世界選手権に5大会連続して入賞を果たし、その間にメダルを2個獲得していながら、「低迷」というイメージがなかなか抜けないのが現在の日本の男子マラソンである。そもそも、現在のトップクラスのランナー、高岡寿成や藤田敦史、佐藤敦之に油谷繁らの名前が、マラソン・ファン以外にどのくらい浸透しているのだろうか?
その4人が一同に会した今回の福岡国際マラソン。「強豪外国人対日本人」以上に、「日本人対決」に注目が集まるところだ。大会直前に、前世界記録保持者のポール・テルガトが出場をキャンセル、さらには持ちタイムでは海外招待選手中二位にあたるハイレ・ネグシエが欠場となったがこれでより「4強対決」がレースの中心となった感がある。
今回、初めてペースメイカーに日本人ランナーが指名された。今年の延岡西日本マラソンに優勝している立石慎士。ところが、彼の役割は31kmの折り返しまで1km3分ペースで刻む外国人ペースメイカーの入りのペースを安定させるためだとかで10kmでレースを止めた。
しかし、この配慮が功を奏したのか、中間点まで1時間3分30秒の安定したペースが刻まれた。
ペースメイカーがレースを作る現代のマラソンは、レースの中で「予選」と「決勝」が行なわれているようなものだ。15℃を越える気温の中、大会記録で引っ張るペースの中、22kmで高岡が遅れ、藤田も油谷も30kmを前に離れて行った。残ったのは佐藤と、ケニアのサムエル・ワンジル、エチオピアのデリバ・メルガ。
ワンジルは仙台育英高校出身でトヨタ自動車九州に入社3年目。しかし、海外のハーフマラソンに積極的に出場し、今年2月にハーフマラソンの世界新記録(58分53秒)をマークしている。今回が初マラソン。佐藤はハーフの日本記録保持者。これまで、素質は、同じ中国電力の尾方剛や油谷をしのぐと言われながら、マラソンではなかなか結果が出せなかった。2時間8分36秒の持ちタイムも
「そんなもんじゃないだろう?」
と言われ続けて来た男だ。そしてもう一人、一般参加のメルガ。彼については全くノーマークだったが、実はワンジルが世界新を出したレースで3位にゴールしていたランナーだという!
8年前に、一般参加で出場して優勝し、翌年のシドニー五輪で金メダルを獲得した、ゲザハン・アベラの再来か?
それにしても、テレビ中継が今回もひどかった。先頭から遅れたランナーを延々と映している間に、佐藤がスパートをかけた瞬間を映し逃した!何度も書いてきたが、これはサッカーの試合で、ゴールの瞬間を映し逃すのと同等の失策だ。ランナーが共に競ってきたライバルから離れて、前へ出ようとするその一瞬こそ、2時間を越えるマラソン・レースの最高の瞬間なのだということを理解していない人間が中継を担当しているのか?
先の東京国際女子マラソンでもあったことだが、テレビ局が「注目選手」に指名したランナーが失速すると、他のランナーそっちのけでジョグのペースまで落ちこんだ様にカメラを向けるがそれよりも映すべきものがあるだろう?
今回なら、一般参加で唯一、集団についていった、高橋謙介にもっとスポットを当てて欲しかった。順天堂大時代に2度箱根駅伝優勝を経験しているランナーだ。
34km過ぎて、佐藤は遅れていった。しかし、トップを争う2人との差は絶望的ではない。ワンジルは初マラソン、メルガもマラソンのベストは2時間13分台。佐藤の逆転の可能性は残されている。
松宮祐行が油谷を捉えた。もし、4強以外の日本人が出てくるなら彼だろうと予想はしたが、まさにその通りになった。後方のレースにカメラを向けるなら、こういう順位の変化に対してのみにして欲しい。先の東京国際女子では、3位から6位のランナーがほとんど画面に映されなかった。そのような事は無い様にして欲しい。
ワンジルもメルガも失速しなかった。40km過ぎてワンジルがスパート!
ワンジル、初マラソン初優勝!!タイムは2時間6分39秒の大会新記録!!メルガも自己ベストを大幅更新する2時間6分50秒!
そして、佐藤が2時間7分19秒の3位でゴール。思わずガッツポーズが出る。
「負けたくせに、ガッツポーズなんかするな。」
と言う無かれ。かつて高石ともやさんが言ったように、マラソンは
「優勝者以外でもガッツポーズをすることが許される唯一のスポーツ」
なのだ。ハーフマラソンの日本記録保持者であるが、そのタイムは1時間0分25秒。その記録の差がそのままワンジルらとの差になったかもしれない。
35kmからのタイムを見ると、ワンジルは21分50秒で上がっているが、佐藤は22分18秒だった。ここからが今後の課題となるだろう。ちなみに、4位の松宮は23分24秒。
現在の日本人ランナーの中ではダントツだが、世界のトップとは、まだまだ差があると感じた。ACミランと浦和レッズとの実力差と比べるとどうだろうか?
