知佳(アルゼAC)2:28:01
5位 坂本直子(天満屋)2:28:33
6位 大南敬美(トヨタ車体)2:29:24
7位 町田祐子(日本ケミコン)2:29:48
8位 林明祐美(日本ケミコン)2:29:59
9位 嶋原清子(セカンドウインドAC)2:30:46
10位 真鍋裕子(四国電力)2:30:46
11位 高橋尚子(ファイテン)2:31:22
12位 小川清美(京セラ) 記録なし
招待選手に続く存在なのが2年前の北海道マラソン優勝者の吉田香織である。弘山は2年前の名古屋の優勝時のタイムであり、原のタイムは去年の大阪での優勝タイムである。加納は昨年の北海道で優勝を経験している。
「夏のマラソンで優勝している。」というのは、選考において有利な実績である。
ランキングでは9位になる嶋原のタイムは、2年前のドーハ・アジア大会で銀メダルを獲得した時のタイムである。昨年の世界選手権でも6位に入賞している彼女はこのランキングの上位3人と同等の存在と見ていい。
初マラソン組では、先月の丸亀ハーフで2位に入賞した、尾崎好美の前評判が高いが、彼女以上のハーフマラソンの記録を世界ロード選手権で作っている、平良茜が要注目だ。そして、僕が注目しているのは「ママさん対決」。おなじみの星野芳美に、経産婦初のサブ30ランナー田中千洋、そして、コーチと結婚して出産後にデンソー陸上部の復帰した若松(旧姓永山)育美が出産後初めてマラソンのスタート・ラインに立つ。なんと昨年、ハーフで1時間11分台をマークしているのだ!田中の記録を破るか?
(ちなみに、彼女が結婚するという情報を最初に教えてくださったのは、星野さんだったのだ。星野さんはデンソーの本拠地である三重県の出身。)
海外招待選手については、書くことがない、というか知らない人たちばっかりだ。これで日本人が優勝を逃すようでは・・・・。
びわ湖の翌日のスポーツ紙に、男子の国際マラソンは日本勢10連敗と、日本人優勝が遠ざかっている現状を嘆く記事が掲載されていたが、男子の国際マラソンは近年、世界記録保持者に世界選手権優勝者を、今回の五輪選考レースには、昨年の世界選手権の上位入賞者を招待し、彼らが額面通りの実力を見せているのだ。
日本人優勝は当然、あとはどんなレースを見せるか。日本人だけでも「世界最高峰のレース」が作れることを見せて欲しい。
金メダリストであり、世界最高記録も作った高橋尚子の実績を選考に際してどう評価したのかという質問に対して、
「実績の評価を4年というスパンで行なうならばこれ(高橋の実績)は『文句なし』です。しかし4年のスパンで評価するというのには無理があります。今回の選考基準は2年前に作ったものです。この基準による実績評価に尽きました。」(2004年5月号)
インタビュワーは当時の同誌の編集長、廣瀬豊氏。既に鬼籍に入られている。
澤木氏のこの見解に異論を唱える方もいらっしゃるだろう。少なくとも、ここで代表選考において一つの見解が確立した。
「実績には、賞味期限がある。」
これまでになく、五輪のマラソン代表選考が静かだ。まあ、本来はこのくらいが正常な状態でこれまでが異様だったとも言えるが、思いの他、すんなりと決まりそうである。世界選手権銅メダルの土佐礼子が既に内定。東京国際女子では野口みずきが2007年の世界2位となる2時間21分37秒で優勝。大阪国際女子で2位の森本友のタイム2時間25分34秒を上回るタイムで優勝したランナーが自動的に代表内定だろう。2位のランナーも野口のタイムを上回れば、野口が落選、となるか?それよりも可能性が高いのは、優勝タイムが森本のタイムを下回った場合である。
ずばり、名古屋の優勝タイムが森本よりも1分以内、2時間26分30秒前後であれば、名古屋の優勝者の方が代表となるであろう。12年前のアトランタ五輪の選考を思い出されたし。大阪2位の鈴木博美の方が名古屋優勝の真木和よりも上回っていたのに真木が選出された。「優勝」という結果はそのくらい優位に立てる要素なのだ。さらに言えば、世界選手権で、土佐にも嶋原清子にも敗れているマーラ・ヤマウチに勝てなかったのはマイナス要因だと思う。4年前の選考で、高橋の評価が思い切り下がったのは、野口、千葉真子、坂本直子が2~4位を占めたパリの世界選手権で5位のランナーに敗れたせいではないかと僕は思っている。
さて、名古屋の出場選手、国内招待選手のリストを見て、気づいたことがある。持ちタイムの順にリストが作成しているが、その持ちタイムをマークしたのがアテネ五輪以前のランナーもいる。これをそのランナーの「現在の力」と見るのはおかしいのではないか?
