KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2008年びわ湖毎日マラソン雑感

2008年03月07日 | マラソン観戦記
別府大分、東京と一般参加選手が好記録で日本人トップ(別大は優勝)が続いたせいか、びわ湖でもそのような「サプライズ」を期待してしまった。実際に一般参加選手の中にも、実績的には優勝争いに絡んできそうなランナーが多数いた。

1km3分のペースが15km過ぎから急速に上がり、中間点通過が1時間3分22秒の高速ペースとなり、有力ランナーたちが次々とふるいにかけられた。4年前2位だった小島忠幸、ニューイヤー駅伝の汚名返上を目指した地元出身の瀬戸智弘、日本人初のサブ20ランナーを父に持つ中尾勇生、駒澤大箱根駅伝初優勝のメンバー大西雄三、5年前に大学生のマラソン最高記録をこのコースでマークした藤原正和らが次々と集団から離れて行った。

NHKの中継では、5km毎にトップグループのランナーを表示し、離れて行ったランナーたちの名前を消していく。ペースメイカーの仕事は、ランナーたちを斬り捨てていくことだと思い知らされる。最後に残った白ナンバー・カード(一般参加)は大阪ガスの渡邊浩二。100kmマラソンの世界チャンピオンにしてサブテン・ランナーの渡邊真一を兄に持つ彼が、今回の「サプライズ」かと思ったが、25kmで離れていった。残ったのは大崎悟史と佐藤智之。2人とも昨夏の世界選手権代表ランナーだ。そして32歳のベテラン阿部祐樹。佐藤も阿部も28km過ぎて離れていき、30km過ぎて生き残ったのは、昨夏の世界選手権銀メダリストのムバラク・ハッサン・シャミ、4位のヤレド・アスメロン、びわ湖に2回優勝歴のあるホセ・リオス、そして大崎。

残るべきランナーだけが残った。そして、シャミとアスメロンが飛び出す。大崎はつけない。

世界選手権では、不手際でロビーに寝かされたにもかかわらず、マラソンで最後に尾方剛をかわしたアスメロンがトップを走るが33kmでシャミに並ばれる。大崎はリオスとともに3位を争う。日本人トップのタイムが、この時点で、東京2位の藤原新の2時間8分40秒を越えるとは思えなかった。

35kmの通過は、東京の藤原のタイムと1秒差。きわどい。後方からは一旦離れた大西が迫っている。既に佐藤と並んだ。

ここからが大崎だった。後ろについたリオスの落ちつきの無さと対照的にただ前だけを見つめ、無駄な動きも見せずに、身体を前に進めていった。38km過ぎてリオスが離れる。一時は6秒差にまで迫られた大西を引き離す。リオスを捕らえる大西。しかし、大崎は捕まえられない。

やはり大崎悟史は大崎悟史だった。どんなにハイペースのレースでも、先頭集団の中で好位置をキープし、たとえ世界トップ・レベルのスパートに遅れを取りながらも、決して大きく崩れない。40km過ぎて、藤原からは13秒遅れをとっている。痙攣に耐えながらの走りが記憶によみがえった。しかし、35kmでは27秒あった2位アスメロンとの差は14秒!大阪で尾方をかわしたアスメロンを捕らえたら、たとえ藤原のタイムに届かなくても、五輪代表の座は手元に引き寄せることができる。行け、大崎!

終盤、独走になったシャミはペースを落とし、2時間8分23秒でフィニッシュ。終盤は走りも崩れていた。アスメロンもトラックで息を吹き返したかのように逃げる。シャミから11秒差でゴールし、2秒差で大崎!藤原のタイムを4秒上回った。逆転ホームランだ!

4位の大西も自己ベストを大幅に更新する2時間8分54秒。そして、5位には中間点で集団から離れた清水智也。昨週、双子の兄、将也が延岡でマラソン初優勝したばかり。弟は初マラソンでいきなり2時間9分23秒の好タイム。

6位はリオス。7位の佐藤が2時間9分59秒。ニューイヤー駅伝の失敗の雪辱は果たしたが、旭化成はアテネに続いて五輪のマラソン代表入りは果たせなかった。大崎と佐藤を除けば、8位に初マラソンの池永和樹、9位の藤原、10位に大崎のチームメイト方山利哉、11位に尾崎朱美の夫、石毛豊志、12位の初マラソン新井広憲。ここまで2時間15分を切った日本人が全て一般参加だった。

駅伝で好調だった野口憲司、下森直、堀口貴史らはもう少し上に来るかと思ったがサブ15にも届かなかった。

上位8人の35kmからゴールまでのタイムで順位をつけると、

1位 大崎悟史 22:39
2位 大西雄三 22:46
3位 清水智也 22:46
4位 シャミ  22:53
5位 アスメロン 23:04
6位 リオス  23:41
7位 佐藤智之 23:53
8位 池永和樹 24:07

なんと、シャミとアスメロンを日本人3人が上回っているのだ。
「そんなもの、トップでゴールしなけりゃなんの意味もない。」
と思う人もいるだろうが、世界のトップとの差が少しは縮まってきている証しと僕は思いたい。思えば、大西の所属する日清食品では、アトランタ五輪マラソン代表の実井謙二郎がプレーイング・コーチとして指導にあたっているし、清水の所属する佐川急便の監督はアトランタ五輪マラソン代表の大家正喜だった。

そして、今回の五輪代表、補欠も含めて全員が箱根駅伝経験者となる可能性大だが、今年の新規サブテン・ランナー、藤原新、大西、清水も皆箱根駅伝経験者であるし、池永も中央大出身である。

「箱根駅伝有害論が否定された」とまでは言えずとも、マラソンでブレイクする可能性を秘めた人材には事欠かないことは分かった。そして、佐藤に堀端宏行、足立知弥ら高卒の若いランナーをマラソンで鍛える旭化成の「伝統」も健在である。北京だけでなく、それ以後の楽しみは男子マラソンの方が多いかもしれない。



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