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KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

ニューイヤー駅伝雑感vol.2

2007年01月24日 | 駅伝時評
ゲディオンの激走の煽りを食らってか、第3中継点で早くも繰り上げスタートになった。1区で出遅れたNTT西日本と自衛隊第13旅団。マラソンで実績のあるランナーを並べたNTTだったが、今回の出場者最年長(37歳!)で、世界選手権3度出場の大ベテラン清水康次を2区に起用せざるを得ないほど、チーム事情は苦しかったのだろう。タスキを渡す相手が不在で呆然としていたのは、先のアジア大会銅メダルの大崎悟史。13旅団は気の毒だが、来年の出場はかなり厳しいかもしれない。

現在発売中の月刊ランナーズ3月号に、ゲディオンについて興味深い記事が載っていた。筆者は陸連事務局に勤務し、「アフリカ通」で知られる関幸生氏。氏によって、同じケニア人のランナーでもポール・テルガトら欧米で活躍するランナーと、留学生として来日し、駅伝で活躍するランナーとでは、部族が異なることを知ったのだが、さすがに中継アナがしきりに
「(マサイ族ならではの)脅威の身体能力を持つ」
と絶賛することには
「違和感を覚えた。」
という。
「(マサイ族の)運動能力がずばぬけて他民族より勝っているという科学的データは見当たらない。」
からだ。放牧民であるマサイ族は、他の部族と異なり、自分たちの伝統的な生活スタイルを守り、西洋化を拒否していた歴史を持つという。
それゆえに、他部族よりも海外に留学したり、スポーツで富を得ようとしたりする者がこれまで少なかったのだという。ちなみに、ゲディオンはマサイ族出身であるが、キシイ族(日本で活躍するケニア人ランナーの大半)の多い地域の出身だったのだという。

ちなみに、これまでマサイ出身のアスリートで世界のトップに立ったのは、男子800mで'87ローマと'91東京で世界選手権2連勝を果たしたビリー・コンチェラだが、昨年のドーハアジア大会のこの種目で金メダルを獲得したバーレーンのユスフ・サード・カメルは、彼の息子なのだそうである。

関氏によると、ゲディオンが来日時の10000mのベストは28分台の後半だったそうで、彼の成長は日本での指導の賜物だとのこと。
「マサイの脅威」を強調する中継を「捏造」とは言えないかもしれないが、やはり「正しい情報」はきちんと伝えて欲しいものだ。僕とて、陸上の専門誌を定期購読していなければ、タスキをして走るケニア人ランナーを見ても、
「こいつら、こないだまで槍持ってサバンナを走ってたんやないの?」
などと、偏見に満ちた見方をしていたかもしれない。

4区を過ぎてトップは日清食品。中国電力は7位、コニカミノルタは10位。この2チームの優勝は絶望的に思えた。日清を捕らえるチームは、久しぶりに2位を維持している旭化成か、秋山羊一郎の区間賞で勢いづくかと思われたホンダではないかと、この時点で僕は思った。
だからテレビカメラが中電の佐藤敦之にばかりカメラを向けるのが少々不満だった。

日清の5区は大島健太。くろしお通信から移籍後初のニューイヤー駅伝だ。五輪代表の大島めぐみの夫でもある。

テレビの判断は間違ってなかった。佐藤の勢いが凄い!前のランナーを次々と捕らえていく!2分17秒も差をつけられていた日清との差を縮めていく。2位の旭化成、小島忠幸も捕らえられ、ついにはトップに立った!

年末に放映された、このレースのナビ番組にて、中国電力陸上部の面々が、侍のコスプレをする一幕があったが、佐藤はやたらと似合っていた。おっと、これはゲディオンを「マサイの戦士」と見るように、会津出身の佐藤を「白虎隊」と見るようなものか。歴史の上では白虎隊は悲劇的な存在だ。彼を「悲劇のヒーロー」扱いするなんて縁起でもない。

それにしても、とても来月マラソンを走るランナーとは思えなかった。だいたい、マラソンを目指して、走りこんできたランナーなら、1ヶ月前ともなれば疲労もたまり、スピードのキレが失われてくるものだ。いい例が2区での徳本だ。この時点で10マイル近い距離を、45分14秒というタイムで走れるとは。別大の彼に要注目である!なんと言っても、顔が良かった。頬の肉が削げ、眼光が鋭い、かつて日清食品の白水監督が言った「マラソンを走れる顔」になっていた。

コニカミノルタも坪田智夫の力走で5位に浮上した。しかし、区間2位とはいえ、区間賞の佐藤との差は1分12秒。

ホンダの山口洋司が心配だ。体調不良だったのかジョグのようなペースで大きく後退してしまった。彼は昨年夏の十八駅伝でも、棄権している。肝機能障害を起こしていたというが、競技者生命に別状がなければいいがと祈るばかりだ。

佐藤からタスキを継いだ尾崎輝人も区間賞の走りで2位との差を広げた。

(つづく)




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