「実績の賞味期限」、それはずばり、2年なのではないか。こういった国際マラソンに出場するためには、一般参加のランナーは2006年の3月以降に資格タイムを記録していないと出場できない。4年前に土佐に次いで2位でゴールした大島(旧姓田中)めぐみは、今回、ハーフマラソンの記録でエントリーしている。
そこで、今回の招待選手を、2006年3月以降の記録でランキングを作成してみた。優勝者を予想するための参考資料に活用してみてはいかがだろうか?
1位 弘山晴美(資生堂)2:23:26
2位 原裕美子(京セラ)2:23:48
3位 加納由理(セカンドウインドAC)2:24:43
4位 堀江知佳(アルゼAC)2:28:01
5位 坂本直子(天満屋)2:28:33
6位 大南敬美(トヨタ車体)2:29:24
7位 町田祐子(日本ケミコン)2:29:48
8位 林明祐美(日本ケミコン)2:29:59
9位 嶋原清子(セカンドウインドAC)2:30:46
10位 真鍋裕子(四国電力)2:30:46
11位 高橋尚子(ファイテン)2:31:22
12位 小川清美(京セラ) 記録なし
招待選手に続く存在なのが2年前の北海道マラソン優勝者の吉田香織である。弘山は2年前の名古屋の優勝時のタイムであり、原のタイムは去年の大阪での優勝タイムである。加納は昨年の北海道で優勝を経験している。
「夏のマラソンで優勝している。」というのは、選考において有利な実績である。
ランキングでは9位になる嶋原のタイムは、2年前のドーハ・アジア大会で銀メダルを獲得した時のタイムである。昨年の世界選手権でも6位に入賞している彼女はこのランキングの上位3人と同等の存在と見ていい。
初マラソン組では、先月の丸亀ハーフで2位に入賞した、尾崎好美の前評判が高いが、彼女以上のハーフマラソンの記録を世界ロード選手権で作っている、平良茜が要注目だ。そして、僕が注目しているのは「ママさん対決」。おなじみの星野芳美に、経産婦初のサブ30ランナー田中千洋、そして、コーチと結婚して出産後にデンソー陸上部の復帰した若松(旧姓永山)育美が出産後初めてマラソンのスタート・ラインに立つ。なんと昨年、ハーフで1時間11分台をマークしているのだ!田中の記録を破るか?
(ちなみに、彼女が結婚するという情報を最初に教えてくださったのは、星野さんだったのだ。星野さんはデンソーの本拠地である三重県の出身。)
海外招待選手については、書くことがない、というか知らない人たちばっかりだ。これで日本人が優勝を逃すようでは・・・・。
びわ湖の翌日のスポーツ紙に、男子の国際マラソンは日本勢10連敗と、日本人優勝が遠ざかっている現状を嘆く記事が掲載されていたが、男子の国際マラソンは近年、世界記録保持者に世界選手権優勝者を、今回の五輪選考レースには、昨年の世界選手権の上位入賞者を招待し、彼らが額面通りの実力を見せているのだ。
日本人優勝は当然、あとはどんなレースを見せるか。日本人だけでも「世界最高峰のレース」が作れることを見せて欲しい。
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