KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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東京国際女子マラソン雑感vol.1

2004年11月30日 | マラソン観戦記
世界で初めての、女性だけのマラソン大会として始まった東京国際女子マラソンも今年で26回目を数える。

日本が女子マラソンで世界のトップ・レベルの水準を維持し、五輪で2大会連続して金メダルを獲得しているのも、女性のエリート・ランナーのみが走るマラソン大会が年に3度も行われているからではないだろうか?

海外においては、ボストンマラソンに女子選手の出場を認めることから、女子マラソンの歴史が始まった。今、そのボストンにロンドン、ロサンゼルスにニューヨーク・シティでは、女子のエリートランナーの部門は男子よりも30~35分先にスタートするように変更されてきた。

先に発表した拙稿「海外メジャーマラソンへの幻滅」で言いたかったのは、いまや、男女同時スタートの海外マラソンの女子の部は、「勝負」という点では、日本の三大女子マラソンに及ばないのではないか、という事である。ヌデレバとアレムのマッチ・レースとなった今年のボストン、ラドクリフの復活レースとなった今年のニューヨーク、そういうレースこそ、日本の地上波テレビで生中継して欲しいのだ。

さて、女子マラソンの元祖ともいうべき東京だが、テレビ局はいったいこの26年、何をやってきたのだと言いたくなるほど、ひどい中継だった。

いつのまにか、東京のコースは「世界屈指の難コース」ということになっていた。確かに、後半はきつい坂道がある。しかし、今回も走っていた僕の知人は、
「愛媛マラソンのコースの方がきつい。」
と言っていたぞ。実際、山口衛里が持つ、女子のコース・レコード(2時間22分12秒)は日本歴代7位であり、ゲルト・タイスの持つ男子のコース・レコード(2時間6分33秒)は日本国内のマラソン最高記録だ。すっかり「アンチ小出軍団」となっている僕など、去年の金メダリストの失速を、あくまでもコースのせいにしようとしているのかと勘繰ってしまった。

「国内のレースでペースメイカーをつけて走るのは初めてです。」
なんて、よくも恥かしげもなく白々しいことが言えるものだ。せめて、去年の福岡のように、
「初めて、公認のぺースメイカーが走ります。」
と言ってればまだ、マシだが。

優勝候補の筆頭である、千葉真子を「小出監督の秘蔵っ子」と呼ぶのもおかしい!
日本語の使い方を知らないのか?「秘蔵っ子」というのは、たとえば、同じ小出監督の指導を受けていて、今回16位でゴールしている大場美穂のような選手に対して使うべき言葉ではないか?少なくとも、小出監督の指導を受けるようになる以前に、世界選手権のメダルを獲得し、ハーフマラソンの日本最高記録(当時は世界最高記録)を出しているランナーに対して使う言葉ではないと僕は思う。

この際、言わしてもらうと、マラソン中継のアナウンサーや、スポーツ新聞の記者の中には、高校時代に都大路を走っている選手に対してさえも
「学生時代は無名」
と決めつけたがるのがいるが、そのような紹介をされて、一番不快に思うのは、その選手の学生時代の指導者やその関係者であることを自覚して欲しい。

「そんなマニアックな指摘ばかりするなよ。」
と思われる人もいるかもしれないが、僕は別に重箱の隅をつついているつもりではない。正確な情報を伝えて欲しいと言っているだけだ。

「妄言」だらけの中継にあきれはて、大いに期待していた真鍋裕子、高井志保の四国電力の愛媛出身コンビが先頭集団から離れていき、レースに対する興味が半減していった。10km過ぎて、先頭集団に残っている日本人選手は千葉と藤川亜希のみ。おっと、二人とも旭化成出身ではないか!しかし、中継アナも解説者もその事には一言も触れない。「円満」とは言いがたい退社だっただけに、この事に触れるのはタブーになっているのかとさえ思った。

八つ山橋で藤川が脱落した。先頭集団は千葉にアレム、ワミのエチオピア・コンビ、アジア最速ランナーの孫英傑にしぼられた。

腕を振らずに走る孫。「ペンギン走法」などとも言われるが。2年前に僕が金哲彦氏のマラソン講座を受けた際に、金氏は彼女の走法を理にかなったものだと語っていた。

今回のレースをビデオに録画したという方は、ぜひ、彼女の肩の動きに注目して見て欲しい。

20km過ぎて、ゴール予想タイムは2時間23分台。まずまずのペースだ。しかし、ペースメイカーは巧くない。いや、これだけのタイムで巧くペースメイクができるくらいのランナーなら、立派な「優勝候補」になれる。

ペースメイカーが国内のレースにおいて、「公然の秘密」であった頃、旭化成の宗茂監督が
「ペース・メイカーは高い金を払って呼んだ外国人にやらせず、日本の若い選手に経験を積ませるためにやらせるべきだ。」
と提言したことがあった。

その後、防府読売マラソンや延岡西日本マラソンではカネボウや旭化成の若手、もしくはベテラン選手や日本在住のケニア人選手がペースメイカーを務めていた。

今、女子マラソンにおいても、日本人選手か在日ケニア人選手にペースメイカーをさせてみてはどうだろう?

折り返し地点、千葉は笑顔を見せて、手を振りながら通過していった。余裕があるのだろうか?しかし、僕は彼女の笑顔に不吉な予感がした。結果が分かっている、今の時点だからそう言っているのではない。

(つづく)





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