それにしても、佐藤は本当に顔が変わった。いい顔になったと思う。
「マラソンを走れる顔というのがある。」
とかつて日清食品の白水監督が語ったことがある。走りこみでほほの肉がそげ落ち、それでも目にはギラギラとした輝きがある。まさに今回の佐藤はそんな顔だった。
今夏の「世界陸上」。代表選手にPRのためにサムライのコスチュームをさせたテレビ局の姿勢が批判された。僕自身もあまり好ましいこととは思わない。あの中に、マラソンランナーはいなかったが、もしかしたら今、一番サムライのコスプレが似合うのが佐藤かもしれない。なんといっても、会津出身だ。
彼の「健闘」も、ゴルフの賞金女王争いや「星野ジャパン」やクラブW杯にかき消されてしまった。なかなか男子のマラソン・ランナーが「スター」にはなりにくいご時世だ。
その4人が一同に会した今回の福岡国際マラソン。「強豪外国人対日本人」以上に、「日本人対決」に注目が集まるところだ。大会直前に、前世界記録保持者のポール・テルガトが出場をキャンセル、さらには持ちタイムでは海外招待選手中二位にあたるハイレ・ネグシエが欠場となったがこれでより「4強対決」がレースの中心となった感がある。
今回、初めてペースメイカーに日本人ランナーが指名された。今年の延岡西日本マラソンに優勝している立石慎士。ところが、彼の役割は31kmの折り返しまで1km3分ペースで刻む外国人ペースメイカーの入りのペースを安定させるためだとかで10kmでレースを止めた。
しかし、この配慮が功を奏したのか、中間点まで1時間3分30秒の安定したペースが刻まれた。
ペースメイカーがレースを作る現代のマラソンは、レースの中で「予選」と「決勝」が行なわれているようなものだ。15℃を越える気温の中、大会記録で引っ張るペースの中、22kmで高岡が遅れ、藤田も油谷も30kmを前に離れて行った。残ったのは佐藤と、ケニアのサムエル・ワンジル、エチオピアのデリバ・メルガ。
ワンジルは仙台育英高校出身でトヨタ自動車九州に入社3年目。しかし、海外のハーフマラソンに積極的に出場し、今年2月にハーフマラソンの世界新記録(58分53秒)をマークしている。今回が初マラソン。佐藤はハーフの日本記録保持者。これまで、素質は、同じ中国電力の尾方剛や油谷をしのぐと言われながら、マラソンではなかなか結果が出せなかった。2時間8分36秒の持ちタイムも
「そんなもんじゃないだろう?」
と言われ続けて来た男だ。そしてもう一人、一般参加のメルガ。彼については全くノーマークだったが、実はワンジルが世界新を出したレースで3位にゴールしていたランナーだという!
8年前に、一般参加で出場して優勝し、翌年のシドニー五輪で金メダルを獲得した、ゲザハン・アベラの再来か?
それにしても、テレビ中継が今回もひどかった。先頭から遅れたランナーを延々と映している間に、佐藤がスパートをかけた瞬間を映し逃した!何度も書いてきたが、これはサッカーの試合で、ゴールの瞬間を映し逃すのと同等の失策だ。ランナーが共に競ってきたライバルから離れて、前へ出ようとするその一瞬こそ、2時間を越えるマラソン・レースの最高の瞬間なのだということを理解していない人間が中継を担当しているのか?
先の東京国際女子マラソンでもあったことだが、テレビ局が「注目選手」に指名したランナーが失速すると、他のランナーそっちのけでジョグのペースまで落ちこんだ様にカメラを向けるがそれよりも映すべきものがあるだろう?
今回なら、一般参加で唯一、集団についていった、高橋謙介にもっとスポットを当てて欲しかった。順天堂大時代に2度箱根駅伝優勝を経験しているランナーだ。
34km過ぎて、佐藤は遅れていった。しかし、トップを争う2人との差は絶望的ではない。ワンジルは初マラソン、メルガもマラソンのベストは2時間13分台。佐藤の逆転の可能性は残されている。
松宮祐行が油谷を捉えた。もし、4強以外の日本人が出てくるなら彼だろうと予想はしたが、まさにその通りになった。後方のレースにカメラを向けるなら、こういう順位の変化に対してのみにして欲しい。先の東京国際女子では、3位から6位のランナーがほとんど画面に映されなかった。そのような事は無い様にして欲しい。
ワンジルもメルガも失速しなかった。40km過ぎてワンジルがスパート!
ワンジル、初マラソン初優勝!!タイムは2時間6分39秒の大会新記録!!メルガも自己ベストを大幅更新する2時間6分50秒!
そして、佐藤が2時間7分19秒の3位でゴール。思わずガッツポーズが出る。
「負けたくせに、ガッツポーズなんかするな。」
と言う無かれ。かつて高石ともやさんが言ったように、マラソンは
「優勝者以外でもガッツポーズをすることが許される唯一のスポーツ」
なのだ。ハーフマラソンの日本記録保持者であるが、そのタイムは1時間0分25秒。その記録の差がそのままワンジルらとの差になったかもしれない。
35kmからのタイムを見ると、ワンジルは21分50秒で上がっているが、佐藤は22分18秒だった。ここからが今後の課題となるだろう。ちなみに、4位の松宮は23分24秒。
現在の日本人ランナーの中ではダントツだが、世界のトップとは、まだまだ差があると感じた。ACミランと浦和レッズとの実力差と比べるとどうだろうか?
それにしても、佐藤は本当に顔が変わった。いい顔になったと思う。
「マラソンを走れる顔というのがある。」
とかつて日清食品の白水監督が語ったことがある。走りこみでほほの肉がそげ落ち、それでも目にはギラギラとした輝きがある。まさに今回の佐藤はそんな顔だった。
今夏の「世界陸上」。代表選手にPRのためにサムライのコスチュームをさせたテレビ局の姿勢が批判された。僕自身もあまり好ましいこととは思わない。あの中に、マラソンランナーはいなかったが、もしかしたら今、一番サムライのコスプレが似合うのが佐藤かもしれない。なんといっても、会津出身だ。
彼の「健闘」も、ゴルフの賞金女王争いや「星野ジャパン」やクラブW杯にかき消されてしまった。なかなか男子のマラソン・ランナーが「スター」にはなりにくいご時世だ。
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