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KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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日本選手権雑感vol.2~男子10000mをめぐる問題についての私見

2005年06月15日 | その他のスポーツ
サッカー日本代表がバンコクで異例の無観客試合で北朝鮮代表を下し、来年のワールドカップの出場権を得て、日本中が沸きかえる陰で、今夏、ヘルシンキで行われる世界陸上競技選手権(五輪、W杯と並ぶスポーツイベントとされている。)の日本代表の選考がもめている。一旦発表された、代表選考が白紙撤回されるという異例の事態となっているのだが、新聞等の扱いは大きくない。

問題となっているのは、男子の10000m。日本人トップでゴールした、三津谷祐(トヨタ自動車九州)が代表に選ばれたことに、2位でゴールした大森輝和(くろしお通信)の指導者である松浦忠明監督が陸連に抗議し、決定を不服とする文書を提出した。

その後、大森側は納得のいく説明を求めて、澤木啓祐陸連強化委員長と会談。その後、冒頭に述べた通り、白紙撤回となり、今度は三津谷のサイドから陸連に要望書が提出されるという状況である。

問題となったのは、事前に公表されていた、今回の代表選考基準において、

「有効期限内(昨年1月1日~今年7月25日)に世界選手権参加標準記録Aを突破し、日本選手権で入賞した選手の中で、本大会で活躍が期待される競技者を代表とする。」
という規定が、
「有効期限内に同記録Bを突破し、日本選手権で優勝した選手の中で、本大会で活躍が期待される競技者を代表とする。」
よりも優先されると明記されていたのにもかかわらず、A標準記録突破者である大森(27分43秒94)が落選し、B標準記録突破者の三津谷(28分0秒23)が代表に選ばれたためである。

陸上記者、寺田辰朗氏のホームページによると、代表発表記者会見においても、この点について
「なぜ、基準が覆ったのか?」
という質問が集中し、澤野大地、末續慎吾の代表入り保留以上に波紋が広がった。(男子のA標準突破者が3人も、日本選手権で代表の座を得ることができなかった!!)

僕自身の、選考レースを見た感想から先に書いておこう。「オープン参加」扱いのケニア人ランナーたちがスタートから先頭に飛び出し、日本人ランナーと差をつけるといういつもの展開。しかし、日本人トップの浜野健(トヨタ自動車)は、日本最高記録のペースで集団を引っ張り、2000m過ぎてからはサムエル・ムツリ(コニカ・ミノルタ)が日本人選手の集団を引っ張った。3000mの通過はちょうど、A標準記録(27分49秒0)のペース。終盤の展開次第では、女子のようにA標準突破者が4人は出る好レースが期待できた。

「歴史に残る激闘」だった、4年前の再現のような女子走り幅跳びにカメラが向けられている間に集団が絞られたが、ペースは落ちてきた。

佐藤敦之(中国電力)が前に立ち、アテネ五輪代表の大野龍二(旭化成)、大森、三津谷が続く。
既に、A標準突破は絶望的、「記録よりも順位」狙いの展開となっていた。この時点でやや失望を覚えていた。

佐藤が前に立ち、逃げようとするが大森と三津谷が楽そうについていく。ラストスパートなら、この2人が強い。ラスト一周過ぎて先に仕掛けたのは大野だったが、三津谷が逆転!見事なスパートではあったが、28分9秒89というタイムにはがっかりした。大森は28分10秒97。せめて、B標準記録28分6秒0は切って欲しかった。

ビールを飲みながらレースを見ていたという、友人K氏から電話がかかる。彼はこのような展開のレースを最も忌み嫌うのだ。
「あれなら、佐藤をヘルシンキに連れて行けよ。」

ちなみに、彼は2年前の福岡(アテネ五輪代表選考レース)においても、優勝した国近友昭よりも、2位の諏訪利成の方をほめていた。
「国近を外して、諏訪を代表に選ぶべきだ。」
と言っていたほどである。(結果的には2人とも選ばれたが、入賞したのは諏訪の方だった。)

「まあ、三津谷で決まりかな?」
「あいつ、大野と同期生らしいな。」
「しかし、大森はつくづく、運の無い奴よのう。」
「せっかくA標準を切っているのに、もったいない事をしたな。」

この時点で僕もK氏も、選考基準の優先順位の事を知らなかったのである!B標準突破者の三津谷が、B標準記録にも届かぬタイムで優勝したのだから、代表に選ばれるのは三津谷のみであろうなと思ったのだ。

翌日の、ネットでのニュースにて、大森サイドが陸連に抗議しているという事を知り、そこで初めて、A標準突破者の入賞の方が、B標準突破者の優勝よりも優先されるという内規を知ったのだ。全くおそまつな話だが、もし、規定通りに大森が選ばれていたらどうだったろうか?

「なぜ、日本選手権優勝者が世界選手権に行けないのだ?」

と、選考基準そのものが否定されていたのではないだろうか?

澤木強化委員長ら陸連幹部を擁護するわけではない。ただ、昨年のマラソン代表選考のように、陸連=加害者=悪、落選者=被害者=善という図式からは離れたところで、この問題を考えていきたい。

(この項つづく)



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